10月10日
京都レース場
G1 秋華賞当日
ティアラ路線の最終戦となる秋華賞。
注目を集めている出走者は約2名。
一人は桜花賞を制したクランベリーレイ。
そしてもう一人は…
「―秋華賞は内側コースだから最後の直線が…
おい!スチーム!聞いているのか!?」
「は、はいっ!すみません!」
控室にてタイキスチームはリギルの東条トレーナーから最後のレクを受けていた。
「アップとコースのイメージを再度確認するように。
以上だ。」
東条トレーナーは話を終えると席を立ち、スタンドへ向かう。
そして入れ代わるようにエアグルーヴとヒシアマゾンがやってくる。
「おいおいどうしたってんだい?ボーっとしちまってさ。
エアグルーヴじゃあるまいし」
「わざわざ私を引き合いに出すな!
…まあ私も秋華賞は人の事は言えないが。」
「先輩方…」
スチームはもじもじとしながら目を伏せる。
「どうした。走る前から覇気を失っていては勝てるレースも勝てんぞ。」
「…」
スチームは黙ってカバンから何かを取り出す。
「おっ!今日のスポーツ紙やレース新聞じゃないか。
どの新聞もスチームが注目の的だな!」
「まてヒシアマ、これは…」
エアグルーヴが何かに気づく。
『菊花賞の前哨戦!』
『双璧世代クラシック戦の試金石』
『秋華も二強 菊花も二強』
『秋華賞から見る菊花賞の予想!』
「表面上は秋華賞がメインですが、見出しや紙面をよく読むと真のメインは来週の菊花賞だって分かります。
確かにアスランちゃん達クラウン路線が注目されるのは分かりますが…
私達ティアラの子達は菊花賞の前座でしかないのでしょうか…
そう思ったら、なんか集中出来なくて…」
消え入りそうな声と共にスチームの耳は曲がり、しょんぼりとした顔となる。
「…まーそもそも『双璧世代』って称されてる時点でどこが注目されてるか明らかだもんなー」
ヒシアマゾンが頭を掻く。
そしてエアグルーヴは「そうか」と呟くと、
持っていた新聞を綺麗に折りたたんでゴミ箱に投げ捨てた。
「!?お、おい」
「エアグルーヴ先輩…?」
「あんなものお前には必要ない。」
エアグルーヴはスチームの目を正面から見る。
「『ティアラはクラウンには敵わない』
毎年の様に出てくる妄言だ。
確かに今年は少々盛り上がりが異常だが…
ティアラ路線の者がクラウン出身の者に格が劣るなんてことはない。
それは、私を含めた歴代の者達が証明している。
今は前哨戦扱いかもしれんが、お前ならばその評価も覆せると私は思う。トレーナーも同じ事を期待していると思うぞ。」
「…!」
「おうその通り!クラウンだろうがなんだろうがタイマンかまして勝った方が正義だ!」
エアグルーヴの言にヒシアマゾンが同意する。
『女帝』と『女傑』
二人の檄に勝るものはない。
「最後に評価を覆せばいい…」
スチームは言われた言葉を復唱する。
沸々と、闘志が全身に流れていく。
『お知らせします。京都レース場第11R出走者は、パドックへお集まり下さい』
(勝って、アスランちゃんに挑戦する!)
「
…
『さあ4コーナー回って直線コースに向いた!
先頭逃げる10番ペルニカアイリス、その内2番ネイビーポイント。
そしてその外やって来た!
7番のタイキスチームだ!
先頭2名かわして前に出る!
1番クランベリーレイ届かないか!
タイキスチーム!
2冠達成っ!!!』
タイキスチームは人気に応え淀にその力を示した。
ガッツポーズと共に「やった!」と歓喜の声を上げる。
スタンド上階では感極まってエアグルーヴに抱きつくタイキシャトルと、迷惑そうにしつつもどこか満足げな顔を見せるエアグルーヴ。
そして東条トレーナーの口角も少し上がる。
「…さ、みんないくわよ」
「エー!?トレーナーサン!もう行くんですカー!?」
「まだ喜ぶのは早いわ。
いわばこれは来月への前哨戦…
この分ならエリザベス女王杯を狙えるわ。
最強のクラシック女王になったところで、盛大にお祝いしましょう。」
「イエス・マム!!!」
ターフ上のスチームは正面スタンドを向き、深々と頭を下げる。
『優勝はタイキスチーム!
『霧の尼将軍』堂々2冠達成です!』
大きな歓声が京都の湖面を揺らす。
(…盛り上がりのお膳立てはしてあげたんだから
来週絶対勝ってよね
アスランちゃん!)
さあどうなるリアル秋華賞!