バーソロミューはメカクレ歌姫を救いたい   作:寺町朱穂

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11話 悪い印の人たち

 

 ライブ会場は幻想的な湖のようになっていた。

 水面は五色に輝き、カラフルで愛らしいぬいぐるみや玩具、甘くておいしそうなお菓子が泳いでいる。

 

 ウタは一人、テディベアを握りながら水面に寝転がっていた。

 

「……」

 

 ウタは何も言わない。

 黙って空を見上げていた。桃色の空には、白いカモメが輪をかくように飛んでいる。カモメの寂しげに鳴く声しか、この世界に響いていない。そのなか、ぴちゃぴっちゃと水面を叩くように近づいてくる足音に気づき、そっと身体を起こした。

 

「なにしに来たの? 何度戦っても、私には勝てないよ」

 

 ウタが呼びかけると、その人物は足を止めた。

 麦わらのルフィがウタから少し離れた場所で、こちらをまっすぐ見つめている。

 

「まだ決着はついてねェ」

「出た、負け惜しみィ!」

 

 ちょっと馬鹿にするように笑ってみるも、ルフィは怒った表情のままだった。ウタは仕方がないなと言わんばかりに息を吐くと、ルフィに向かって指を向けるのだった。

 

「なら、昔みたいに喧嘩で勝負するしかないね」

 

 しかし、その勝負は一方的だった。 

 ルフィはウタの生み出した音符の戦士には攻撃するも、ウタに攻撃するつもりがないことはあきらかだった。言葉で説得を試みるも、2人の言葉はすれ違うばかりだ。

 しまいには、ウタはルフィを捕え、処刑を実行してしまう。

 

「ロジャーの処刑で始まった大海賊時代――ルフィ、あんたの処刑をもって終わりにする!」

 

 ウタはテディベアを小さな音符に変え、ヘッドフォンにしまい込む。代わりに取り出した麦わら帽子を見せびらかすように提示し、持った手に力を入れた。

 

「やめろ……!」

 

 ルフィが懇願するように呟くも、ウタは聞く耳を持たない。ルフィの目の前で、麦わら帽子が音を立てながら裂けていく。

 

 ルフィの麦わら帽子は、シャンクスから貰った大切な宝物。

 そのことは十分知っているはずなのに、ウタは躊躇う様子なく無残に破ってしまった。

 

「ウタァァア――!!」

 

 ルフィは激高し、その気迫で音符の戦士たちは消失する。ルフィが怒りをあらわにしているというのに、ウタはまったく動じる素振りがない。

 

「なに?」

「お前っ! あんなに、あんなに赤髪海賊団が好きだったじゃねーか! シャンクスが大好きだったじゃねーか! なんで、海賊を嫌いになったんだ!!」

「……シャンクスのせいだよ」

 

 ウタはルフィを冷ややかに睨むと、感情を爆発させた。

 

「私はシャンクスのことを――実の父親のように思ってた!! 私は、あの船も仲間もみんな家族だと思っていた。でも、嘘だった。だから、私を捨てた。このエレジアに、私ひとり残して行っちゃったんだ!」

「それは、お前を歌手にするために――……」

「違うッ!!」

 

 ルフィの言葉を遮ると、泣きながら興奮してまくしたてる。

 ウタは涙ながらに語る。

 12年前、エレジアにシャンクスたちと来たこと。ゴードンをはじめとした音楽を愛する国民たちに才能を認められ、ここで音楽を学ばないかと打診されたこと。しかし、シャンクスと一緒にいたかったので断り、その夜眠りについたこと。

 ところが、その夜――目が覚めたら、エレジアが炎に包まれていた。ウタとゴードン以外の国民は全滅。ゴードン曰く、シャンクスたちがウタの歌を利用してエレジアに近づき、人々を殺して財宝を奪い去っていったらしい。ウタが慌てて追いかけるも、船は出港したあと。遠くに見えるシャンクスの船は、どうやらみんなが楽しそうに酒盛りをしている。

 

 

 ウタを置いて、彼らは行ってしまったのだ。

 

 

