ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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イトナの時間 3

 夏……夏と言えばプールの季節

 

 暑さも本格化し、夏特有のジメジメした暑さが暗殺教室の皆にも襲いかかる

 

 本校舎の面々はクーラーの効いた涼しい環境で授業を受けられるが、オンボロ校舎のE組では暑さがダイレクトに来るため先生も皆もぐでぇーとしている

 

 ちなみにロンメルも汗を大量に流していたがキリッとこらえていた

 

「皆さんロンメルさんを見習いなさい。この暑さでもいつものように真面目に勉強に取り組んでいますよ」

 

「「「いや、殺せんせーがだらけきってるから説得力ねーよ」」」

 

「暑くない……わけじゃないでしょロンメルさんよ」

 

「暑い……暑いけど暑さを言い訳に勉強や暗殺を疎かにするのはいけないと思うんだ」

 

「真面目だねぇ」

 

「でも今日はプール開きだから体育の時間が待ち遠しいよ!」

 

「倉橋、そのプール開きだが俺達E組にとっては地獄だぞ……なんせプールは本校舎にしかないから炎天下の山道を1㎞往復して入りにいく必要がある。特にプール疲れしてから帰る山道は力尽きてカラスの餌になりかねぇし」

 

「うー、本校舎まで運んでくれよ殺せんせー」

 

「いくらマッハ20の先生でもできないこともあるんですよ……でも気持ちはわかります。仕方ない全員水着に着替えてついてて来なさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう。そこに涼みにいきましょう」

 

 と殺せんせーは言うが、裏山の沢は本当足首が浸かるくらいの深さで水かけ遊びくらいしかできなさそうな小さな沢である

 

「皆さんをプールに連れていくのに残念ながら1日かかります」

 

「大げさな20分あれば着くぜ殺せんせー」

 

「おや? 誰が本校舎に行くとでも?」

 

 昨日まではなかったプールがそこにはできていた

 

 小さな沢を塞き止め、自然を生かしたプールである

 

 幅も広く25メートルコートが2本と皆が遊べるスペース、木陰で休憩できるベンチとテーブルまで付いていた

 

「「「ひゃっほう!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ろ、ロンメルさんなにやってるの?」

 

「ん? トレーニング」

 

「凄い速さで泳ぐね」

 

「あー、うん、まあね」

 

(((元水泳部の学年代表の片岡さんより速いじゃねーか! というか平泳ぎで何でクロールと同速なんだよ)))

 

 髪やしっぽから粘液が少し出して防水しているが持って2時間であるため家近くに殺せんせーが作ってくれたプールで毎日トレーニングしているが、毎日2時間以内という制限がつく

 

 粘液の分泌が2時間以上泳ぐと間に合わずに髪やしっぽがふやけてしまうからだ

 

 ピー! と笛の音がした

 

「ロンメルさん皆のプールなのでコースの独占をしてはいけません!!」

 

 ピー! 

 

「木村君! プールサイドを走ってはいけません!!」

 

 ピー! 

 

「原さん、中村さん! 潜水遊びはほどほどに!!」

 

 ピー! ピー! ピー! 

 

(((こ、こうるせぇ)))

 

 殺せんせー自分がプール作ったから王様気分になっちゃってやたらとマナーの厳しい監視員になってるわ

 

「もう! 殺せんせーも遊ぼうよ! 水かけちゃえ!」

 

「きゃうん!!」

 

(((きゃ、きゃうん!?)))

 

 すかさずカルマ君が殺せんせーが座る監視員の高い椅子を揺らすと

 

「わぁ! カルマ君やめてください! 水に落ちる!!」

 

 あーあ、皆にバレたよ殺せんせー……泳げないことが

 

 殺せんせーは泳げない……正確には泳ぐことができるが粘液でコーティングしてないとふやけてしまう

 

 ロンメルは肌が有るため髪やしっぽだけに集中すれば良いが、殺せんせーは全身のために粘液の分泌量も多く、直ぐにふやけてしまう

 

 ふやければ本来のパフォーマンスが全くできず暗殺の可能性も多いに上がる

 

 皆殺せんせーは泳げないことを前提に暗殺を行うようになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 プール開きから数日がたち、プールが何者かに壊されるという事件が起きたが、殺せんせーが瞬時に直していつも通りのプールの授業が行われた

 

 これはおそらく寺坂君、吉田君、村松君の授業をよくバックレて暗殺にも消極的というかサボりをよくする者たちによる犯行だと思うが、犯人探しをしたところで時間の無駄なのでロンメルも普通に授業に参加する

 

 先ほどの3名に狭間さんを加えたグループを寺坂グループと皆言っている

 

 まぁどこのクラスにもいる不良グループである

 

 ただ寺坂君とはロンメルは喋らないが、吉田君と村松君、狭間さんとはロンメルも喋る

 

 吉田君は実家がバイク屋なので家にバイクコースがあり、私有地ということで吉田君もバイクを乗れるので併走したり、バイクの整備の仕方やパーツの事を習ったりしている

 

