芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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勝負服喫茶

しっちゃかめっちゃかな合宿が終わり、2学期が始まる。

 

ほぼ毎日炎天下の中でトレーニングしたため、ある程度スタミナや瞬発力は向上したと思う。

 

ただ、遠泳しまくったおかげで綺麗な水着焼けとゴーグル焼けが出来、合宿後に寮に戻ったらスチームに大爆笑され、フジキセキからは保湿クリームと伊達眼鏡を渡される始末となった。

 

そんなこんなで2学期…つまり秋競馬のシーズンだ。

出走予定の芙蓉ステークスは9月後半…9月30日と決まった。

 

合宿で鍛えたことを実戦で活かせるよう集中せな…

 

そう気持ちを新たにスピカの部室に入ると、毎度おなじみウオスカコンビのにらみ合いが始まっていた。

 

「今年はリギルもやってた執事喫茶で決まりだろ!?」

「何言ってるのよ!メイド喫茶一択でしょ!?」

 

口喧嘩する2人の横であわあわとするスペを見つけ、近くに寄る。

 

「スペさんお疲れ様です。

…どう言う状況で?」

「あっ、アスランさん!お疲れ様です!

今、今年の感謝祭の出し物を話し合っているんだけど意見がまとまらなくて…」

 

あーなるほど、その時期でもあるのか。

去年はテイオーのミニライブで、テイオーやルドルフと運命的な出会いをしたっけか。

 

…気付けばあれから1年か。

リハビリ期間は必死だったし、入学後も毎日が刺激的で短くも濃い1年だった。

この世界に来てから結構な月日が経つんだな…

 

「アスランちゃんはなにか意見はありますか?」

物思いにふけているとスペから話しかけてられ、思考を戻す。

 

同時にウオッカとスカーレットがこちらをバッと向く。

 

「アスランは執事喫茶だよな!一緒にタキシード着てバシッと決めようぜ!」

「アスランはメイド服が似合うわよ!カワイイ服着て可憐に決めましょう!」

 

再びにらみ合いうなり声を上げる2人。

 

「えーっと…ほ、他の方の意見も重要かと…?」

「テイオーさんは「踊れるならなんでもいいよー」と言ってリギルの方へ行っちゃいましたし、ゴールドシップさんは「よしならアタシは歌舞伎の衣装持ってくんぜー」とどこかへ…」

 

そうスペが答える。

嗚呼いつものスピカだ…

 

「ちなみにスペさんは?」

「私は食べられるならなんでもいいです!」

「節操なさ過ぎません?」

 

ツッコミが…ツッコミが足らん…

よしタマモをスピカに勧誘しよう。(混乱)

 

…正直その感謝祭の1週間後に芙蓉があるからあまり思考を裂きたくないんだが…

 

うーんと顎に手を当て少し考え、口を開く。

 

「…いっそ勝負服着てやったらいいじゃないですか?」

「あーアスランは新入生だから知らないかもだけど…」

「勝負服は特別な時にしか着られないって決まりがあるのよ。」

「じゃあ『勝負服のコスプレ』とかどうです?」

「アスランさんそれって?」

「つまりですね、他の人の勝負服のコスプレならおもろいんじゃないかと。

例えば…

ウオッカさんはギムレットさんの勝負服とか、スカーレットさんはタキオンさんの勝負服をコスプレしてみるって」

「「ちょっと借りてくる!!!」」

 

言い終わらないうちにすごい勢いで部室から出て行った。

 

「アスランさん…私は…?」

「スペさんはマルゼンさんとかですかね」

「マルゼンさーん!服貸して下さーい!!!」

 

スペも猛烈な勢いで走って行った。

 

…あれこの感じだと俺はテイオーの服か???

