『ややばらついたスタート、16番エイトガーランド出遅れたか。
先頭抜けていったのは1番タイキスチーム、1馬身ほど離れて2番クライムハーツと4番サクラアスラン。
そのすぐ後ろに6番スイートソティス、11番デルタフォースはその内側。
中段に陣取ったのは7番カジミェーシュ、5番クライムビート、先輩ダービーウマ娘の誇りを示したいところ。
コーナー回って正面スタンド前、11万3千人の大歓声が選手たちを後押しします!』
吹雪と歓声が体を物理的に震わす。
血は溶岩のように熱く、頭は氷のように冴えていた。
(やはりこの位置で正解だ。
今はタイキスチームを右斜め前に見る位置で、左隣にクライムハーツがいる。
少し速度を落としてクライムハーツを先に行かせ、3番手につける。
「アスランさんすごく良い位置につけてます!」
「あれなら先頭2人を風除け、というか
スぺとテイオーがアスランの走りを分析する。
直線が短く、しかも不良馬場の中山で後方一気を仕掛けるのは自殺行為。
かと言って前に出すぎれば雪を全面に浴びることになり、著しく体力が下がる。
雪の影響を最小限に抑え、早めに仕掛けられる位置。
前残りを見越した先行の作戦で、勝利を狙いにいった。
(確かにアスランちゃんは絶好のポジションをキープしてるけど…)
スピカのメンバーに混じって観戦しているローレルも同じ感想を持ったが、別の部分に注目する。
(…その『アスランちゃんの真後ろ』という更に絶好の位置に陣取った子がいる。
あの子はどう出るんだろう…)
『各ウマ娘3コーナーから4コーナーへ、後方勢が位置を押し上げていく!』
後方集団が追い上げ始め、逃げ勢が垂れ始めた頃合いを見計らい、
(出るなら…ここ!)
カーブを使って外に出し前を見る。
『そしてそしてやってきた!
サクラアスランが外へ持ち出し直線へ向いた!』
誰もいない310mの直線が出迎える。
後は残った力を足に込めるのみ。
「はあぁぁぁっ!!」
ズシンという地響きと共にターフを蹴り上げ、ギアを変える。
メフテルの笛の音が、師走の中山に響
かなかった。
代わりに耳に聞こえてくるのは、
轟々とうなりをあげる水の音。
(何だ、何が起こって―)
音がする自分の後ろを振り返った瞬間、
濁流のような速さでウマ娘が駆けていった。
『大外坂を登ってスイートソティス!スイートソティスが躍り出た!』
「は…!?」
ひたすらに脚を動かして距離を縮めようとするも、一向に差が詰まらない。
アスランが氷上に刃を突き立てて突き進むアイゼンのような走りなのに対し、
ソティスは氷上を滑走するスケートのような走りで突き進む。
スケートといってもフィギュアスケートのような優美なものではなく、
アイスホッケー選手のような、荒々しくも滑らかな走りだ。
(くそぉ…っ!)
『スイートソティスだ!スイートソティスだ!
『逆襲の女神』スイートソティス!
有馬記念で初G1制覇っ!!!』