ビッチ先生が来なくなってから3日が経過した
ただロンメルも麦の収穫でこの日ばかりは休むと殺せんせーや皆に連絡していた日の事だった
夕方になるまで麦の収穫と格闘していたロンメルは律からメッセージが届いていることに遅れながら知った
なんでもビッチ先生が死神という殺し屋に拐われたらしい
律から送られた画像を見るに両手足を縛られたビッチ先生が箱に詰められている画像と死神を名乗る男からのメッセージがついていた
『初めましてロンメルさん。私は死神と呼ばれる殺し屋です。手短に言います。彼女を助けたければ先生方や友達達には言わずに指定された場所に来てください。もし来なければ彼女の命はありません。そして彼女の次は君のお友達の誰かの命がありません。恐れる無かれ死神の名を』
という胸糞悪いボイスメッセージが添えられて
ロンメルは体操服に着替え、殺影月を持ち、準備を整えると指定された場所に向かった
「さて、死神の名を騙る不届き者に天誅を下し、ビッチ先生を助ける……ふぅぅ、どうやら私は思っているよりビッチ先生が好きな様だ、皆の事が好きな様だ……まだ1年も経過していないのに戦国の世みたいに濃密で、大正の時のように学びがある……そして殺せんせーこと死神の事が私はよほど好きらしい……どうやら私は触手を植え付けられたことにより繋がりというものに餓え、さらには手にした仲間のことを誰一人失いたくないと思っているらしい……」
ロンメルは走り始めた
まるで炎の渦が走った後に見えるように速く、美しい走りであった
夜の7時を回ったくらいにロンメルはその場所に到着した隠れながらぐるっと一週見て回る
「私はロンメル。一之太刀を極めし者……透けて見えてしまうのだよ」
地下に皆がなぜか捕らわれている
恐らく私とは別口に皆を誘き寄せて捕まえたのだろう
「ここか……霸の呼吸 壱ノ型 月水爆」
刀を振るう
その瞬間空気中の水分が刀から発せられるエネルギーにより水素爆発が発生する
ポポポボボボボン
小さな音から大きな破裂音に変わりそして大爆発が発生する
ガラガラガラと瓦礫が地下空間に落ちる
「「「ロンメルさん!」」」
「おや? 建物から侵入してくると思ったんだけどまさか天井を破って来るなんて思わなかったよ。コンクリートの壁だよ」
「……皆無事?」
「大丈夫それより目の前の奴が死神!」
「ビッチの奴死神と組みやがった。俺達を囮に殺せんせーを呼び込むつもりらしい!」
「ふーん、なるほどねぇ……」
バチン
目の前で何かが破裂した
「クラップスタナー……猫騙しの進化系さ」
「……で?」
ロンメルは何事もなかったかのように刀を振るうが、偽物の死神はそれを華麗に避ける
偽物の死神は波長や呼吸、気配を上手く誤魔化してロンメルが認知できないようにしているが、ロンメルには五感が1つでも生きていれば透き通る世界に入れるため効かない
「貴方がもし最高の死神であるのならば、私は最高の武士だ。侍ではなく武士だ。犬畜生より劣る存在であり、犬畜生より頭が良く、そして最終的に勝利すれば良い者である……故に死神を名乗る偽物よ……友を人質にする貴様を私は許さない」
「そうかい。残念だ……君のクラスメイトの首には爆弾を取り付けていてね、ランダムで誰かの首輪が爆発するようになっているんだけど……残念だ」
彼がスイッチを押す前に私は触手で皆の首輪の爆弾を解除する
ボン
外した1つが空中で爆発する
「ろ、ロンメルさん……その触手は……」
「イトナ君が私を姉と言った意味と同じだよ……私も触手を植え付けられた者であり、全身に触手細胞が他の細胞と同化している……さて死神……どうする?」
「ふむ……正面から殺り合うのは不利らしい。一旦振り出しに戻そう」
パカリと私の足元が開く
「!?」
パパパパン
私が触手で地面を支えようと動くと偽死神は私の触手を正確に撃ち抜いた
そして刀にも弾丸を当てて吹き飛ばそうとする……が
「無意味」
