芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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参考 2014 有馬記念実況


うさぎとかめ

『1着はヴェニュスパーク、ヴェニュスパークです!

 

これぞ有終の美!

こんにちはとさようならを、同時にやってのけました!』

 

大歓声に包まれる東京レース場。

 

ヴェニュスパークはホームストレッチへ進むと、日本を意識してか一礼をし、朗らかな顔で声援に手を振って答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京レース場 上階 VIPルーム

 

(…アスランさん…)

 

VIPルームにてエルやモンジュー達と観戦していたスペシャルウィークは、心配そうな表情でターフに立っているアスランを見ていた。

 

「…おめでとうモンジュー。素晴らしい走りデシタ。」

 

エルの労いの言葉にハッとし、スぺも続けて言葉を贈る。

 

「お、おめでとうございますモンジューさん!

ヴェニュスさん良い走りでしたね!」

「メルシー2人とも。君たちのサポートあってこその結果だ。

ぜひ後で本人にも言ってあげてくれ。」

 

モンジューが穏やかな笑みを浮かべる。

 

「…悔しいデス」

「エルちゃん?」

 

エルがポツリとつぶやく。

 

「…エル達は、日本のみんなは、ようやくヨーロッパに追いつけたと思った…いや、追いついていマシタ。

でも、今日の結果で、また突き放された気がしマス…」

 

エルが苦笑いしながら頬を少し掻く。

 

モンジューはふむと顎に手を当て、窓の外からターフを見る。

 

「『うさぎとかめ』という童話は知ってるかい?

うさぎはかめを見ていたが、かめはゴールを見ていた…と。

 

私なら、いや()()()ならこう続けるだろう。

 

『だがうさぎは、黙ってかめを見ていたわけではなかった』と。」

「…!」

「努力は決してジャポンの専売特許ではないということだ。」

 

慈しむ目で、モンジューはヴェニュスパークを見下ろす。

 

エルは「ハハッ」と乾いた笑いをすると、深々と頭を下げた。

 

「…今回は完敗デス、モンジュー。

でも、エル達は、何度でも()()()()に挑み続けマス!」

 

頭を下げ実力差を受け入れつつも、静かに燃え滾る闘志を目に浮かべるエルコンドルパサー。

隣にいるスペシャルウィークも同じ表情をしていた。

 

そんな2人と、絶え間なく聞こえる日本のファンの歓声を聞いて、モンジューは感嘆の息をもらす。

 

(有能な者はどんな足枷をはめられていようとも飛躍する、か。

かのナポレオンの言った通りだな。)

 

そして再度、ヴェニュスパークに視線を向ける。

 

(我らに休んでいる暇はなさそうだぞ、ヴェニュス。)

 

欧州最強の子弟にも、目に炎が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれが欧州最強バの実力か…手も足も出なかった…)

 

スタンドに手を振り続けるヴェニュスパークを、少し離れたところからスイートソティスが見る。

 

(欧州は欧州。私は私だ。

すぐに今日の走りを見直して、有馬記念につなげる。)

 

負けてもすぐに切り替え、次を見据えるスイートソティス。

 

そんなしっかりと前を向くスイートソティスとは対照的に、アスランはターフ上で呆然としていた。

 

 

「ハッ…ハッ…ハッ…」

 

両手足を芝につき、息も絶え絶えに掲示板を見る。

 

(いったい…いったい何着だったんだ…)

 

視界が汗でにじみ、目に刺激が走る。

 

(無敗のロマンが…テイオーとの夢が…こんな…)

 

スタンドを見る勇気がない。

 

大口叩いてJCに乗り込んだ挙句掲示板にも乗らない有様。

テイオーやファンが、どんなに失望しているか考えたくもなかった。

 

お疲れ様、お嬢さん。

 

頭の上から声がしたので顔を上げると、ハーツオブオークが立っていた。

 

ヴェニュスパークと激闘を演じたので息は荒れているが、しっかりと立ってアスランを見下ろす。

 

なめられたものだね。()()()の状態で私やヴェニュスの末脚に挑もうなどと。

ち、違…そん、な、つもり、は…

 

まだ呼吸が定まらず、うまく言葉が出てこない。

せめて立上ろうとしても、足が震えて力が出ない。

 

そしてオークは指を鳴らし、アスランの横を通り過ぎて行った。

 

「Good bye! S()l()a()v()e() Blossom!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も言い返せなかった。

 

 

 

 

Slave Blossom(惨めな葉桜)』とバカにされたというのに。

 

 

 

何一つ、言い返せなかった。

 




11月26日 東京第12R
ジャパンカップ(G1)
芝 2400m

1着 ヴェニュスパーク 2:20.9
2着 ハーツオブオーク 1/3
3着 センパーパーパス クビ
4着 サイラ アタマ
5着 スイートソティス 2

9着 サクラアスラン
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