ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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鷹岡の時間

 ペイントアートが菅谷君の提案で流行ったりして7月が始まる

 

 菅谷君は美術センスが高く、クラスの誰よりも絵が上手い

 

 私も腕にボディペイントをしてもらったがまぁ上手いこと上手いこと

 

「ロンメルさんは得意な絵とかないの?」

 

 と不破さんに聞かれたので紙に織田木瓜を描く

 

「これ織田信長の家紋じゃない?」

 

「これだけは私上手いので」

 

 ロンメルは全体的に絵は下手であるが、図面を引いたりするのは得意である

 

 そんなロンメルにとって思い入れの深い織田木瓜だけは綺麗に描ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンメル……暗殺対象の(殺せんせー)に対するカウンター生物兵器と上司は俺に説明した

 

 体育の授業の暗殺訓練では熱心に授業を聞き、技術を吸収している

 

 なにより

 

 ヒュゥゥゥ

 

 この独特な呼吸音、そして俺との戦闘訓練では明らかに手加減をしている

 

 自身より強い者を教えるという不思議な感覚がするが、ロンメルが成長した暁には奴に刃が届く

 

 身長や体格もも急激に高く、大きくなってきている

 

 放課後身体能力を独自に検査したところ既に蹴りだけで木をへし折り、柔らかい対先生ナイフで鉄板を切り裂き、100メートルを6秒以下で走る

 

 驚異的な身体能力だが、射撃はまだまだ甘く、クラスの中間をうろうろしている

 

 高速移動をしながら射撃地点を変え、待ち伏せを多用するでも良し、高い機動性を生かした奇襲も良しと持ち前の身体能力を十全に生かした射撃技術を身につければ全体的な暗殺能力の向上は間違いない

 

 なによりイトナ戦で見せた全方位に一瞬で傷を付けたナイフ術……いや、剣術は誰にも真似できない領域の技だ

 

「……上層部がロンメルについて何か隠しているのは確実だ。イトナ戦でシロのことを柳沢という男だと断定したことが奴との繋がりを示唆している……独自に調査を続けるしか無いな」

 

 俺はふと窓を見ると校庭に空挺部隊の同期であった鷹岡がここに来ているのが見えた

 

「上層部が暗殺者育成と暗殺者の手引きの両立はここのところ暗殺が失敗続きだった為に暗殺者育成を別の者に当てる言っていたが……鷹岡だったか」

 

 鷹岡……空挺部隊では中間くらいの成績であったが、教官としての部隊育成能力は俺よりも上であった

 

 ただ奴は

 

「烏間さん、同じ防衛省の者として生徒が心配です。あの人(鷹岡)は極めて危険な異常者ですから」

 

 と俺の部下で防衛省時代の鷹岡を見てきた園川(暗殺者の交渉や事務処理を担当している者)がそう言っていたのが気にかかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名前は鷹岡明! 今日から烏間の補佐としてここで働くから皆よろしくな」

 

 デカイ図体をした男性が体育の授業終わりに現れて皆に挨拶した

 

 彼……鷹岡は持ってきたスイーツを広げて皆に食え食えとご馳走してくれた

 

「こ、高級店のエクレアやロールケーキ!」

 

「チーズタルトもあるぞ」

 

「このジュースめっちゃ高い奴じゃん!」

 

「い、良いんですかこんな高いの」

 

「おお! 遠慮するな! 俺は皆と早く仲良くなりたいんだ! それには皆で囲んで飯を食うのが一番だろ!」

 

 ロンメルはその言葉に同意する

 

 仲良くなるには同じ釜の飯食うのが一番手っ取り早い

 

 味について議論することもできるし、美味しいものであれば幸福感を共有することにもなる

 

「殺せんせーも食え食え! いずれ殺すけどな」

 

 皆にフレンドリーに接しているが

 

 ロンメルは殺せんせーにアイコンタクトをする

 

 殺せんせーもそれに頷く

 

((この男は怪しい))

 

 抑えきれていないのだ暴力の気配と狂気を

 

 殺せんせーはどこか抜けているところもあるが、生徒の危険の察知能力は人一倍強い

 

 自慢の嗅覚でその気配を殺せんせーは嗅ぎ分け、ロンメルは長年の経験則に基づいて判断した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鷹岡先生はダメですねぇ。愛が無い」

 

 夜給料が入ったのにも関わらず夕食をいつものように食べに来たの殺せんせーは第一声がそれであった

 