極細の触手を刀に巻き付け変形させる
「月の呼吸 壱ノ型 闇月 宵の宮」
スパンと壁に傷をつけてそこを足場に上に登ろうとする
パパパン
実弾と対先生弾を織り交ぜ触手を撃ち抜き更に私の指を的確に潰しに来ている
「……仕込んでおいて良かった」
ロンメルは靴を改造しナイフを仕込んでいた
「霸の呼吸 弐ノ型 水導線」
ボンと壁が爆発を起こして道を作る
上は偽死神が天井を塞いだので移動はできない……仕方がない
別ルートで移動するか
「律、この施設のルートを」
『えー、働きたくない……死神様に逆らうとか……電源落とすわ』
ハッキングされてる
「ちっ! フゥゥゥゥ」
呼吸を整える世界を透き通し、見ていく
至るところに爆弾やトラップが仕掛けられており迂闊には動けない……
「とは思ってないでしょうね」
ロンメルは髪の毛と同じ太さの極細の触手を操り、トラップを解除していく
ドアの隙間を触手を通して解除
鉄骨が振り落とされるのを受け止め、足が止まったところをクロスボウによるほぼ無音の射撃を片手で掴み取り、さらにクロスボウと連動した爆弾が破裂するや否や髪の毛や尻尾の触手で爆風や瓦礫を吹き飛ばす
「そもそもだ、聞こえているかわからないが偽物の死神よ。私が知る最高の殺し屋であればあの様なまどろっこしい事なとせずに死んでいたハズだ……いや、偽物では無いか……死神二世さんよ」
ワイヤートラップを避けたり、爆弾を解除しながら更に上を目指す
ここで電話……というか殺フォンに備わっている無線が反応する
『にゅにゃ! やっと繋がりました』
「殺せんせー今どこに」
『すみません、先生も不覚を取り皆さんと同じ牢屋の中です』
「……つかまったんかーい!」
『今烏間先生と死神が交戦状態になりました。死神はこの地下牢で捕らえている皆ごと約1000tの水の放水で窒息及び圧死させる気です。先生用に牢は対先生物質と鉄の複合素材でできており、他の皆さんを傷付けないように脱出するのは難しい。ロンメルさん、烏間先生と協力して死神の作戦を破綻させてください。そしてビッチ先生を助けましょう』
「わかった……でも烏間先生が動いたとなれば私は要らないかもね」
上の階でも爆発音が聞こえ出した
恐らく烏間先生がトラップを解除している音だろう
「……確かに偽物ながら死神を名乗るだけのスキルはある。身体能力、技術、頭脳……どれをとっても一流だろうが……怖さが全く無い……いや、私が殺られるというビジョンが見えない」
ドゴンと壁を破壊する
「やはり死神の名を名乗れるのは殺せんせーだけだろう」
大きな爆発音が響いた
どうやら部屋1つでも吹き飛ばしたのかもしれない
その音の方向に向かいとビッチ先生が座っていた
「……」
「あら、ロンメルじゃない……もう警戒しなくても良いわ……烏間に助けられて目が覚めた」
「……はあ……まぁ私には殺気や悪意なんかは人一倍敏感だから貴女が騙そうとしていないことぐらいはわかる……乗って、背負うので地下に行きましょう」
背負われながらビッチ先生は自分の境遇を語ってくれた
田舎の村に住んでいたビッチ先生は内戦が発生して突如村は戦場となり、家族を皆殺され、ビッチ先生は父親の拳銃を民兵に偶然当てることができ、民兵と自身を地下室に隠れて難を逃れたとのこと
その時のゆっくりと民兵の体温が下がっていく感覚と血の匂いは今でも頭にこびりついているそうだ
村はビッチ先生以外全滅し、そこにロヴロさんと部下の女性が来てスカウトされたとのこと
部下の女性とロヴロさんに教わり暗殺術を磨き、最初に村を襲った司令官を、次に内戦を操っていた黒幕を暗殺した
自身の復讐を完遂したビッチ先生は暗殺の依頼を受けることができるほどに成長しており、そこからはプロとして暗殺任務を完遂してきたとのこと
「なるほどなるほど……で、ビッチ先生は死神に平和ボケしている日本の中学生と血に塗られた自身の差を感じさせられて裏切ったと」
「ええそうよ軽蔑したかしら?」
