芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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今更ながらウイポにはまりました。

パラドゲー以上に時間が溶けます。
助けてください。
(↑遅れた理由)


郷に入っては郷に従え

ドバイに到着した翌日。

いよいよ海外遠征が始まる。

 

合同練習は夕方からと聞いているので、昼食を摂った後ホテル近辺の地図を眺める。

 

(練習までに軽くランニングして体をほぐそう。)

 

折角の海外なのだから街並みも見て回りたいのと、練習前のウォーミングアップを兼ねて外に出ることにした。

半袖のランニングウェアに着替え、スポドリと非常用のスマホを持ってホテルから出る。

 

 

「…あっつい!!!」

 

外に出て10秒でホテルのエントランスへ出戻った。

 

()()』からではなく『()()』からである。

 

 

ドバイを含むアラビア半島は砂漠気候に属し、降水量が極端に少ない。

つまり日差しを遮る雲がなく、直射日光が突き刺さる様な熱を肌に感じるのである。

 

さらに雨がないため湿度も低く、カラッとした空気となっている。

日本がサウナならこちらは電気ストーブの暑さである。

 

おまけに乾燥しているため砂漠で暖められた空気が熱砂と共に街中に吹き込み、体感温度は跳ね上がる。

 

これで摂氏25℃前後だというのだから恐ろしい。

 

夏に行こうものなら灼熱地獄が待っている。

 

 

(ど、どうする…やめるか…?いやでも現地の中東勢はこんな中でも練習しているだろうし…)

 

エントランスで腕を組んで悩むも、再度入口に向かう。

 

(『郷に入っては郷に従え』だ。

砂漠のレースに慣れるには荒療治も…!)

 

「ストーップ!ストーーップアスランさん!!!」

 

意を決して外に出ようとしたところへ南坂トレーナーが駆けつけて制止させる。

 

「あ、南坂トレーナー。」

「アスランさんそんな恰好でいったいどちらへ!?」

「あーいや。練習前にランニングをと」

「砂漠の昼間に外に出るのは自殺行為ですよ!?」

「すみません。ウォーミングアップは必要だと思いまして」

「う、うーん…」

 

アスランの返答を聞いて頭を抱えて唸る南坂トレーナー。

 

「…沖野さんから聞いていた通りですね…」

「はい?」

「『アスランはオーバーワーク気味なところがあるから勝手に自主練しそうになったら止めてくれ』と忠告されてまして。」

「うっ…」

「それで、エントランスのスタッフに日本のウマ娘が一人で出かけようとしたら知らせてくれ、と頼んでいましたので…」

 

フロントに目をやると、若い男性スタッフと目が合ったが、サッと目線をそらされてしまった。

 

「…何で自分が日本人だとあのスタッフ分かったんだろう?」

「当たり前ですよ。

()()()()()()外に出ようとしたら誰だって分かります!」

 

南坂トレーナーがアスランを慌ててスタッフから見えないところへ連れていくところで気づく。

 

(そうか、イスラムの戒律か!)

 

イスラム教の教義の中に「女性は親しい男性以外に肌を見せてはならない」とある。

男女の交流に厳格なイスラムの特徴であり、国によっては外国人(異教徒)であっても守らなければならない。

 

ドバイは比較的世俗化しておりそこまで厳しいわけではないが…

 

「…流石に半袖短パンはアウトでしたね。皇居外周をランニングするんじゃないんですから」

「分かってくれましたか」

 

ホッと南坂トレーナーが胸をなでおろす。

 

「ひとまず練習時間まで部屋でゆっくりしていてください。

練習では長袖長ズボンのジャージと、ヒジャブを着用してきてください。」

「…分かりました。熱がこもるので長袖は好まないんですが…こればかりは仕方がないですね。」

 

肩をすくめてひとまず納得の表情をすると、南坂トレーナーが「おや?」とつぶやく。

 

「今私が言った服装には、アスランさんが思っている以上の効果がありますよ。」

「?」

「まあ…夕方になったらわかります。」

「???」

 

意味深な言葉に首を傾げながらも部屋に戻った。

 

 

 

 

その日の夕方

 

 

「では皆さん揃いましたね。練習場所へと向かいましょう。」

 

アスラン、レッド、ガーランドの3人とシリウスがそれぞれバンに乗り込み、練習場所へ向かう。

 

そして練習場所に着いて車から降りたところで、南坂トレーナーの言葉を理解する。

 

「…昼間より全然過ごしやすい…!」

 

日が傾いたことにより日差しが弱まり、刺すような感覚はない。

それでも日本と比べれば日差しは強いが、長袖長ズボンと頭を覆うヒジャブが体を守ってくれる。

 

そして、長袖長ズボンの最大の利点は

 

「…あとなんか思ったより寒い」

「当たり前ジャン!冬なんだから!」

「…まあアスランもすぐ慣れるよ」

 

『防寒』である。

 

日中は強い日差しにより地面が熱せられるが、夜になると地中の熱が放出されて気温が下がる「放射冷却」が起こる。

放射冷却は空気が乾燥していたり雲がなかったりすると、より強く熱が放出されるため、冷え込みが一層強くなる。

 

結果、ドバイの昼と夜の寒暖差は10℃以上のものとなり、防寒着が必要なレベルとなる。

 

「当日のドバイターフは夜の19時ごろ発走です。アスランさんはナイターレースは初めてでしたね。

 

しばらくは夜に重点をおいた生活にシフトしていただきます。

夜に一日のピークを持ってこれるよう調整していきましょう。」

「分かりました!よろしくお願いします。」

 

南坂トレーナーの言葉に頷く。

 

(郷に入っては郷に従えとは正にこのことか…)

 

 

 

ドバイターフまであと数週間。

 

砂漠の大一番に向けて、備えを進める。

 




アスラン「つまり昼間はクーラードリンクが必要で、夜はホットドリンクが必要ってことか!」
ガーランド「?」
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