「愛? 皆とフレンドリーに接していたけど?」

 

「とぼけても無駄ですよロンメルさん。あなたも気がついているでしょう」

 

「ええ、まぁ……生徒を見ていない。この先にある殺せんせーを殺した後を見ているような……過程を飛ばして結果だけを求める者に見えました」

 

「ええ、良く見ていますね」

 

「これでも私様々な人を見てきましたからね」

 

「恐らく明日彼は動くでしょうからロンメルさん、先生は契約で他の先生にも手出しができない可能性が高い。だから皆を守ってあげてください」

 

「わかりました」

 

「うん! この天ぷら美味しいですね! 大葉ですか!」

 

「自生してたから取ってきたの。美味しくて良かったよ」

 

「エリンギの天ぷらも美味しいですね! おお! これは揚げおにぎり」

 

「中には野菜とお肉を混ぜた餡を入れてあるから美味しいよ」

 

「先生が教えたレシピを更にアレンジするとは!! 次の家庭科の時間は負けませんよ!!」

 

「望むところだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日鷹岡は体育の時間に早速仕掛けてきた

 

「さて、訓練内容の一新に伴いE組の時間割が変更になった。これを皆に回してくれ」

 

「時間割? ……!?」

 

 新しい時間割を見た皆は絶句した

 

 1~3時間目までは普通の授業であったが、そこから10時間目(夜の9時)まで訓練になっていた

 

 ロンメルは似たような事を昔からやっているため普通にできるが、軍人でもない普通の中学生である皆にこれをやらせるのは酷である

 

「酷すぎませんか鷹岡先生、これでは皆の自由な時間が全く無い。皆できないですよ」

 

「おいおいロンメル、地球の命運がかかっているのにずいぶんとあまっちょろい考えだな。俺達の任務は殺せんせーを殺す事。それだけだ。普通の中学生の生活なんかしている暇は無いよ。理事長先生も許可してくださった正式な時間割を否定するとは父ちゃん的にはちょっといただけないな」

 

 鷹岡はロンメルの頭を掴み、腹に思いっきり膝蹴りを入れた

 

「ぐっ!」

 

「できないじゃない。やるんだよ……言っただろ? 俺達は家族で父親だ。世の中に……父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

 

「さぁまずはスクワット100回×3セットだ! 抜けたい奴は抜けても良いぞ。その時は俺の権限で新しい生徒を補充する。1人2人抜けて入れ替わってもあのタコは逃げ出すまい」

 

「なるほどなるほど……教育者としては3流みたいですね」

 

「ああん? まだ歯向かうかロンメル」

 

 顔面に1発殴られた後、頭を捕まれ顎に膝蹴りが入る

 

 顎が欠けるが触手の力で再生する

 

「ろ、ロンメルさん!!」

 

「大丈夫か!」

 

「大丈夫だよ」

 

「いいか、父ちゃんは誰にも欠けて欲しくは無い。お前らは大切な家族なんだ! 家族の皆で地球を救おうぜ」

 

「とか言って私達を見ずに出世と名声が欲しいだけだろ! グズが!」

 

「ああん」

 

 回し蹴りが腹部に入る

 

 内臓にダメージが入る前に触手細胞と筋肉によるガードでダメージを極限まで抑える

 

 イライラしてきたが、皆を守るためには私がダメージを受けるしかない

 

 下手に攻撃して壊れたら私は直ぐに殺処分対象になりかねないので

 

「まだわかってないようだな。お前にははい意外無いんだよ。お前らスクワット始めろ。ロンメル立て。父ちゃんの徹底教育が必要みたいだからな」

 

 すると烏間先生がすっ飛んで来て

 

「やめろ鷹岡!!」

 

 烏間先生は真っ先に私の所に来てくれて

 

「ロンメルさん怪我は無いか」

 

「だ、大丈夫です」

 

「大丈夫なもんか。あばら骨と顎をやった。まぁ手加減していたから内臓は平気なハズだ」

 

「鷹岡!!」

 

 そして殺せんせーも

 

「あなたの家族ではない。私の生徒です」

 

 殺せんせーは顔を真っ黒にして激怒しているが鷹岡も引かない

 

「文句があるか? モンスター……体育は教科担任の俺に一任されているハズだし、さっきの罰も立派な教育の範囲内だ。1年以内にお前みたいなモンスターを殺さなくてはいけないんだ。多少の無茶は仕方ないだろ……それともあれか? 少し教育方針が違うからと俺を殺すか? モンスター」

