「シィィィィィ」
「ふむ、3000メートルラスト3ハロン33.9秒……良くなってきましたね」
「まずまずってところかな」
本格化に合わせてタイムが良化している
本格的に鍛えて約3ヶ月……肉体がようやく馴染んできた
筋肉の量も増え、超回復トレーニングを含めてようやくG1で勝負できる領域に入ってきた
「ナンバ式ストライド走法も形になってきましたので次の段階です……ロンメルさん駆け引きを覚えましょう」
「駆け引き……ですか?」
「はい、大逃げ逃げ先行差し追込……それぞれメリットデメリットがありますどれにどんなメリットデメリットがあるかわかりますか?」
「逃げは先頭で走るから自分のペースで走れるってことかな? あと全力を出し切るからスタミナを全部使える」
「はい、正解です」
「先行差しは前後のウマ娘……馬を使ってマークしたり、動揺させたり技が使いやすい?」
「半分正解です……が、先行は他の馬にブロックされづらく逃げの次にレースの展開を握ることができます。逃げと先行の馬はコースロスが少なく済むのも特徴です。一方差しは後方からレース全体の流れを読む事ができます。圧力をかけることによりレース全体の流れを速めたり、有力馬をマークして最後の直線まで体力を温存させやすいのも差しです。追込は瞬間最高速度が一番強い馬でないと勝てません。馬の能力が突出していたり、レース全体を支配できるカリスマや威圧感、そもそもゲートが下手故に追込にならざる得ない等欠点ありきの脚質とも言えます……例外もいますがね……で、先生から見たロンメルさんの脚質は……ズバリ! 大逃げです」
「大逃げですか?」
「はい、圧倒的なスタミナで皆さんを磨り潰す……道中ペースを緩めて二段階ロケットするのでも良し……逃げは良いですよ」
「それ殺せんせーが逃げ馬が好きなだけじゃ?」
「にゅにゃ! そ、そんなこと無いですし!!」
「図星かよ……大逃げか、試してみる価値はあるね」
「ただし大逃げをやる場合大逃げしかできなくなります」
「なぜですか? 他の脚質に切り替えれば良いじゃないですか」
「大逃げは大逃げでしか使えないスキルが沢山あります。ロンメルさん、それを覚えていきましょう」
「はい!」
ロンメルの脚質が大逃げに固定された
夏休み!
夏と言えば……地獄の特訓
ロンメルは更なる肉体を求め山籠りを決行
低酸素の場所で肺を更に鍛え全集中の呼吸の練度をあげにかかる
瓢箪の代わりにペットボトルを代用品とし、どんどん息を吹き込んで破裂させていく
そして走る! 走る! 走る!!
ロンメル自らが作った特殊なマスクを着用し、更に呼吸を困難な状態で走りまくる
山にテントを張り勉強や理事長に言われた宿題をしていく
殺せんせーと相談した結果、理事長なら全集中の呼吸のデメリットを理解した上で教育に役立てるでしょうと言われたので教えることにした
そんな山籠りを1週間行い、無駄な肉を極限まで落とし、そこから大量に食事を取り、筋トレと超回復トレーニングで筋肉をつけていく
一段と大きくなった肉体、8つに割れた腹筋、顔よりも太い足……
「とりあえず形にはなったか」
ゴワゴワの髪の毛を櫛でとかしながら鏡で肉体を写し、ポーズを決める
「さて……勉強しよ」
「にゅにゃ! ロンメルさんその肉体どうしたのですか!?」
今日は殺せんせーに射撃を教わる日
久しぶりに見たロンメルの姿に殺せんせーは驚愕した
「極限まで筋肉を削った後のマッスルメモリーによる回復、全集中の呼吸による超回復の促し、触手細胞による身体細胞の修復の置き換え……握力は500キロを超え、全身の筋力も大幅に上がった」
「す、素晴らしい! 良く頑張りましたねロンメルさん」
「ええ、殺せんせーを殺すために頑張りました……射撃を今日は教えてください」
