芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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1枠 1番 9番人気 サジタリオ
2枠 2番 6番人気 アクィラスター
3枠 3番 1番人気 サクラアスラン
4枠 4番 2番人気 メタルペガシス
5枠 5番 3番人気 アイアンレオーネ
6枠 6番 5番人気 サーペントフレイム
6枠 7番 4番人気 タニノカプリコーネ
7枠 8番 8番人気 サンラチェルタ
7枠 9番 11番人気 リブラソニック
8枠 10番 7番人気 シャーペルセウス
8枠 11番 10番人気 ディープパイシーズ


メイクデビュー 京都 芝 1800m

パドックへと進み舞台裏へ入る。

 

舞台裏には自分と同じ組の子が集まっていた。

緊張し顔がこわばっている子、手のひらに人の字を書きまくって飲む子、鼻息荒くウズウズしている子など様々だ。

 

順番に枠番と番号、名前が呼ばれ、観客の前へ出る。

 

『3枠3番1番人気 サクラアスラン』

『非常に落ち着いていますね、芝のコースで期待通りの結果が出せるのか注目です。』

 

「確かスピカ所属の…」

「もうデビューとは」

「早熟タイプか?」

 

観客からそういった会話が聞こえてくる。

 

俺はそんな声には目、いや、耳もくれずに一礼し、足早に舞台裏に戻る。

周囲の評価なんざ気にしたらもう負けだ。

 

とにかく自分の走りに徹する。

そしてテイオーとの約束を果たす。

 

それだけだ。

 

 

 

「…なんかアスランのパドックやけに早く終わらなかったか?」

「でもさっきより落ち着いてましたよ!」

 

ウオッカとスペがそう会話しているとテイオーがひょこっと現れる。

 

「アスランなら大丈夫!だってボクの自慢の後輩だもんニ!」

「さ、スタンドいくぞお前ら。」

 

そう沖野トレーナーがみんなを促す。

 

「テイオー。」

「ん?」

「…大分先輩らしくなってきたな。」

 

トレーナーはそう口角をあげてテイオーを見る。

どうやらテイオーがアスランに何かやったことはお見通しのようだ。

 

「ニシシ!当然!」

エッヘン!と胸を張るテイオー。

 

「あ、トレーナー。スタンド行く前にインフォメーション寄っていいかな?ちょっと予約したいことがあって。」

「うん?」

 

 

 

 

『お待たせいたしました。京都レース場第5R。メイクデビュー芝1800m。11人が出走します。』

 

ファンファーレの後に実況のアナウンスが響き、全員がゲートに入る。

今日は細江さんいないのな。

 

一瞬の静寂に包まれる。

静かにもう一度深呼吸する。

 

『スタートしました!』

 

ガシャンと音が鳴ると共に視界が開ける。

 

…以前スズカさんは『目の前の景色に飛び込むのが楽しみ』と言っていたが、気持ちが分かった気がする。

 

涼やかな緊張感と一面に広がる青々とした芝の舞台。

 

通常の陸上競技とは違う、圧倒的な世界が俺を待っていた。

 

『先頭は1番サジタリオと10番リブラソニック、逃げを打っていきます。

2馬身後方に2番アクィラスターと3番サクラアスラン、10番シャーペルセウス、8番サンラチェルタ。ここまでが中段グループ。

3馬身離れて4番メタルペガシス、7番タニノカプリコーネ。

半馬身離れて6番サーペントフレイムと11番ディープパイシーズ。

しんがりは5番アイアンレオーネ。

以上の順となっております。』

 

先頭は逃げが2人いてお互いにハナを譲る気配はなく、あっちがスピードを上げればこっちも…

といったたたき合いが起きており、後ろの中段グループもつられる子が出始める。

 

ここはつられたら絶対にダメだ。

 

京都は3コーナーに坂…『淀の坂』がある。

そしてこのレースは外周の1800m…

つまり向こう正面の直線を目いっぱい使ったある意味タフなコースだ。

 

