芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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笠松のコラボ行ってきました。
現地勢のみなさんお疲れ様でした!

アスラン「馬券は?」
作者「地域貢献したと思えばヨシ!」(涙目)


どんなに今がつらくとも 三人称視点

「―私はいつか、シンボリ一門の名に恥じない立派なウマ娘になります!」

幼いころ、ソティスがシンボリの縁戚が集うパーティーにて言った言葉だ。

 

レース界や政財界にて名を知らぬ者はいない名門シンボリ家。

その分家たるスイート家に関しても、一目置かれる名門であり、

その『名門のウマ娘』というアイデンティティは、ソティスにとって大きなものだった。

 

(名門出身なのだから大きなレースの一つや二つ獲れるようにしないと…!)

 

 

だがその甘い理想は、受け入れがたい現実によって粉々に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

『―スイートソティス1着でゴールイン!

 

()()()()()()()()()()()()()()()、最後の切符を手にしたのは12番スイートソティスです!』

 

ジュニア期7月にデビューしたにもかかわらず、レースに出ては掲示板に乗るか乗らないかの繰り返し。

初勝利を飾ったのは、クラシック期8月最終週。

 

17戦と1年を費やして得たものが、初勝利だった。

 

無論1勝してるかしてないかの違いは天と地ほどに大きい。

 

未勝利の状態で9月を迎えると、まずはトレーナーとの契約が解消される。

つまり、中央でレースに出ることは事実上不可能となる。

 

地方トレセンへ移籍して地方シリーズで走るか、

スタッフ養成課程へ転籍して裏方の道を選ぶか、

 

一般校へ転校して、レースへの未練を断つか、

いずれかの選択をすることとなる。

 

だが裏を返せば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということでもある。

 

(…とりあえず中央には残れたからいっか。)

 

この頃になると、ソティスの目標やモチベーションは下がりに下がっており、勝利後は授業やトレーニングをサボるようになっていた。

 

どうせ頑張っても無意味だと、達観するようになってしまった。

 

 

「ソティス、ちゃんと真面目にやっているのか?お父さんは心配だぞ。」

「そうよソティちゃん。あんまりママ達を心配させないでちょうだい。」

 

三者面談にて両親が素行の悪化を心配し、声をかけるも

 

「うるさい……うるさい!

私は好きでこんな()()()()()()()に生まれたんじゃない!」

「ソティちゃん…!うぅっ…」

「ソティス!お母さんに謝りなさい!」

「ふんっ!」

 

最終的に口論となり、実家と仲違いする始末となった。

 

(どうせ私はシンボリ本家の化物たちとはわけが違う。

向こうは本家だから才能に恵まれているんだ。

 

才能のない私が現実に刃向かったところでどうせ―)

 

 

 

 

 

 

「―いつまで現実から逃げている気だ?」

 

そんなソティスに喝を入れたのが、シリウスシンボリだった。

 

「シリウス…様」

「取ってつけたような様呼びはやめろ。反吐が出る。」

「…」

 

府中駅前のゲームセンターでサボっていたところをシリウスに見つかり、半ば無理やり学園の校舎裏へ連れ出された。

 

「最近お前の評判悪いぜ。前は絵に描いたようなイイ子ちゃんだったのにな。」

「……ご本家の方にはわかりますまい」

「あ?」

「才能に恵まれたご本家のウマ娘と、そうでないウマ娘には、覆しようのない現実が―」

「おい。」

 

シリウスが足を校舎にたたきつけて顔を近づける。

 

「あたしには才能があって手前にはないって言いたいのか?想像以上にこじらせてやがるな。」

「な、なにを…」

「『才能』って言葉に逃げるな。」

 

低く透き通った声がソティスの頭に響く。

 

「ルドルフ…はまあ別として。あたしに才能なんてもんはない。

あったらとっくの昔に皇帝サマの鼻っ柱をへし折っているところだ。

 

どんなに結果や現実に打ちのめされようとも、涙をこらえて次を考える。

もしこれをお前の言う『才能』だってんなら、誰にだって備わってる。

 

ようはやるかやらないかだ。

 

現実から逃げるのは楽だろうさ。

その楽な方へ流されまいと必死にトライアンドエラーを繰り返す。

 

そうやってはじめて『才能』ってもんは身につくんじゃねぇか?」

 

『才能』はあとからついてくるものと強調するシリウス。

 

そのシリウスのカリスマ性溢れる姿勢と、冷ややかながらも熱い言葉に、

ソティスの心は惹かれていった。

 

「このまま今まで通り楽に適当に過ごすか、

泥水すすってでも現実に立ち向かうか、

 

自分で選びな。」

「わ、私は…」

 

 

 

―変わりたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『各ウマ娘3コーナーから4コーナーへ、後方勢が位置を押し上げていく!』

 

白くなった有馬記念のターフに、足跡がつけられていく。

 

「はあぁぁぁっ!!」

アスランの獅子の如き気勢が轟き、スパートをかける体勢に入る。

 

(ここだ)

 

ソティスが息を潜めてアスランの真横に出る。

 

(シリウスさん見ていてください。

私は、この現実に打ち勝ってみせる!)

 

ソティスの視界が白黒に反転する。

 

 

 

 

 

古代エジプトにおいて、ナイル川の洪水は人や財産を飲み込む災害だった。

だが同時に、上流の肥沃な土を大地にいきわたらせる自然の恵みでもあった。

 

正と負双方の面を持ち迫りくる大波。

 

エジプトの人々はいつしかナイル川の洪水自体を神格化し、現実と向き合った。

 

 

清濁併せ持つ大きな波が、轟々とうなりをあげる。

 

才能さえも、飲み込んでいく。

 

 

 

 

 

 

『スイートソティスだ!スイートソティスだ!

 

『逆襲の女神』スイートソティス!

 

有馬記念で初G1制覇っ!!!』




スイートソティス 固有スキル
『ハピの襲来』

1度も先頭から3馬身以上離されることなく最終直線に入ったとき、
濁流のように周囲のウマ娘のスキルを無効化し、速度がわずかに上がる。
バ場状態が悪いほど効果が倍増する。

(古代エジプトにて『ナイル川の洪水』を意味する語)
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