芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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第5章 シニア期~宝塚記念
矢の行方


除夜の鐘と共に年が改まり、新たな1年がスタートする。

 

レースにおいてはクラシック級からシニア級へ移行し、所謂古馬戦線へ足を踏み入れることとなる。

 

(シニア戦線では必ず勝利を…)

 

そう心の中で繰り返し呟きながら、皓々と輝く初日の出を浴びた。

 

 

 

 

大国魂神社境内

 

「参拝者で賑わってるわね」

「スズカさん、はぐれないよう手をつなぎましょう!」

「今年は…ゴルシちゃんのピスピス☆スピスピな一年の幕開けだぁ!」

「…貴方去年も同じことを仰っていませんこと?」

「神様の前でスカーレットみたいにケチなことできねーからな!賽銭は千円!」

「はぁ!?じゃあこっちは五千円よ!」

「じゃーこっちだって一万円!」

「一万五千!」

「二万!」

「二万三千!」

「三万!」

「ンモー!二人とも暴れないでよー」

「何やってんすか初競りじゃあるまいし」

 

初日の出を拝んだ後、スピカのメンバー達で神社へ初詣に訪れた。

 

「でもなんだか嬉しいな」

「何がですテイオーさん」

「去年はアスラン休養で一緒に正月を過ごせなかったでしょ?

こうやって一緒に初詣が出来て嬉しいなって!」

 

屈託のない笑顔を見せるテイオーに自分も微笑み返す。

 

ふと視界にとあるものが入る。

 

「テイオーさん、あれは…?」

「ああ、あれ?絵マだよ。願い事をウマ娘の形をした木型に書いてお願いするんだ。」

「よーし!絵マ書こうぜ絵マ!」

 

ゴルシの一声で一人一枚絵マを取り、机に向かう。

 

(こっちでも絵馬は絵マなのか…)

 

くるくる裏返しながら絵馬を眺めているとマックイーンが声をかける。

 

「アスランさん、絵マを見るのは初めてですか?」

「そうですね。何回か神社には来てるはずなんですがこうまじまじと見るのは初めてで。」

「絵マはその昔、神前にて走りを奉納したウマ娘にちなみ定着したとされておりますわ。

シニア級になるアスランさんも、神バにあやかり願い事を書いたらいかがでしょう。」

「わかりました。」

 

ペンを受け取り再度絵マを見る。

 

(…何を書こうか…)

 

走りに対する願い事と言っても書くことは限られる。

何でもかんでも神頼みは違う気がするし、

 

それに…

 

 

『お前何もわかってないな。

今のお前には決定的に『()()()()』が足りない。

それを会得しない限り、今日みたいな結果が続くぞ?』

 

 

 

…シリウスから言われた忠告が頭をよぎる。

 

少し考えた後、ペンを走らせた。

 

『新しい自分になってみせます サクラアスラン』

 

「書けましたか?」

「はい。ちょっと吊り下げてきますね」

 

そう言ってスピカのメンバーといったん別れた。

 

 

 

参道から外れたところに吊り下げ、みんなのところに戻ろうとすると、ワッと歓声が聞こえる。

 

歓声のした方へ向かうと、

 

「…流鏑馬?」

 

年長のウマ娘が走りながら矢を射っていく光景が目に入る。

 

やっぱ馬がいないから流鏑馬もこうなるか、と暫く見物する。

 

(…たぶん、今の自分はあの流鏑馬の矢なんだろうな。)

 

ふと、そんなことを思う。

 

矢が綺麗に当たれば小気味いい音と歓声が上がるが、

一度(ひとたび)外すと…

 

 

ボスッ

あぁ~

 

 

鈍い音と落胆のため息がでる。

 

3冠ウマ娘たる自分に求められるのは勝利のみ。

如何に善戦しようとそれ以外は求められていない。

 

(今年一年、気張らないと。)

 

再度決意を新たにしたところで、テイオー達の下へ向かった。

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