咲-Saki-消えゆく京- 作:フェンリルK
今回はいつも見てくださる読者様にお礼を籠めて、麻雀描写に気合いをいれてみました。
作者は麻雀は素人なので、間違っていたらすみません。
それから、今回は長めなのです!
最後に活動報告にて、選択肢がありますので、よろしくお願いします。
「‐‐‐‐尭深とか?」
照さんは癖毛《ホーン》をピコピコさせながら言う。
「なるほど。……でも、今は授業中だと思いますけど?」
俺がそう言うと、照さんは……そうかと言いながら、再び考え込む。
その間に、俺は両手を組ながら思考する。
他校の人は東京に来ているため、大丈夫だが、そもそも面識が全然無い人達ばかりだ……。
「……あっ! そうか、衣さんなら、なんとかしてくれるかもしれない」
俺は善は急げということわざに従い、携帯を取り出して電話帳を確認する。
そこには、いつの間にか登録された衣さんの番号があった。
………多分、ハギヨシさんの仕業であろう。
俺は迷わず、その番号に電話をかけた。
プルルという音が鳴る間もなく、ノータイムで電話は繋がった。
『もしもし、きょうたろう? どうかしたのか?』
電話の主はもちろん、衣さんだ。
「あのですね……、良ければなんですが、他校の人とは面識ある人いますよね?」
『うむ、確かに面識あるぞ? それがどうかしたか?』
衣さんは不思議そうな声音で俺の問いかけに答える。
やっぱりな。確か、俺がいなくなる前に部長が合宿って言っていたから間違いなかったと思ったら、ビンゴだ。
「それでですね、その他校の人と、リハビリを兼ねた練習試合をしたいのですが……」
俺が遠回しに、遠慮気味に話すと、衣さんが笑った。
『フフンッ、構わない。きょうたろうのためなら、お姉さんである衣に頼るが良い!』
ポンッという音が電話越しから聞こえてきた。
おそらく、……ミニなおもちを張っているんだろう。
そんな光景を想像すると、なんだか微笑ましくて、俺はクスリと笑顔になる。
「……なるほど」
一方で、照さんは何かを思い付いたかのようにスマホを取り出して、誰かに電話していた。
『では、人が見つかり次第、衣が連れてきてやろう』
「ありがとうございます!」
『フフッ♪ ではな〜♪』
プツンっと電話は切れたため、俺は携帯を胸ポケットに仕舞う。
はぁ……病院の服にもポケットがたくさんあれば良いのになぁ。
「‐‐‐‐ふむふむ、ありがとう。それじゃあすぐに向かう」
照さんの方も電話が終わったようだ。
「京君。練習相手が見つかった。行ってくる」
そう照さんは短く俺に告げると、スタスタと歩いて、病室を出ていった。
「………よし。なら、私はタカミン救出大作戦をしてこようかな〜!」
いつの間にか、淡はサングラスをかけて、凛とした声音で俺に言う。
ちょ、マジか!?
