仕方ないね。
知らない天井。見慣れぬ姿
全身に倦怠感と鈍痛が走る。
おぼろげな視界に目をこらすと、自宅にある寝室の天井ではなく無機質な白い天井と蛍光灯が目に入る。
なんだ?と思い視線を横にすると、クリーム色のカーテン。
そして点滴と心電図モニターがあった。
ガバっと体を起こすと急に動いたからか、全身に鋭い痛みが走り、心電図モニターから音が鳴る。
すぐに白衣を着た女性が駆けつけ、俺の姿を見るなり
「動かないで!安静にしてね。」
と言い、「先生!3番処置室の患者さんが!」と走っていった。
ひとまず再び横になり、頭の中を整理する。
確か昨日は休みだったから府中の東京競馬場へ行ったはずだ。
アプリのウマ娘をやりつつレースを観戦し、
「俺の3万が…」と肩を落として横断歩道を渡っていたら信号無視のバイクが…
…なるほどそれで病院に運ばれたのか。
なんとも運が悪い。いや助かっただけ不幸中の幸いか。
とりあえず会社と家族に連絡しないと…と思っていると先ほどの看護師さんと聴診器を下げた女医さん。
そして見知らぬ男女2人が入ってきた。
「アスラン!アスラン!心配したのよ!」
と泣き叫ぶ女性。
「大丈夫か?父ちゃん達が分かるか?」
と涙目で問いかけてくる男性。
…いや待って?
なにウチの両親面してるの??
それに女性の方はなんつった???
そして聴診器を当てられ看護師さんに薬の指示が飛ぶ。
「サクラアスランさん。親御さん。ひとまず峠は越えましたが予断は許されません。しばらくは絶対安静が必要です。」
部屋にほっとした空気が流れる。
いや俺は全くもってほっとしないんだが。
なんなのこの状況。
「サクラアスラン」って俺のこと言ってる?
俺普通の日本人男性だよね?
誰かと勘違いしてる?
某テイオーならおなじみ半角ボイスで「ワケワカンナイヨー!」と言い出してるところだ。
「左足が骨折していたため今後リハビリが必要となるでしょう。また、頭の傷もおおきく、数針縫っていますので抜糸まで包帯はつけたままとなります。」
状況の違和感が半端なかったが女医さんの説明でようやく身体の違和感に気付きはじめる。
まず左足の感覚が鈍い。
全く動かせないわけではないが動かそうとすると痛みがはしる。
そして頭。
手で頭の包帯を触ろうとすると女医さんが手鏡を用意してくれた。
なるほど目から上をすっぽりと覆うように包帯でグルグル巻きにされている。
いや驚いたのはそこではない
なんで顔つきが幼い…というか女の子になってんの?
なんでウマ耳が頭についてんの??
てことはあれかい?
なんでウマ娘に転生してんの!?!?!?
…
情報と状況の洪水でだいぶパニックになったが、数日経ちひとまず落ち着いた。
まず今世での俺の名前は「サクラアスラン」というらしい。
家族で阪神レース場に観戦しに向かった際事故にあった。
搬送されたときは意識不明で両親は死を覚悟したとか。
「なんにせよ元気になって良かった。三女神様のご加護だわ。」
そう俺の手をとり語るのは今世の母親。(ちなみに人間)
最初は両親を名乗る見知らぬ不審者ぐらいにしか思ってなかったが、時が経つにつれて『この人達が血の繋がった両親』だと脳が受け入れてきた。
いや受け入れざるをえないというか…
これだけ献身的に心配してくれているのにいつまでも他人行儀じゃいられなくなった、の方が正しいか。
ちなみに何のレースを見に行ったのかと問うと、「そういえばレース結果気になるわよね」と新聞を見せてくれた。
「…うそだろ…」
新聞の一面にはこんな文字が載っていた。
『メジロマックイーン宝塚記念圧勝!』
『イクノディクタス2着。休む間もなく京都へ』
『宝塚回避のトウカイテイオー、復帰は絶望的か』
メジロマックイーンとイクノディクタスのワンツー。
テイオーの宝塚記念回避。
これはあれだ。
アニメ2期でも少し触れられた93年の宝塚記念だ。
てことはなにか?
ここはアニメ2期のウマ娘世界なのか?
とここで俺のうそだろ発言に母親が反応する。
「ああ、テイオーさんね。あなたテイオーさんの大ファンだったから引退は悲しいわね。」
なるほど俺とアスランちゃんの推しは同じだったらしい。
元々のサクラアスランの魂はどうなってしまったのだろうか。
願わくは無事でいてほしいが…この件は今考えることではない
この世界でどう生きていくかを考えなければ。
ひとまずこの世界がアニメ2期の時空だとするとこのあとの展開は想像しやすい。
3度の骨折を経てテイオーは心も折れてしまいチーム脱退を決意。
ツインターボのオールカマーの同日に行われた秋の感謝祭にて、テイオーは仲間やファンの声、そしてターボの『あきらめない姿』に心を揺さぶられ復帰を決意。
同年冬の有馬記念の布石となる…
こんな感じだったはずだ。
ということは今からリハビリを頑張ればあの名シーンを見に行ける…?
「ねえお母さん。」
「?なあにアスラン。」
「リハビリ頑張って、退院して、少しでも歩けるようになったら、府中のトレセン学園の感謝祭に行ってもいい?」
「…え?」
「テイオーさんに会いたいんだ。」
母親は少し腕を組んで目を閉じ、「あなたならそう言い出すと思ったわ」とつぶやき、退院してけがの具合が良くなっていたら一緒に行こうと言ってくれた。
なんせ今は大阪住みだからね。
松葉杖ついた小学6年生が一人で大阪から東京までは流石に無理がある。
ともかくこれで推しに会いに行く確約をいただけた。
テイオーだってリハビリ頑張ったんだ。
中身大の大人な自分がへばってどうする。
感謝祭まで約2ヶ月。
全力でリハビリやったるで!
アスラン「なんでや神様的なのに会った覚えないぞ?」
神的なの「ほっほ、今会ったぞ。」
アスラン「転生特典は?」
神的なの「ない。前世知識でがんばれ。」
アスラン「手鏡で姿をみるのは?」
神的なの「作者がメタル○ア好き。」
アスラン「なるほど作者とおまえの趣味だな?」
神的なの「まあ頑張…待ってそのリボルバーどっから持ってk」
作者「神!応答してくれ!神!かみーッ!」