「シャンクスがそんなことするか! お前だって知ってんだろ!」

「じゃあ、私の12年はなんだ!」

 

 ウタはルフィに叫び返すと、表情を冷たくした。ちぎれた麦わら帽子を小さな音符に変え、ヘッドフォンにしまいながら蔑むように続けた。

 

「ルフィ。あんただって、シャンクスにとってはただの道具なんだよ」

「シャンクスは来る!」

「あんたを助けに?」

「お前を助けるためだ」

「私を? なんで?」

 

 ウタはあざ笑うも、ルフィは抹消面から睨み、大声で主張するのだった。

 

「娘がこんなことやってるのに、シャンクスが黙ってるわけねェだろ!!」

「あいつは私を捨てたんだよ……」

 

 ウタはうつむくと、かすれた声で「来るわけない」と呟いた。

 

 

 現実世界では、冷たい雨が降り注いでいる。

 ウタは麦わらの一味が眠っている升席にたたずんでいた。足元には、ルフィがすやすやと眠っており、その寝姿を愛おしむかのような視線で見降ろしていた。右手にはナイフを握りしめ、もう片方には大きなカゴが握られていた。カゴには依然として麦わら帽子が入っていたが、同じく積まれていたネズキノコはすっかりなくなり、隠されていた黄金の杯が輝いていた。

 

 

「あれは……せいはいかな?」

 

 その様子を、少し離れた場所から覗き見る少年がいた。

 

「うーん、どうしたらいいかしら」

 

 いましがた、カルデアからレイシフトしてきた少年サーヴァントのボイジャーである。片手には、カルデアの医療系サーヴァントが総力を挙げて作り上げた注射型の解毒剤が入った袋を握りながら、指示を請うように通信機に目を向けた。

 

『……間違いなく聖杯だね』

 

 ダ・ヴィンチがしばし考え込んだ後、ゆっくりと答えた。

 

『ちょうど、彼女がいるあたりに高密度の魔力反応が観測できる。すぐにでも回収したいところだけど――……』

『聖杯の回収より、まずは解毒薬を投与するべきだ』

 

 ダ・ヴィンチの会話に割り込むように入ってきたのは、アスクレピオスだった。

 

『ネズキノコとやらの毒性は極めて強い。即効性の解毒薬を調合したが、手遅れになりかねん』

『どうか、すみやかな投与をお願いします。多少、患者に手荒な真似をしても構わないと進言します』

 

 アスクレピオスに続けとばかりに、ナイチンゲールが顔を出した。その2人に後れを取りながらも、サンソンが現れる。

 

『ネズキノコの毒は強力です。ミス・セミラミスに毒に関する知見をお借りしましたが、どうやら摂取した人物を凶暴化させる作用もあるとか……とにかく接触の際には、細心の注意を』

「おーけい。がんばってみるよ」

 

 ボイジャーは大きく頷いて見せると、ウタに近づこうと立ち上がりかけた、そのときだった。

 

「すまないな、坊主。ちょっと待ってくれないか?」

 

 突如、背中から聞こえた声に、ボイジャーは目を丸くする。先程まで、背後には誰もいなかったはずなのだ。まがりなりにも、ボイジャーもサーヴァント。誰かが迫っていれば、普通は気づくはずである。

 

「12年ぶりに娘と再会するんだ」

 

 ボイジャーが振り返ると、そこには赤髪の男とその仲間と思われる者たちがたたずんでいた。

 

『赤髪のシャンクスだと!?』

 

 これに驚いたのは、ボイジャーよりカルデアのサーヴァント――アーチャーのエミヤだった。

 

『知っているのかい、エミヤ君!?』

『うむ。四皇であり、ルフィが憧れる存在だ。第一話以降、ほとんど本編での動きはなかったが、頂上戦争編で再登場を果たし、四皇のカイドウと新世界で対決していたにもかかわらず、数時間でマリンフォードまで移動。白ひげ海賊団と海軍の間に入り、戦争を終わらせることに一躍した作中屈指の謎に満ちた存在といえるだろう』

 