「お、おい! 淡……」
「じゃあ、いってきます!」
俺が嫌な予感がして、淡を引き留めようとしたが、時既に遅し。
淡は病室の窓から飛び降りた………………ここは、一階だけど。
「……はぁ。なんか大人数になりそうだな」
俺は菫さんの胃に穴が開かない事を祈りながら、白糸台総合病院のパンフレットを見る。
パンフレットには様々な情報が載っていた。
曰く、ここの手術は成功率100%だ。
曰く、ここには『私、失敗しないので』という口癖のフリーの凄腕美女の女医がいる。
等々、余りにもアレな情報が盛りだくさんだが、次のページを見て、俺は度肝抜かした。
「ま、麻雀ルーム!?」
なんと、ここには入院患者のために用意した、個室タイプや団体でやるためのサービス付きのVIPルームもあるらしい。
おい、これは……なんか病院としてはどうなんだ? って思いながらも、俺は内心喜んだ。
ラッキーだ。ここでなら、病院から出ずに、ゆっくりとリラックスしながら麻雀が打てそうだが……。
費用が……十人タイプのプランで一万はするらしい。
しかも無制限。
なんという学生の懐に優しい値段なんでしょー………………
「って! 金取るのかよ!?」
俺は思わず突っ込んだ。
「……アンタ大丈夫?」
……いつの間にか入ってきていた、先生らしき女性が俺のツッコミを聞いていたようで、可哀想な人を見るような目で俺を見てくる。
「……大丈夫です///」
俺は恥ずかしさから、顔を赤くしながら先生(?)に答えた。
「あっそ。なら早く上着脱いでくんない? 検査するんだかさ」
「あ、はい」
俺は先生に急かされるままに、上着を脱いだ。
恥ずかしさは無い。
「はーい。じゃあ熱を測って〜」
先生はそう言って、胸ポケットから体温計を取り出して、俺の口に突っ込んだ。
「ん……」
「うんうん。素直な子は嫌いじゃない……。次は心臓に異常が無いか調べるから、鼻で深呼吸してー」
先生は首にかけていた、聴診器を俺の胸に当てる。
「吸って」
「すぅ〜〜〜」
俺は息を限界まで吸う。
「吐いて」
「はぁ〜〜〜」
そして、息を吐いた。
それをした後、先生は『OK』マークをした。
「うん。今日は大丈夫そうだね」
先生は満足したように、コクコクと頷いている。
「あの……」
俺はそんな先生に訪ねたい事があるため、呼び掛ける。
「ん? なーに?」
先生は不思議そうにしながら、俺の顔を覗きこむ。
「この病院では、麻雀ルームというのがありますよね?」
「まぁね。このご時世は麻雀が好きな人が多いから、作ったみたい」
確かに麻雀の競技人口は一億人を突破する程に人気だ。
まぁ世界の人口は七十億人はいる訳だから、ほんの一部な訳だし、サッカーの競技人口は約二億五千万は超えているらしいから、まだ世界で一番人気なものではない。
だが、メジャーと言えるぐらいの数ではある。
「それなんですが、今日って一部屋空いてます?」
俺がそう聞くと、先生は驚いたように目を見開いた。
「へぇー、須賀も麻雀するんだ」
「『まだ』弱いですけどね」
俺は『まだ』を強調しながら話す。
そう……、俺はまだまだ弱い。照さんや淡達の足元にも及ばないぐらいに。
だけど、俺は強くなってみせる。
何故なら、照さん達は一緒に隣を歩いてくれているからだ。
彼女達はもっと先に行ける資格を持っているのに……………。
だから……強くなりたい。
「……良い目してるじゃん。頑張ってね、じゃあ一部屋開けておくから」
「えっ!? ちょっ、ちょっと……「あ、そ・れ・か・ら」」
先生は言うだけ言って立ち去るのかと思いきや、戻ってきた。
「君には特別サービス、無料にしておいてあげる♪」
先生はウインクをしながら、立ち去っていった。
そして不覚にも、可愛いと思ってしまった。
「……良い目、か」
そして、最後ら辺に言っていた言葉が俺の胸に突き刺さって離れなかった。
三十分後。
時間は経って、現在俺がいる場所は団体用の麻雀ルーム。
そこには目を疑う程のビックメンバーが揃っていた。
「怜ー。練習試合とはいえ、大丈夫なん? 無理に能力使用はアカンよ?」
「……大丈夫や、多分」
竜華さんは怜さんに膝枕をしながら心配の眼差しを向けるが、怜さんは曖昧に答えた。
そう、あの! 名門千里山のエースである園城寺怜さんと、部長である清水寺 竜華さんの二人が照さんの誘いを受けて来てくれたのだ!
なんでも、高校代表として東京に来たのは良いが、せっかく沢山の強豪校が集結しているので、練習試合を検討していた時に照さんから連絡があったみたいだ。
俺は怜さんと竜華さんの微笑ましい光景を見ながら和む。
べ、別に竜華さんのおもちに目を奪われている訳じゃないんだからね!
