*チームカノープスのメンバーは特別な訓練を受けています。
ルドルフとシリウスに再会した翌日。
教室に入るとクラスメイトが集まってきて質問攻めにあった。
どうやらあの修羅場をピンク頭でツインテールの先輩が目撃したらしく、「あれが『
おいなにしてんねんあの
午前の座学が終わり、質問攻めからも開放される。
今日は午後の『実技基礎』は無く、『自習』となっている。
『自習』と銘打っているが、実際のところ各チームの『見学会』の時間だ。
新入生が興味あるチームのところへ出向き、話を聞いたりトレーニングを体験したりする。
人によってはこの時点でチームから『確約』がもらえるらしい。
ちなみにリギルは希望者に対してレースを行なわせ、良い結果が出たら初めて見学の許可がでるとか…
うんもうこの時点で空気が合わないわ。
あとアニメ名物『スピカの看板』とそれを模したポスターもあった。
話ぐらいは聞きたいしテイオーもいるから興味はあるが…
リギルほどではないけどスピカも十分魔境なんだよなあ。
テイオーはもちろん、
そういえばマックイーンとサイレンススズカは今こっちにいるのだろうか?
「それじゃアスランちゃんまた寮で!」
「うん、楽しんでおいで。」
今日スチームとは別行動だ。
お互い興味あるチームが異なった…のもあるが、こちらから提案した。
なんせここは『架空世代』だ。
誰が同期達の中から抜き出てくるか。
それを見極めるためにも同世代との関わりを増やした方がいいのでは…
と思い久々に一人で行動する。
各チームの部室が立ち並ぶエリアに来ると新入生達で賑わっている。
そしてその中の一つの部室にたどり着く。
『チーム カノープス』
ある種独自色は強いがアニメでも分かるように堅実かつ大胆な強さを持つチームだ。
ノックをして入ると…黒煙が視界を遮る。
そして盛大に咳き込みながらいつもの4人と…新入生と思しき子が
「だから私はやめなっていったの!湿気たクラッカーに無理矢理火をつけるのは危険だって!」
「おかしいですね…湿気たとしても火薬には違いないのですから私の計算に狂いはないはずです。」
「でも結果ドカーンってなったよ。こういうのもワタシは楽しいです!」
「そーだそーだ!マチタンのゆうとーりだ!」
…新喜劇かドリフかな???
「だ、大丈夫ですか…?」
「え、ええ…ビックリしました…」
同期と思しき子に近寄り声を掛ける。
顔と髪の毛が真っ黒になっているが特に火傷などはなさそうだ。
「みなさんお待たせし…なんですかこの状況は。」
そう言ってどん引きの表情を見せながら現れたのはカノープスのトレーナーである南坂トレーナーだ。
手には新入生向けと思われる資料を抱えており、『歓迎!チームカノープス!』の文字が見える。
「あっ、トレーナーさん助けてよーもうネイチャさんには手に負えなくってさー」
「手に負えないってなんだよー!ターボは新入生をクラッカーで歓迎しようとしただけだぞ!」
「でもそのクラッカーが湿気って音が鳴らないからイクノちゃんがライターで『カチッとな』したら」
「このような有様となってしまい…」
「…なるほど、だいたい分かりました。」
頭を少し抱える南坂トレーナー。
そして私達新入生の方を向く。
「折角来て頂いて申し訳ないのですが、この様な有様なので見学は中止し、空き教室でチームの概要を軽くご説明します。」
「あっ、じゃあターボも行きたい!ビシバシ鍛えてやるぞ!新入生!」
「…ターボさん達はまず真っ黒焦げになった部室の掃除が先です。」
目が全く笑っていない南坂トレーナーの圧に負け、ターボ達カノープス新喜劇は肩を落としながら部室に入っていった。
…
南坂トレーナーに連れられ空き教室へ向かう間、さっきまですすだらけになっていた新入生に話しかける。
「そういえば初めましてだったね。サクラアスランです。」
タオルですすを拭った新入生は少しだけ驚いた顔を見せる。