「いや、甘いよ。甘ちゃんだよビッチ先生……ビッチ先生のスコアが確か15くらいったよね……私よりも100分の1以下だよ」
「へぇ、あんた1500人以上殺ったの? 嘘も大概にしなさいよ」
「嘘じゃないさ。言ったでしょ……私は異世界の民だ。異世界で何千と殺してきた……が、ただ無力であると痛感したことの方が多い……自身の息子が殺された時、愛する人が暗殺された時、知り合いや同僚が無惨にも殺された時……沢山の人を守ったと同時に沢山の敵を殺しついた渾名は大妖怪……人食い妖怪だよ笑っちゃうね……20そこらの若者が達観するなよイリーナ先生よ、60過ぎてる婆が中学生に混じって勉強してるんだから!」
「え? あんた60過ぎてるの?」
「肉体年齢は15だけど異世界分を合わせたら60は超えてるよ……」
さて偽物の死神と烏間先生の戦いは……烏間先生の勝利か
所詮偽物は偽物……本物と比べれば弱者でしかない
牢屋は私が刀で斬って壊した
さて、皆から質問が飛んでくる
「ロンメルさん……イトナから聞いたんだけど」
「……触手を植え付けられたら想像も絶する痛みを感じるって……何でそう平然としていられるの?」
「……私は君達がシロと呼んでいる柳沢により全身の細胞を改造された……触手を後付けで植え付けられた者では私はない……この様に私は触手と髪の毛や尻尾が触手となっているから色も変えられる……これは殺せんせーみたいだよね……私は分類的には殺せんせーと同じだ。力を解放すれば殺せんせーと同じ姿になれるし、月を破壊するエネルギーすら持っている」
「じゃ、じゃあロンメルさんももしかして賞金がかけられていたりするんですか?」
「ええ、私の賞金は殺せんせーの半額……現在は集団暗殺成功時には150億の懸賞金がかけられています」
「な、なら俺らはロンメルさんも殺らなきゃならねぇのか?」
「YesでありNoでもあるよ岡島君……もし殺せんせーを殺せても第二の殺せんせーである私が殺されない限り政府は安心できない。そして私の命は来年の4月13日で終わる予定だ。私は生き残る手段を必死に模索しているし、もし私が殺せんせーを殺せた場合政府は私が生き残る手段を考えてくれるそうだ……」
「な、なら俺らが殺せんせーを暗殺したら……」
「ロンメルさんが暗殺されちゃう……」
「まぁ死ぬのは怖くないんだけどね。私は死なないから」
「「「え?」」」
「どういうこと?」
「律には話したんだけど私は異世界を渡る能力がある。トリガーは死んだ時、条件はその世界で何かを成した時……恐らく世界から懸賞金をかけられるって言う偉業ができている時点でその条件は達成されてると思うんだ」
「でもそれじゃあ私達とは二度と会えないじゃん」
「やだよ私……ロンメルさんともっと遊びたい」
「楽しい時間はいつかは終わる……こんなに平和な世界は私達が巡ってきた世界では珍しい……だから長生きしたいんだけど無理なら無理なりに割り切るしかないよね」
「でも……」
「薄々わかってるんだよ。もし殺せんせーを私が暗殺しても暗殺されることが……超生物1人がどこかの国に加担したら世界のパワーバランスが崩れるでしょ……だから皆には殺せんせーを全力で暗殺して欲しい、私も全力で暗殺をするから」
「ロンメルさん……」
「さて、じゃあ殺せんせー……こんな死神襲来という事件が発生したけど明日決闘を申し込みたい。放課後、グラウンドにて……ダメかな?」
「良いでしょう。その決闘を受けましょう。勝敗の条件は?」
「どちらかの心臓を潰した方が勝ちで良いでしょ……それが手っ取り早い」
「ええ、わかりました」
「お、おい! 殺せんせー! ロンメルさん殺すのかよ」
「受けないでよそんな条件……ロンメルさん死んじゃうよ」
「ロンメルさん、私はあなたを殺さない。それだけは約束しましょう」
「わかった。けど私は恩師であるからこそあなたを殺すことにする……よろしくね殺せんせー」