「あら、貴方は清澄の……」
……っと、そこへ俺に声をかけてくる人物が現れた。
俺は振り返ると、なんと風越の部長であり、実力はエースと言っても過言ではない人、福路美穂子さんがいた!
「あ、いえ。正解には元清澄です。今は白糸台に在籍しています」
俺はなるべく丁寧な口調で、美穂子さんの言葉を訂正する。
「……そうなんですか。白糸台に転校したんですね。衣ちゃんからは話を聞いているわ。今日はよろしくね」
美穂子さんは俺なんかにも、ニコッと優しい笑顔を向けてくる。
「は、はい。よろしくお願いします!」
俺は動揺から、少し吃りながら頭を膝にくっつく程に垂直に下げた。
「す、凄く身体が柔らかいのね!」
美穂子さんはキラキラした目で俺を見てくる。
「あはは……」
俺は若干苦笑い。
「‐‐‐‐‐‐」
……そして、先程から俺の方をジィーーっと見てくる少女がいた。
確か、東横桃子さん……だった筈だ。
「こんにちは」
「………私が見るんッスね」
「へ?」
桃子さんは突然そんなような事を俺に言う。
「私……。ステルスモモって自称するぐらいに、消えるような影の薄さには自信あったッス」
桃子さんは少し嬉しそうに……、しかし怪訝そうな表情をしながら俺に話す。
……和なら、真っ先に言うだろうな。そんなオカルトありえません。略して『SOA』と……。
「俺は……消えるとか良く分からないが、お前は確かに今、俺の目の前にいる。だから言わせてもらう! …………SOA!」
……決まった。
俺はドヤ顔で桃子さんに言うと、桃子さんはプルプルと震えていた。
「……ップ! あはははは!!!! 君って、おっぱいさんみたいなセリフ言うのに、面白くておっぱいさんとはやっぱり違うッスね」
桃子さんは爆笑して、腹を抱えながら笑った。
「あはは。やっぱり俺には和のセリフは似合わないか?」
「そうッスよ! 良い意味でッスけどね。私は東横桃子。モモで言うッスよ」
「ああ! 俺は須賀京太郎だ。俺も京太郎で良いぞ」
「む、長いッス」
桃子さん……モモに釣られて、俺も自己紹介をすると、モモが唸りながら言う。
何かを考えている様子で、俺も、俺の隣にいる美穂子さんも首を傾げる。
「あ! ならなら、私は京さんって呼ぶッス。なんだか渋くてイカさないッスか?」
モモは目を先程の美穂子さんより輝かせながら自慢するように、俺に詰め寄る。
「あ、ああ。良いんじゃないか?」
「え、ええ! 私もそう思うわ」
俺と美穂子さんは空気を読んで頷く。
そして、俺は美穂子さんとモモとで自然な流れでアドレスを交換した後、他の方を見ていた。
「尭深さん!」
「あ、京太郎君」
次に俺が見かけたのは尭深さんだ。
俺は尭深さんに駆け寄る。
「尭深さん、どうしてここに……?」
「えっとね。淡ちゃんが、『怪盗100年生、参上!』って言いながら、私は説明もなく連れてこられた……」
え”!? ……俺は内心驚いていた。
まさか、本当にやるとはな……。
まぁ、淡のあの感じからだと冗談は言ってなさそうだから、読めてはいたけどな。
「あ、あはは……」
「………」
俺は菫さんの事を考えると笑うしか無かった。
尭深さんは笑い事では無い、死活問題だと言いたげにしていた。
次に俺は、これまた凄い人達がいる所に行った。
「ウフフ。今日は小蒔ちゃんの地力を少しでも上げるための良い機会だから、沢山打ちましょうね?」
「あ、はい! 頑張ります!」
……主におもちが。
いや、麻雀の実力も凄い人達なんだ。
片方の名前は神代小蒔さんで、去年のインターハイでは衣さん、三箇牧高校で去年の全国の二位の荒川憩さんと並んで、別格の一年生として挙げられていた雀士の一人なのだから。
さらに、照さん、衣さんと同じく『牌に愛された者』だからな………。
