塔矢アキラ逆行feat.佐為    作:KA.KA

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今のところ、なんとか続いてますが、書きたいことと時系列など整理するのは難しいですね。


変わらない未来、モブはモブ

SAIのアカウントで毎日ログインして、進藤のことを鍛えている、かなり実力が伸びてきており、小学生の時点ですでに院生上位くらいにはなっている。このペースでいけば今度のプロ試験では楽しめそうだ。院生試験が中学生になる4月にあるのでおそらくそのタイミングで進藤は院生試験を受けるはずだ。この分だと合格は確実かな。

「今日も良い対局でした。ですが、少し私の手筋に手が縮こまる場面があります。見極めて踏み込んでくる勇気を持ってください」

「わかりました。」

相変わらず、進藤のチャットは短いし遅いが、言葉はなくても伝わっているようだ。

最近、SAIとHIKARUの対局がネットで話題になり始めている。どうやら、急速に棋力を伸ばしているHIKARUに周りが気づき始めたようだ。だが、ここ以外で、佐為が進藤に指導する場所がないのでどうしようもない。進藤も僕も自室で打っているのでバレることはないはずなので、気にしないことにした。

最近はログインするとSAIへの対局申し込みが多くて困っている。僕はHIKARUとの対局以外受けないようにしているので、それがまた謎を読んでいるようだ。しばらく断りを続けていると対局申込も落ち着いてきている。そんな中、OGATAだけはログインするたびに諦めずに対局申し込みをしてくる。この粘着力、確実に兄弟子である緒方であると推測している。仮にバレるような状況になれば、佐為の存在を緒方さんになら教えても良いかとも思っている。お父さんに相談してみよう。

 

 

「お父さん、ネット碁でSAIが有名になってきてしまっています。」

「プロの間でも話題に上がっているよ。秀策に似た棋風の強者がネット上で弟子の指導をしているとね。しかもその弟子も驚くスピードで成長しているものだから面白いとね」

「緒方さんがだいぶしつこく絡んできており困っているので、緒方さんに佐為のことを教えてこちらに協力してもらえるようにしようかと思うのですが、どう思いますか?」

「緒方くんはかなりSAIに惚れ込んでいるようだね。私にもいかにSAIがすごいかを話すために棋譜を見せてきたりしているからね。それに、棋譜を見ている時の私の反応も見ているように思う。」

「であれば、やはり、緒方さんもこちら側に」

「だが、まだ確証はないようだ。なので、こちらから動くのはやめよう。秘密を知る人物は少ない方が良い。それに佐為のことを緒方くんが知ってしまったら、私が佐為と打つ機会が減ってしまう。どうしてもダメになった時は仕方がないがね。」

「わかりました。僕もボロが出ないように気をつけます。」

父もやはり佐為に執着しているようだ。独占欲が強くて困ったものだ。この師匠にしてあの弟子が育つのだとわかる。

『アキラ、自分のことを棚に上げて、失礼なことを考えていませんか?』

『そんなことはないさ。みんな碁が大好きなのだなと考えていただけさ』

「さて、今日は私と佐為の対局の番だったな。私も近々4冠をかけてのタイトル戦があるが、佐為とアキラと毎日打っているおかげで負ける気がせんよ。」

「佐為がお父さんなら絶対4冠になれるって言っています。それに来年には僕もプロ試験を受けますからね。お父さんからすぐにタイトルを奪ってみせますよ。それに今、僕と佐為で育てている進藤もいます。お父さんにはまだまだ楽はさせませんよ。ただ、病院にはしっかり行ってくださいね。僕の記憶では心臓発作で倒れているのですから。」

「正直なところ、自宅でこれだけレベルの高い対局が毎日打てているので、プロにこだわらなくても良い気はしてきている。だが、アキラとのタイトル戦もやりたいので、ちゃんと定期的に検診を受けているよ。タイトル戦の厳しさを私が教えよう。話は変わるが、今、海王中学の校長は私がお世話になっていた方で、進学前に一度挨拶に行っておいてほしいのだが、頼めるだろうか?」

「問題ありませんよ。今度挨拶に行ってきます。」

「よろしく伝えておいてくれ。あと、囲碁部に勧誘されるかもしれないが入るかどうかは自由にするといい。」

 

 

海王中学校長室

「わざわざ、足を運ばせて申し訳なかったですね。君が海王を受験すると聞いて楽しみで、君のお父さんに無理を言ってしまった。」

「いえ、父から校長先生には昔からお世話になっているのでよろしく伝えるように言われています。」

「足を運んでもらった理由なのですが、アキラくん君はすでにプロになれる実力があると聞いています。ですが、入学した折には囲碁部に入ってもらえませんか?」

「僕は、今度のプロ試験を受ける気でいます。なので…」

「わかっています。部活というのはあくまでも教育の一環。プロ棋士になる君には碁という側面では不足する場とは思います。しかし、きみのような存在がいれば、周りには良い影響が出ると考えていますし、きみ自身も同年代とのコミュニケーションの場として良いと思っているのです。」

