芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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枠順抽選会

年の瀬に行われるグランプリレース『有馬記念』

 

競馬は知らなくてもダービーと有馬記念は知っているという人がいるように、1年で最も注目を集める国内最高峰のレースである。

 

その注目度の高さを裏付けるように、有馬記念の枠順抽選会は全国ネットで生中継される。

ウマ娘のレースが社会に溶け込んでいるこの世界でも同様だ。

 

会場であるホテルのホールにはマスコミや関係者でごった返し、今か今かと待ち構える。

 

「…緊張してきたな…」

「始まる前から緊張してどうすんのさガーランド」

 

会場の端でエイトガーランドの顔がこわばっていたので声をかけ緊張をほぐす。

 

「しっかりしてくれよ。貴重なクラシック勢なんだから。」

「…その言葉は私じゃなくて()()()にしたら?」

 

クイッとガーランドが指さした方向には、

 

「…大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫」

 

大丈夫botと化したタイキスチームがいた。

 

「会場入る前まで元気そうだったのに…」と頭を抱えながら近づく。

 

「スチーム?大丈夫?」

「大丈夫!大丈夫!大丈夫!」

「絶対に大丈夫じゃないでしょそれ。

もう少しどっしり構えたらどう?『エリザベス女王杯』でシニア混合戦は経験してるでしょ?」

「だ、だってクラウン路線の選手と戦うの初めてで…」

「いやいや、去年芙蓉ステークスで自分やガーランドと戦ってるでしょ」

「あの時とは違うというかなんというか…

と、とにかく記者さんに何聞かれてもいいように練習してるの!」

「ダブルティアラとエリ女制したウマ娘ならもっとしゃんとしなさい!」

 

古の歌詞が思い起こさせる。

『頼れる仲間は皆目が死んでる』

 

(レースにかけた青春、でも皆目が死んでるってか???冗談じゃない)

 

『お待たせいたしました。まもなく抽選会を開始します。選手の皆様は所定の席へご着席ください。』

 

アナウンスが流れ、それぞれ座席へつく。

 

前世の枠順抽選会では、馬主・調教師・騎手が1陣営として席につくが、

今世では各ウマ娘が1人だけ座り、くじも選手自身が引くようだ。

 

後方の関係者席にいる沖野トレーナーと目が合い、お互いコクリとうなづいた。

 

「CM明けまーす5秒前ー4、3…」

『全国1億のレースファンの皆様、お待たせいたしました。

只今より、G1有馬記念、公開枠順抽選会を、ここ品川プリンセスホテルより生中継にてお送り致します。』

 

拍手とともに枠順抽選会が開幕した。

 

『枠順抽選会では、まずウマ名が入ったくじをゲストの方が引きます。

そして選択権を得た選手はウマ番が入ったくじを引いて頂き、出バ表を完成させていくといった流れとなっております。

 

今年は豪華なゲストをお呼びいたしました!

メジャーで投打大活躍の大谷一郎選手です!』

 

(((…抽選会終わったらサイン貰いにいこう…)))

会場にいる全員の思いが一致した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『では最初のくじを大谷さんお願いします。』

 

固唾をのんで見守る。

ガーランドやスチームにああ言った手前だが、やはり自然と背筋が伸びる。

 

『最初に選択権を得たのは…タイキスチームさんです!』

「ひゃい!?」

『タイキスチーム選手どうぞ壇上へ!』

 

スチームが右手右足を一緒に出しながらステージへ上がる。

同室の同期としては見てるこっちが緊張してくる。

 

『それでは引いたくじのウマ番をカメラに向かってお見せください。お願いします!』

 

スーッと丸められたくじを広げていく。

 

『1枠1番!最内枠です!』

 

おおっというざわめきが上がる。

 

元々逃げウマであるスチームにとって1枠は絶好のポジションだ。

 

『スチーム選手一言お願いします。』

『え、えっと。大丈夫です!頑張ります!』

 

良枠なのを感じたのか、スチームの声と表情に自信が戻っている。

 

(これは本番でも強敵になりそうだ。)

 

『続いてのウマ娘は…サクラアスランさんです!』

「!」

 

そう思っていると今度は自分が呼ばれた。

 

ゆっくりと登壇し、くじを選ぶ。

 

(逃げ馬のスチームが1枠に入った以上俺が狙うべき枠は…)

 

くじを広げながらそんなことを思う。

 

『2枠4番!』

(…よし!)

 

心の中でガッツポーズする。

 

『アスラン選手思わずガッツポーズをしておりましたが』

『あ』

 

心の中では収まらなかったようだ。

会場からクスクスと笑いが漏れ、顔が熱くなる。

 

『やはり狙い通りの枠といったところでしょうか。』

『え、ええ。内側の枠(2~4枠)がいいなと思っていたので。嬉しいです。』

『最後に意気込みをお願いします。』

『ファン投票でも1位に推していただきありがとうございます。

正々堂々()()()を獲りにいきます!』

 

ピリッとシニア勢の空気が変わる。

当然といえばそうだが、こちらにもプライドがある。

 

(もうジャパンカップのようなみっともない負けはできない…!)

 

敗戦以降、休息とスピカの先輩方とのトレーニングに心血を注いできた。

万全の状態で、勝利を目指す!

 

 

 

『では続いてのウマ娘は―』

 

その後も抽選会は続いていく。

 

 

『ジャパンカップでは遅れをとったが、朕もダービーウマ娘。

必ずや勝利の栄光を掴みとらん!』

4枠7番 カジミェーシュ

 

『な、何で…大外…』

8枠16番 エイトガーランド

 

『姉妹で競えるのはこれが最後なので』

『姉に最高の引導を渡します!』

3枠5番 クライムビート

1枠2番 クライムハーツ

 

『影が薄いはもう終わりだがね!』

6枠11番 デルタフォース

 

 

 

『では最後は…スイートソティスさんです!

くじをお見せください!』

 

そして最後のウマ娘であるスイートソティスが残ったくじを引き、カメラに見せる。

 

『3枠6番!

ソティス選手意気込みはいかがですか?』

『どの枠だろうと自分を信じて勝ちに行くまでです。』

『勇ましいお言葉ありがとうございます。

これにて、有馬記念公開枠順抽選会を終了します!』

 

こうして初めての枠順抽選会は幕を閉じた。

 

年の瀬の大一番

有馬記念は、もうまもなくやってくる。

 




抽選会終了後の某掲示板

有馬記念枠順抽選会同時視聴スレ part12
【悲報】エイトガーランド、エイト枠を引く
【若獅子】イェニチェリスレ 第201師団【有馬へ!】
【朱色の侍】浪士組スレ 第217番隊【大賞典確定】
ガチガチスチームちゃんを愛でるスレ
【姉妹対決】クライム姉妹応援スレ その122【最終章!】
元天才トレーナーT.世紀氏語る!『外枠は不利じゃない』



マックイーン「アスランさん、いちろー選手のサインは貰ってきましたか?」
アスラン「……あ」




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