6月に入りじめじめとした梅雨の季節が始まった
全体的に湿気るとロンメルの髪としっぽはごわつく
これは触手化による変化であり、薄い粘膜でカバーすることでなんとかなるのだが、そうするとごわつくのだ
「ロンメルさん湿気ると髪がストレートじゃなくなるんだ」
「毎日ドライヤーで乾かしてここに来るんだけど移動でどうしても湿気っちゃって……」
『ドライヤーを作りましょうかロンメルさん』
「ありがとう律、ただこの古い校舎だと乾かしても湿気るからあんまり意味ないかな」
この古い山の上の校舎であるE組は雨漏れや軋みが酷くなっていた
ちなみに本校舎ではエアコンがガンガン効いた心地よい勉強空間が提供されているらしい
まぁ雨は雨でありがたいこともある
畑に水をやらなくても良いのと不良馬場の練習ができる点だ
この前も
「ロンメルさんのパワーは素晴らしい。上半身ばかりに目が行きがちですが下半身の肉付きは人間のそれとは比べ物になりません。そこに急激な成長で付いた筋肉は重馬場や不良馬場でこそ輝きます」
つまりロンメルの最適正は土砂降りの雨によりできる田んぼ(不良馬場の更に酷いバージョン)と呼ばれる馬場であり、この状態でならスピード勝負よりもパワーと気力と根性がいかにあるかによって勝負が決まるので今のロンメルでもチャンスがあるとのこと
「まぁパンパンに乾いた良馬場で勝てるようになるのが最良ですがねぇヌルフフフ」
と言われてしまった
で、梅雨になると湿気を吸い込んだ殺せんせーの顔が膨張したり、頭に茸が生えたりと殺せんせーの謎すぎる生体に皆頭を抱えるがロンメルは知っている
「茸が頭から生えていたら受けますかねぇ」
と数日前茸の菌を頭に蒔いていたのを
あと最近あったことは前原君がC組の女の子とイチャイチャしていたら横から生徒会のA組の男子に女の子をかっさらわれるトラブルがあったらしい
そこで女の子にも結構どぎついフラれかたをしたのを殺せんせーが見ていて報復を決行
そのトラブルを近くに居た皆で報復の手伝いをして女の子とA組の男子は酷い目にあったのだが、それを烏間先生になぜかバレて雷が落ちたりした
他にはビッチ先生の師匠であるロヴロという殺し屋がビッチ先生が殺せんせーの暗殺に不適合の為引き上げさせるという事件が発生し、ビッチ先生残留の為にロヴロさんとの勝負が発生
勝負の条件はビッチ先生とロヴロさんが烏間先生を対先生ナイフ(普通の人体には無害)で先に当てた方が勝ちというもので、ビッチ先生は色仕掛けで最初殺そうとしたが失敗、続いてロヴロさんが烏間先生の暗殺を決行したが、最精鋭の特殊部隊でつい最近まで能力でトップに居た烏間先生の方が強く、年齢による劣化で第一線を退いていたロヴロさんを返り討ちにしたらしい
で、ビッチ先生が2度目の暗殺は昼食時にワイヤートラップを烏間先生に仕掛ける
それに成功させ馬乗りとなり最初は烏間先生がナイフを受け止めるが、なにかを喋った後諦めたかのようにナイフが烏間先生に当たる
ロヴロさん曰くビッチ先生はワイヤートラップ等の高度な暗殺技術は持っていないとのこと
つまりこの教室に来てから自力で習得した技であった
「ロンメルさん良く見ておきなさい。イリーナ先生は挑戦と克服で10ヵ国語を習得した挑戦と克服の達人です。ロンメルさん、あなたも諦めること無く最後まで抗えば可能性が生まれます……良く学び良く噛み締めて成長しましょう」