……もう一方の名前は岩戸霞さん。
永水高校麻雀の部長であり、俺が見てきた中でも、トップクラスのおもちだ。
……ハッ! いかんいかん。煩悩滅却。
彼女は鉄壁と言っても良い守りと、刹那に見せる圧倒的な火力を持ち合わせたオールマイティーな雀士らしい。
……ある程度強くなって気付いたんだけど、彼女達は対局中のを見る限り、妖夢みたいな人成らざる者を宿してるっぽいんだよなぁ。
いや……宿してるというか、その時限定? 降ろすって言い方がしっくりくるな。
とにかく凄い雀士なのだ。
「あらあら、先程から私達に熱い視線を向けてくるのは、貴方かしら?」
「あ、はい!?」
ヤバい。余りにも思考にふけってたから、視線が霞さん達のおもちに固定されたまんまだった……。
怒ってるかな。
「ウフフ。私は別に怒ってる訳じゃないのよ? ただ……少し視線が情熱的だったのが、気になっただけなのよ」
霞さんは微笑みを浮かべながら、俺に話す。
なんだ、安心した……。
「まぁ、小蒔ちゃんに手を出したら…………ウフフ♪」
霞さんは微笑むだけで、それ以上何も言わなかった。
なんか逆に恐ろしい!
「は、はい。分かってます!」
「あ、あの……。貴方が須賀京太郎さんですよね?」
突然、霞さんの背中に引っ付いていた小蒔さんが、俺に声をかけてきた。
「はい。そうですけど?」
俺は思わず首を傾げずにはいられなかった。
何で俺の事を知っているのかが、不思議だったからだ。
「……び、病気なんです……よね?」
「っ!?」
何で……小蒔さんが俺が病気という事を知っているんだ……。
小蒔さんの呟きに、俺は驚きの表情を隠せずにはいられなかった。
「……やっぱり、シロちゃんの言った通りだったんですね」
「シロちゃん?」
聞き覚えのない名前だ。
「私……シロちゃんに誘われて来たんです」
「……ダルい」
「うわっ! いつの間に!?」
小蒔さんと霞さんの後ろに椅子にもたれ掛かっている少女がいた。
「あ、あの時の人…… 」
インターハイ会場の休憩室で、俺が休んでいた時に入ってきた、ダルそうにしていた少女だ。
また、俺の命の恩人でもある人だ。
「………確かあの時は自己紹介してなかったね。ダルいけど、自己紹介する。……私は小瀬川白望……。」
「あ、はい。俺は須賀京太郎です」
白望さんは自己紹介をしてくれたので、こちらも自己紹介をした。
すると、白望さんは『ダルい……』と言いながら、立ち上がって、他の所に歩いていった。
「……そ、それでですね。私は医療などは分かりませんが、東京にいる間は力になりますので、よろしくお願いします!」
小蒔さんはペコリと頭を下げた。
……凄く優しい人なんだな。
初対面の相手にここまで言ってくれるなんてな。
「で、では私は打ってきますので、良かったら勝負してくださいね」
そして、そのまま小蒔さんと霞さんは怜さん達がいる方向へ歩いていった。
さて、残るは顔見知りばかりだな。
「京君。私、頑張った……」
ソファーで照さんは疲れた様子で座っていた。
俺は照さんの隣に座る。
「簡単に言ってましたけど、千里山さんを連れてくるの、大変だったんじゃないですか?」
照さんが俺のために、千里山さんを連れてきてくれたのは嬉しかった。
でも、それが照さんの負担になっているなら、それは俺にとってはつらい事だ。
「ん、大丈夫……。少し千里山の監督を『説得』に時間がかかったけどね」
んーっと照さんは腕を伸ばしながら言う。
「そうなんですか……」
「そうなんだよ。さてと、じゃあ打とうよ」
照さんはやる気満々だ。
心無しか、最初から右腕がスクリュー状態な気がする……。
とりあえずは、怜さん、小蒔さん、照さん、そして俺という面子でやるんだけど………いきなりヤバいな。
