ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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島の時間 1

 椚ヶ丘中学校

 

 特別夏期講習

 

 一学期において成績が最も優秀なクラスに沖縄二泊三日の夏期講習の権利を与えるものとする

 

 講習期間中の行動は自由

 

 ホテルと提携しているサービスについては、利用料金は学校負担とする

 

 ……つまり遊び放題、食べ放題、飲み放題! 

 

 東京から飛行機と船を乗り継いで6時間

 

「「「島だ!!」」」

 

 沖縄での暗殺教室が幕をあけた

 

「……で、なんでロンメルさんもグロッキーになってるの」

 

「カルマ君達と人狼ゲームしたんだって……修学旅行の時と同様に頭使いすぎてグロッキーだと」

 

「学習しねーな……」

 

「お、おお……頭が割れる」

 

「先生は船酔いで死にそう……」

 

「修学旅行初日の旅館で見たぞこの光景」

 

 

 

 

 

 

 

 修学旅行の時の班に別れて自由行動が始まった

 

 パラグライダーをやる班、イルカを見る班、海底洞窟巡り……昼食も含めて目一杯遊んだ

 

 遊びながら夜の暗殺に向けて準備を入念に行っていく

 

 殺せんせーと遊ぶ班以外は狙撃スポットの下見、トラップの設置、ホテルとの機材を借りるための交渉等やるべき事をやっていく

 

 そして夕方……貸し切りの船上レストランにて料理が出されたところから暗殺が始まる

 

「なるほどたっぷりと船で酔わせて戦力を削ごうと」

 

 磯貝君が代表して答える

 

「はい、これも暗殺の基本の1つですから」

 

「実に正しい! ですがそう上手く行くでしょうか? 暗殺を前に気合いの入った先生にとって船酔いなど恐れるにたりず!!」

 

 そうどや顔で殺せんせーが言うが、日焼けして全身真っ黒で前か後ろかもわからない姿で言われても説得力が全く無い

 

「表情どころか前後すらわかりませんよ殺せんせー」

 

「ややこしいからなんとかしてよ」

 

 と皆でケチをつけると殺せんせーは月に1回の奥の手の脱皮を使いいつもの綺麗な黄色に戻る

 

「あっ」

 

 殺せんせー自分のドジに気がつく

 

「バッカでー、暗殺前に自分で戦力を減らしてやんの」

 

「どうして未だにこんなドジ殺せないんだろう」

 

 

 

 

 

 

 結局船酔いでグロッキーになった殺せんせー、そして暗殺の会場になったのはホテルの離れにある水上パーティールーム

 

 そこでまず精神面から殺す暗殺が始まった

 

 三村君が編集した動画を見たあと8本の触手を破壊し、それを合図に皆で一斉に暗殺を始める

 

 殺せんせーは席に座り動画上映が始まる

 

 それはもう殺せんせーの恥ずかしい映像である

 

 例えば殺せんせーがエロ本の山の上でニヤニヤしながらエロ本を読んでいる映像だったり、女子大生を見かけてはメモを取っており、それをこっそり見ると大学名が書かれており、気に入った女子大生がどこの大学かわかるようにしているなど先生以前にクズである映像、牛肉チェーン店でやたらと紅しょうがを取ると帰ってかき揚げにして食っていたりと晒される悪行というかみみっちい事の数々……1時間

 

「死んだ……もう先生死にました。あんなことやこんなこと知られてもう生きていけない……」

 

 船酔いプラス精神攻撃……更に

 

「み、水!? 誰も水を流す気配など無かったハズ!?」

 

 満潮を利用した水のトラップ

 

 水が床に張るように小屋の支柱を短くして……

 

「さぁ本番だ! 約束だ殺せんせー」

 

 本命が始まった

 

 パパパパン

 

 8発の弾丸が殺せんせーの触手を撃ち抜く

 

 そして動揺した瞬間に小屋の壁が剥がれ、フライボードを利用した水の檻が完成する

 

