数週間後
Aテレビ都内スタジオ
「さあ始まりました『レース大好き芸人』3時間スペシャルー!!!」
「「「いぉいしょぉ~!!!」」」
拍手と歓声と共に特番の収録が始まった。
何回かトーク番組やCMには出させてもらったが、バラエティー番組は初めてなので緊張で若干顔がこわばっている。
「いやぁ保登さん。素晴らしい企画をありがとうございます。」
「何を言うてん海島、あんたが一番やかましかったんやからな。「レース企画まだか!」言うて」
「いやいや、ここにいる全員が同じ思いですよw」
「そうですよ!ようやく船橋で絶賛活躍中のウチの娘を紹介できる!」
「親バカがすぎるて佐井さんw」
ドッとひな壇や客席から笑いが起こる。
つられて少し笑うぐらいには緊張は和らいだ。
「そして今日は!スペシャルゲスト来てますから。
現役の3冠ウマ娘、サクラアスラン選手です!」
「よろしくお願いします。」
大きな拍手と黄色い歓声が聞こえる。
「アスラン選手この番組結構見てるとお聞きしましたが」
「そうですね、『運動神経悪い芸人』とか『踊りたくない芸人』とか好きですね。」
「ちょっと!?自分が歌って踊れて走れるからってそんなw」
「おいおいおい今の問題発言問題発言w」
「なんやウマから目線かあんたw」
「アスランさん、それウマハラですよw」
「上手いこと言うたつもりか寸志w」
一斉に立ち上がって抗議するひな壇の皆様。
「い、いやいや!自分だってダンスどちらかと言えば苦手なんですから」
「winning the soulのセンターで完璧に踊ってるイメージなんやけど」
「そりゃ応援してくださるファンの皆さんにはお見苦しい姿見せられませんから。
テイオーさんのスパルタダンス教室もなんのそのですよあはは」
「目が、目が笑ってないですアスランさんw」
「何があったんや…」
「今日はアスランさんにも色々とアンケートにお答え頂いておりますので、よろしくお願いします。」
「はい!」
「最初のテーマはこちら!『レースあるある』!」
と、結構賑やかな雰囲気で収録が進む。
テイオー達スピカのメンバーがいればもっと盛り上がったかもしれないが、大勢でぞろぞろ行くわけにはいかないと固辞された。
一人ぐらい来てくれても良かったんだけどなぁ…
…
「―というわけで『みんなが選ぶ名レース集』でしたが…アスランさんどうですか?」
「そうですね。1位のオグリさんと、2位のテイオーさんの有馬はやっぱ鉄板ですね。
特にテイオーさんのは自分も病院でめちゃくちゃ応援してました。」
「そして!アスランさんのダービーと菊花賞もランク入りですよ!改めていかがです?」
「そうですね…自分はテイオーさんやスぺさん、ルドルフさんといった先輩方に比べれば未熟極まりないですが…
それでも、ファンや皆さんからこうやって評価されるのは嬉しいですね。」
「いやぁ~今のセリフテレビの前のイェニチェリ達が泣いて喜んでますよ。」
「…いぇにちぇりって何ですか?」
MCの保登さんから唐突に聞きなれない言葉が出てきて首をかしげる。
「あれ、アスランさんご存知ない?アスランさんのファンの愛称ですよ。」
「へぇ…!いや、初耳です」
そんなものがあるとは知らなかった…
これはあれか?ファンダムネームってやつか?
ワグネリアン*1みたいな。
「いかがでしょう、この際イェニチェリの名をアスランさんから公認してもらうってのは」
「いいですね!イェニチェリの皆さんいつも応援ありがとう!」
『祝!イェニチェリ公認!』←テロップ
自分にもファンの大きなコミュニティが出来ていることに驚きと熱い思いを自覚する。
(三連敗は防がなければ…イェニチェリのみんなにお見苦しいところを見せたくない!)
「そんでですね、今日アスランさんが出演するってんで多くのイェニチェリからファンレターが届いてるんですよ。」
少し自分の世界に入っていた所を保登さんの言葉で引き戻される。
「折角なんで1通紹介しますね。」
「ありがとうございます。嬉しいです。」
『ファンネーム:アジメク 564歳女性
どどどどどーすんの?どーすんの??』
……?
「えっと…それは?」
「さあーなんでしょうねー?」
「いやいや、じゃあなんでそれ選んだんですか。
プロデューサーの可児さんも首傾げないでくださいよ?」
よくわからない状況でカンペが出る。
「えー…あっ、どうやらアスランさんはここまでのようですね。」
「え?あっはい?」
この後特に予定はなかったはずだけど…?