「わかりました。みっちり教えてあげますからね! ヌルフフフ」
水で落ちるペイント弾を使用し、殺せんせーが的を持ち、いきなり現れる的にロンメルは射撃していく
射撃の際に動きが悪いと殺せんせーの分身がここが悪いと指摘してくれる
「ロンメルさんは射撃の際には呼吸を更に浅くした方が良いでしょう。全集中の呼吸だと射撃に必要なリラックス状態とは程遠い。あとロンメルさんは座撃ちの際にはあぐらの方が良いでしょう」
「こうですか?」
「そうですその方が安定する人もいるのです」
射撃とは反動をいかに殺すかである
正しい姿勢であればあるほど射撃の勢いを受け流して殺す事ができる
パンパンパン
「ヌルフフフ、ロンメルさんの動体視力は触手の改造を受けた事によりマッハ20に対応していますからね! 射撃の際にもわかるでしょ。撃った瞬間にこの弾は当たらないとか、この弾は当たるとか」
「はい、見えてます」
「よろしい。射撃は自身の正しい姿勢がわかればあとは風や気候などの情報と弾道を計算……まぁ極論を言えば経験です。経験が有ればあるほど射撃は当たるようになりますから」
「はい!」
「よろしい、ではスピードをあげますよ!!」
8月に入り、沖縄での暗殺旅行の訓練と計画を煮詰める為に隔離校舎のグラウンドに皆集まった
「あれ? ロンメルさんは?」
「いや、まだ来てないけど」
「ごめんお待たせ」
「遅いぞロンメルさん……!?」
「「「!?」」」
ロンメルの姿を見た皆の顔が仰天する
一回り……いや、二回りほど大きく膨らんだ全身筋肉ロンメルを見て驚愕する
「ろ、ロンメルさん?」
「凄い筋肉……夏休み入ってまだ2週間だよ! 変わりすぎ」
「しっかり鍛えたんで」
「「「鍛えすぎだろ!」」」
「ほう、良い筋肉だ……一切の無駄が無い」
そう言ったのはロヴロさん
ビッチ先生の暗殺の師匠でもあり、日本政府が唯一持っている大物暗殺者を繋ぐ斡旋業者の大物とも言える人物だ
彼自身も昔は大物暗殺者として世界に名を轟かせており、凄い人である
6月頃にビッチ先生の進退をかけた勝負もしたっけ
まぁそんな人が今回暗殺の臨時講師をしてくれることとなった
「射撃の基礎はできている。自分なりに姿勢を改良し、適した形になっているのもベストだ」
「走り方も音が出ない走り方ができ、更に皆よりも早く動ける……足が早いというのは近接から長距離暗殺、脱出の確率まで上げられる素晴らしい才能だ」
「ナイフのモーションの時もっと脇を絞めろ、次の一撃の威力が上がる」
やはりプロなだけあり色々と有益な情報を教えてくれる
ちなみにロヴロさんが一番評価したのは千葉君と速水さんだった
千葉君も速水さんも主張が強くなく結果で語る仕事人タイプであるが、千葉君は空間計算に長けており、遠距離射撃は並ぶ者が居ないスナイパーである
速水さんは手先の器用さと動体視力のバランスが良く、動く標的に当てる能力に長けていた
両者が射撃に関してはロンメルの目標であり、ロヴロさんも彼らを自身の弟子にしたいと言うほど評価していた
そんな中、ロヴロさんは渚君に【必殺技】を伝授していた
彼から見たら渚君の暗殺者としての才能に気がついたらしい
殺せんせーも前に
「恐らく暗殺者としては渚君が一番伸びるでしょう。天賦の際を持っている」
「確かに殺気を殺す技術や自身の命を賭けたりする胆力は見事だと思うけど」
「ヌルフフフロンメルさんも人を見る目が甘いですね。彼は油断させることが上手い。鷹岡が来た時もそうだったでしょ。彼の本質は油断からの一刺しですよ」
「なるほど」
ロヴロさんと渚君の様子を盗み見ていた私も【必殺技】の発想は無く、確かに有益な情報であり、隠れてこっそり練習を始めた