「…私がカノープスに…ですか?」
「ええ、いかがでしょう。」
選抜レースが終わった後、南坂トレーナーはエイトガーランドを呼び止め、話していた。
「今日のレースの勝因はなんだと考えますか?」
南坂トレーナーがガーランドに問いかける。
ガーランドは少し戸惑いながらも答える。
「…ええと…今日のレースはアスランと同じ組になってしまったので、彼女のレーススタイルをできる限り思い出しました。
彼女はコーナーで外に出てから直線で一気にスパートをかける感じ…なので、コーナーでその進路を塞げば…と…」
南坂トレーナーが驚愕を表情を浮かべる。
「…思った以上の逸材ですね…」
「で、でも!この作戦は私がアスランより前にいるのが前提で、彼女が出遅れでもしない限り成功しなかった作戦です!」
「でも実際アスランさんは出遅れ、あなたはその作戦を確実に実行した…違いますか?」
「そ、それは…」
ガーランドは言葉につまる。
「…私は劣等生です。アスランのような素質はないし、瞬発力もない。世代の代表としてキラキラ輝く彼女と、教室の片隅でレースの本を読んでいる私とは全然違う…」
南坂トレーナーはガーランドの本音に黙って耳を傾ける。
「ゲート体験で格の違いを思い知った。神様は不公平だと思った。…悔しかった。負けたことだけじゃなく、
…だから必死に勝つ方法を探しました。弱い私が、強い相手に一矢報いる方法を!
…でもできたのは…相手の
ガーランドの頬に涙が流れる。
彼女なりに必死に考えたのだ。
『普通のウマ娘』が『傑物』に勝つ方法を。
しかし出来上がった作戦は自分の力でどうこうするものではなく、相手のミスに便乗するお粗末な作戦だった。
もしアスランが通常通りスタートダッシュに成功していたら、間違いなく成立しなかっただろう。
ガーランドの話を聞いた南坂トレーナーはゆっくりと語りかける。
「『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
かの有名な孫子の兵法です。
自分の力量と相手の実力を理解すれば、負けることはない…といったところでしょうか。
競技ウマ娘としてレースの世界で生きる以上、どうしても先輩や格上の相手と戦わなければならないときは必ずあります。
そうした時に重要となるのがさっきの考えです。
実力だけではどうしようもない時、作戦や戦略がそれを補う力になります。
あなたはこの考えを既に持ち合わせています。
デビュー前…いえ、ジュニア級でここまでできる者がどれほどいるのか…
あなたは決して『劣等生』なんかではありません。
仮にアスランさんを『素質の塊』とするなら、あなたは『才能の塊』です。」
ガーランドの胸の奥が熱くなる。
『劣等生ではない』
その言葉がどれほどガーランドの心を揺さぶったことか。
そして南坂トレーナーは片膝を地面に付き、手を差し伸べる。
「改めてあなたに伺います。
カノープスにて、その力をもっと伸ばして見ませんか?
『大穴』の底力を見せてやりませんか?」
さっきまでの弱々しい目つきではなく、瞳の奥に炎が灯ったような目をガーランドはしていた。
「…エイトガーランドです。…私を、強くして下さい。」
ガーランドが手を握ろうとした瞬間、
「おーーーーーーい!トレーナーーーーー!」
猛烈な勢いでツインターボと…もう一人、赤い髪のウマ娘がやってきた。
「あっ!トレーナー!シンジンを泣かせたな!?」
「いえそうではなく…ターボさん、そちらは?」
「うん!ターボが見所あるシンジンを連れてきてやったぞ!」
エッヘン!と胸を張るツインターボ。
呆気にとられるガーランドと、「別に頼んでいませんが…」と苦笑いをする南坂トレーナー。
そして件のウマ娘が前に出て頭を下げる。
「初めまして!レッドビーチボーイです!よろしくジャン?」
「ターボと同じ大逃げでなんか
「おっす!ターボパイセン!世話になりますジャン!」
「…今度は『可能性の塊』も来ましたね…」
南坂トレーナーは頭を抱えながらも入部を許可した。
こうしてカノープスに
『才能の原石』エイトガーランドと
『可能性の卵』レッドビーチボーイの
デコボココンビが誕生した。
なおレッドとガーランドの仲は良い模様。