ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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薬の時間

 カルマ君の騒動の次の日の理科の時間

 

 奥田さんが殺せんせーに

 

「毒です! 飲んでください!!」

 

 と薬品を入れたビーカーを殺せんせーに正直に手渡した

 

「奥田さん、これまた正直な暗殺ですね」

 

 奥田さん曰く皆みたいに不意打ちとかは得意ではなく、化学は得意なので真心込めて毒を作ったとのこと

 

 ロンメル含め、皆が 

 

(奥田さん、それで飲むバカは流石に)

 

 と思ったが、殺せんせーは躊躇無く飲んだ

 

 水酸化ナトリウム、炭酸タリウム、王水……

 

 どれも人体に悪影響が出る毒物であるが、殺せんせーにとって顔を変えるくらいの効力しか無かった

 

「奥田さん、生徒1人で毒を作るのは安全管理上見過ごせませんよ!」

 

「はい、すみませんでした」

 

「放課後時間があるなら一緒に先生を殺す毒薬を研究しましょう」

 

「……は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、いつものロンメルと殺せんせーがプレハブにて勉強とトレーニングを教えてもらう時間

 

「で、本当に奥田さんに殺せんせーを殺せる薬品を作らせたの?」

 

「ヌルフフフ、そんなわけありません。宿題と称して先生を強化する薬品を作ってもらいました。勿論人にも害はありません」

 

「ちなみに奥田さんが渡した薬品類(王水等)を私が飲んだらどうなるの?」

 

「実際にロンメルさんが飲んでいないので正確にはわかりませんが、激痛は感じると思いますが、触手と同化した器官……胃袋とかで毒素は抽出されて無害になるでしょうね。つまりダメージは受けますが回復の方が早いということです」

 

「なるほど、じゃあ私も毒は効かない感じかな?」

 

「効きはしますが自然治癒能力が高いと思った方が良いでしょう。なので薬とかも効きづらいですし、呼吸器官に影響が出る毒物などは触手の効力を貫通しかねませんからねぇ」

 

「奥田さんに宿題とした薬品はどんな効果なの?」

 

「ヌルフフフ、それは明日のお楽しみですよ。さて、今日のトレーニングはピッチ走法とストライド走法です」

 

「足の回転率をあげるか、歩幅が広いかの走法だよね?」

 

「はい、まずロンメルさんに教えるのに人の走り方もそうですが競走馬の走り方も参考にするようにしました。理想はスタート及び登坂でピッチ走法、直線や下り坂ではストライド走法が良いとされます。なぜかわかりますか?」

 

「うーん、加速と最高速度とかの違い?」

 

「はい、その通りです。ピッチ走法は加速性が高い反面疲れやすく、最高速度が長時間維持できません。ストライド走法は加速性能に難がありますが、最高速度はピッチ走法より出ますし、疲れにくい。現在のロンメルさんはややストライド走法よりの走り方をしています。でもそれだけではつまらない。ロンメルさんに最も適した走法を先生考えてきました」

 

 殺せんせーは私に約1500ページにも及ぶ本を渡してきた

 

「題してナンバ式ストライド走法がロンメルさんのパフォーマンスを最大限発揮できると思います」

 

「ナンバ式?」

 

「別名ナンバ歩きやナンバ走り等昔の日本人がしていた走り方です。ロンメルさんは無意識のうちにこのナンバ走りを自身に反映しているのですが中途半端としか言いようがない。これを更に精練することでより速く、疲れにくい走りをしていきましょう」

 

「はい! ところでナンバ走りってどんなのですか?」

 

「極端に言えば右足と右腕、左足と左腕が同じタイミングで走るやり方です。緊張すると手足が揃って歩いてしまうなんて経験がありませんか? あれです」

 

「あぁ、あれですか」

 

「おそらく修正には1週間もかからないと思いますし、この走り方だと足腰への負荷が少ない。より長い間活躍できることでしょう」

 

「なるほどなるほど……ナンバ走りにデメリットはあるの?」

 

「先ほど手足が揃うと説明しましたが、これは正確ではありません。その様に走れば前に進むより肩を動かしてしまうためエネルギーロスが発生します。上半身と腰、さらに足が無理無く連動する動きこそがナンバ走りの本質です。なので普段皆さんがしている走り方になれている人程ナンバ走りに変更すると誤ったナンバ走りをしてしまいがちですが、ロンメルさんはなぜか土台ができているのでそれを精練させれば良いです」

 

「たぶん戦国の経験からかな……周りの皆がナンバ走りだっけ? そんな風に歩いていたからつられそう走る様になって、大正でも修正されなかったから今に至る感じかな?」

 

「ヌルフフフ、とりあえず過去の経験としておきましょう。さて、コースに出ましょうか、先生の触手によるサポートでみっちりしごきますからね!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 翌日奥田さんが先生からの宿題で作ってきた薬品は先生を液体化させるというとんでもない薬品だった

 

「奥田さん、君に作ってもらった薬品はね、先生の細胞を活性化させて流動性を増す薬なのです! 液状故にどんな隙間も入り込む事が可能に!! しかもスピードはそのまま!!」

 

 ロンメル心の中でどんな薬だよと突っ込まずにはいられない

 

 ただ先生に効果が有ると言うことはロンメルにも効果がある

 

 自身がその薬品を飲んだらどうなるのだろうかという疑問を持つ

 

「せ、先生騙したんですか!」

 

 奥田さんが殺せんせーに声をあげる

 

「奥田さん、暗殺には人を騙す国語力も必要です」

 

 殺せんせーは奥田さんが理科や数学は突出した才能が有るのに対しての国語に苦手意識があることを勿体ないと感じていたらしい

 

「どんなに優れた毒や薬品が作れても……今回のように馬鹿正直に渡したら、ターゲットに利用されて終わりです。人を騙すには相手の気持ちを知る必要がある! 言葉を工夫する必要がね」

 

「上手な毒の盛り方……それに必要なのは国語力です! 理科の才能は将来皆さんの役に立ちます。それを多くの人に分かりやすく伝える国語力を身に付けていきましょう」

 

「は、はい!!」

 

 こうして奥田さんの暗殺は失敗に終わった

 

 ロンメルは国語力の大切さ、突出していても他の能力が無いと力を十二分に発揮できないのだと学んだ

 

 それは刀の才能でもそうだ

 

 剣術はロンメルは卓越した能力を持っているが、刀が折れればそれで終わりである

 

 継続して戦闘可能な格闘術、刀を修復、修繕する能力、相手の戦闘力を把握して逃げれる対応力及び観察能力……

 

 もっと総合力が有れば無惨と相討ちではなく生き残れたのではないかとも思うようになった

 

「過去は過去、今は今……よし、更なるトレーニングをし、学ばなければ」

 

 ロンメルは更にやる気を出すのだった

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