 

 スクワットが開始される

 

 勿論私も

 

 岡島君や倉橋さんが既に限界だ

 

 確かに皆は普通の中学生よりは体力があるかもしれないがスクワット300回をいきなりやれと言われてやれるハズがない

 

 倉橋さんが

 

「烏間先生ぃ……」

 

 と呟いてしまった

 

「おいおい烏間は俺達の家族じゃないぞ! お仕置きだなぁ! 父ちゃんだけを頼ろうとしない子は!!」

 

 そこを烏間先生が止めに入る

 

「これ以上暴れたければ俺が相手になってやる」

 

「言ったろ烏間、これは暴力じゃない。教育なんだ。暴力でお前とやりあうつもりはない。対決するならあくまで教師としてだ」

 

 鷹岡は対先生ナイフを取り出しナイフを1回でも当てれたら生徒の勝ち、ただ烏間先生が生徒を1人選ぶことと、使うナイフは本物の対人ナイフでなければならないとした

 

「俺に勝てたらお前の教育が正しかったとして訓練をお前に任せて出ていってやるよ! 男に二言は無い」

 

 と鷹岡は約束した

 

「寸止めでもお前らの勝ちにしてやるよ! 生徒を見捨てるか生け贄として差し出すか!! どっち道お前は酷い教師だなぁ!!! あっはっはっ!」

 

 全ての修復は終わっている

 

 言質は取った

 

 これでナイフがたまたま当たっても不可抗力、私の勝ちは揺るがない

 

 ロンメルは自分が選ばれると思っていた

 

 しかし、烏間先生が選んだのは渚君だった

 

 そして烏間先生はこう言った

 

「地球を救う暗殺任務を依頼した側として、俺は君たちをプロ同士だと思っている。プロとして君達に支払うべき最低限の報酬は当たり前の中学生活を保障する事だと思っている!」

 

 と

 

 もし渚君がナイフを取らなくてもその時は鷹岡に頼んで報酬の維持をしてもらうように努力すると付け加えた

 

 渚君はナイフを取った

 

 鷹岡との対決が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は烏間先生に小声で質問した

 

 なぜ私ではなかったのかと

 

「お前からは嫌な予感がした。寸止めではなく普通に当てる危険な感じが……時折感情の制御が効かなくなるんだなお前は……」

 

 と……触手を植え付けられてから感情を隠すのが難しくなっているのを感じていたが、隠していても一定水準以上の人にはわかるものだな

 

 渚君は少し微笑みながら自然に普段と登下校の時のように鷹岡に近づき、鷹岡とほぼゼロ距離に接近し、殺気も無くいきなり襲いかかった

 

 油断していた鷹岡は大きく体を仰け反り、重心が後ろに傾いたので服を掴み引っ張ることで鷹岡は尻餅を付くように倒れた

 

 渚君は顔を左手で覆いながら後ろに回り、そのまま密着してナイフの背を鷹岡の首に当てた

 

 ロンメルはとても驚いた

 

 確かに殺気を消すのは渚君は上手かったが、本物を持っても全く物怖じせずかつ殺気の出し入れが上手い為に相手を怯ませることができた

 

 ロンメルも殺気を完全に消すことはできる

 

 死神時代の殺せんせーに習って気配を簿かすこともできる

 

 しかし、渚君はそれを才能のみでやってのけた

 

 私はバッと殺せんせーの方を見る

 

 殺せんせーはうんうんと頷いていた

 

 殺せんせーは渚君の才能に気がついていた! 

 

「末恐ろしい……暗殺の才能がこの教室に眠っていたとは」

 

 鷹岡は逆上して渚君に襲いかかったが、烏間先生が顎を殴り鷹岡を倒して止めた

 

「俺の身内がすまなかった」

 

 と皆に謝った後、浅野理事長が登場し、鷹岡の授業は暴力でしか支配できないのでは教育者としては3流だと言い、倒れていた鷹岡の口に解雇通知をねじりこんだ

 

「暴力でしか支配できず。さらに負けた者はこの学園の教員に相応しくない。以後この学園で教えることはできない」

 

 と鷹岡を追放した

 

 鷹岡は糞糞と叫びながら荷物を抱え逃げ出し今回の騒動は烏間先生の続投で幕を降ろした

 

 それと同時にこの学園の支配者は理事長であることを再認知するのだった

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