芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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1枠 1番 3番人気 マブリングビーナス
2枠 2番 1番人気 オーケーハーン
3枠 3番 9番人気 シルクカープ
4枠 4番 7番人気 シルバーライス
5枠 5番 6番人気 ホワイトマヨネーズ
5枠 6番 5番人気 ソトヤマケ
6枠 7番 10番人気 ベースボールアワー
6枠 8番 8番人気 イーストランド
7枠 9番 11番人気 ミラクルラブリー
7枠 10番 2番人気 サクラアスラン
8枠 11番 4番人気 ラーフミール
8枠 12番 12番人気 ミルクガール


東京スポーツ杯ジュニアステークス 東京 芝 1800m

東京スポーツ杯ジュニアステークス当日。

 

パドックに集まった出走者達を見渡す。

流石G3といったところか、緊張感が一段違いぴりっとした空気が肌に触る。

上を目指す者達特有の熱気にあふれており、正しく「めんたまギラギラ」といった状態だ。

その中でも異彩を放っていたのは…

 

『2枠 2番 1番人気 オーケーハーン』

『良い物を持っていますね。G3を連覇している彼女にとってもこの府中のコースは合うでしょう。』

「しゃぁ!府中でもテッペン取ったるで!!!」

 

あふれ出る闘志を抑える気も無いハーンが大声で気合いを入れる。

ハーンのファン達もその熱気を後押しするかのように歓声をあげる。

 

(…やばいかもな…)

やる気に満ちたハーンを見て率直にそう思う。

しかもあっちは内枠、こっちは外側だ。

 

…ただ、勝算がない訳ではない。

俺の予想が正しければもしくは…

 

「アスラン!」

と、不意に呼びかけられる。

 

「よう逃げずにやってきたな。辞世の句は出来とるか?」

不敵な笑みを浮かべ、こちらを挑発するハーン。

 

「その言葉そのまま返すよ。良い勝負にしよう。」

「…ほぼ無反応やないか!?

まあええわ。

今日こそ吠え面かかせたるからな!覚悟しとき!」

そう言って一足先に地下通路へ向かって行った。

…まあああいう挑発はシリウスで見慣れてるからな…

 

 

 

 

『お待たせしました。本日のメインレース。

東京第11R 東京スポーツ杯ジュニアステークスG3 出走時刻となりました。

出世の登竜門でもあるこのレースを制するのは果たして誰か。

12人が出走します!』

 

ファンファーレの後に実況のアナウンスが響き、全員がゲートに入る。

いつも見ていた府中のターフに自分が立つ日が来るとは。

もう一度深呼吸する。

 

『スタートしました!』

 

ゲートが開くと同時に飛び出し、まず内側を狙う。

 

『好スタートを切ったのは10番サクラアスラン、先頭争いには加わらず3・4番手につけました。

ハナをとったのは1番マブリングビーナス。そのすぐ後ろに3番シルクカープ。

3番手争いは接戦、10番サクラアスラン、6番ソトヤマケ、8番イーストランド、7番ベースボールアワー、この4人が一団となって進んでいきます。

2馬身離れて5番ホワイトマヨネーズと11番ラーフミール、内側に一番人気の2番オーケーハーン。

後方集団は4番シルバーライス、9番ミラクルラブリー、12番ミルクガール

以上の順となっております。』

 

うまくスタートダッシュに成功し、中段グループに位置する。

内側で虎視眈々とゴールを見つめるハーンがどう動くか…

 

『大ケヤキを過ぎて4コーナーへ、ここから各選手の駆け引きが熾烈になります。』

 

最終直線に入ろうかというとき、

「よっしゃぁ!エンジン始動や!!!」

後ろから大声が聞こえた。

 

―来た

 

『おおっと!2番オーケーハーンついに動いた!