 村松君とは寺坂グループだと一番よく喋り、村松君の実家はラーメン屋でまぁ不味いのだが、村松君は実家を継いだら美味しいラーメン屋に立て直すのが夢なのでラーメンの研究を家庭科室でやったりしている

 

 その材料の買い出しをロンメルが関東を巡り、安い店や質の良い店から買い出して村松君や食べたり料理が大好きな原さんの3人でラーメンやそのサイドメニューの研究をよくしている

 

 ちなみにロンメルのチャーハンはとにかくパラパラでナルト、ネギ、チャーシュー、卵が組合わさり食通の殺せんせーを加えた3名の評価が

 

「滅茶苦茶うめぇ! いくらでも食えるぞこれ」

 

「チャーシューの味がチャーハンを引き立ててるし、ネギと卵がそれを邪魔しない……色合いも綺麗」

 

「ナルトがあることでピンク色と白色、チャーシューの茶色とネギの緑、そして黄色……とても食欲をそそりますねぇ……米は天のつぶですか! 福島まで取りに行ったのですか?」

 

「はい、チャーハンに合うと聞いていましたので取りに行きました」

 

 とチャーハンだけでなく餃子、小籠包、水餃子、ナムル、チャーシュー丼等を次々に開発

 

 村松君曰く

 

「このサイドメニューに負けないラーメンは相当ハードル高いぞ! 腕がなる!」

 

 と大張きり

 

 原さんは味玉にこっており、美味しいかつラーメンに合う味玉作りを研究していた

 

 狭間さんとは読書仲間で狭間さんからお勧めされる復讐物の小説やちょっとダークな小説等を読んでよく議論や考察をぶつけ合う中だ

 

 ちなみにロンメルは成り上がりや道中はどんなに暗くても最後はハッピーエンドの小説が好きである

 

 狭間さんもロンメルの好みに合ったのを教えてくれるので余計に熱が入る

 

 そんな3人だから殺せんせーやロンメル、原さんというワンクッションを挟むことでクラスの皆と比較的溶け込んでいるのだが、寺坂君だけは頑固にクラスと馴染もうとしない

 

 遂には殺せんせーと絡む皆がうざいと殺虫剤をばらまく始末

 

 殺虫剤を殺せんせーや皆、私も全身に浴びてしまう

 

「気持ち悪いんだよ! モンスターも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組も!」

 

 と吐き捨てて出ていってしまった

 

 

 

 

 

 

「へっくし! へっくし!」

 

「おや、ロンメルさん風邪ですか?」

 

 夜の勉強をプレハブ小屋でしていると鼻水が止まらなくなった

 

 教えている殺せんせーも鼻水が大量に出ている

 

「なんか今日の午後から不調なんだよね」

 

「うーむ、熱はなさそうですね」

 

「風邪なんか今まで1度もひいたこと無かったんだけどなぁ」

 

「とりあえず先生が調合した風邪薬を処方しておきますね。鼻水は止まると思いますよ」

 

「殺せんせーは?」

 

「私は薬嫌いなので飲みません。自然治癒に任せます」

 

「風邪拗らせて死ぬみたいな馬鹿な事はやめてよ」

 

「大丈夫ですよ。さて、この問題を解きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日寺坂君はあれだけの事をして普通に学校に来てまず殺せんせーにこう言った

 

「おいタコ、そろそろ本気でぶっ殺してやんよ! 放課後プールへ来い。弱点なんだってな水が」

 

 そして皆に

 

「テメーら全員手伝え! 俺がこいつを水ん中に叩き落としてやるからよ!!」

 

 しかし皆の目線は冷たい

 

 今まで皆と関わろうとせず、しかも皆との暗殺にも不真面目かつ参加もしない

 

 そんな人に協力しようとする物好きはいない

 

 寺坂グループの3人もここ数日で寺坂君と揉めたらしくもうついていけないと愚痴を言っていた

 

「皆さん行きましょうよ!! せっかく寺坂君が私を殺る気になったのですから!! 皆で暗殺して仲直りです!」

 

 殺せんせーは鼻水の粘液が止まらず……いや昨日よりも酷くなり、クラスの床を埋め尽くすほどびちゃびちゃお粘液を撒き散らしていた

 

 殺せんせーの為だと皆仕方なくプールに行くのだった

 

 

 

 

 

 

「よーし! お前らプール全体に散らばれ」

 

 対先生ナイフを持って皆をプールに入れるとプール全体に皆をバラバラにさせた

 

「なるほど先生を水に落として皆で殺る……しかし寺坂君、ピストル1丁では先生を落とせませんよ」

 

 寺坂君が持っているのはいつもの対先生弾を発射するピストルでは無いように思えた

 

 寺坂君が独自に改造したのかそれとも協力者でもいるのか……

 

 しかし、髪がふやける

 