苦手なものでも一途に挑んで克服していくビッチ先生の姿をロンメルは格好いいと感じた
これまでロンメルは自身の長所を伸ばすことにより弱点をカバーすることを多くやってきた
剣術、火縄銃の射撃術も茶道や礼儀作法も算術も農業も……他人からは多才で万能と思われたかもしれないが南蛮語ことポルトガル語や中国語は最後までわからなかったし、それらはわかる家臣を雇うことでカバーしたし、息子達がロンメルよりも様々な分野で突出した才能を持っていた
人の繋がりで弱点をカバーしてきたが、殺せんせーは本当の意味でロンメルを自身の全てを教え込むつもりらしい
死神の身に付けてきた技術を
その為には苦手だからといって他人に頼るのではなくビッチ先生みたいに克服していく必要がある
ビッチ先生ができるのだから私だってとロンメルは一層奮起するという出来事を得て、6月も中盤に差し掛かる
大雨の中1日が始まる
今日は律に続き2人目の転校生がやってくることになっていた
「皆さんおはようございます! 今日は烏間先生から新しい転校生がやって来る事は皆さん知ってますね」
「あーうん、たぶん暗殺者だよね」
「律さんの時は少し甘くみて痛い目を見ましたので先生今度ば油断しませんよ……いずれにせよ皆さんに仲間が増えることは喜ばしい事です」
ここで原さんが律に新しく来る転校生の事を聞いていないか確認すると少しだけ知っていたらしく、知っている情報を話してくれた
『はい、初期命令では私と彼の同時投入の予定でしたが、2つの理由でキャンセルされました。1つは彼の調整が予定より時間がかかったから、もう1つは私が暗殺者として彼に圧倒的に劣っていたから……私の性能では彼のサポートを務めるには力不足だと判断されたので重要度の下がった私からこの教室に送られました』
皆は殺せんせーの指を飛ばした律がこの扱いなので、どんな怪物がやって来るのかと固唾を呑む
次の瞬間教室の扉が開く
そこから現れたのは白い服で身を固めた男だった
彼はいきなり手品をして鳩を出して
「驚かせてごめんね。転校生は私じゃないよ。私は保護者……シロとでも呼んでくれ」
ロンメルは彼を見て警戒度をガッツリ上げた
(や、柳沢……今さらなぜ奴が……反物質生成実験による月の7割消失の責任と研究施設倒壊の責任、更に死者まで出ていたのになぜ今さら奴が!!)
ロンメルは見えていた
透き通る世界により布1枚程度であれば透けて見えるし、臓器なんかも見える
服の下に見慣れた顔
繰り返された拷問の様な実験の数々はまだ良い……雪村先生を死に追いやった張本人だとロンメルは断定していた
殺せんせーこと死神は自分が殺ったと言うが、殺すメリットが全く無い
それこそ愛し合っていた2人がいきなり殺し合いをする必要が無いからだ
ロンメルは自身が気絶していた間の事は知らない……知らないが、柳沢の高圧的かつ傲慢、横暴な性格を熟知していたロンメルにとって手品をして皆を驚かせる姿の柳沢ことシロを見て警戒しない方が不自然である
「ロンメルさんだね? 何を私に警戒しているのかい?」
「……」
ロンメル着席する
いつでも動けるように警戒しながら
「初めまして殺せんせー、ちょっと性格とかが色々と特殊な子でねぇ。私が直に紹介させて貰おうとおもってね……ん、皆良い子そうですな。これならあの子も馴染みやすそうだ」
一瞬渚君か茅野さんをシロは見た様に見えた
気のせいか?