内側から物凄い勢いで上がってくる!』

 

風切り音が変わったのが分かる。

ちょいちょい後ろから抜かれた子達の「ムリー」って声も聞こえる。

…よしここからは俺の…

()()()()()()()ハーン(ルーキー)に見せてやるよ。

 

『そして10番サクラアスランもギアを上げた!一気に先頭に躍り出る!』

―まず()()()()ギアを上げて先頭に立ち、ハーンの狙いを俺に絞る。

 

「はっはー!ウチと末脚勝負ってか!その喧嘩買った!」

ハーンがさらにギアを上げて競ってくる。

 

―次にハーンがぎりぎり追いつけるぐらいのスピードに調整し、ハーンを少し先行させる。

『オーケーハーン凄まじい末脚だ!先行集団をごぼう抜きして先頭に立った!』

 

―そのすぐ後ろを追走し、プレッシャーを掛ける。

(…っ!追い抜いたと思ったんに引き離せへん!?

でもこのままなら1着はウチのもん…っ!?)

 

―末脚使いまくった後に高低差2mの坂はきついだろう?

高低差がほとんどない札幌と新潟に慣れすぎたな。

 

彼女のレースを研究していた際、新潟では2着との差が3馬身以上あったのに札幌だとハナ差まで詰められていたからもしやと思ったがその通りだった。

こいつは「直線の末脚に頼りきっている」

直線が長いかつ高低差のない新潟ではこれ以上ないほど適正が合うし、直線が短くても高低差がない札幌ならジュニア期でもゴリ押しで勝てただろうが…

他場での戦い方が通用するほど競馬は甘い世界じゃない。

 

なにより

 

(…こちとら『淀の坂』と『中山の急坂』を経験済みじゃい!)

 

坂を登り切ったところで残りのギアをフルスロットルにし、ゴールを目指す。

―失速した草原の王など俺の敵ではない!

 

『サクラアスラン差し返す!サクラアスラン差し返す!

サクラアスランゴールイン!

残り200mの激しい攻防!制したのは10番サクラアスランです!

 

2着2番オーケーハーン、強い走りを府中でも見せてくれました。

3着は8番イーストランドが体勢有利か。

勝ち時計1:45.2。上がり3F33.9。

確定までお待ち下さい!』

 

どよめきと歓声が府中を包む。

 

はたから見ればこのレースは最終直線で先頭が何度も入れ替わる白熱したレース展開に写ったと思う。

今回は競馬民の付け焼き刃でなんとかなったが、現実の騎手の方々はもっと上手くレース運びをしただろう。

 

(なんにせよ初グレード制覇か…!)

ガッツポーズをしてスタンドに一礼する。

 

 

 

「…アスラン」

地下通路にて、ハーンから声を掛けられる。

 

「…完敗や。悔しいなんて言葉が出て来ないぐらいの完敗や。

『持ったまま』とはあのことを言うんやな…

笑いでもレースでも…ウチはあんたに敵わんなぁ…」

「ハーン…」

 

耳を前に倒し、今にも消え入りそうな気弱な声を出すハーン。

 

「…もし君が末脚以外の武器を隠し持っていたら意気消沈していたのは君ではなく自分だったと思う。

君の実力を本気で驚異的だと思ったからこそ研究と対策をし、1着を取りに行った。

『レースは始まる前から始まっている』とは良く言ったもんだよ。」

「アスラン…」

 

ハーンの前に進み出て、右手を差し出す。

 

「機会あればまた戦おう。

()()負けない。」

 

ハーンは少し目をつぶり、両手で自分の頬を叩いてから手を握り返す。

 

「おう!()()負けへんで!

 

『豊中のお笑いおん』!」

 

………what?

 

「えっと…?」

「あんたの芸名や!決勝戦で自分で言ってたやろ

『今日からアタシのことは『豊中のお笑いおん』と呼びや!』

って」

「」

「正直癪やったから本名で呼んでたけど…これからはあんたに敬意を表してそう呼ばせてもらうわ!

ほな後はライブで!」

 

そう言ってハーンは控え室へと駆けていった。

 

地下通路のひんやりとした空気が骨の髄まで染みるようだった。




後日

テイオー「おっはよーお笑いおん!」
トレーナー「おはようお笑いおん」
スペ「おはようございます!お笑いおんさん!」
ダスカ「あらお笑いおん」
ウオッカ「おうお笑いおん」
スチーム「おはよアスラ…お笑いおんちゃん!」
ライス「お疲れ様、お笑いおんちゃん」
シリウス「お笑いおん…www」
ルドルフ「アスラン…
いや、お笑いおん師匠!頼む!私にギャグを教えてくれっ!」

しばらく流行った
アスラン「いっそ殺してくれ」
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