沖野トレーナーの後を追い、練習場へ向かう。
「じゃまずはアップからだ。ペアを作ってくれー」
練習自体は普通の運動部といったところか。
ランニングに筋トレにインターバル走に…
後アニメでもあったツイスターもやった。
ホンマにこれ意味あるんか…っ(脇腹つった)
「それじゃ今日の仕上げだ、上がり3Fを測るぞ。」
そう言われスペやウオッカ達が3Fを爆走する。
やっぱ速いなあ。
「最後はアスランとスチームだ。位置に着いてくれ。」
俺とスチームは6のハロン棒のところへ移動する。
「アスランちゃん。」
「ん?」
「本気でいくよ。」
「おう!」
いつに無く引き締まった表情を見せるスチーム。
そう言えばスチームと走るのは初めてだな。
春の心地良い風が体を包む。
「はじめ!」
トレーナーの合図と共に駆け出す。
先頭はスチームで1馬身離れて俺がつく。
(やっぱいい走りするな…)
客観的に見てもそう思う。
一歩一歩が豪快で推進力がある。
所謂『ストライド走法』というやつだ。
対する俺は足の回転を早め、歩幅は短い。
所謂『ピッチ走法』だ。
徐々にスチームとの差が開き始める。
「あれ、アスランさん遅れ始めてませんか?」
スペシャルウィークがそう声を上げる。
するとテイオーが「スペちゃん分かってないなー」と言い、沖野トレーナーもうんうんと頷く。
「俺やテイオーが
(…今!)
残り2Fで直線に入ったところでタイミングを図る。
俺はスッと息を吸い、右足に力を入れる。
ドッと風を切る音が変わる。
直線で『ピッチ走法』から『ストライド走法』への切り替え。
これが俺の基本的なレーススタイルだ。
怪我をした左足のことを踏まえると、足首への負担が少ないピッチ走法は最適だ。
ただ、負荷が少ない反面、歩数がどうしても多くなってしまうため、スパートやトップスピードの維持が難しい。
そう考えるとストライド走法で速度を維持したいが、左足の事を考えると難しい。
そのため、理学療法士さんと相談して編み出されたのが『両方を使い分ける』やり方だった。
これなら両方のいいとこ取りが出来る。
問題は、俺の場合切り替える際、必ず右足から踏み切る必要があるため、どうしてもその時に思考を割かなくてはならないし、タイミングをミスるとピッチで稼いだ加速力を殺すことになる。
この前のテイオーとのレースでトレーナーに言われるまでこの弱点に全然気づかなかった…
理想はディープインパクトの様にストライド走法かつピッチを早くする『二刀流』だが、今の俺には無理。
スピードを上げてスチームに追いつき、そのまま追い抜く。
追い抜く際、スチームが驚きの表情をみせる。
そして俺が先にゴール板を駆け抜け、続けてスチームがゴールする。
タイムを計測していたトレーナーからピュウと口笛が出る。
「二人ともお疲れ!息を整えながら集合してくれ。」
俺は息を整え沖野トレーナーの元へ歩いて行き、少し遅れてスチームも来る。
「あ、アスラン、ちゃん…、ゼェ、は、速い、ね…」
息も絶え絶えにそう話しかける。
「いやスチームもいい走りだった。また走ろう。」
「そ、そう、だ、ね…」
互いに労いの握手をする。
「お疲れ様。アスランの当面の課題は走法のスムーズな切り替え。スチームはパワーとスタミナの底上げだな。」
そう言いながらトレーナーがストップウォッチを見せる。
サクラアスラン:36.7
タイキスチーム:38.9
「これが今のお前達の実力だ。常にタイムは意識しろ。その一秒を削り出すんだ。」
どっかの大学の駅伝監督みたいなことを言って話をしめた。
「それじゃーダウンして上がってくれ。みんなお疲れ!」
「あっ、トレーナー!アスラン借りていい?」
そう言ってテイオーが俺の方へ来る。
「アスランこの後時間ある?見せたいのがあるんだ!」
「わ、分かりました。」
「ニシシ!じゃーちょっと行ってくるねー!アスラン行くよ!」
「あっ、ちょ、スチームは」
「私は大丈夫だよ、アスランちゃん。先に寮戻ってるね。」
俺はそのままテイオーに引っ張られながら学園の外に出た。
『その一秒を削り出せ』
東洋大学 酒井監督