咲-Saki-消えゆく京-   作:神狼K

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お久しぶりです。もう忘れ去られたと思いますが、個人的な事情で、時間がとても空いていたので、自分に何かできることはないかと思っていたら、自分の作品を読み返してました。

そしたら、書きたくなったので書きます。

寒い自分語り、失礼しました。

これからも、ちょくちょく亀更新となりますが、またよろしくお願いします。

今回は三人称に挑戦してみました。

ではどうぞー( ノ;_ _)ノ


地面に埋もれても咲き誇る花(中編)

ふとした些細なきっかけから突如始まった交流麻雀。

 

打っている面子は麻雀歴が一年にも満たないド素人の男、須賀京太郎。

 

インターハイ二連覇という絶対王者として高校女子麻雀界に君臨している宮永照。

 

()()()()により神を降ろして、その身に憑依させ文字通り、神の如き強さを発揮する姫、神代小蒔。

 

未来を見通す能力を持ち、病弱ながらも鋼の如き意思を持ち戦う、千里山の裏エース、園城寺怜。

 

彼、彼女らが織り成す奇跡の闘牌が今始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南一局 親:照 ドラ{東}

 

折り返し地点、東は終わり、南一局が始まった。東局では京太郎の親倍、照の倍満をトップ目の小蒔から直取りしたことにより、圧倒的な点差が逆転し、順位が大きく入れ替わった。

 

怜もまだ一度も和了っておらず、東三局での和了のチャンスを逃しているが、まだ彼女の実力からして、このまま最下位に甘んじる訳がないので、巻き返しを虎視眈々と狙っている。

 

照の親から始まる南一局の第一打はなんとドラの{東}であった。強気な切り出しに、京太郎はいよいよギアをあげてきたか、と悟った。

 

『これは京君への、私からの試練』

 

(この局は本当に一番大事なところだ。最後までトップでフィニッシュする為には、この照さんの親、必ず断ち切る)

 

京太郎は照から耳打ちされた意味深な言葉を思い出しながら、山から牌を掴んだ。彼の肝心の最初の配牌である。

 

京太郎の配牌。

 

{一五九①②⑦3379東南南}{西}

 

(な、なんだこりゃ……っ!?)

 

京太郎の配牌は最悪であった。まるで清澄高校時代に戻ったかのような見慣れた酷いものだったが、これでもなんとかやっていくしかない。

 

いや、むしろこの配牌はどのように切っていけば、遅れを取り戻せるか知っているではないか。何せ、麻雀を始めた頃からずっと、このような調子でやってきたのだから。

 

後ろ向きな気持ちになってはいけない。リスク管理は必要ではあるが、決して心で三人に負けてはいけないのだ。

 

ただでさえ、自分は実力が他者より遥かに劣っていて、運も大して無いし、技術だって半人前、いやそれ以下なのだ。

 

京太郎は{五}を切り飛ばした。安全に行くのではなく、攻めることを選択したのだ。

 

(この配牌を整えていたら、時間が掛かりすぎる。それなら、チャンタ、または混一色を狙うしかない)

 

「カン」

 

「え?」

 

{横五}{五五五}

 

この時、京太郎は逃げずに攻めることを選択した。確かに点差を縮められており、尚且つ、神に体を乗っ取られた小蒔を救わなければいけないという状況下の中では攻めることは大切なこと。

 

むしろ、それがないとお話にすらならなかった。

 

しかし、彼は考えすぎるあまり、一つ懸念を忘れていた。それは……照は前局で倍満を和了している。つまり、次に和了するとすれば、それは京太郎に大ダメージを与える一手。

 

新ドラ牌は……{四}、つまりはドラは{五}ということになり、彼女の鳴いたのは{五}であるため、ドラ四が確定する。

 

そうして照が取った嶺上牌は……{二}だった。

 

「ツモ」

 

照が牌を倒した。

 

照の配牌

 

{二三三三四四四六六六}ツモ{二}{横五}{五五五}

 

「嶺上開花、タンヤオ、対々和、三暗刻、清一色、ドラ四……数え役満」

 

「……っ!!」

 

京太郎はまるで照にドリルで心臓を貫かれたような気分だった。それくらいに衝撃と精神的ダメージが強かった。

 

それは思わず、胸に手を当てて風穴が空いてないか確かめるくらいにリアリティーのあるものだった。そして、京太郎には確かに見えていた。

 

彼女の左腕に竜巻のような風が集まり、ドリルのように鋭い武器となり、それがやがて病室全体を包み込む台風の目になっていた。

 

この場は今まさに完全に照という一人の絶対的魔王に支配されているということ、そしてもう一つ変化があったのは、今まで大人しく口数の少なかった小蒔の口角が三日月のように歪んでいたのだ。

 

