夜
殺せんせーとロンメルは夕飯を食べながら今日のイトナと柳沢について話していた
「ついに政府もなりふり構わなくなってきたかね」
「ええ、触手使いが現れることは想定していましたが……まさか子供を実験体にするとは」
「それもあるけど私の動きを一瞬止めたあの光はなんだろう?」
「あれは我々触手を持つ者は普段は柔らかい触手ですが、強い圧力をかけられると硬くなります。そうすることでマッハの風圧にも耐えるのですよ」
「なるほど……じゃあ圧力光線ってこと?」
「ええ、そうなります。先生が受けていたらロンメルさんみたく髪だけじゃないので相当動きが制限されたと思いますがね」
「はぁ……柳沢は曲がりなりにも天才だ。私達のデータも持っているから私達が認識していない弱点を付いてくるかもしれない」
「でしょうね。それまでにロンメルさんはウマ娘の走る技能、勉強、暗殺、体術とやるべきことは沢山ありますからねぇ」
「今回は私は触手を見せなかったけどバレた時にどう皆に言い訳するかも考えないと」
「まぁあの様子ですといつかは真実を話さなければならないでしょうねぇ……はぁ、過去の事は先生としての顔とかけ離れているので話したくないのですがね」
「皆の殺る気をそぐ可能性も高いし、ターゲットが実は殺せんせーだけでなく私もだと知った場合皆との接し方も変わるだろうしね」
「……まだロンメルさんを救える可能性のデータは見つかっていません。そもそも柳沢が生きていたことすら先生は気がつかなかった……日本のどこかでしょうが、日本も広い。先生のスピードだけでは解決できないとは……」
「殺せんせー……いや、死神さんには前に言ったっけ……異世界に行く条件」
「ええ、何か偉業を成し遂げるでしたね」
「言わないようにしてたけど恐らく殺せんせーを暗殺する事がたぶんそれが今回の偉業なんだと思う……そして暗殺後死ぬのが私のこの世界での役割」
「……」
「もしかしたら既に偉業は達成しているかもしれない……反物質を産み出す生物、全世界から狙われる者、地球を破壊する者……まぁただ……この世界は居心地が良い。通りすぎる人々は死の恐怖に怯えること無く生活し、化物も私と殺せんせーしか居ない。文明も栄えているから過ごしやすい……でも居心地が良いのは殺せんせーの授業だから。烏間先生やビッチ先生の授業も勿論素晴らしいけど……居心地が良いのは殺せんせーのおかげ」
「……なるほどロンメルさんあなたは1人で目標を決めるのが苦手でしょう。周囲の空気や強者の意見で目標をコロコロと変える……あなたは強いのに芯が無いのです。だから強い者やカリスマある者に芯をはめ込んでもらって始めて力を発揮するのです……良くない。ひじょーに良くない」
「クラスの皆さんは先生を目標とするだけでなく将来についてもぼんやりとですが考え始めている。ロンメルさん、どこかで生きるのを諦めてませんか? 良くないですよ!」
「……生き残ったとしても政府の監視下でしか生きられないって改めて理解してしまったからねぇ……目標かぁ」
「えぇ、目標です! 何か無いですか?」
ロンメルはふと黒死牟との会話を思い出す
『貴方の見せた月の呼吸11種の型は私が継承致します。どうか安らかにお眠りください』
継承……確かに私は技術を身につけた
しかしそれを教えるということはしてこなかった
戦国で学校を作ったのも、鬼殺隊に入ったのも全てはより学ぶため
一之太刀を誰かに教えたことも呼吸を誰かに教えたこともしていない
そして雪村先生を思い出す
『何で雪村先生は教師を目指したのですか?』
ロンメルがそう聞くと
『夢……だったから……人を教えるのが好きってのもあるけど皆に夢を与えられるような人になりたかったの。で、夢を見るのは学生の時じゃないと難しいでしょ……だから私は教師になったの』
『夢を与える……』
『ロンメルさんも過去夢を与えてきたんじゃないかな』
ロンメルは自分の手を見る
その時ロンメルの手は血だらけで数多の夢を刈り取ってきたと思ってしまった
『ロンメルさんも夢を分け与えられるような大人になって欲しいな!』
「……雪村先生……殺せんせー、なら私の技術を誰かに教えたい。殺せんせー呼吸法を覚えませんか」
「にゅにゃ? まぁ良いですが」
ロンメルは隙間時間に殺せんせーに全集中の呼吸を教える
この会話が両者にとってのターニングポイントになるとは知らずに……
イトナと柳沢襲来から数日後
梅雨がようやく明けて夏の季節になり始めた頃、皆球技大会に向けてトレーニングをしていた
「健康的な心身をスポーツで養う。大いに結構!! ……ただ、E組がトーナメント表に無いのはどうしてですかね?」
「E組は本戦にはエントリーされないんだ1チーム余るって素敵な理由で……その代わり大会のエキシビションに出なきゃなんないの」
「エキシビション?」
「要するに見せ物だよ殺せんせー」
「全校生徒が見てる前で男子は野球部、女子は女子バスケット部の選抜メンバーとやらされるんだ」
「一般生徒の大会だから部の連中も本戦には出れない。だから皆に力を示す場を設けたわけ」
「本戦で負けたクラスもE組をボコボコにされるのを見てスッキリ、それとE組に落ちればこうなりますよって見せしめも兼ねてね」
「なるほど……いつものやつですか」
「でも心配しないで殺せんせー! 暗殺で基礎体力はついてるし! 良い試合して全校生徒を盛り下げるよ皆!」
「「「お!!」」」
女子は学級委員の片岡さんが中心となりバスケの練習を始める
「ところで烏間先生ロンメルさん出れるの?」
「今回の球技大会、ロンメルは不参加だ。代わりに秋の体育祭は出れるように交渉している」
「ちぇー、残念」
「ロンメルさん凄いもんねバスケ」
「何で味方のエンドラインから山なりで相手ポストに毎回入れられるかねぇ」
「1回やり方わかれば体に覚え込ませれるからかな」
「それとドリブル速すぎて追い付けないし、そのままダンクシュートしたらポスト破壊したよね」
「う、ウマ娘故の怪力なのでゆるして!」
女子は片岡さんが纏めているので問題なしと判断した殺せんせーは男子の強化特訓を開始する
「先生一度スポ根ものの熱血コーチやりたかったんですよ」
と殺せんせーもやる気満々で
「殺投手は300kmの球を投げ!」
「殺内野手は分身で鉄壁の守備を敷き!」
「殺捕手はささやき戦術で打者を集中させない!」
異次元野球をやっていた
「先生のマッハ野球に慣れたところで次は対戦相手の研究です。竹林君に偵察してきてもらい、ロンメルさんに野球部エース兼キャプテンの進藤君の投球をコピーしてもらいました」
「男子頑張れー」
「ロンメルさん2日で進藤君の投球フォームから球種、球質までそっくりコピーしたのに脱帽です」
「いや、竹林君のデータが良かったからだよ!!」
「イトナの一件からロンメルさんの化物っぷりが徐々に出てきたな」
「あぁ、全く隠す感じが無くなったよな」
ロンメルは竹林君と研究した野球部の進藤君のフォームで140kmの球で投げ、男子の練習に付き合い、ミーティング等で要らなくなったら女子のバスケ練習に付き合う
その甲斐あって男子は見事野球部を撃破し、女子は女子でバスケ部相手に大奮闘
本校舎の皆にE組でもやるんだぞというのを存分に見せつけるのだった