 更に倉橋さんがイルカを手なずけ周りをいっぱい飛び回らせ、数人がホースにより水を散布する

 

 水圧の檻班、水散布班、千葉君と速水さんの本命のための掩護射撃として弾幕を張る班……そしてトドメの2人

 

 速水さんと千葉君の射撃ポイントが割れないように陸地の別ポイントに匂いを染み込ませたダミーまで作り、水中から顔を出して射撃が行われた

 

 殺せんせーに当たったと思われた次の瞬間、殺せんせーは閃光となり爆発した

 

 が、私には見えていた

 

 殺せんせーが当たる直前に体を思いっきり小さく縮め何か膜を作ったのを

 

 水中に浮く殺せんせーの顔が入ったオレンジと透明の野球ボール位の球体

 

「皆さんよくぞここまで先生を追い詰めました! これぞ先生の奥の手中の奥の手……完全防御形態!!」

 

「「「か、完全防御形態!?」」」

 

 透明に見える部分は高密度のエネルギーの結晶体らしく、殺せんせーの肉体を思いっきり縮め、余分になったエネルギーを肉体の周囲にがっちり固めたとのこと

 

 この状態になると殺せんせーは無敵モードで、例え核爆発ですら無傷で耐えることができるのだとか

 

「ただ、この形態も24時間経過すると自然崩壊します。その瞬間先生は体を膨らませエネルギーを吸収して元に戻ります。裏を返せば24時間先生は全く身動きが取れません」

 

 殺せんせーはこの形態中に高速ロケットで宇宙の彼方に捨てられるのだけを恐れていたが、そんなロケットが地球上に現在存在しないのも確認済みと用意周到であった

 

 つまり……完敗

 

 クラス全員の渾身の一撃が失敗した

 

 ロンメルは悔しかったと同時に安堵した

 

 この程度で死神は死ぬはずが無いと計画段階から悟っていたし、まだまだ殺せんせーに教わりたいことは沢山あったのでこれで良いとすら思えてしまった

 

 しかし皆は違う

 

 殺せんせーは世界の軍隊でもここまで追い込めなかった、誇って良いといつものように褒めてくれたが、落胆は隠しようが無かった

 

 

 

 

 

 

 

 ガツガツガツ

 

「ろ、ロンメルさんは元気だねぇ」

 

「夕飯食ったろ……まだ食うのかよ」

 

「なーに皆落ち込んでるんだよ。殺せんせーだよ? 殺せないから殺せんせー、奥の手はわかったんだから次の一手を用意するのみ」

 

「でもよ……疲れたわ本当」

 

「だな~……落胆もあるが凄い疲れた」

 

 ロンメルは気がつく

 

 一部のメンバーの呼吸が明らかにおかしいことに

 

「渚君よ……ちと肩貸しちゃくれないかい?」

 

「な、中村さん!! 凄い熱だ!!」

 

「明日こそ水着のギャル見るんだ! 想像しただけで鼻血ごば!? ……いや? ……あれ?」

 

「岡島!?」

 

 バタンバタンと呼吸がおかしかったメンバーが次々に倒れ始める

 

 この島には小さな診療所しかなく、当直の医者も夜は別の島に帰ってしまうらしい

 

 戻ってくるのは明日の10時以降

 

 岡島の事を支えたロンメルは額に手を当てる

 

「うひょー、ロンメルさんの胸が当たって……」

 

「38……いや39度ってところか……スタッフさん、すぐに布団を用意して、皆はマスクを!」

 

 明らかにおかしいが、とにかく対処療法をするしかないと医者の家系の竹林君と理系で薬学に少し知識がある奥田さんとチームを組み、大丈夫なメンバーとホテルのスタッフに指示を飛ばす

 

 すると烏間先生の電話に非通知の着信が入る

 

「何者だ? まさかこれはお前の仕業か?」

 

