芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

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山を越えた先

「ふーっ…ふーっ…」

 

ひたすら続く険しい登山道を息を切らしながら進む。

タオルで汗を拭い、再度前を見る。

 

「後…少し…!」

 

 

今回の夏合宿は一言で言えば『高地トレーニング』だ。

空気の薄い山中にて有酸素運動を行うことで、酸素の取り込みに負荷を掛け、持久力の向上を目指す。

 

山梨県のキャンプ場を拠点に、トレッキングやマラソン、雨天時は近隣のジムにある低酸素室で筋トレなど、ひたすら泳ぎまくった去年とは異なり、地に足を付けてトレーニングを続けた。

 

そして今回、トレーニングの集大成として登山に挑んでいる。

 

最初の内は川のせせらぎやセミの声を楽しむ余裕があったが、

今となっては目の前の道を見るのでいっぱいである。

 

(足にくるなぁ…)

 

左足に負荷が集中しないよう注意しながら大きな段差を乗り越える。

 

水分やらタオルやらが入ったリュックを背負っての登山は、筋トレしながらウォーキングしているのと同義だ。

 

足をいたわりながら少しずつ前へ進む。

 

 

 

 

 

木立の間を抜けると、開けた場所に着く。

 

「おっ、着いたかアスラン。」

「アスランお疲れ!」

「お疲れ様ですアスランさん!」

 

山小屋の前で先行していたスピカメンバーが出迎える。

 

どうやら頂上に着いたようだ。

 

「お疲れーアスラン!そこに座ってー!」

 

テイオーが駆け寄ってきて俺をベンチに座らせる。

 

「足は大丈夫?怪我とかしてない?」

「怪我は大丈夫です。足が棒のように疲れましたが…」

 

そのままベンチで談笑ながら休憩する。

 

「あっ!皆さん見て下さい!」

「どうしたスペ」

「雲がとれて目の前に富士山が!」

 

先ほどまで曇っていた景色が晴れ、雄大な富士山の姿が現れる。

 

「でけぇな!かっけぇな!」

「写真撮りましょ写真!」

「やっほー!」

 

大盛り上がりのメンバー達。

 

(富士山かぁ…5合目までしか行ったことないんだよな…

…いつか頂上へ挑戦してみたいな…!)

 

つられて自分も思わず富士山に思いをはせる。

 

日本一高い独立峰の頂上から見る景色は格別だろう。

何せ遮るものが一切ないのだから。

 

(…一番上からの景色か…)

 

富士山を見ている内にふと思う。

 

『三冠』という頂点にはどんな景色が待っているのか、と。

 

遮るものがない景色を見て何を思うのだろうか。

 

頂を極めた後に目指すべき先はあるのか…

 

「…皮算用も甚だしいか。」

 

そう呟いて少し笑う。

こういったことはたどり着いてから考えればいい話だ。

 

そんな自分の心中を知ってか知らずか、テイオーが富士山を見ながら話す。

 

「富士山ってさ、カイチョーみたいだよね」

「ルドルフさん…ですか?」

「一番高くて、カッコよくって、大きくて!

アスランもそう思わない?」

「なるほど…

まあ自分からすればテイオーさんもそうですけどね」

「えー違うよーアスラン。

ボクはカイチョーを超えるウマ娘になるんだから…そこはエベレストみたいって言ってもらわなきゃ!」

「またずいぶんと大きく出て…」

 

そう話している内に気付く。

 

富士山だけが、三冠だけが全ての頂点ではない。

恐らく山を越えた先には、また新たな山が見えているのだろう。

 

『1つの山を登り終えたらまた新たな山を目指せばいい』

とはシングレのフジマサマーチの台詞だったか。

 

俺も、そうでありたい。

 

 

「おーし、そろそろ下山するとすっか!」

「「「おう!!!」」」

 

ゴルシの号令と共に返事が飛ぶ。

 

「アスラン、下りの方が足への負担が大きいから気をつけてね」

「わかりました、テイオーさん」

 

自分もまた、テイオーと共に登山道を下っていく。

 

 

 

三冠と、その先を見据えるキッカケとなった夏合宿は、充実したものとなった。

 

 

 

 

その裏で、最大のライバルが苦境に立たされているとも知らずに。




すみません!遅れました。

…高頻度で更新する方ってホント尊敬します。
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