芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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緋色の誓い

2月に入り、医者からの許可もあり岩手での休養が終わった。

 

東京へ帰る際「このご恩は必ず返します」と言ったら、シリウスが

「ハッ、じゃあレースの結果で返して貰わないとな」と余裕の笑みを浮かべ、

執事からも応援の言葉を頂いた。

 

翌日、お土産にと大量に頂いた南部せんべいを携えてスピカの部室に入る。

 

「あっ!おかえりアスラン!」

「おうアスラン。治療に関するデータはシンボリの先生から聞いてる。

徐々に身体を慣らして、クラシック戦線に挑むぞ!」

「おかえりなさいアスランさん!

あっ!それお煎餅ですか?頂いてもいいですか!?」

「ただいま帰還しましたー。

…チームへのお土産なんで全部食べないで下さいね…?」

 

いつも通りの日常が出迎える。

この空気感に心地よさすら感じるのは、ここが俺の居場所だということだろうか。

自然と顔がほころぶ。

 

「ねえねえトレーナー!アスランは今日は練習するの?」

「いや、帰ってすぐという訳にもいかんだろう。今日はひとまず」

「じゃあオフってこと?オフだよね!オフでいいよね!?」

 

若干食い気味のテイオーの圧にトレーナーは負け、なんやかんやでオフになった。

 

「シリウスがアスランを連れてっちゃったからボクずっと遊びたくてたまんなかったんだよ?

と、言うわけで今日はボクにつきあってもらうよ!良いよね!?」

 

(…こう言うのは『質問』ではなく『同意の確認』なんだよなぁ…)

腕をがっつりつかまれ、門限までという言質をとったテイオーはそのままズルズルと俺を引っ張っていった。

 

 

 

 

 

 

 

テイオーより「ボクの行きつけのお茶屋さんに連れて行ってあげるよ!」と言われ京王線で都心へ向かう。

 

(お茶屋さんってあれか?ゴン○ャとかか?学生時代タピオカ飲みにサークル仲間と行ったな~

まあテイオーぐらいの女子学生なら好きそうだもんね。)

 

…そう思っていた時期が私にもありました…

 

 

 

 

 

渋谷区 松濤

 

「こんにちはー!マスター。

あっ、この子ボクの後輩!良いお茶を淹れてあげてね!」

「これはトウカイテイオー様。いつもご贔屓にあずかりありがとうございます。

そちらは確か…サクラアスラン様でいらっしゃいますね?ご高名はかねがね。

本日はごゆるりとお過ごし下さい。」

 

超高級住宅街として知られる松濤の一角にあるアンティークなカフェ…というか紅茶専門店につれて来られた。

 

…そうだった!?テイオーの奴こう見えて旧家のお嬢様だったわ!?!?!?

 

 

 

「うーん良い香り。これは…シッキムかな?」

「流石でございます。」

「えへへ~ボク利き紅茶はマックイーンにも負けたこと無いんだよね。

ほらアスランも遠慮しないで。どうどう?」

「た…トテモオイシイデス」

 

味の感想で『高い』がでるところだった。

いくらすんだこれ。

シンボリの屋敷でもこんな良いのなかったぞ???

てか俺どちらかといえばコーヒー派…

 

「…でも良かった。アスランが元気そうでさ」

「え?」

 

テイオーがティーカップをカチャリとテーブルの上に置く。

 

「怪我したって聞いた時、ボクすごく心配したんだよ?

ボクのせいで無茶させたんじゃないかって、胸がギュッと苦しくなったんだ。

『無敗の3冠』の夢を引き継いでくれたのは嬉しいし、自慢の後輩だよ。

 

でも…それで無茶して、走れなくなったらって思うと…ね。

走れないことの悲しさや悔しさ、つらさは誰よりも分かっているつもりだから…」

「テイオーさん…」

 

テイオーが俺の目を見る。

 

「アスラン。これだけは約束して。

 

『無敗の3冠』はボク達の共通の夢だ。

でもそれ以上に、無茶はしないで。

 

この夢がキミの重荷となり、怪我につながるぐらいなら、捨ててもらってかまわない。

自分の身を犠牲にしてでも目指す栄誉なんてあってはならない。

 

これはキミに夢を引き継がせた、ボクが言わなければならない言葉だと思う。

 

…約束してくれる?」

 

静かな、そして確かな言葉で俺に問いかける。

 

スッと息を吸い、テイオーを正面から見据える。

 

「もちろんです。

『無事是名馬』…けい…レースを走る者にとって、何よりも重要だと考えます。

 

ホープフルではトリッキーな戦術にかかり無理をしてしまいましたが…

そのあたりも含めて、自分の今の弱点だと受け入れます。

 

そして練習を重ねて、無茶をしなくても3冠をとれるよう鍛えるのが、今の自分がやるべきことだと考えます。

 

まだまだ未熟ですが…どうかこれからもよろしくお願いします。」

 

そう言って頭を下げる。

テイオーは少し驚いた顔をしたあと、ふふんと得意げな笑顔を見せる。

 

「とーぜん!

キミはボクの自慢の弟子なんだからね!

『無敵のテイオー伝説第二弾』を一緒につくりあげていこうね!」

「はい!」

 

互いに拳を突き出しグータッチをする。

緋色の湖面に2人の笑顔が映えた。

 

 

「失礼します。テイオー様、アスラン様。

お口直しにミルクティーはいかがでしょうか?」

 

気を遣ってカウンターに下がっていたマスターがティーポットとミルクポットを持ってやってくる。

 

「わーいありがとう!」

「これはすみません。ありがとうございます。」

 

マスターにお礼を言い、俺は空のティーカップに紅茶を注ぎ、次いでミルクを注ぐ。

それを見たテイオーはぴたりと動きが止まる。

 

「…アスラン…どうやらキミとはジッッッックリお話する必要があるみたいだね…」

「え?」

 




*ミルクティーの作り方

・ミルクを先に入れる
→ミルクインファースト(伝統的な作り方)

・紅茶を先に入れる
→ミルクインアフター(近年の主流)


マックイーン「―と、このように2種類あるのです。ミルクインファーストはイギリスの王立化学協会が認めた正しい飲み方ですのでお間違いのないよう」
大辞林「『一杯の紅茶があらゆる問題への答えである』といったところかしら」
うごんこ「では早速ティータイムにするネ!」
魔術師「ブランデーがあるとなおいいね」
少佐「まったくですな。コーヒーなどという下品な泥水を飲むやつの気が知れん」

ウオッカ「ウワーッ!紅茶党勢揃い!?」
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