芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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お待たせしました
プロットは出来ていたのですが細かい部分で難儀しまして…


喜劇の監督 三人称視点

1年前 韓国 とある街

 

学校からウマ娘達が語らいながら下校する。

 

「今日の授業で見た映画凄かったよねー」

「31馬身だって!とんでもないよあれ」

「やっぱアメリカはレベル高いなー」

「ねえねえ!エースもそう思うっしょ?」

 

1人がそう栗毛の同級生に話しかける。

 

「…もちろん!自分の生き様が映画になって、こうやって海を越えた私たちにも伝わるのだもの。

いつか私も…人々を感動させられるようなウマ娘に…!」

 

「あーまたエースが自分の世界に入っちゃった」

「みんなを感動させたいならアイドルや役者でもいいじゃん」

「それじゃヒトと変わらないっしょwww」

「エースーあんたどうせまた一人で自主練するっしょー?

あたしら先帰ってるよー」

 

そう言って同級生達は家路につく。

 

少し遅れて置いていかれたことに気付くと、いつも通り練習場所としている河川敷へと向かう。

 

くるぶし位まで雑草が生い茂る河川敷に着くと制服を脱ぎ、ジャージ姿になって走り出す。

 

同学年では上位の成績を誇るムグンファエースだが、ここ最近はスランプに陥っていた。

テコンドーで鍛えた足腰を武器に学年トップの座を譲らなかったが、KRAでのデビューに向け、体育の内容がタータントラックからダートに変わったとたんタイムが出なくなった。

 

そもそもタータントラックは走りやすいようゴムで作られた陸上トラックであるため、トラックが変わってタイムが()()()()落ちるのは珍しいことではないが…

エースの場合はそれがずっと続いていた。

フォームチェックをしてもらったり、走り込みを倍にしたり、KRAの選手達の走り方を真似たりしたが…結果は振るわず。

 

(私だって…私だって…!)

 

力強く足を踏み込み、橋の下をくぐり抜けて腕時計のタイマーを止める。

(…だめだ…半年前のタイム(タータントラックのタイム)にどうしても追いつけない…)

エースは顔を曇らせる。

 

(…私才能ないのかな…)

そう思い始めたところで「おーい」と橋の上から声がする。

 

頭を上げると橋桁に同じ栗毛で少し大人びたウマ娘がこちらを見ていた。

「そっち行っても良いかい?」と聞いてくるので頷く。

 

 

「いきなりごめんね。たまたま歩いていたら豪快な走りをする子が見えたもんだから…」

「は、はあ…」

 

河川敷に下りてきた件のウマ娘は開口一番そう言った。

ところどころ韓国語に日本なまりがあり、日本人であることが分かる。

 

「それで…日本(イルボン)の方が何のようでしょうか。」

「あれ?変なところあった?かなり勉強してきたつもりだったんだけど。」

「いえ、なんとなく…。叔父が日本出身なのでニュアンスからそうかなと。」

「あちゃー」

 

ころころと表情を変えておどける様に少しクスリと笑う。

 

「なんだ良い笑顔できるじゃん。」

「え?」

「…私が君に声を掛けたのはね…君が泣きそうな顔して鬼気迫る様に走るもんだから…

はっきり言って、見ていられなかったのよ。」

 

栗毛の先輩はそう言って心配そうな顔を見せる。

ここでようやくエースは自分がどんな顔をして走っていたのかを思い返す。

 

「国は違えども同じウマ娘だし…何か力になれないかなと思って…ね。

一応私はこっちのKRAに()()()()()()()日本から留学してきた身だから、走りに関してならアドバイスできると思うよ」

「ほ、本当ですか!?」

 

藁にもすがる思いのエースはその提案を爆速で受け入れる。

これには先輩も苦笑いした。

 

「走りを見る前に…君はさっきの走法は誰から教わったんだい?」

「ダートの走り方は教科書や学校の先生、あとレースの映像を見て真似したり…」

「…なるほど。そりゃああなるわけだ…」

「え?」

 

ポツリと出た言葉に疑問符が出る。

 

「…いいかい?今まで学んだこと、レースで見たことを全部忘れて私の言う通りに走ってごらん?」

「ええ??」

「いいからいいから、だまされたと思ってさ」

 

ここに来て訳分からないことを言い始めたため(この日本人騙そうとしてない?)と思い始めるも、とりあえず言われた通りに走ってみる。

 

 

―アドバイスは3つだけ。

…あれ…?

 

―上体は少し起こして、

…いつもより…

 

―足に力を入れず、

…めちゃくちゃ…

 

―つま先だけで走ってごらん?

…早く走れている…!?

 

 

「―どうだった?」

ゴールの橋の下に来た所でもう一度タイムを見る。

 

「…自己ベストです…」

「それは良かった!」

快活に笑う先輩。

 

(何なのこの先輩…!?一体何者なの…!?)

驚愕と畏怖の表情を向けるエース。

 

「今のが()()走り方だよ。

君の足首は細いから力強く踏み込む走りは向いてない。

多分ダートになれるために色々試行錯誤した結果、自分の走り方を見失っていたんだと思うよ。」

「芝ですか…」

 

芝という単語を聞いて複雑な気分になる。

なにせ…

 

「…韓国レースはダートしかない。

って顔してるね。」

「ひ、ひとの心読まないで下さい!」

顔を真っ赤にするエースと微笑む先輩。

 

「―だったら芝のあるところに飛び込めばいい。」

「えっ?」

「適正があるのにそれを活かせないのは不幸なことだ。

そうだな…それこそ、私の祖国である日本なんかどうだい?雑草まみれの河川敷(ここ)よりもはるかに走りやすいと思うよ?」

「か、簡単に言いますね…」

「そんな難しいことではないさ、必要なのは実績と自信だけさ」

「実績と自信…」

 

そうエースが呟くと先輩は夕日に照らされた赤い雲を見つめる。

 

「…私も主戦は地方だったけどね、トレーナーと話し合って中央に殴り込もうっていったんだ。

ムリだなんだって野次るやつもいたけど…そんなの関係ないね。

今までの競技人生と実績、なにより故郷の誇りを踏まえて、いけるって自信があったから。

 

下バ評を覆し、見る人に興奮と感動を与える。

 

それが私たちウマ娘でしょ?」

 

感動とも高揚感とも言える感情がエースの心からこみ上げてくる。

(この人なら…いや、この人しかいない…ッ!)

 

「あ、あのっ!」

「ん?」

「私を弟子にして下さい!」

「ええ?これは斜め上の反応…」

「お願いします!ここまで煽っておいて捨てるのは卑怯ですよ!」

「捨てるって…確かに煽ったのは事実だけど…

…まあ後輩を鍛え上げるのも強化委員の仕事って言えば本部にも通用するか…」

 

そう言うとエースに向き直し、目線を合わせる。

 

「じゃあそうしよう!

日本、いや、世界をあっと驚かせよう!

 

君の名前は?」

「ムグンファエースです!『木槿の精鋭』です!」

「じゃあエースだね。よろしく!

私は…

 

『オペラ』って呼んでもらえるかな?」

「はい!『オペラ先生』!」

「先生って…私君とそこまで年変わらな「お願いします!」分かった分かった。」

 

そうオペラ先生はエースをなだめ、頭をなでる。

 

「…まずはKRAでデビューして実績を作り、準備が整ったら日本に行くよ。

 

共に喜劇を作り上げよう!」

 

漢口に写る夕日は、稀代の役者と監督をスポットライトのように照らした。




Ps
F4が心配だ…
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