 エミヤはほとんど息継ぎなく、一気にシャンクスの説明をする。普段はどこか冷静なエミヤが興奮気味に語るのを見て、ダ・ヴィンチとマシュがちょっと驚いたように口をぽかんと開けていた。

 

『エミヤさん、ずいぶんと詳しいんですね』

『……意外かもしれないが、私も漫画くらい読むこともある。ONE-PIECEはそのなかの一冊に過ぎない。それ以上でもそれ以下でもない』

 

 エミヤは興味なさげに言うも、彼がこの作品が好きなことは誰の眼から見ても明らかであった。ボイジャーは知らなかったが、エミヤが今回に限って「そろそろ食事が必要だろう?」と差し入れを持ってきたり、「マスターの様子はどうだ?」と見に来たりと理由をつけて管制室にやって来る時点で、黒髭に負けず劣らずのONE-PIECE愛読者であることは明白である。

 

「おれたちについて随分詳しいな!」

「すごいひとなのは、わかったけど……じかんがないんだ。くすりをはやくうたないといけないの」

「それでも、少し待ってくれないか?」

 

 シャンクスはボイジャーに頼みながらも、その鋭い目線は眼下のウタに向けられている。ボイジャーはシャンクスとウタを交互に見つめたあと、こくりと頷いた。

 

「すこしだけなら。だけど、あまりながくは、まてないよ。ますたーたちが、ゆめをみたままめざめなくなっちゃう」

「もちろんだ。ありがとな、坊主」

 

 シャンクスはボイジャーの頭をわしゃっと撫でると、仲間を引き連れウタの方へと降りて行った。

 ボイジャーはその場で屈みこみ、シャンクスとウタのやりとりを見つめることにする。ウタは、いままさにルフィをナイフで殺そうとしていた。しかし、ナイフがルフィの胸を貫く寸前、シャンクスが間に合った。シャンクスの大きな手が、ウタの白くて小さな手に重なる。

 遠目から見ても、ウタはひどく驚いているようだった。なにかを堪えるように俯いた後、彼女は狂ったように笑いだす。

 

「……かなしいな」

 

 ボイジャーは呟いていた。

 眼下で繰り広げられる光景は、ボイジャーの胸にひどく刺さった。

 ウタが裏返った声で笑いだし、シャンクスを倒すように眠った観客たちを扇動する。シャンクスたちは抵抗することなく、観客たちに羽交い絞めされ、殴られ、蹴られていた。決して、赤髪海賊団のメンバーは誰一人として観客に手を挙げない。観客どころか、ウタに攻撃をしかけることもない。ただ、ウタにやられるがままになっている。

 

「すれちがい、っていうのかしら」

 

 シャンクスたちは、ウタに攻撃をしない。

 ウタ側も観客にシャンクスたちを殴らせているものの、自分で手を下すことはなく、観客たちも命をとりかねない攻撃はしていない。彼らの根底には「本当は戦いたくない」という気持ちが薄っすら流れているのが見えるようで、とても切なく思えてならないのだった。

 

「どうしよう?」

 

 しかし、このままでは埒が明かない。

 解毒薬を投与するタイミングを見誤れば、ウタは死んでしまう。どうしたらいいか迷いながら様子をうかがっていれば、怪しげな動きをする一団が目に入った。ウタたちのいる升席を遠巻きから取り囲むように、海兵たちが隠れながら動いている。その一行が動きを止め、ウタたちのいる場所に銃口を向けるのを見て、ボイジャーは飛び出した。

 

「……あぶないっ!」

 

 ボイジャーがシャンクスたちの前に急降下し、手を前に突き出した。両掌から無数の星が放射されるのと、銃声が鳴り響くのは同時だった。星の雨がシャンクスたちを銃弾から守るも、全方位から絶え間なく発砲し続けるすべてを防ぎきれるわけではない。どうしても、何発かはボイジャーの防御をすり抜け、シャンクスたちや観客たちの身体をかすめてしまう。そのうち、シャンクスに張りついていた一人は、脇腹に銃弾を受けてしまい、ばたりと倒れ込んでしまった。

 

「っ! だ、だめ! だめ!!」

 