「では紹介しましょう。おーい! イトナ!! 入っておいで!!」
すると教室後ろの壁を破壊して入ってきた
「俺は……勝った……この教室の壁より強いことを証明された……それだけでいい……それだけでいい……」
ずいぶんと変なのが来たとロンメルだけじゃなくクラス一同そう思う
殺せんせーもリアクションに困って笑顔でも真顔でもない中途半端な顔になってしまっていた
するとシロこと柳沢が
「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい。ああ、それと私も少々過保護でね。暫くの間の彼の事を見守らせてもらいますよ」
柳沢と話が読めない転校生のイトナ君……もうバリバリに嫌な予感がロンメルはしていた
それにカルマ君がイトナ君質問する
「ねぇイトナ君、今外から手ぶらで入ってきたよね? ……何で土砂降りの雨なのに1滴も濡れてないのかな?」
「……」
イトナ君はキョロキョロと辺りを見渡し、カルマ君にこう言った
「お前はこのクラスで2番目に強い……けど安心しろ俺より弱いから……俺はお前を殺さない」
イトナ君は殺せんせーの前まで歩いていき
「俺が殺したいと思うのは俺より強いかもしれないと思った奴だけ……この教室だと殺せんせー、ロンメルお前らだけだ」
殺せんせーを指さした後ロンメルの方を向いて指をさした
「強い弱いとは喧嘩の事ですか? イトナ君? 力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」
「立てるさ……だって俺達血を分けた兄妹だし、なぁ兄さん、姉さん」
「「「き、き、き、兄弟!?」」」
「……あー、なるほど察した」
「ロンメルさん?」
「イトナ君だっけ? 私を殺したい?」
「ああ、お前は殺す価値がある」
「私は腸が煮えくり返るくらいキレてる……おい、シロ。まさか私達以外にも処置をしやがったな!!」
「ろ、ロンメルさん?」
皆の視線がロンメルに向く
ロンメルは今まで見たこと無いような顔をしている
皆は感じた……激怒であると
「怒ってもしょうがないよ姉さん……なぁ姉さん。俺はお前らを殺して強さを証明したい。殺ろう姉さん」
「良いでしょう……」
「こら! お二人とも私闘は先生許しませんよ」
「殺せんせー、奴は……奴らは何も学習せずに同じ過ちを繰り返そうとしている……私は許せない」
ロンメルさんがここまで感情を露にするのは初めてだ
それよりも気になるのがロンメルさんと殺せんせー、イトナ君が兄弟であるということだ
これが本当なら殺せんせーとロンメルさんの繋がりが色々複雑になってくる
方や月を破壊する超生物、方やそのカウンター生物……ロンメルさん達の過去に何かあったのかは明白だ
本当は皆殺せんせーやロンメルさんに関係性を聞きたい
聞きたいが、ロンメルさんがあの状態で聞きづらい
「じゃあ姉さん決闘しようよ。勝った方が兄さんと殺る権利を得る……」
「良いでしょう。ルールは?」
「放課後、この教室で殺ろう」
「……持ち物は?」
「指定しない。道具を使わないといけないほど姉さんは弱いの?」
「言ったな。では私は対先生ナイフだけを持とう。人間には無害だから良いよなぁ」
「いいよ。俺の方が強いし」
ロンメルは怒っていた
怒っていたが冷静でもあった
対先生ナイフの所持を認めさせた
柳沢……兄弟……これらから導き出されるのは彼……イトナも触手を持っているということである
殺せんせーも私も柳沢にしたら両者暗殺対象であることに変わらない
いや、ロンメルという雪村先生が残した大切な生徒を失うというのは殺せんせーにとって耐え難い物であり、柳沢にしたら自分から全てを奪った者である死神こと殺せんせーから大切なものを奪いたい、壊したいという気持ちがあるのであろう
だからといって触手を植え付けるということは強烈な痛みを感じ、強靭な精神力が無ければ安定化するまでは常に触手に主導権を握られる可能性がある危険なものである
一方間違えれば破壊と殺戮を繰り返すモンスターが生まれてしまう
ロンメルは再び私達の様な危険な存在を作りかつ殺せんせーを殺したら用済みとして殺処分にしようとしている柳沢の行動にキレていた
ロンメルが激怒しているため皆は殺せんせーにイトナとロンメル、そして殺せんせーが兄弟であることを質問する
殺せんせーははぐらかしているが皆ロンメルと殺せんせーの過去について気になって仕方がない
そんなこんなで授業が終わり放課後となる
机でリングコートが作られロンメルとイトナはこの中に入る
シロこと柳沢が
「ルールは簡単、リングの外に足を着いたらその場で死刑……いや、ロンメルさんは私が引き取らせて貰うよ。そして殺せんせーとの殺し合いをできる権利をイトナは得る……どうかな?」
「私が勝ったら……データを寄越せシロ。私と殺せんせーそしてイトナの実験データを」
(((実験データ?)))
「……良いだろう」
「それと観客に危害を加えた場合も負けだ」
クラスの皆や烏間先生、ビッチ先生、殺せんせーがこの勝負を見守る
殺せんせーは最後までこの試合を反対したが、生き残る可能性が増える実験データを得れる機会は貴重だ
イトナには悪いがこの勝負勝たせて貰う
「それでは暗殺開始」
シロの号令で試合が始まる