『ククク、最近の先生は察しが良いな。人工的に作り出したウイルスだ。感染力はやや低いが一度感染したが最後……潜伏期間や初期症状に差はあれど、1週間もすれば全身の細胞がグズグズになり死に至る。治療薬も1種類のみの独自開発でね……あいにくこちらにしか手持ちが無い』

 

 ボイスチェンジで声を変えた男が話してくる

 

 烏間先生は電話をスピーカーにして皆に聞かせる

 

 薬が欲しければ動けない殺せんせーをクラスで一番背が低い男女が持って山頂の普久間島リゾートホテルの最上階までに1時間居ないで持ってこいとのこと

 

 持ってこなければ治療薬を爆発すると付け加えて

 

『勿論外部との連絡や1時間を1秒でも遅れた場合即座に治療薬は爆発する。礼を言うよ。よくぞターゲットを行動不能に追い込んでくれた』

 

 まず普久間島リゾートホテルは普久間島の他の全うなホテルとは違い国内外のマフィアや暴力団、それらと繋がる財界の大物が出入りしており、私兵や厳重な警備のもと違法ドラッグや商談、ドラッグパーティーが連夜開かれているらしい

 

 警察はこのホテルをマークしているのだが、与野党問わず政治家とのパイプもあり迂闊に手出しできないのだと

 

 寺坂君はこんな要求突っぱねてすぐに九州や本土の大病院に送った方が良いと提案するが、竹林君が

 

「もし人工的に作った未知のウイルスならどんな大病院にも治療薬は置いていない。対処療法で応急措置はしておくから急いで行った方が良い」

 

 と提案

 

 しかし、身長の一番低い2人だと渚君と茅野さんであり、人質を増やすだけだと意見が別れる

 

 烏間先生もリスクを考えて発言できなくなっている

 

「良い方法がありますよ。病院に逃げるより、大人しく従うより……律さんに頼んで下調べは終わりました。反撃の時間です」

 

 殺せんせーは私達に反撃を提案した

 

 

 

 

 

 計画はこうだ

 

 普久間島リゾートホテルの正面には大量の警備員が居ること、フロントを必ず通る必要から気付かれずに侵入は不可能

 

 故に裏口を使う

 

 裏口は絶壁の裏にあり、まず侵入不可能な地形故に警備員が置かれておらず、律が電子パスワードを解析し、ロックを外せるとのことなのでそこから侵入が可能だ

 

 患者10名と竹林君、奥田さんの看護役2名の12名以外の15名とビッチ先生、烏間先生加えた17名+律さんによる奇襲により治療薬を奪取することこそが最適だと提案した

 

 烏間先生は危険すぎると提案を却下し渚君と茅野さんに行かせようとしたが、他のメンバーは行く気まんまんで、崖も普通に突破可能であった

 

「烏間先生、指揮をお願いします」

 

「烏間先生! ふざけた奴らにきっちり落とし前つけましょうよ」

 

「「「烏間先生!!」」」

 

 烏間先生も覚悟を決めた様だ

 

「注目! 目標山頂ホテル最上階! 隠密潜入から奇襲の連続ミッション! いつもと違うのはターゲットのみ! 1950より作戦開始」

 

「「「おう!!」」」

 

 ロンメルは殺せんせー暗殺に使えないかと持ってきた殺せんせーからもらった殺影月を背負う

 

「おいおいロンメル修学旅行の時の木刀なんで持ってきてるんだよ。置いてけよ」

 

 皆には修学旅行の時に高校生から奪った木刀だと説明していたが、抜刀するまでわからないだろう

 

「今回はあった方が良いと判断したからだよ寺坂君」

 

 すいすいと壁を登っていく

 

 戦国時代、鬼殺隊時代そして現代でも鍛えた登坂能力を遺憾なく発揮し、するすると山を登る

 

 一番に山を登りきったロンメルは殺フォンに入った律に非常扉のロックを解除してもらう

 

『ロックを解除しました』

 

「OK律」

 

 潜入ミッションが始まる

 

 

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