 ウタは青ざめると、倒れた観客に駆け寄った。服の袖を破り、傷口に押し付ける。ウタワールドなら一瞬で治ってしまうが、ここは現実。ウタがいくら手を添えても、真っ赤な血がじわじわと布に広がっていく。観客の息遣いも荒く、びくびくと身体を震わせていた。

 

「しっかりして! もうすぐ、新時代なんだよ!!」

 

 ウタが呼びかけるも、観客は苦し気な呼吸をするばかりだ。ウタが必死になる間にも、発砲音は続き、躊躇なく観客を狙っていく。ボイジャーが必死に守っていたが、操られている観客たちに課せられた命令は『悪い海賊をやっつけよう』のみ。忠実にウタの命令に従うだけで、海軍からの攻撃を避けることはできない。一人、また一人と銃弾を喰らってしまう。

 

「正義を名乗る海軍が、市民たちを殺すつもりか」

 

 赤髪海賊団のベックマンは低い声で言うと、会場の入り口に視線を向けた。

 

「答えろ、黄猿」

「犠牲を伴わない正義などありえない」

 

 会場の入り口には、海軍大将の黄猿と藤虎がゆっくりと姿を現した。

 

「辛いねェ~、子ども一人止めるために、何万人も犠牲にするのは~」

 

 黄猿はニヤついて言うと、高く飛び上がった。会場全体を見渡せるほどの高さに光の速度で到達すると、両腕を顔の前でクロスをさせた。

 

「八尺瓊曲玉」

 

 黄猿の指から光の塊がレーザーのように放たれる。シャンクスはそれを見ると、躊躇うことなく剣を抜いた。レーザーのすべてを弾き返すと、一気に黄猿のいる場所まで跳躍する。

 

「悪いな」

 

 シャンクスは切っ先を黄猿の喉元にピタリと突き付けると、凄んだ声で言い放った。

 

「親子喧嘩の最中なんだ。首を突っ込まないでもらえるか」

「そうはいきやせん」

 

 シャンクスに異を唱えたのは、藤虎だった。

 

「こっちは世界を背負ってるんでね」

「それでも、引いちゃくれねェか?」

「それができりゃ、この目はまだ見えていまさァ」

 

 藤虎は苦笑いをしながら、刀をゆっくりと構えるのだった。

 

 

 

 

 海軍と赤髪海賊団の戦いが幕を開ける。

 

 

 そのなかで、ウタは海兵に撃たれた男の傷口を止血しようと必死になっていた。しかし、ウタに医療的な知識はない。ただ、湧き出す血を布で押さえつけることしかできない。そんな彼女に近づくのは、赤髪海賊団の船医、ホンゴウだった。ホンゴウが冷静な眼差しで男の治療にあたるも、出血はなかなか止まらない。

 

「ホンゴウさん……」

 

 ウタは祈るように、ホンゴウの名前を呼んだ。

 

「私……私……っ!」

 

 ウタは辺りを見渡した。

 いま、この瞬間にも銃弾で倒れる観客がいる。ウタは自分の呼吸が上がるのが分かった。

 

「ウタ――……」

 

 ホンゴウが「この観客は大丈夫だ」と語りかけようとした、そのときにはすでに遅い。 

 ウタは聖杯を握りしめ、ゆらりと立ち上がる。

 

「悪い人たちには悪い印を……」

 

 ウタは力なく呟いた。雨が降り続ける曇天を仰ぐように見上げ、聖杯を天に捧げるように掲げてみせる。

 

「もっとはやくに決めるんだった……!」

 

 彼女の口から零れ落ちた言葉は、どこまでも絶望に彩られていた。

 

「だ、だめー!!」

 

 ボイジャーがウタの異変に気付き、咄嗟に叫びながら駆け戻ろうとするも、ウタには届かない。

 

「―――!!」

 

 ウタは高らかに歌いだす。

 ウタの口から流れるのは、不吉な旋律。それまでに彼女が歌った曲とは全く異質だった。背筋がぞわりと震えるような恐ろしい歌と共に、中心に禍々しい黒い煙が渦を巻くように立ち込める。恐ろしくて裸足で逃げ出したくなるような呪いの歌なのに、誰も目が離せないのは禍々しいまでに強力な歌声に目を奪われてしまう。

