年が明けてしばらく経つが、シリウスからの
もちろんテイオーはじめスピカのメンバー達全員に相談してみたが、明確な言葉は得られなかった。
スズカに至っては
「もっと速くなれば問題は解決するわ」
と『レベルを上げて物理で殴る』みたいなことを言われ、
トレーナーからも「あまり気にしすぎるな」となだめられる始末だった。
(あのシリウスが『決定的に』とまで断言するぐらいだから何か見落としているはずなんだが…)
カフェテリアで頬杖をつきながらスマホで自分のレースを何度も見返す。
「…ねえアスランちゃん。」
「んー?」
「食事の時はスマホいじるのやめたら?お行儀悪いよ。」
顔を上げると同じ席に着くタイキスチームがジト目でこちらをにらんでくる。
「あー…ごめん。」
そそくさと頬杖をやめてスマホをしまい、若干冷めたニンジンハンバーグを食べる。
「最近アスランちゃん変だよ、ずっと自分のレースばかり眺めて。
スマホやタブレットはほどほどにってテイオーさんたちに怒られたんじゃないの?」
「流石に前みたいに寝る間も惜しんでやってはないよ。」
「ランチ食べる暇は削るくせに?」
「……ごめんなさい。」
ぐうの音も出ない正論を言われ素直に頭を下げる。
スチームからすれば心配というのもあるだろうが、
折角お昼に誘ってくれたのにその相手がずっと難しい顔してスマホを見ていたらいい気持ちはしないだろう。
「いや、有馬記念の後にシリウス先輩から意味深なこと言われてさ、どうもモヤモヤしたままで」
「なんて言われたの?」
「『お前には決定的に足りないものがある』って。」
「ふーん?」
スチームが顎に手を当てる。
「10着だった私からすれば、あの有馬で2着に入っているだけですごいと思うけど…」
「とはいえ今の自分は善戦よりも勝たなきゃ意味がないんだ。
どこぞの小説でもあるでしょう?
『勝利か、より圧倒的な勝利か』って。」
「うーん…」
アスランの言葉を聞いていたスチームは少し迷ってから口を開く。
「…オーラとか?」
「オーラ?」
「なんかこう…歴代の3冠ウマ娘ってパッと見ただけで『凄い!』って思えるけど、
地味というか…」
「…ひどくない?」
忌憚のないスチームの意見が胸に突き刺さる。
「あっ!で、でも
同室の私はアスランちゃんが口を開いたら覚悟が決まっててカッコイイって分かってるから!」
スチームのフォローが傷口に塩を塗り込む。
もはやライフはゼロである。
「でもいい線じゃないかなって。
普段からオーラが出てると一目置かれるし、レースでも相手の牽制になるんじゃないかな。」
「それは…まあ、一理あるか…」
「ほら、あんな感じにアスランちゃんもオーラマシマシにしてみたら?」
「あんな感じ?」
スチームが指さす方向を見る。
「貴様。王自ら野菜をくれてやるのだ、感謝するといい。」
「ははーっ!ありがたき幸せ!」
…目線の先ではオルフェーヴルが取り巻きの子にトマトを
「…違うと思う。」
「そう?」
「なんや、新年早々覇気のない顔やな。」
後ろから声がしたので振り返ると、
「ああ、ハーンか。明けましておめでとう。」
「ハーンちゃん新年おめでとう!」
「今年もよろしくたのむわ!」
快活に笑うオーケーハーンがいた。
テーブルのスペースを空けてハーンを含めた3人が膝を突き合わせる。
「新学期早々気難しい顔してどうしたん?」
「ちょうどいいや、ハーンにもちょっと聞きたいんだけど―」
事のあらましを説明する。
「ふーん。足りないものかー。」
「なんか心当たりない?」
「せやなぁ…一つあるで。」
「本当に!?」
思わずガタッと立ち上がって身を乗り出す。
「路線は違えどウチはあんたのライバルや。分からないわけがないやろ。」
「ハーン…!」
胸の奥がジーンと熱くなる。
やはり持つべきものは心通ったライバルなのだと実感する。
「アスランに足りないもの…それは…」
「それは?」
自分だけでなくスチームもゴクリと唾を飲み込む。
「胸やろ?w」
「どの口が言ってんだこのちんちくりん」
「あぁ!?」
「やるかぁ!?」
「ふ、二人とも喧嘩は…」
あわあわとスチームがアスラン・ハーンの第n次草原戦争を止めようとする。
「大丈夫だってスチーム。ちょーっとこのアホに2000mでお灸を据えるだけだから」
「なにナチュラルに自分の得意な舞台を用意してんねや!?
きっかり
「そっちこそ手前の土俵に引きずり込む気マンマンやないか!?」
「ぜーたくな奴やなぁ!?じゃあ間取って1800m!」
「乗ったぁ!」
「だ、誰か止めてー!?」
*草原戦争
アスラン・ハーンのモチーフがそれぞれ騎馬民族のトルコとモンゴルであるため。
他意はない。