芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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私のほうが
先に
目をつけた


WSM

ひとまずゲート体験が終わり、着替えて教室へ戻る。

 

今は新入生期間ということで基本団体行動となっているが、来週から行なわれる『選抜レース』に向け基礎固めを行なう期間でもある。

選抜レースが始まると各トレーナーによる勧誘・逆勧誘が活発となり、『実技基礎』―コーチの元でトレーニングを受ける子が少なくなる。

トレーナーが就かないとデビューすら出来ず、夢破れて地方トレセンか通常の学校へ転校となる。

1学期の終業式には1クラス分同期が減っているというのだから恐ろしい。

 

荷物を整理し、スチームと一緒に寮に帰る時も自然と『チーム』や『トレーナー』の話となる。

 

「チーム紹介やトレーナー一覧表渡されてもなんか実感わかないんだよなー。とりあえず『リギル』ってチームが強いってことぐらいしか分かんないや。」

「まああそこは上澄み…エリート中のエリートしか入れないと思うよ。」

「アスランちゃんでも厳しいの?今日1着だったじゃん。」

「あんなラスボスしかいないチームに入ろうとする奴の気が知れないって。」

 

女帝(エアグルーヴ)シャドーロールの怪物(ナリタブライアン)世紀末覇王(テイエムオペラオー)・鎌倉武…不死鳥(グラスワンダー)などなど。

あんなとこいったらそれこそケチョンケチョンにされちまう。

それにリギルにはそれこそ。

 

「ほう…『ラスボス』とは。中々手厳しい事を言ってくれるな。」

 

そうそう皇帝(ルドルフ)…が…

「君の姿が見えたから一声掛けようと思ったのだが…君は意外と歯に衣着せない物言いをするのだな。」

 

いるし。

 

「わぁ…!シンボリルドルフさんだ!

初めまして!タイキスチームと申します。」

「ああ、存じているよ。君の入学を心から歓迎しよう。」

 

スチームが耳をピコピコさせながら自己紹介する。

 

「さて…サクラアスラン。君が怪我を乗り越えこの学び舎に来ることを一日千秋の思いで待っていた。」

ルドルフがこちらを向き、話しかけてくる。

「中央へようこそ。」

 

「ありがとうございます」と頭をさげるとあのとき同様ルドルフが軽くなでる。

 

「あの…ルドルフ先輩とアスランちゃんは親戚かなにかで?よく見たら似ている…」

「いや、そういう訳ではないのだがな。アスランが無事入学できたと聞いて、一声かけようと思いこちらへ来たのだ。」

 

…なんかルドルフの目が少し怖いのだが…

 

「…今日のゲート体験のレースもトレーナーと共に見させてもらった。デビュー前にあれだけの走りができるのは中々いない。私の目と直感に疑いはなかったわけだ。」

「き、恐縮です。」

「トレーナーも高く評価していたので、もしアスランさえ良ければ君の言う『ラスボスしかいないチーム』に勧誘しようと思ったのだが…」

 

がっつり根にもってやがる。

さわやかな笑みを浮かべているが圧がすごい。

横でスチームが「アスランちゃんがラスボスに…!」と目をキラキラ輝かせている。

 

いやだから確かに実馬の血筋はエリート中のエリートだけど中身は一般人だって!

 

 

「へぇ…『良ければ』ねぇ…。無意識に独占欲ダダ漏れの奴が何言ってんだか。」

そう言って誰かが俺の肩に手を回し抱き寄せてくる。

 

「『公正明大』な生徒会長サマが新入生の青田買いとは…ずいぶんと汚いじゃないか。」

「なんだシリウスか。今は彼女と話しているんだ。彼女を離してくれ。」

「おおおっかねえ。そんなにこの『お気に入り』を自分のものにしたいのか?」

「シリウス…何が言いたい。」

「ハッ、悪いけどこいつは()()()()だ。上しか見ることが出来ない皇帝サマにこいつを渡すわけにはいかないな。」

 

…なんなんこの状況。

これ所謂『私のために争わないで!』ってやつでは?

スチームも「目の前で昼ドラが起ってる…!」ってさらに目を輝かせてるし。

 

「と、とりあえずお二人とも落ち着いてください。自分はまだチームを決めるつもりはありませんし。」

「「…そうなのか?」」

 

二人の声が重なった。

なにちゃっかりシンクロしてんだ。

 

「…分かった。本人がそう言うのなら無理強いはすまい。」

最初に引き下がったのはルドルフだった。

 

「今日のところはシリウスに免じて手を引こう。だがアスラン、もし気が変わったらすぐに私の所に来てほしい。」

強いまなざしでこちらを見る。

「君は卓越した才能を持っている。君の能力を引き出せるのはリギル…いや()だ。良い返事を期待している。」

 

そう言ってルドルフは校舎側へ歩いていった。

 

するとすぐ横で抱き寄せているシリウスからため息が出る。

「おまえも散々だったな、何の準備もなしにルドルフに絡まれて。」

「い、いえ…ありがとうございます。」

「…皇帝サマを批判した手前だが…チームやトレーナーは早めに決めておけ。早ければ早いほどデビュー戦に向けて対策しやすくなるし、仮にトレーナーとの相性が合わなくても修正がきく。」

 

おおシリウスが至極真っ当なことを言ってる。

 

「なにより自分の意思でチームを決めれば皇帝サマ直々の脅迫(勧誘)も無くなる。」

 

違った。

単にルドルフを煽って困らせたいだけだ。

 

「まあ合うチームがないってんならアタシのところに来い。後悔はさせないぜ?」

 

そう言い残し颯爽と立ち去っていった。

 

「アスランちゃんすごいね!モテモテだね!」

「…喜んでいいのかなこれ」

 

なんか皇帝対一等星の学内派閥闘争に巻き込まれた感がすごいんだけど。

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