いつもご愛読、感想ありがとうございます。
処女作なうえ不定期更新ですが楽しんでいただければ幸いです。
話は昨日に遡る。
スピカのトレーナーである沖野トレーナーはストップウォッチとメモ帳、そしていつもの棒付きキャンディを片手に模擬レース場が一望できる土手にいた。
「さーて今年の新入生はっと…」
そう言いながらトレーナーに配られる新入生一覧表とにらめっこする。
「トレーナー!セットメニュー終わったよー!」
そう言って土手を駆け上がってくるトウカイテイオー。
有馬記念後に改めてトゥインクルシリーズからの引退を発表し、今はドリームトロフィーシリーズに向けて鍛え直している。
第一線からは退いたものの、敬愛する
「…ってちょっと!なんで他の子を見ようとしてるのさ!?ボクのトレーニング中でしょ!?」
「おおテイオーか。今年の新入生にスカウト候補の掘り出し物がいないかなってな。」
「ヤダヤダートレーナーはボクだけを見ててよー!」
「ちょっ、まて、ウマ娘の力で揺さぶるなぁぁぁ」
と、ふとテイオーの視界にある新入生が目に入る。
「あっ…」
髪型の変化や松葉杖の有無はあったが、一目見ただけでテイオーは気づいた。
「トレーナー、あの子がいる。」
「ん?あの子?」
「ほら、覚えてない?去年の感謝祭でボクのライブを見に来てくれた松葉杖の子だよ。」
そう言われ沖野トレーナーも視線をレース場のゲートに移す。
「ああ…頭に傷のあるサイドテールの子か、よく気づいたな。」
「そりゃー気づくよ。あの子はなんと言うか…カイチョーみたいな運命的な何かを感じたんだよね。」
テイオーも視線をゲートの中にいるあの子に移す。
「…そっか、足の怪我治ったんだ。よかった。」
そうテイオーが呟くとゲートから金属音が聞こえ、一斉に走り出す。
先頭は赤い髪の子で、あの子はそのすぐ後ろに控える。
「ほう…先頭を風除けに使うか。意図的なのかまたは…」
沖野トレーナーが感嘆の声を上げる。
だかコーナーに入ったところで違和感に気付く。
「…動きがぎこちないな…」
彼女は走り方を学び始めたルーキーだ。
いきなり現役選手並に走れる方がおかしい。
だか彼女は先程とは異なり明らかに走りづらそうにしており、眉間にシワが寄っている。
(半年前まで足を怪我していたことを踏まえると、やはりまだ全力では走れないのか…?)
そう沖野トレーナーが思案していると、横にいるテイオーが「違うよ」と呟く。
「多分、追い抜きたくてしょうがないんだと思う。前を走る子がもう失速しかけてるから。」
「…なに?」
「ボクなら最終直線‥いや、コーナーが終わる手前で一気に外に出て大外から追い抜く。ほら、そろそろ仕掛けるよ。」
そう言った瞬間、あの子はコーナーの遠心力を使って大外に飛び出し、その勢いのまま先頭に躍り出たかと思うと、とてつもない加速力をみせ、そのままゴール板を駆け抜けた。
「ね、ボクの言った通りでしょ?」
「あ、ああ…」
沖野トレーナーはそう答えることしか出来なかった。
あれがほんの半年前まで松葉杖をついていた病み上がりの子だと誰が信じられようか。
レース全体を俯瞰する判断力と瞬発力。
まだ粗はあるがそのままジュニア級のレースに出ても好成績を残せるだろう。
「…今年の世代の代表はあの子かもな。」
そう評価を下した。
そしてテイオーが沖野トレーナーを向き、「トレーナー!」と声を掛ける。
「あの子欲しい!あの子をスピカに…いや、
「ちょうだいって…犬や猫とは訳が違うんだから。」
「お願いトレーナーぁぁぁ!!!」
「ワーッ!だから全力で揺さぶるなぁぁぁ!!!」
そうもみくちゃになっていると2人から少し離れたところで、同じく先程のレースを見ていたシンボリルドルフとリギルの東条トレーナーの話し声が聞こえてくる。
「…いかがでしょうか、トレーナー。彼女は前途有望…必ずやこの世代を代表する若駒だと推察しますが。」
「そうねえ…あなたが珍しく『自分からスカウトしたい』と言うものだから見に来たけど…言うだけのことはあるわね。」
「お願いします。彼女の面倒は私が見ます。トレーナーの手は煩わせません。」
「そういう訳にはいかないわよ。ただ…半年前まで足を怪我していたというのが気がかりね。今日の様子だと問題ないように見えるけど…とりあえずスカウトは検討する価値があるわ。」
「つまり…選抜レース次第だと?」
「そう不満そうな顔をしないでちょうだい。一度大怪我を経験している子をスカウトするには色々準備や知識が必要なのよ。」
「…分かりました。よろしくお願いします。」
…2人の会話が聞こえた沖野トレーナーとテイオーは顔を見合わせる。
「…テイオー。」
「ん?」
「ゴルシに出動要請。」
「了解!」
ルドルフ「君は私が導く!」
テイオー「キミはボクが面倒を見てあげるね!」
アスラン「うーんこれは親子」