11月25日
JC(ジャパンカップ)前日
秋レースの中間戦として行われる王道のクラシックディスタンス。
その設立経緯から旧八大競争と同等の格を有し、国際的な評価の上昇も相まって国内外から第一戦級の実力者が集まる、アジア随一の国際レースである。
特に今年は3冠ウマ娘サクラアスランをはじめ、ダービーウマ娘や天皇賞ウマ娘。
諸外国のG1を制した海外ウマ娘達の参戦など、世間の注目はうなぎ登りに上昇していた。
その海外勢の中でも、特に注目を集めていたのが…
「―このヴェニュスパークですか。」
「そうだアスラン。」
スピカの部室にて俺とトレーナーは詰めの確認を行う。
「…あの凱旋門賞を2連覇か…」
「『女傑』って言葉が似合うわね…」
ウオッカとスカーレットが息を吞む。
「すげぇな…アタシもお手合わせ願いたいもんだぜ…!」
「まったく…。まあ、私も同意見ですが。」
自制しつつも不敵な笑みがだだ漏れのゴルシとマックイーン。
そんな光景を見てフフッとほほ笑むスズカ。
「私は向こうにも出入りしているので詳しいことは言えませんが…
…強いと思います。」
「ねえスぺちゃん。スぺちゃんが戦ったモンジューとだとどっちが強い?」
「う、うーん?」
テイオーがスぺに質問し顎に手を当てて考える。
「あのースぺさん。向こうの陣営のことって…」
「だ、だめですよ!私もヴェニュスさんにアスランさんのこと何も話してないんですから!」
「そ、そうですよね、すみません。」
スぺはとても素直な先輩だ。
この様子だと何も話してないし、何も聞き出せないだろう。
「ごほん」とトレーナーが咳払いをする。
「とにかく勝負は明日だ。
スぺ、お前は当日向こうの陣営のサポートにあたってくれ。
アスランはアスランで堂々と勝ちに行くぞ!
みんなもサポートを頼む、いいな!」
「「「はい!」」」
威勢のいい返事が部室に響く。
(いよいよシニア戦線か…!)
手を握り、アツいものが湧き上がる思いだ。
「アスラン、今日は早く寝るんだよ?」
テイオーが顔を覗き込んできた。
「もちろんですよ」
「ホント?最近眠そうにしているから夜更かししてゲームしてるんじゃないのー?」
「そんなんじゃないですってー!」
その夜
アスラン・スチーム部屋
「アスランちゃん私もう寝るね、おやすみ」
「おやすみ」
部屋の電気を消した後、デスクライトをつける。
そして机の上のタブレットを再度タップし、レース映像を見る。
『―ヴェニュスパーク最内を突く!そのまま押し切ってゴールイン!
ヴェニュスパーク凱旋門賞2連覇!これが欧州最強バの走り!』
「…つっよ…」
思わず声が漏れる。
足取りは軽快そのものなのに一歩一歩に重みがある。
ダンプカーとスポーツカーを足したかのような走りだ。
(凱旋門2連覇となると前世ではエネイブルみたいなもんか…いやトレヴやアレッジドの線も…
凱旋門後にJCってなるとモンジューやアルピニスタが近いか…?後者は結局来なかったけど。)
腕を組んで少し思案する。
今回のレースは、今まで走ってきたどのレースよりも過酷になるだろう。
ダービーバが自分を除いて2人。
加えて天皇賞バに有馬記念バ。
海外勢も6人全員がG1経験者。
そしてなにより、
『自分以外の
(…大勢が定まらない中でいち早くJC参戦を表明したが…時期尚早だったか…?)
一瞬弱気なことが頭に浮かび、ブンブンと振るう。
(こんな弱気でどうする!テイオーも挑戦を喜んでくれたじゃないか!?
これがテイオーに追いつく早道だ。
弱気や不安は、綿密な準備と知識が振り払ってくれる!)
ヴェニュスパークの動画を閉じ、タブレットを手に取る。
『レース動画 ジャパンカップ選手』と記されたフォルダをタップし、画面に展開した。
そこにはヴェニュスパークをはじめ出走するウマ娘たちの、一か月かけて集めた過去レース動画がびっしり入っていた。
「…ん…おはよーアスランちゃん。」
「おはようスチー…ム?」
「朝早くからレース研究?えらいねー。
二度寝したら応援しにいくから…zzz」
バッと机の上の時計を見る。
Am 6:30
サーっと血の気が引いていく。
(か、完徹しちまった…!?)