芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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物語の都合上、あるウマ娘の呼び方が変化しています。


You can do it! 三人称視点

アスランがテイオーと語り合っている頃。

 

(…はあ…)

タイキスチームはため息をつきながら校内を歩いていた。

 

沖野トレーナーの号令で解散した後、寮へ向かう間ずっと難しい顔をしていた。

 

スピカでの練習が合わなかった訳ではない。

だがアスランとの差を感じずにはいられなかった。

 

同室の同期が強豪チームからスカウトされ、著名な先輩達から目をかけられて一歩も二歩も先に進んでいるという現実が、スチームに劣等感を植え付けていた。

 

(…あとなんかテイオーさんがちょっと怖かったんだよな…笑ってるのに圧が凄いというか…)

 

そんな事を考えながら3女神像の前まで来て、また大きなため息をつく。

(チームどうしよう…スカウト来るかな…)

暗い顔して3女神像を見る。

 

すると

 

「Heeeeeeeeeey!そこのプリティガーーーーーーーール!!!」

 

ものすごい勢いで一人のウマ娘が駆け寄って来る。

 

「ぎゃあ!な、何?何事!?」

「カワイイ子がそんなにため息してたらハッピーが逃げて行きマース!スマイルスマイル!」

「ど、どうも???」

 

突然の事態に混乱するスチームだが、不思議と嫌悪感は無かった。

 

「あの…どこかでお会いしましたっけ?」

「Oh、まだ自己紹介がまだでしたネ!ワタシはタイキシャトルデース!」

「た、タイキスチームです。」

「これはサプラーイズ!?同じ『タイキ』デース!あなたからはシンパシーと()()()()()()()を感じマース!」

「わ、私もです。不思議ですね。」

「ところで…ナゼスチームは暗い顔をしていたのデスか?同じ『タイキ』同士!力になりマース。」

「え、ええと…」

 

スチームは一瞬、初対面の先輩に相談することだろうかと思ったが、不思議とこの先輩には何でも話せそうだ、という安心感があった。

 

ポツリポツリと今思っていることを話始める。

シャトルも黙ってその話に真剣に耳を傾ける。

 

「…つまり、スチームはそのお友達に置いて行かれたような感じがするのデスね?」

「はい…」

「ワタシも難しいことは言えませんが…一つ言えるのは、あなたは焦り過ぎデース。」

「焦り?」

「まだ選抜レースも始まっていないのデスからチームやトレーナーが決まっていないのは当たり前デース。そのお友達がちょっと特殊なだけデス。」

「でも…」

「ウーン信用してまセンね?」

 

シャトルは少し考えると「Ok!」と声を上げる。

 

「ちょっとワタシについて来て下サーイ!」

 

シャトルはスチームの手を握り、練習場へ向かう。

 

 

「ーと、言うわけでトレーナーサン!この子をリギルに入れて下サーイ!ワタシがお世話しマース!」

「…ルドルフに続いてタイキまで…今年は一体どうしちゃったのかしら?」

 

シャトルはスチームを東条トレーナーの元へ連れて行った。

東条トレーナーは正直乗り気では無かったが…ルドルフがアスランを見出した前例があるため、無碍にも出来なかった。

 

東条トレーナーは持っていたタブレットでスチームの情報を見る。

 

「…とりあえず走りを見てからね。タイキスチーム。今から上がり3Fを走ってもらうけどいいかしら。」

「は、はい!」

 

スチームは6のハロン棒の所へ向かう。

さっきスピカで計測した3ハロンが頭をよぎる。

 

「用意…始め!」

 

東条トレーナーの号令と共に駆け出す。

先程とは違い、後ろから足音は聞こえず、風を切る音だけが聞こえる。

 

残り1ハロンの時点で息が上がり始める。

元々スピカで体験練習した後のため、体力はもう尽きかけていた。

 

(…やっぱり…私は…)

 

そう思った刹那

 

「スチーム!!!You can do it (あなたなら出来る)!!!」

シャトルの檄が耳に届く。

 

「!わあぁぁぁぁっ!!!」

 

雄叫びを上げながらスピードを上げ、ゴール板を駆け抜ける。

 

東条トレーナーがストップウォッチを止め、驚きの表情を浮かべる。

 

「…タイキ…いえ、シャトル。あなたこんな子どこから見つけて来たのよ。」

「フフーン、ヒミツデース。」

「答えになってないわよ。」

 

息を整えながらスチームが東条トレーナー達の元へ向かい、「た、タイムは…」と問いかける。

 

「…タイムを教える前に、あなたに聞きたいことがあるわ。

 

あなたの夢は何かしら。」

 

東条トレーナーはそうスチームに問いかける。

 

少しだけ考え、スチームは「2つあります」と答える。

 

「一つはティアラ…憧れの『樫の女王』の座。そしてもう一つは」

 

顔を上げ、東条トレーナーとシャトルを見る。

 

親友(ライバル)に並び立つ…いや、勝つことです。」

「…結構。十分すぎる答えを貰ったわ。」

 

東条トレーナーはそう言い、手を差し出す。

 

「タイキスチーム。あなたをチームリギルにスカウトします。私の前で夢を言った以上、必ず達成してもらうわよ。」

「スチーム!良かったデース!明日からよろしくデース!!!」

「わ、私がリギルに…!?」

 

困惑の表情を浮かべるスチームに東条トレーナーがストップウォッチを見せる。

 

タイキスチーム:37.0

 

「デビュー前でこれだけの数字が出せるなら十分だわ。」

 

さらに困惑が大きくなる。

スピカで計測した時より1秒以上早くなっているのだ。

 

(シャトル先輩のおかげ…?)

 

するとシャトルがスチームにハグをする。

 

「そんな顔しないで下サーイ!スチームは今日からワタシのカワイイ後輩デース!一緒にガンバリましょう!」

 

(ここでなら…)

 

そう思い、スチームは改めて東条トレーナーを見る。

 

もうそこには困惑の表情を浮かべる、気弱な少女はいなかった。

 

「タイキスチーム!今日よりお世話になります!」

 

差し出された手を握り返し、そう答えた。




後日 トレーナー室

沖野「ちょっとおハナさん!?タイキスチームは俺が最初に見つけ出したんだけど!?」
東条「あら、サクラアスランを拉致って強引に勧誘したのはどこのどなただったかしら?」
沖野「んぎぎぎぎ…」
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