まだ少し顔が黒いが、栗色のショートカットに整った顔立ちが映える。
「…エイトガーランドです。よろしく。」
またしても知らない名前の子だ。
どっかで見たことある顔だったからワンチャン史実馬かと思ったのだが…
空き教室に着き、南坂トレーナーから資料が渡され説明が始まる。
説明自体はチームやメンバーの概要、トレーニングや一日の流れなど無難な内容だった。
説明会の終わりに、南坂トレーナーが「チームだけに限りませんが」と前置きし、話始める。
「今お二人は自分の夢や将来を鉛筆で下書きしている状態です。下書きなので消したり書き直したりできます。そして自分が『これだ』と思ったらその下書きをペンで清書していきます。清書は下書きとは違い簡単には修正できません。もしこのチームが皆さんにとって清書を書くに値すると思ったのであれば、遠慮無く門を叩いてください。うちはリギルやスピカのような強豪ではありませんが、中堅なればこその戦い方もあります。選抜レース次第ではありますがまたお二人に会える日を楽しみにしています。」
荷物を整えガーランドと共に帰路につく。
彼女は美浦寮のため途中までだ。
「ガーランドはカノープスに入りたいの?」
「…まだ決めた訳ではないけど良いチームかなとは思う。」
慎重な考えの持ち主のようだ。
「自分はどうするかな…」
とりあえず明日も自習だからスピカにでも行ってみるか…
と思考しているとガーランドから不意に話しかけられる。
「…リギルじゃないの?」
「ん?」
「あなたのこと私のクラスでも話題になってたよ。先輩方期待のルーキーだって。実際君は強いじゃない。」
「いやいや、自分にリギルは合わないよ。自分みたいな者が行けるチームじゃないって。」
そう顔の前で右手をヒラヒラして答えると、ガーランドがとたんに苦い顔を見せる。
「…謙遜もそこまでいくと嫌味にしかならないね。」
「いや謙遜もなにも」
「…やっぱり覚えてないね。私、君と『初めまして』じゃないんだよ。」
「…え?」
思考が止まる。
確かになんか見覚えあるとは思ったが…
もしかして転生する前のサクラアスランちゃんが地元で仲良くしていた子とかそんな感じか?
「…昨日のゲート体験。同じ組で走った。」
ここまで言われてようやく気付く。
昨日のゲート体験では失速したあの赤髪の子は6人中5着だった。
…この子はその赤髪の子すら抜けず
「ご、ごめんなさい。失礼なことを…」
「…いいの、君と私では住む世界が違うだけなのだから。」
ガーランドはそう少し寂しそうに笑った。
「…君は私…いえ
そう言って美浦寮の方へ立ち去っていった。
俺はしばらくその場で立ち尽くし、ふと頭の傷を触る。
俺は神様のいたずらか何かでこの世界に転生した『一般人』だ。
あの優駿達に太刀打ちできるとは到底思っていない
だが『他者』からの評価はどうか。
ガーランドやスチームはもちろん、
ルドルフやシリウスからも目をかけてもらっている。
後者2人はまた事情が異なるとは思うが、少なくとも同期からの評価は高い。
思えばここは『架空世代』…つまり『史実の名馬』がいない世代ということだ。
『私みたいな劣等生に合わせてくれても迷惑だから』
ガーランドの言葉が頭の中で響く。
「帰ろう…」
今日は色々あって疲れた。
少し早いけど部屋に戻って休もう。
そう思い歩き出そうとすると何か固くて柔らかいものにぶつかる。
それが人だということにすぐ気づいた。
「す、すみませ…」
顔を起こすとサングラスにマスクを付けた4人組が立っていた。
…あれなんかこれ見覚えが
「スカーレット!ウオッカ!テイオー!やーっておしまい!」
「ニシシ!了解!ゴルシ!」
「スピカじゃねーか!!!」
そして慣れた手つきで袋に入れられて担がれていった。
アスラン「いやこら拉致だよ!帰してくれよ!」
作者「じゃードライバーさん、千歳空港まで!」