調子に乗ってこの長すぎる直線で体力を使うと…

 

『さあ先頭集団は3コーナーに入り高低差4.3mの坂に挑みます。

ここで先頭2名が失速!やはり掛かっていたようです。

つられてペースを上げていた10番シャーペルセウス、8番サンラチェルタ、4番メタルペガシスもペースを落としています。

1000m通過タイムは59.6。かなり早いペースとなりました。』

 

千直*1やった直後に登山やるようなもんだ。

そりゃそうなる。

あのザッピングの特訓も意味のあるものだったのだと感じる。

 

もうバテている子達を横目で見ながら追い越していき、坂をゆっくり上る。

 

『ここで先頭は3番サクラアスランに変わります。

間隔は1馬身ほどですが後続は追いつけるか?』

 

かつての鉄則なら『ゆっくり上ってゆっくり下る』のがセオリーだが…

 

『さあ3番サクラアスランに続いて2番アクィラスターと6番サーペントフレイム。

そして最後尾だった5番アイアンレオーネが追い上げてきます。』

 

やっぱ簡単には勝たせてくれないか。

下り坂のスピードでタイミングがぶれないようにして…

 

(…今!)

 

『4コーナーを過ぎて直線に向いてきました。

先頭は依然サクラアスラン…

 

おおっとサクラアスランがギアを上げた!

1馬身ほどだった間隔が2馬身3馬身とどんどん伸びていきます。

2番手サーペントフレイムは追いつけないか!

 

先頭は3番サクラアスラン!

これは文句なし!

 

今堂々とゴールイン!』

 

ゴールした瞬間、観客席から歓声と拍手が湧く。

 

『1着は3番サクラアスラン!見事な走りを見せてくれました。

2着は6番サーペントフレイム。3着は5番アイアンレオーネ。

勝ちタイム1:48.1。上がり3F34.2。

確定までお待ち下さい!』

 

スタンドをちらりと見るとトレーナーとスピカメンバーが満面の笑みを浮かべており、「お疲れー!」「おめでとう!」といった声が聞こえた。

 

(まずは1勝!)

 

スタンドに一礼し、地下誘導路へ向かう。

 

 

 

「おーいアスラン!」

「テイオーさん!」

 

誘導路にはテイオーがいた。

 

「初勝利おめでとう!」

「ありがとうございます!」

 

満面の笑みを浮かべる師弟。

 

「さて!レースの後はライブだよね!

ライブは全レース終了後まとめて行うから気を抜いちゃだめだよ!」

「ライブ…?」

 

満面の笑みが消え、一気に顔が青ざめる。

 

「…まさか、忘れてた?」

 

レースとは違う冷や汗が全身から出てくる。

 

するとテイオーは俺の肩にポンと手を置く。

 

「…キミはこのダンスの達人テイオーさまの後輩だよ…?

踊れないとは言わせないよ…?」

「て、テイオーさん、か、肩痛いっす」

 

顔は笑っているが耳は後ろに倒れ、ギュウと肩をつかむ。

 

「…でも安心して!まだライブまで時間あるから

ボクがミッッッッッッチリレッスンしてあげるね!」

 

そう言いながら襟首をつかみ、ズルズルといつの間にか用意してあったレッスンルームへ引きずられていった。

 

 

そして宝塚記念出走直前まで鬼コーチの指導のもと、歌とダンスを完璧に叩き込まされた…

 

ライスの心配?

 

出来るわけないやろ!!!(逆ギレ)

*1
直線1000mレース。

有名なのは新潟競馬場のアイビスサマーダッシュ




なお

テイオー(アスランまだ悩んでいる感じだな…ここはやっぱり身体を動かしてスッキリするのが一番だよね!)

テイオーが一枚上手だった。
(ただアスランが全くライブの練習していないのは想定外だった模様)
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