いや、集まってくれた人は全員格上なんだけど、その中でも凄い面子だ。
「……始めよう」
照さんが真剣な眼差しで俺を見ながら宣言した。
東一局 親:照 ドラ:{東}
親は照さんになり、順番は照さん、怜さん、小蒔さん、俺という形になった。
「………」
「………」
「……えっと、はい」
小蒔さん以外の人は黙々と牌を切っていく中、次は俺の番だ。
京太郎の配牌
{二二五六七⑤⑦⑨189北北}ツモ{3}
……うん。奇跡かってぐらい配牌は悪くないな。
京太郎:打{⑨}
数巡後
京太郎の配牌
{二二五六七①⑤⑦789北北}ツモ{⑥}
よし張った。……だが、これだと最高で満貫だが、俺には和了れるか分からない。
だが、関係ない。
「リーチ!」
{横①}
俺は千点棒を置いて、リーチ宣言する。
照さんは最初の一局のみ、見に入るため問題は無し。
他の怜さんや小蒔さんもテンパイしている気配は無いため問題ないだろう。
何より、テンパイしたからには、絶対に和了したいしな。
そして、終局間近に……
「ツモ! リーチ、ツモ、役牌、1000と2000です!」
{二二五六七⑤⑥⑦789北北北}
よし、なんとかに和了だ!
中々の好スタートだな。
京太郎:25000→29000
照:25000→23000
怜:25000→24000
小蒔:25000→24000
東二局 親:怜 ドラ:五
今回は怜さんという強敵が親だけでなく、照さんも動き出すから、ここからが本番だな。
数巡後
「リーチ……」
{横白}
怜さんの先制リーチだ。というか怜さんってリーチの時に点棒を立てるけど、あれっ地味に凄いな……。
「……えっとえっと、これ!」
小蒔:打{9}
小蒔さんの捨てた牌を怜さんはスルー。
「はふぅ……」
あからさまに安堵したように、小蒔さんはソッとおもちを撫で下ろす。
というか……。
「小蒔さん。それ、現物だから全然安牌だよ」
俺が言おうとした時に、照さんが安堵していた小蒔さんに言う。
「ふぇぇ!?」
ガーンという効果音が付きそうな程に小蒔さんはショックを受けていた。
だが、場が和んだのも束の間だ。
何せ、怜さんがリーチしたのなら、ほぼ確実に一発が付くはずだ。
京太郎の配牌
{二三①②④⑦⑧⑧889南西}ツモ{發}
だが、俺の今回の配牌は悪いものだった。
まぁ、{八}が二枚くれば三色などが狙えるんだがな。
「……ふぅ」
怜さんの捨て牌の中には發があったため、現物が出来てそのままツモ切り。
京太郎:打{發}
「ポンだよ。京君」
「あ、はい」
ここで、照さんが鳴いた。
{横發}{發}{發}
「………」
照:打{①}
照さんは黙って{①}を捨てた。
そして照さんが鳴いた事により、再び俺のツモ番だ。
これで流れが変わってくれたら、良いんだけどな。
ツモ{六}
くっ、{六}か……。いらないけど、これは多分怜さんの和了牌だ。
何故ならこれは、怜さんがツモるはずだった牌だからだ。
だから…………
京太郎:打{南}
これを捨てた。
「ロン」
「照さん……っ!」
だが、俺の捨てた{南}は照さんの和了牌だったみたいだ。
「發のみ、1000」
{一二三①②③234南南}{横發}{發}{發}
「っ!!」
そして怜さんは照さんの和了りに心底動揺している様子だった。
俺は照さんの独壇場になるかと思っていた。
京太郎:28000
照:24000
怜:24000
小蒔:24000
東三局 親:小蒔 ドラ:{一}
「………Zzzz」
あ、小蒔さんが寝息をたてながら、寝ていた。
「こ、小蒔さ……っ!?」
俺は小蒔を起こすために手を伸ばして肩を揺らそうとした時…………、それは悪寒だった。
「…………」
小蒔さんは目を開けた。
すると、彼女の瞳は茶色から紫の瞳へと姿が変わった。
