ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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島の時間 2

 裏口から全員侵入し、階段を使って3階まで上がる

 

 律が監視カメラをハッキングしてくれたお陰で侵入はやりやすくなっているが、律でもホテルのシステムを全部はハッキングできないらしい

 

 ブロック化された暗号システムは時間をかけるか律をスマホからコードで直接繋ぎハッキングする方法しかない

 

 更にこのホテルはテレビ局の様にテロリストに占拠されにくい作りとなっており1階のロビー、3階の中広間、5階の展望回路、6階のテラス、8階のコンサートホール、そして10階の目的地

 

 エレベーターが使えれば楽なのだが使えばターゲットにバレるため今回は使用しない

 

 さて侵入早々最初の難所ロビーである

 ロビーには複数名の警備員やスタッフが居るため見つからずに進むのはまず普通なら不可能である

 

 ロンメル1人であればなんとかできるが、皆が居るためどうするかと悩んでいると、ビッチ先生が

 

「何よ、普通に通ればいいじゃない」

 

 と言ってロビー前に出ていった

 

 ふらふらと酔っ払った風に見せ、さりげなくスタッフと接触

 

 ロビーにあるピアノに目を付け、自身は来週ここでピアノを弾く予定のピアニストだと嘘を付く

 

 スタッフも全てのスケジュールを把握しているわけでもなく、日替わりで別のピアニストが来る為に顔を覚えているスタッフもおらず、するすると侵入し、ピアノを弾くことでスタッフの注意を集めた

 

 そしてピアノの腕前はめちゃくちゃ上手い

 

 腕前だけじゃない見せ方も上手い

 

 言葉巧みにスタッフや警備員の視線を釘付けにし、更に近くに来て聞いてと要望することでスタッフの位置を私達に有利になるように変更する

 

 ハンドサインで20分稼ぐから早く行きなさいとビッチ先生から指示が飛ぶ

 

 私達は足音を立てないでロビーの非常階段を使い上の階に登る

 

「優れた殺し屋ほど万に通じる。彼女クラスになれば潜入暗殺に役立つ技能ならなんでも身に付けている。君らにコミュニケーションを教えているのは、世界でも1、2を争うハニートラップの達人なのだ」

 

 と烏間先生がビッチ先生をこう評価した

 

 なるほどなるほど、ビッチ先生から今度楽器や躍りでも習おうか……ウイニングライブで恥ずかしい思いはしたくないし

 

 とロンメルは思うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーを抜けてしまえば客のフリをすればすんなりと通ることができる

 

 このホテルには金持ちのボンボン達が幼い頃から薬、タバコ、酒と悪い遊びをしているらしいので中学生の団体客でもバレないと殺せんせーは断言した

 

「でもよ、烏間先生以外にも中学生には見えないのがいるよな」

 

「夏休みで大化けした……」

 

「……? 私?」

 

「「「中学生の体格じゃないよ!!」」」

 

「身長も伸びたよね? ……春から5センチ位伸びてるよね?」

 

 現在の身長165cm、体重95kg……デブではない

 

 全身筋肉である

 

 そんなくだらない事を話していると3階の中広間に到着する

 

 先頭には烏間先生が警戒していた

 

 が、寺坂君と吉田君不用意に前に出てしまう

 

 客の1人がこちらに歩いてくる

 

 殺気を感じた

 

「「寺坂君そいつ危ない」」

 

 不破さんと声が被る

 

 私は咄嗟に前に出て吉田君の体を引っ張る

 

 寺坂君は烏間先生に体を引っ張られる

 

 すると客の男は懐から携帯ガス噴出機を取り出し、私と烏間先生が煙に包まれる

 

「ゴホッゴホッ……ガスか!」

 

 男と距離を一旦とる

 

 烏間先生はガックリと膝から崩れそうになる

 

「烏間先生」

 

 私は烏間先生の体を支える

 

「よく気がついたな。殺気を見せずにすれ違いざまに殺る……俺の十八番だったんだが」

 

「殺気が僅かに漏れていた。心音、呼吸、足の運びかたに違和感あり」

 

「ほう、ガキの癖に流石だ……いや、もう一人の怪物か。なるほどな……おかっぱのガキはなんでわかった」

 

「おかっぱじゃなくてボブだし……だっておじさんホテルで最初サービスのドリンク配ってた人でしょ」

 

 ロンメルはダウンしていたので知らないが、皆は島に来て最初にサービスのドリンクを飲んだらしい

 

 竹林君が感染源は飲食物に入ったウイルスからと皆に説明しており、皆が食べたのは最初のドリンクと船上ディナーの時だけ

 

 しかし、ディナーを食べずに殺せんせーを精神的に殺す映像を編集していた三村君と岡島君が感染したことから感染源はドリンクのみに限られる

 

「従って犯人はあなたよ! おじさん!」

 

 名探偵不破さん爆誕

 

「く!?」

 

「どうやら男には効いてきたみたいだな一瞬吸えば象すら気絶させる物だ。外気に触れれば直ぐに分解して証拠も残らない……やはり化物には効かないか」

 

 ロンメルは肺に入る前に空気を一旦触手細胞でフィルターにかけている

 

 これは酸素と二酸化炭素を効率よく分けるための物だが、今回はそれがたまたま毒物のガスに適応された

 

