芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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ヒルクライム 三人称視点

「―分かった、報告感謝する。すぐに対応しよう。」

「あ、ありがとうございます!ルドルフ会長!」

 

シンボリルドルフは生徒会の仕事中、生徒からの報告を受け現場に向かう。

 

その生徒曰く「どっかのウマ娘(カワカミプリンセス)が校舎の壁をぶち破った」とのことだ。

下手人はすぐにエアグルーヴによってお縄となったが、被害状況を把握するため会長自ら確認しに行く。

 

現場にはすでに野次馬ができており、ざわざわと破損個所を眺める。

 

「君たち、ここから先は生徒会が対処しよう。トレーニングに戻ってくれ。」

ルドルフがそう声をかけると生徒たちは挨拶をして戻っていく。

 

(…おや)

 

ルドルフが見覚えのある生徒に気づき、スッと近づく。

 

「やあソティス。久しいな。」

「る、ルドルフ会長…」

 

ルドルフは気さくに話しかけるも、スイートソティスは化け物でも見たかのような苦い表情を見せる。

 

「そう萎縮しないでくれ。

我がシンボリ家と君のスイート家は親戚だ。互いに遠慮することはあるまい。」

「……いえ、お心遣いは無用にございます。」

「先日のジャパンカップを見ていた。実に良い走りだ。

正に勤倹力行たるもので―」

「……私なぞ、()()()次期当主であらせられるルドルフ()とは比べようもない塵のような者でございます。

練習があります故失礼いたします。」

 

見た目はへりくだっているが、ソティスはルドルフの話を途中で切り上げ、足早に去っていった。

 

(以前は明るい子であったと記憶しているが、今では頑なに姿勢を崩そうとしない。

実家(スイート家)とも仲違いしたと聞くし…心配だ。)

 

ルドルフは一瞬ソティスの様子を見に行こうと思い立つも、校舎の破損へも対処しなければならないため立ち止まる。

 

「どうしたものか…」

 

「―何か、困っているのか?」

 

そんなルドルフへ声をかけるウマ娘がいた。

 

「ああ君か。

丁度いい、一つ頼まれてくれるか。」

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高尾山 ケーブルカー清滝駅前

 

「おう、来たかソティス。」

「お待たせしました、シリウス先輩。」

 

高尾山への登山口である駅前に、ジャージ姿のシリウスシンボリとソティスが落ち合う。

 

「じゃ、早速始めよう。準備はいいな?」

「あの先輩」

「ん?」

「…さっきから大きなウマ娘につけられている気がするんですが…」

「あん?」

 

シリウスがソティスの後ろを見ると、遠くの物陰からこちらを凝視する褐色肌のウマ娘がいた。

 

「なんだあいつか。

ソティス、心配ない。知り合いだ。」

 

そう言いながらシリウスは件のウマ娘に目配せして手招きし、呼び寄せる。

 

 

「何だクリスエス。あたしの後輩に何か用か。」

「―ルドルフから、その子を見守るよう、missionを受けた。」

「なるほど。皇帝サマからのお目付け役か。」

 

得心がいったシリウスはハッと笑う。

 

「2人とも会うのは初めてだな。

ソティス、こいつはシンボリクリスエス。あたしやルドルフと同じシンボリのもんだ。」

「シンボリ…!?」

 

名前を聞いたソティスの目がすわる。

 

「……お初にお目にかかります。クリスエス()

高貴なるご本家のお方が、私のような末席の者に何の御用でしょうか。」

「…?」

「ああ、気にしないでくれクリスエス。こいつは今色々とこじらせているんだ。」

 

棒読みでクリスエスに礼を尽くすソティスにクリスエスが疑問を浮かべる。

 

「おしゃべりはこれぐらいにして練習に戻るぞ。

ソティス。準備は?」

「万全です」

「よし、行ってこい。」

 

シリウスが指示を出すとソティスは駅横の6号登山道へと駆けていった。

 

「クリスエス。あたしらはこっちだ」

 

そう言ってシリウスはクリスエスを連れてケーブルカーの乗り場へ行った。

 

 

 

「今でこそ高尾山は手ごろな観光登山の名所になっているが、かつては修験道…自然の中で修行を行う者達の、いわば鍛錬の山でもあった。」

「―自然の中…。Ninjaか?」

「まあ当たらずとも遠からずってところだな。」

 

ケーブルカーを降り、中腹に位置する薬王院へ向かう1号登山道をのぼりながら、シリウスがクリスエスに説明する。

 

「ソティスは…まあ色々あってな。

今のあいつには、整備されたトラックや高価なトレーニングマシーンよりも、自然の中で鍛えるのが必要だと判断した。

修験者のように自分自身と向き合える環境がな。」

 

そう言いながら山道をのぼり、山頂へと到着する。

 

「―!?」

 

そしてクリスエスの目に信じられない光景が入ってきた。

 

「おう、もう着いていたか」

「シリウス先輩お疲れ様です。クリスエス様もご足労をおかけしました。」

 

汗一つかいていないソティスが、クリスエス達よりも()()山頂に到着していた。

 

 

クリスエス達が使った1号登山道は、薬王院への参道でもあるため舗装され歩きやすく整備されているのに対し、

ソティスが使った6号登山道は、急な勾配や階段に加え、途中で沢と登山道が一体となっている上級者向けの山道である。

 

しかも、クリスエス達はケーブルカーを使ってショートカットしたにもかかわらず、麓の登山口から登ったソティスの方が先に山頂に着いていた。

 

寡黙なクリスエスもこれには目を見開いて驚きの表情を見せる。

 

「ソティス、足の具合は?」

「問題ありません。」

「ならあと2往復だ」

「分かりました。」

 

そしてソティスはそのまま今来た道を引き返していった。

 

ソティスを見送ったシリウスはクリスエスの肩に手を置く。

 

「皇帝サマに伝えておけ。

Not a problem(心配ご無用)』とな。」

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