そして俺は直後に感じた…………この人はヤバい、危険だ。
いや、正確には小蒔さんにとりついた者が危険なんだ。
「………」
「………ッッ!?」
小蒔さんの瞳を見ていると、心臓が握る潰されるイメージが思い浮かび、自然と冷や汗が流れる。
「………ツモ」
パタリと、手を使わずに超能力なのか、勝手に倒れた。
「……天和」
{一一一②③④567東東東白白}
「なっ……」
――――天和。
四槓子、純正九蓮宝燈に並んで、非常に和了り難い役満として知られている。
その確率は33万分の1…………、都市伝説としては、天和で和了った者は死ぬとも言われているほどだ。
「……何なん? 照よりも滅茶苦茶やん……」
怜さんは怯えぎみに、重たい空気の中そう呟いた。
「……神を降ろした」
そして、あの照さんまでも俺と同じように冷や汗を流していた。
「…………」
コ”コ”コ”コ”コ”という音が聞こえてきそうな程に、小蒔さんのオーラは強大だ。
「……とにかく次だ」
俺はそう言いながら、牌を倒した。
{一四八①⑤⑨39東西北白中}ツモ{南}
九種九牌……。これもそのナニカの仕業なのか……?
小蒔:24000→72000
京太郎:28000→12000
照:24000→8000
怜:24000→8000
東三局1本場 親:小蒔 ドラ:{②}
俺は小蒔さんを見ながら思った。
――――あんなに他人に優しく出来る女の子も、麻雀ではこんなにも怖くなるんだな。
確かに今の小蒔さんの姿はナニカの仕業なのは分かっている。
だけど、それでも怖いと少しだけ思ってしまった。
そんな自分が物凄く嫌で、対局中なのに自己嫌悪に陥って集中力が乱れる。
小蒔:打{北}
照:打{北}
怜:打{南}
次は俺の番だ。
京太郎の配牌
{一二六七④⑤789南北白發}ツモ{白}
今回は良好な配牌だな。
京太郎:打{北}
数巡後。
「……リーチ」
照:打{横一}
照さんがリーチをかけた。
怜さんはベタオリしていて、俺はもう少しでテンパイになるため、粘っている。
{一五六七④⑤789南白白白}ツモ{②}
くっ、よりによってドラか……。
正直、{②}を頭にするのは得策じゃない。
だから、下手に抱えたりすれば、命取りなはずだ。
だが、{②}は余りにも捨てるには危険過ぎる。
……まぁ明らかに危険牌なんだよな。
「だけど……っ!」
京太郎:打{②}
パシンッ!!! っと少し強めにツモ切りした。
「……」
照さんはスルー。
小蒔さんは見向きもしない。
怜さんに関しては既にオリているため問題ない。
「……ふぅ」
俺は思わず、気が抜けそうになる。
だけど、まだ終わりじゃない。
まだまだ危険は残っているからな。油断は決して出来ないし、したら間違いなくトビだ。
それぐらいの面子である事を再認識するために、俺は周りを見渡す。
外野では、皆が黙って俺達の麻雀を見ていた。
問題は面子だ。
照さん……、言わずもがな女子インターハイ最強。
怜さん……、一巡先を読む力を持っている。
小蒔さん……、現在進行形で、凄まじい力を見せている。
油断要素なんて一欠片もない。
頑張らないと……、負けるわけにはいかない。
照さん、淡、菫さん、尭深さん、誠子さん、衣さんの想いに答えるために……っ!
キュィィンッ!
な、何の音だ?
急に変な音が聞こえてきた。もしかして、小蒔さん?
『違うよー。君の想いに私は答える。進化したんだよ。君の力、和了った点数を次の局で倍にする能力。さらに―――――――』
―――――――――――― 途中経過
――――――――――――
・京太郎の能力に覚醒フラグがたちました。
・清澄との仲直りフラグ2
――――――――――――---途中経過を終了します――――――――――――