 昨日の不調で粘液が大量に分泌してしまい、軽く浸かっただけなのに髪がぶよぶよにふやけ始めた

 

「覚悟はできたかモンスター」

 

「勿論できてますよ! 鼻水も止まったし」

 

「ずっとテメーのことが嫌いだった」

 

「ええ知っています。暗殺の後でゆっくり2人で話しましょう」

 

 寺坂君が引き金を引いた

 

 瞬間プールを塞き止めていた堰が爆発した

 

 私もとっさのことで対応が遅れ、激流に流される

 

「あぷ!? この先って確か!!」

 

 激しい岩場である

 

 溺れるか落下死が近づいてくる

 

 ロンメルの肉体は人に近い

 

 完全に変異していない為血を流しすぎれば死んでしまう

 

 勿論触手と呼吸により止血することはできるが、大量の水の中かつ岩に削られて体に大きな損傷ができた場合は触手は水を含み、呼吸は水を吸い込んでしまうのでできない

 

 つまりロンメルは慌てて動かせる触手を壁に掴もうとすると殺せんせーが慌てて助けてくれた

 

 陸地に置かれたロンメルは死ななかったことに安堵しつつも、殺せんせーが皆を助けるために速度を落として行動したために水を大量に含んでしまい……イトナが出現した

 

 全員をとりあえず水から引き上げたことに安堵した殺せんせーはイトナの触手に気がつくのに遅れ水に叩き込まれた

 

 しかもこの水普通じゃない

 

 髪のごわつきがただ水を含んだだけではなく弱っている……触手が

 

「昨日寺坂君がまいた殺虫剤……あれは触手から粘液を大量分泌させる成分がある。そして水には触手の動きを阻害する薬品を昨日寺坂君にプールに入れてもらった……さて、ロンメルさん、2つの薬品と水により動きが鈍った殺せんせーをイトナは殺せるでしょうか……ちなみに今回はイトナの触手の本数を減らして1本1本のパワーとスピードを上げたものとするよ」

 

「柳沢!!」

 

「おやおや助ける場所が悪いねぇ。生徒が1人今にも折れそうな木の枝に捕まってるよ。あの高さだ。下が水でも落ちればただじゃすまない。気が気でないだろうね。殺せんせーは」

 

「柳沢どこまでも外道な」

 

「さて、イトナ! そろそろ奴の心臓を殺れ! それでチェックメイトだ」

 

「待てよシロ!」

 

 すると寺坂君がシロこと柳沢の会話に割っては入り、殺せんせーとイトナの間に飛び込んできた

 

「イトナもだ! よくもテメーら俺を騙してくれたな」

 

「ただの連絡の行き違いさ。危ないよ寺坂君。なーに、君もクラスの皆とは浮いていたんだろ? いいじゃないか多少は」

 

「限度って物があるだろ! 一歩間違えれば何人も死んでたんだぞ! 許せねぇ! 来いイトナ! タイマンはりやがれ!」

 

「寺坂君!!」

 

「まぁ待てよロンメルさん、俺の指示だ」

 

「カルマ君」

 

「シロの目的は殺せんせーを殺すこと。生徒を殺すことじゃない。一見危なそうな原さんも殺せんせーが助ける機会を伺っている。ヤバくなったら自分の命より原さんを助ける……だから助けるきっかけを作れば良い。イトナは寺坂に注意が向いた。イトナも寺坂を殺すような威力の攻撃はしてこないハズだよ。まあ気絶するくらい痛いと思うけどね」

 

 バゴン

 

 イトナの触手が寺坂君の腹に直撃するが、寺坂君はワイシャツで触手をがっちり掴む

 

「くそ痛ぇが捕まえたぜイトナ!!」

 

「寺坂の奴昨日と同じワイシャツ着てたんだよ。だからワイシャツには昨日の殺虫剤の成分が染み付いている。それを直に受けたらイトナはどうなるかなぁ」

 

「くしゅん! くしゅん!?」

 

「ほら粘液が出るのが止まらなくなった」

 

「吉田! 村松! 飛び込め!! イトナに水をかけろ!!」

 

「「おう!」」

 

 寺坂君の号令で2人を筆頭に皆水に飛び込む

 

 イトナは大量に水を浴びてしまい触手がふやけてしまう

 

 殺せんせーは原さんを助け出してこれで両者有利不利は無くなった

 

「で、どうする? 俺らもあんたらに賞金持ってかれるの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけたし! ついでに寺坂もボコられてるし……まだ続けるならこっちも全力で水遊びするけど」

 

「……撤退だイトナ」

 

 柳沢とイトナは帰っていった

 

 この後皆寺坂君を責めたりはせずに強引ではあるがクラスの皆に溶け込もうと寺坂君も努力を始めた

 

 カルマ君の頭脳と寺坂君の行動力が噛み合うと触手を持つイトナですら倒せてしまう

 

 ロンメルは改めて役割分担の大切さ、長所を生かす大切さを2人から学ぶのであった

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