 男が2撃目をしようとした瞬間、ロンメルは男の顔面を蹴り気絶させた

 

「ロンメルさん大丈夫?」

 

「うん、平気」

 

「く!」

 

「「「烏間先生!!」」」

 

「すまない。立って歩くのが精一杯だ。戦闘ができるまで30分かかるかもしれん」

 

 気絶した男をモニュメントの裏に隠し、男の服を探り使用していない携帯ガス噴出機を奪い取る

 

「カルマ君」

 

 私はカルマ君に噴出機をパスする

 

 彼なら上手く使うだろうと

 

 さて、問題は司令官である烏間先生が戦闘離脱したこと

 

 矢田さんと磯貝君の肩を借りながら歩く

 

「ロンメルさん、あなたが指揮をとりなさい」

 

「殺せんせー?」

 

「影に隠れて来ましたが、あなたの統率能力を見せる場面です。先生方が頼れない今、あなたが指揮をとるのです」

 

「……皆力を貸して」

 

「「「おう!!」」」

 

「ヌルフフフ、しかし夏休みって感じになってきましたね……先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは先生の保護が及ばない自立性を養う場でもあります」

 

「大丈夫だ。普段の体育で学んだ事をしっかりやれば……そうそう恐れる敵はいない」

 

「君達ならクリアできます。この暗殺夏休みを」

 

 殺せんせーの特徴として勉強は手厚くやってくれるが、体育だけは容赦がない

 

 今回の体育……潜入奇襲ミッションもだいぶ無茶だ

 

 だが……こんな経験沢山ある私にとって問題は無い

 

 久しぶりに人を使う事をするが、二学期に向けての復習だ

 

「まず、次に私なら展望回路に見張りを置く。展望回路では奇襲が不可能な立地だし、ちょうど10階の中間……で、敵は暗殺者を使ってくると思う。警備員の可能性も高いが、ロヴロさんが前に凄腕の暗殺者が何名か連絡が取れないと言っていたのでたぶんさっきのガスおじさんみたいなのが何名か雇われてると思う。次の展望回路でもし暗殺者を見張りに使っているのなら敵のボスは暗殺者の使い方をわかってない素人になる」

 

「よって彼らはアウェーで戦っていることになるから付け入る隙が必ずある! よろしく皆」

 

「「「お、おう!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 展望回路に居たのは殺し屋だった

 

 見通しの良くかつ狭いので奇襲は不可能

 

「出てこいぬ。足音でわかるぬ」

 

 殺し屋は窓ガラスを手でひび割れた

 

 とんでもない握力である

 

 やたらと語尾にぬを付ける外人であるが、足音でこちらの数を把握する能力や、彼の十八番である暗器の握力

 

「近づいて脛椎を一捻り、その気になれば頭蓋骨を砕くことも可能だぬ」

 

 ただ彼は暗殺の能力を鍛えれば鍛えるほど暗殺以外……すなわち闘争をしたくなるらしく、強い者との戦闘をしたいとのこと

 

「スモッグのガスで教員は戦闘不能、怪物だけが私の心を満たせそうだぬ……殺らないかぬ?」

 

 ロンメルは着ていたシャツを脱いで上半身は下着だけになる

 

 バリン

 

「人間の握力はギネス記録が191……200が理論上MAXだとされている。しかし、とある呼吸を使い日々鍛練を繰り返すことで250までは超えることができる」

 

「ぬ」

 

 ロンメルが窓ガラスに触れて日々を入れた大きさが明らかに目の前の殺し屋のそれより3回り位大きかった

 

「握力約500キロ……ウマ娘の身体能力と特殊な鍛練により可能にした強靭なパワー……お相手いたそう」

 

 ロンメルは刀を床に置き、素手対素手の勝負が始まる

 

「名前は?」

 

「グリップと呼べぬ」

 

「私はロンメル。いざ勝負」

 

 ロンメルは手刀で素早くグリップの携帯を叩き壊した

 

 彼は勝負の隙をついて増援及びボスへの報告を行おうとしていた

 

 任務優先のプロの暗殺者らしい動きである

 

 それを私は素早く封じた

 

 続いて素手同士による攻防だが、ロンメルの方に軍配が上がる

 

 身体能力単体でロンメルに勝つためには格闘技がよほど優れてなければならず、グリップも強いが、握力優先の攻撃となるため簡単に防ぐことができる

 

「ぬぅ!?」

 

 グリップが私の腕を掴んだが、150キロ程度の握力でダメージが入るほど柔な筋肉はしていない

 

「まるで鋼鉄ぬ!?」

 

「筋肉の質も違ってくるんだよ」

 

 掴まれた腕をこっちが掴み返す

 

「ぐぎゃぁ!?」

 

「万力で潰すようだろ……腕そろそろ折れるよ」

 

 ピシピシと嫌な音が聞こえてくる

 

 私は可愛そうなので足払いからの寝技に持ち込み

 

「油断したぬね」

 

 グリップは懐に隠していたガスを使う

 

 スモッグが使っていたガスと同じらしいが、あいにく私には効かない

 

「なぬ!?」

 

 ドンと腹部に足で蹴りを入れる

 

 肋骨が数本折れる音と衝撃でグリップは気絶し勝負は着いた

 

「皆縛るの手伝って」

 

「全くスゲーなお前は」

 

 展望回路を突破し更に上へと進む

 

 

 

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