 

『これは……!?』

 

 モニター越しに、カルデアのマシュが苦悶の表情を浮かべる。

 

『っ、この禍々しい歌は……通信が復活している!?』

『音声機能は復旧していないはずなのに……!?』

『……もしかしたら、すでに遅いのかもしれない』

 

 マシュが困惑していると、ホームズが興味深そうに目を細めながら答えた。

 

「どういうこと?」

『おそらく、あれがトットムジカ。“ウタウタの実”の能力者が歌うことで実体化する古の魔王だ』

「とっとむじか……?」

『つい先程、ウタワールドにいる藤丸君からマーリンを通じて入ったばかりの情報があってね。トットムジカが実体化すると、現実とウタワールドが繋がってしまうらしい。つまり、わざわざ歌でウタワールドに心を引きずり込まれる必要がなくなったということだ』

 

 ホームズが解説する間にも、シルクハットをかぶった巨大なピエロのような魔王が煙から出現する。ピアノの鍵盤のような手足を出し、にたりと笑う口からは真っ赤な炎がちらちらと零れ出ていた。

 

「どうすればいい?」

『現実とウタワールドで同時攻撃をすれば魔王を倒せる。タイミングを合わせるのは非常に難しいだろうが、マーリンは千里眼で現実側の様子を確認できるはずだ。ボイジャー、現実側にいる君は自由に攻撃すればいい』

「うん、わかったよ」

 

 ボイジャーは力強く頷くと、トットムジカめがけてまっすぐ飛翔する。

 途中、出現する音符の騎士たちを交わし、星のつぶてで倒しながら、トットムジカに接近を試みる。近づいてみれば、漆黒のシルクハットの上に、ウタの小さな姿が見えた。ひどく虚ろな眼差しで、聞いているだけで力を持っていかれそうな呪いの唄を歌っている。

 

「……よーしっ! 雨の音!」

 

 ボイジャーはひとまず右腕を落とそうとする。渾身の力で攻撃を仕掛けるも、魔王はピアノの鍵盤をはためかせ、ボイジャーに向かって勢いよく振り下された。ボイジャーは持ち前の素早さで避けようとするも、なぜか身体が思うように動かない。いつもなら避けられるほどの出力で飛んでいたはずなのに、がくんっと速度が落ちてしまう。

 

「うわっ!?」

 

 ボイジャーはまともにピアノの鍵盤を喰らってしまい、叩き落とされてしまった。魔王の生み出す黒い渦の流れに捕らわれるように、ボイジャーの小さな身体はくるくると回転しながら海に向かって落下する。

 ボイジャーは衝撃に備えるように目をつぶるも、彼の身体が海面を貫くことはなかった。

 

「っ! 大丈夫か、坊主!」

 

 シャンクスがボイジャーの身体をひょいっと担ぎ上げ、上手く渦の流れに乗りながら近くの塔の屋上に降り立った。折しも、カリファが同じ屋上でライブを偵察している。シャンクスはカリファにちらりと目を向けたが、すぐに魔王の方へと視線を移した。

 

「……ぼくはへいき。でも、どうしたんだろう……からだが、うまくうごかない」

『これは……まずいかも』

 

 ダ・ヴィンチが険しい表情をボイジャーに向けた。

 

『ボイジャーくん、君は毒に侵されてる。おそらく、トットムジカの生み出す煙に毒素が含まれていたんだ。いや、これは……毒素というより呪いに近いのかな。それより、一番まずいのは……』

 

 ここで、ダ・ヴィンチが言い淀む。やや迷ったように目を閉じたものの、数秒と待たずに意を決したのだろう。一呼吸おいてから、新たに解析した情報を口にした。

 

『霊基判定の解析結果がでた』

 

 

 ダ・ヴィンチは「世界が違うから、正確な判定はできないけど」と付け加えながらも、口を非常に重たそうに開くのだった。

 

 

 

『ウタ及びトットムジカに最も近い波長はビースト――人類悪の顕現だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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