『1着はヴェニュスパーク、ヴェニュスパークです!
これぞ有終の美!
こんにちはとさようならを、同時にやってのけました!』
大歓声に包まれる東京レース場。
ヴェニュスパークはホームストレッチへ進むと、日本を意識してか一礼をし、朗らかな顔で声援に手を振って答えた。
東京レース場 上階 VIPルーム
(…アスランさん…)
VIPルームにてエルやモンジュー達と観戦していたスペシャルウィークは、心配そうな表情でターフに立っているアスランを見ていた。
「…おめでとうモンジュー。素晴らしい走りデシタ。」
エルの労いの言葉にハッとし、スぺも続けて言葉を贈る。
「お、おめでとうございますモンジューさん!
ヴェニュスさん良い走りでしたね!」
「メルシー2人とも。君たちのサポートあってこその結果だ。
ぜひ後で本人にも言ってあげてくれ。」
モンジューが穏やかな笑みを浮かべる。
「…悔しいデス」
「エルちゃん?」
エルがポツリとつぶやく。
「…エル達は、日本のみんなは、ようやくヨーロッパに追いつけたと思った…いや、追いついていマシタ。
でも、今日の結果で、また突き放された気がしマス…」
エルが苦笑いしながら頬を少し掻く。
モンジューはふむと顎に手を当て、窓の外からターフを見る。
「『うさぎとかめ』という童話は知ってるかい?
うさぎはかめを見ていたが、かめはゴールを見ていた…と。
私なら、いや
『だがうさぎは、黙ってかめを見ていたわけではなかった』と。」
「…!」
「努力は決してジャポンの専売特許ではないということだ。」
慈しむ目で、モンジューはヴェニュスパークを見下ろす。
エルは「ハハッ」と乾いた笑いをすると、深々と頭を下げた。
「…今回は完敗デス、モンジュー。
でも、エル達は、何度でも
頭を下げ実力差を受け入れつつも、静かに燃え滾る闘志を目に浮かべるエルコンドルパサー。
隣にいるスペシャルウィークも同じ表情をしていた。
そんな2人と、絶え間なく聞こえる日本のファンの歓声を聞いて、モンジューは感嘆の息をもらす。
(有能な者はどんな足枷をはめられていようとも飛躍する、か。
かのナポレオンの言った通りだな。)
そして再度、ヴェニュスパークに視線を向ける。
(我らに休んでいる暇はなさそうだぞ、ヴェニュス。)
欧州最強の子弟にも、目に炎が宿っていた。
…
(あれが欧州最強バの実力か…手も足も出なかった…)
スタンドに手を振り続けるヴェニュスパークを、少し離れたところからスイートソティスが見る。
(欧州は欧州。私は私だ。
すぐに今日の走りを見直して、有馬記念につなげる。)
負けてもすぐに切り替え、次を見据えるスイートソティス。
そんなしっかりと前を向くスイートソティスとは対照的に、アスランはターフ上で呆然としていた。
「ハッ…ハッ…ハッ…」
両手足を芝につき、息も絶え絶えに掲示板を見る。
(いったい…いったい何着だったんだ…)
視界が汗でにじみ、目に刺激が走る。
(無敗のロマンが…テイオーとの夢が…こんな…)
スタンドを見る勇気がない。
大口叩いてJCに乗り込んだ挙句掲示板にも乗らない有様。
テイオーやファンが、どんなに失望しているか考えたくもなかった。
「お疲れ様、お嬢さん。」
頭の上から声がしたので顔を上げると、ハーツオブオークが立っていた。
ヴェニュスパークと激闘を演じたので息は荒れているが、しっかりと立ってアスランを見下ろす。
「なめられたものだね。
「ち、違…そん、な、つもり、は…」
まだ呼吸が定まらず、うまく言葉が出てこない。
せめて立上ろうとしても、足が震えて力が出ない。
そしてオークは指を鳴らし、アスランの横を通り過ぎて行った。
「Good bye!
何も言い返せなかった。
『
何一つ、言い返せなかった。
11月26日 東京第12R
ジャパンカップ(G1)
芝 2400m
1着 ヴェニュスパーク 2:20.9
2着 ハーツオブオーク 1/3
3着 センパーパーパス クビ
4着 サイラ アタマ
5着 スイートソティス 2
:
9着 サクラアスラン