(船橋転籍初戦現地観戦記念)
王者はつらいよ
『ルドルフの後継者現る!』
『サクラアスラン歴史に名を刻む』
『獅子VS侍 アスランに軍配』
熱気迸る菊花賞から数日。
いまだ興奮冷めやらぬ世間では、アスランを特集した記事が連日掲載され、一挙手一投足が報道されるなど、正に『アスランフィーバー』が巻き起こっていた。
早朝 大国魂神社境内
「…ハッ…ハッ…ふう…」
朝練中のエイトガーランドは汗をぬぐいながら境内の端で一休みする。
(…こんなんじゃだめだ…
もっと、もっと頑張らないと、双璧には勝てない…!)
前哨戦である神戸新聞杯を制し、ホープとアスラン両名を的確にマークするも、結果的にアスランの引き金を引き、最終的に4着で終わった。
好走を度々期待されつつもあと一歩及ばない現状に焦燥感を抱く。
(次の目標は有馬記念…しっかり準備して必ずや…!
…ん?)
けやき並木の方から黒いパーカーを着たウマ娘が走って来る。
フードを深く被った中から目線が少し合った。
「ああ、おはようアスラ―」
「!!!シーっ!すまん外で名前呼びは遠慮してくれ」
声をかけた瞬間アスランが即座に駆け付け人差し指を立てる。
「え、えっと。どうしたの?」
「どうしたもこうしたも…
菊花賞が終わってからというものファンや記者さんが隙あらば寄ってくるんだ。
「…なんか、その。
他人事だけど…大変だね…」
ガーランドは率直にアスランを気遣った。
「嬉しい悲鳴…って言ったらそれまでなんだけど、正直ここまでとは想像もしてなくて…」
ふぅと青息吐息を放つ。
これはアスランの今までの戦績が関係している。
ホープフルではムグンファ、皐月賞はハーン。
そしてダービーではホープと、
これまでのG1ではアスランと対になるライバルがクローズアップされ、人気や注目が二分されていた。
それが今回の菊花賞にて頭一つ飛び出し、しかも無敗3冠という大記録を樹立したことで人気が集中。
結果、芸能人顔負けの状態となっていた。
「まあ天皇賞とかエリザベス女王杯が近づけば話題が分散されるだろうし…ちょっとの辛抱だと思うよ?」
「ありがとうガーランド…
じゃまた学園で!」
アスランが走り去るタイミングでガーランドが足元の何かに気づく。
「おーいアスラン!!!水筒忘れ…
…あ」
「…えっ!?アスラン!?」
「うっそあの子サクラアスランじゃない!?」
「ありがたやありがたや、三女神様のご利益じゃ」
参拝客が色めき立つ。
「あ、後で教室持ってきて!?そんじゃっ!」
猛スピードで正門前駅方面へ逃げるように走っていった。
「…ごめんアスラン…」
…
放課後 スピカの部室
「…本当にいいんだな、アスラン。」
「はい、覚悟は揺らぎません。」
神妙な面持ちで沖野トレーナーが問いかける。
俺はまっすぐ目を見て言い切る。
「次のレース…自分はジャパンカップを選びます。」
前世ではコントレイルが、この世界ではシンボリルドルフが挑戦したクラシック期のJC挑戦。
いまだ成し得た者はいない未知への挑戦となる。
…正直不安はある。
だが、3冠ウマ娘という使命において、
ロマンあふれる世界に生きる者として、
世界に挑まない理由はない!
「見ててくださいテイオーさん。あなたも制したJCのタイトルを掴み取ってみせます!」
横にいるテイオーにも決意を伝える。
「それでこそアスランだ!
ボクもジャパンカップ勝ったのに、なーんか印象が薄い気がするんだよねー」
「弟子の自分が勝って世間に思い出させてみせますよ」
「よーし!『無敵のテイオー伝説第二弾第四章』
シニア戦の幕開けだー!!!」
「「「おーっ!!!」」」
スピカ全員が拳を上げる。
こうして新たな目標と共に古馬戦線…
もといシニア戦線が始まった。