あれか、未成年は深夜テレビ出演できないって労基法で決まってたしそれ関連かな?
「ではアスラン選手最後にカメラに向かって一言」
「は、はい。」
気を取り直して口角を少し上げてカメラを見る。
「いつも応援ありがとうございます。これからも」
「「「たのもー!!!」」」
「な、なんだ!?」
するとそこへ威勢のいい掛け声とともに作務衣と法被姿のスピカのメンバー(ゴルシのみアメフト選手の格好)が乱入してくる。
「うおー!スピカの皆さんやー!」「スズカさーん!」「ゴルシー!」とひな壇や客席から歓声が飛び交う。
「あ、あのテイオーさん?なぜここに?」
「アスラン、ちょーっと我慢してね?」
「はい?」
テイオーが向き直ると同時にアスランの四隅がガッツリホールドされ、
「え?ちょ?何を」
「さぁーさ!アスラン神輿のお通りだー!」
「「「おおー!」」」
「んーまーっまーっまーっまーっまーっ」
「いやちょ何をして
今日スカートだから持ち上げないでぇぇぇ!?!?」
祭のお神輿みたいに地下駐車場まで担がれて、
「そぉい!」
「ぐはぁ!?」
停めてあった車の中へ放り投げられた。
車内にいたカメラマンがアスランを画角に収める。
「何なんですか!?わけわかんないっすよ!?」
「ようアスラン。ど派手な登場だな。」
起き上がって声のした方へ顔を向けると、
「し、シリウスさん!?何がどうなって、え?」
とてつもなく悪い顔をして笑ってるシリウスシンボリがいた。
よくよく見たら車も高級車っぽい感じがする。
「まあ要するにお前は騙されたってわけだ。
お前ら。あとは任せな。」
と、シリウスが車外のスピカのメンバー達に声をかけると、親指を立てて応える。
テイオーに至っては「頼んだよ、シリウス!」と念押しする。
「何なんすか、シリウスさんまでスピカの毒牙にかかったんですか!?
後もう分かりましたよ。『ビビり-1グランプリ』ですね!?
んな手の込んだことよくもまあ。
じゃあスタジオに戻りますんで」
ガチャと車のドアを開ける。
「あっ!アスランさんが逃げようとしてる!」
「ゴルシお願い!」
「クラウチ!バインド!セット!」
「お前それアメフトじゃなくてラグb
ぐぎゃぁ!?」
リーチ並のタックルをかまされて車の中に押し戻される。
「おいおい、逃げられるとでも思ったのか?」
「え?
…え?」
単なるドッキリではないことを悟り思考が停止して固まる。
そこへカメラマンからインカムを手渡される。
『―えーアスラン選手ー聞こえますかー?』
「保登さん!?ちょっとこれ…え?」
『えーこれからですね、アスラン選手には試練が待っていると』
「いやいやいや!急すぎますって!?」
『因みに今回のこれ我々はスピカさんからの案をそのままやっただけですんで』
「いやあの話が違いますって!帰してくださいよ!?」
『アスラン選手』
「はい!?」
『…ごめんね♡』
「ちょっ…「ごめんね♡」じゃないんですよ!?
年端もいかぬ中学生を先輩方と大人達が寄ってたかってこんなことを!
訴えますよ!?
Aテレさんごと訴えますからねこのおかっp」
〈中継終了〉
「アスラン選手、スタジオとの中継もう切れてます。」
カメラマンからの言葉にへなへなと座席にへたり込む。
高級車だからか座席がフワフワなのが妙にムカつく。
「…分かりましたよ分かりましたよもう。
煮るなり焼くなりどこへでもお好きにどーぞ」
「ほう?物分かりが早くていいな。
じゃ、これなくすなよ。」
そう言ってシリウスから小さな冊子のような物を投げ渡される。
空中でキャッチして表紙を見る。
【日本国 旅券】
「……………は?」
「じゃ、じいや。手筈通りに。」
「はい、シリウスお嬢様。
羽田空港第3ターミナルへ向かいます。」
いや
ちょ
あの
「…どこ連れてく気なんやぁぁぁぁぁぁ!!!!???」
…叫びむなしく黒塗りの高級リムジンは羽田へ向かっていった…
カメラマン『アスラン選手、カメラに向かって一言。』
アスラン『いえーい!イェニチェリのみんな見てるー?
なんか海外に行くことになったんで応援よろしくお願いしまーす!
あははははははは!』
終
映像・著作
Aテレビ
スチーム「アスランちゃんが壊れちゃった…」
ハーン「流石やお笑いおん、見事な芸人魂や…」