 

そう思っていると沖野トレーナーが入ってくる。

 

「…なんかさっきスペ達が全速力で走り回ってたけど…?」

「あ、トレーナーさん。

…えーっとですね…」

 

とりあえず事情を説明すると

「中々いいアイデアじゃないか。今年はそれでいこう」

と、『勝負服コスプレ喫茶』で確定した。

それでいいのかこのチーム。

 

ここでトレーナーがポンと手を叩く。

 

「良い機会だ。お前も勝負服着てみないか?」

「テイオーさんのですか?」

「そうじゃなくてだな…」

 

トレーナーの提案に耳をかたむける。

…なるほど、面白そうだ。

 

 

 

感謝祭当日

 

開店前にもかかわらずスピカのコスプレ喫茶には結構な行列が出来ていた。

 

ちなみに先頭にいるのはタキオン・ギムレット・ルドルフ(親ばかトリオ)だ。

 

「…ちょっと混みすぎだな…」

トレーナーが頭を抱える。

 

「ねートレーナー。これもう開店しちゃった方が良くない?」

「…そうだな。よし、テイオー。アスラン連れて開店の挨拶してこい!」

「了解!ほらアスラン!緊張してないで早く行くよ!」

「ま、まだ心の準備が…」

 

テイオーが俺の手を引き店の前に出る。

 

「お待たせしました!『スピカ喫茶』開店でーす!」

 

ルドルフの勝負服のコスプレをしたテイオーが行列の前に出て、アピールする。

 

ルドルフをはじめとしたお客さんはテイオーを見るが…すぐにその隣にいる俺を見る。

 

「そして!今日はサプライズとして、アスランの『正式な』勝負服お披露目でもありまーす!

ほらアスラン。挨拶挨拶!」

 

とんと背中を押され、客の前に出る。

 

すぐ目の前にはルドルフがいた。

 

「アスラン…それが君の勝負服か?」

「は、はい」

 

 

俺の名前はアスラン(Aslan)

トルコ語にて『獅子』を意味する言葉だ。

 

そのため、名は体を表すがごとく、中東トルコをイメージした服装となった。

 

上は桜色のベストに太ももの上らへんまである白いガウン…

トルコの民族衣装である「カフタン」だ。

 

下は少しゆったりとしたズボンである「シャルワール」

 

ベストとシャルワールには金の糸でアラベスクが刺繍され、腰に巻いているベルトにはライオンのレリーフがあしらわれている。

 

サイドテールには小さい「フェズ」

 

そして右肩にはルドルフ・テイオー同様に赤い片マントがなびく。

 

…こんなんファンタジーの世界やん。

 

 

「…綾羅錦繍とはこのことだな。とても良く似合っている。」

 

ルドルフが感嘆の声を上げた。

他の客からも賞賛の声が上がる。

 

「今日はこの勝負服を着てお披露目しながら接客します。

それでは、開店します!」

 

 

 

…ピークが過ぎ、少し落ち着く。

不意に「アスラン」と呼びかける声がした。

 

「…ルドルフさん…こう言ってはなんですが、まだいらしたので?」

「いや、すまないね。私の勝負服を着たテイオーがあまりにも似合っていたのと…

君の素晴らしい姿を目に焼き付けたかったからね。」

「恐縮です。」

 

そう言って頭を下げるとポンポンと頭をなでる。

 

「今日はコスプレという扱いだが…実際に勝負服を着てみると違うだろう?」

 

ルドルフの言葉にこくりと頷く。

 

恥ずかしさもあるが、自然と身が引き締まる思いだ。

 

「本来その勝負服が着られるのはG1レースだけだ。とすれば次に着ることとなるのはホープフルステークスだろう。

困難な道のりではあるが…君ならば必ずや乗り越えられると信じている。」

「ありがとうございます。」

「まずは1週間後の芙蓉ステークスか。健闘を期待している。

…私を落胆させないでくれよ?」

 

すごみのある声に対し、「はい!」と元気よく返事する。

 

ルドルフはフッとほほえみ、頭をなでて席を立つ。

 

「長居して済まなかった。

テイオー、私はこれでおいとまさせてもらうよ。」

「えーもうちょっといてよカイチョー!

今ボクが紅茶いれてあげるからさー」

「…もう5杯めなんだが…」

 

 

…フライングではあるが勝負服を着て、いよいよ戦いは近い。

 

ジュニア戦線に突入だ!




タキオン「スカーレット君はカワイイねぇ。私の服も着こなすとは流石だねぇ」
ギムレット「ウオッカの格好良さが世界にばれちまったな…」
マルゼン「スペちゃん激マブよ!!!」

アスラン「すみませーんお客様。もう閉店のお時間でーす」
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