芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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アスラン「スプリンターズどうだった?」
作者「もう競馬やめる」(2ヶ月ぶり6回目)


執着の理由

翌日

教室に入ると昨日以上の質問攻めにあった。

 

今回に関しては理由は明白だ。

学園中の至る所に『サクラアスランはチームスピカが頂いた!』という内容の張り紙が貼ってあるからである。

聞くところによると、今日の朝早くに某怪盗3世の格好をしたゴルシと某イタズラの王者の格好をしたテイオーが張り紙抱えて学園内を疾走する姿が目撃されたとか。

あの愉快犯どもめ…

 

ただ同期達の間だと、スピカは「リギルほどじゃないけど(イロモノの)強豪チーム」との認識らしいので、結果的に実力者の一人として認知されるようになった。

 

なので「今度走ろうよ」とか「世代の代表だね」とか「私たちを牽引して」とか色んなことを言われた。

こうしてみると悪い気はしない。

 

午前中の座学が終わり、昼食を食べようかと教室を出ると、一人のウマ娘が立っていた。

 

「…お前が今回の騒動の原因を作ったサクラアスランか。」

 

キリッとした目つきに腕を組んだエアグルーヴだ。

 

「エアグルーヴ先輩。剥がした大量の張り紙はどうしますか?」

「ああ、ひとまとめにして紐で縛っておいてくれ、あとで資源ゴミに出す。」

 

ちょうどそこへ美化委員と思しき生徒がさっきの張り紙を抱えてエアグルーヴに話しかけ、指示が飛ぶ。

 

そしてこちらを向き

「まったく面倒な事を起こしてくれたものだ…」

と、ゴゴゴという効果音が出てきそうな表情で俺を睨む。

 

「ち、ちがいます!?自分は何も関わってません!?」

「たわけ!問答無用だ、生徒会室に来い。会長がお待ちだ。」

 

あっこれ死んだわ。

 

 

 

 

 

 

「会長。サクラアスランを連行してきました。」

「ありがとう、エアグルーヴ。下がってくれ。」

「はい、失礼します。」

 

俺はそのまま生徒会室に連れられ、ルドルフと対峙する。

エアグルーヴが部屋を後にすると、ルドルフから「立ち話もなんだから座ってくれ」と促され、ソファに座る。

 

とりあえずルドルフに事の経緯と自分は何も知らなかったことを伝えると、「ふむ…」と相槌を打ち、表情を崩す。

 

「そう緊張しないでくれ。事の次第は分かった。エアグルーヴには私から伝えておこう。」

 

(許された…)

そう思いホッと胸を撫で下ろす。

 

するとルドルフはおもむろに張り紙を手にし、「ところで…」と問いかける。

 

「この張り紙に書いてある内容は事実かい?」

「はい、テイオーさん達に勧誘され、入部を決めました。」

「『決めた』のでは無く『決めざるを得なかった』の間違いではないのかい?聞くところによるとかなり強引な勧誘だったと聞くが。」

 

さっきまでの穏やか空気は消え失せ、張り詰めた空気が支配する。

 

「いくらテイオーといえど、本人の希望を無視した脅迫同然の勧誘を容認するわけにはいかない。スピカの沖野トレーナーやテイオーには私から話しておこう。」

 

声に若干のドスが入り、耳は後ろに倒れている。

 

アカンキレてらっしゃる。

 

「お、落ち着いてください。確かに拉致同然の勧誘をされましたが、スピカに入るのは納得しています。」

「あの様な極限状態では正常な判断は出来まい。君はその場の雰囲気に呑まれただけだ。」

 

確かに一理ある。

やはり少し考え直すべきか…?

 

「前にも言ったが、君は私の側にいるべきだ。私が君を百獣の王(アスラン)の名に相応しいウマ娘にしてみせよう。」

「…」

 

なんとなく

ルドルフの魂胆が分かった。

 

「…自分はリギルに入りたいとは一言も申していません。」

「…なに…?」

 

ルドルフは2代目が欲しいのだ。

『皇帝』の名を受け継ぐ『自分の代わり』を。

 

「自分は世代の代表になりたい訳でも、王になりたい訳でも、ましてや皇帝になりたい訳でもありません。」

「では何故君は中央(ここ)にいる。『唯一抜きん出て並ぶものなし』とは君にとって何を意味する。」

 

ルドルフの鋭い眼光が俺を貫く。

 

憧れ(テイオー)に勝つことです。」

 

そう言い切った。

ルドルフはキョトンとした顔を見せる。

 

「テイオーに勝つにはテイオーに一番近い所で学ぶのが効率的です。」

そう言葉を続ける。

 

するとルドルフは「あっはっは」と豪快に笑い出す。

 

「そうか、そういうことか。得心がいった。」

笑いを抑えながら言葉を捻り出し、息を整える。

 

「そういう事なら私はもう何も言わない。君の決断を尊重しよう。」

「…!ありがとうございます。」

 

礼を言いつつ頭を下げると以前と同じようにルドルフが俺の頭を撫でる。

 

「チームは違えども君は私が認めた後輩だ。何か困ったことがあったらいつでも言ってくれ。」

 

さっきまでとは異なり、とても優しい声色で語りかけてくる。

 

「もちろん、リギルに入りたいというのならいつでも歓迎するぞ。」

 

懲りないなあ…

いや冗談で言っているのか、微笑みながらルドルフはそう言った。

 

「君の選抜レースを楽しみにしている。」

「ありがとうございます。」

 

部屋から退出する前、ルドルフはそう声を掛けた。

俺は礼を言って部屋から出て、生徒会室の外にいたエアグルーヴに頭を下げてからその場を後にした。




その頃トレーナー室では

東条「…」
沖野「い、痛い!悪かった!無理矢理アスランを勧誘して悪かった!だから無言で殴んないでくれ!?」
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