「……人間にしてはやるようだな」

 

それは普段優しい小蒔から出た声とは思えない冷たくて低いものだった。口調も明らかに本来の小蒔とは程遠い。

 

そこには確かに神がいた。

 

京太郎もまた死の淵をさ迷い、能力の精霊のような存在、妖夢と出会い能力を手に入れた。小蒔の場合は姫として、神々と同調して、神を降ろして強大な力を発揮する。

 

それがどういう訳か、こうして神の人格が表に現れてしまう程に深く小蒔は眠りについている。

 

それが、今起こっている現象の正体、その片鱗。

 

「貴様、ただの人間の雄でありながら、外的に能力を宿す者よ。貴様の中に宿る精霊と我が同調したことにより、こうして表に出られた。感謝してやる」

 

(同調?)

 

『京太郎、私という存在を通して貴方が能力を使うのは、ある意味、あの神代小蒔と原理は似ているんだよ』

 

そこに京太郎にしか見えない精霊、妖夢が現れて京太郎に説明をする。

 

そう、彼は精霊を通して能力を行使するのと同じように、小蒔の場合は神を通して強力な雀力を発揮していた。

 

だが、現在の状況は照が断言した通り、神によって小蒔の体は乗っ取られてコントロールが効かなくなっている状況である。

 

目には目を、歯に歯を、と同じように似ている京太郎によって小蒔を倒して神から解放するのだ。

 

(やるしかない、小蒔さんがこうなったのは俺のせいでもあるみたいだし、必ず助ける)

 

京太郎はヒリヒリとした空気を肌で感じながらも、その折れることの無い強い意思を胸に、小蒔を真っ直ぐと見つめてそう改めて決意した。

 

 

 

 

京太郎:50500→2500

 

 

 

小蒔:30500

 

 

 

照:25500→73500

 

 

 

怜:9500

 

 

 

 

南一局一本場 親:照 ドラ:{南}

 

親である照が自動麻雀卓のサイコロを回すボタンを押して、コロコロと回り始める。そこから山牌の開口が決まり、親から順番に牌を取っていく。

 

そして配牌が終わって、それぞれが自分たちの自牌を確認しようと、目を向けたその時……小蒔以外の三人の脳内に電流のような衝撃が走る。

 

理牌する必要も無く、自分たちの配牌の異変に気が付いた。この時、たまたま対局をせずに交流試合を観戦するギャラリーに混ざっていた宮守高校の三年生である小瀬川白望は京太郎の自牌を覗いた。

 

照と同じく勢いに乗ってきた京太郎がどのような配牌となっているのか気になったからだ。相変わらずダルい、と思いつつも、京太郎のことを気にかけていた。

 

(……なにこれ)

 

白望は思わず立ち上がって、全員の配牌を見回した。そして絶句しながら席に戻った。

 

この時、小蒔を除いた三人の配牌は……。

 

照の自牌

 

{一九①②19東南西北白發中} ツモ{⑨}

 

京太郎の自牌

 

{一九①⑨19東南西北白發中}

 

怜の自牌

 

{一九①⑨19東南西北白發中}

 

国士無双を照は聴牌(テンパイ)しており、京太郎と怜は一向聴(イーシャンテン)という状況であった。本来ならば、ここはそれぞれが国士無双を狙おうと躍起になるところである。

 

しかし、ここで照は牌を倒した。

 

「……九種九牌」

 

照の宣言した九種九牌とは配牌時の第一ツモの時点で公九牌(ヤオチューハイ)が九種ある状態のことを指す。そして、その状態の場合、打ち直しを申し出ることが出来るのだ。

 

これにより、照の親は連荘という形でまた打ち直しとなる。この時、照は確信めいた予感がしていた。この{②}を切ったら、自分は間違いなく死ぬと。

 

そして、その予感を裏付けるように小蒔の配牌は恐ろしいものであった。

 

小蒔の配牌

 

{二二二二②②②222255}

 

四槓子(スーカンツ)……それは役満であり、天和、九蓮宝燈と並び、和了ることが難しい役の1つとされている。

 

それを臭わせるような配牌だった。

 

もしも仮にこれを照が{②}打ちからの小蒔によるカンをされて、そこから連続でカンをして嶺上ツモで和了した場合、役満の点数がそっくりそのまま照の責任払いとなり、大ダメージを受けるところであった。

 

仮に国士無双を諦めたとしても怜が国士無双を聴牌している為、ロンをされて結局は役満を直撃されるところだったのだ。

 

魑魅魍魎がひしめく交流麻雀、果たして京太郎はこの境地を切り抜けられるか。

 

To Be Continued……。




とりあえず、この交流麻雀が終わるまでは、選択肢出せないかもしれません。すみません!

次回、怜死す!?

麻雀スタンバイ!

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