「わかりました。入学した際には参加させていただくようにします。」

「ありがとう。今日は中学の囲碁大会をうちの高校が主催で行なっているのです。帰る前に一目見て行ってください。なかなかやるものですよ。」

「海王の囲碁部のレベルが高いことは知っています。ですが、僕は…」

「まーそう言わずに。すぐそこですから。」

正直、今の僕は囲碁部など眼中にないが、流石に無碍にもできない。少し覗いていくことにした。前回はなぜか進藤が参加していて、佐為が打っていたなと思いながら教室を覗くとなぜか今回も進藤が参加しているのに気がついた。

進藤に海王の生徒も喰らい付いているが、進藤が圧勝している。本当に美しい石の流れになっている。

大会自体は葉瀬中が2−1で勝利し優勝かと思われたが、進藤がまだ小学生であることがバレて海王中が優勝となった。

進藤にはSAIが僕だとは伝えていないので、知らないふりをして声をかけようと思っていると進藤の方から、僕に気がついた。

「アキラ!?!」

「美しい一局だった。また、成長していることがすぐにわかったよ」

「俺もお前に言われたから、ネット碁を始めて勉強しているからな。プロ試験までにはお前をギャフンと言わせてやるぜ。」

「望むところだよ。もうすぐ院生試験もあるのだろう。もし、院生になった時には父の研究会にも参加しないか?」

「いや。今は毎日ネット碁が忙しいんだ。ネット碁でしか繋がりはねーけど、師匠もできたんだ。」

「そうか、良い師に出会えたんだね。きみの打つ碁を見ているだけで、その人がどれだけ碁を愛しているかがわかるよ。とてもまっすぐな碁だ。」

『ヒカル、今回も私のことを師匠だと認めてくれるのですね。しっかり指導しますからね!!』

「ああ。SAIは本当にすげーやつなんだ。あいつの碁を俺が引き継ぐんだ。そして、お前に勝って見せるよ。」

「あー楽しみに待っているよ。だが、僕も立ち止まったりはしない」

 

 

 

 

日課である朝の対局を終えた後、父から進藤の話題が出てきた。

「アキラ、この前進藤ヒカルくんに会ったよ。」

「なぜ、お父さんがヒカルと会っているのですか?まさか、佐為と僕が育てているのが気になってちょっかいを出そうとしているのではないでしょうね?」

「いや、棋院で院生試験のことで事務の方と揉めていてね。どうやら四月期の院生試験を受けたかったようだが、すでに締め切りが過ぎていて門前払いされそうになっていたのだよ」

進藤、院生試験の締め切りを調べなかったのか…

「それは…事務の方も困られていたでしょうね…ですが、期日を守らない彼が悪いのでは?」

 

 

『佐為、ヒカルの前回の院生試験はちゃんと期日を守って申し込んだんだよね?』

『いえ、前回も期限を過ぎていてちょうど通りかかった緒方殿が推薦してくれたので、受験できました。ヒカルのだらしなさは変わらずですね』

『なんだと。碁の成長だけじゃなくて、生活面も面倒みる必要があるのか。全く育てがいのあるってものだな』

『ヒカルはだいぶだらしなかったですからねー。碁だけは真面目にやってましたが、学校のテストも赤点ばかりでした。途中から碁を打つのを人質にテストの時に周りの回答を見て回ったりもよくしたものでした。』

『ダメダメじゃないか。プロになるとはいえ、一般常識も必要だぞ』

『院生になれば、その辺は和谷が教育してくれますよ。』

 

 

「彼に院生になって欲しいのではなかったのか?院生になるように誘導していると知っていたから事務の方に、私が推薦するから四月期の試験を受けられるようにお願いをしておいたのだが」

「院生になって、さらに成長してほしいとは思っていますが、自己管理がなっていないのが悪いと思っただけです。お父さんのお願いとなったら事務の方も無碍にはできなかったでしょうね。」

「棋院からの帰りにも彼は私を待っていて、受けられるようになったと、お礼を言われたよ。」

「進藤の成長は望むところですからね。受けれるように便宜を図っていただいてありがとうございます。」

「アキラが執着するほどの実力なら、私も早くヒカルくんと打って見たいものだ。」

「ヒカルはまだまだですよ。これからさらに成長させていかなくては。どこに出しても恥ずかしくない棋力になった時にはここへ連れてこようと思います。」

「楽しみ待っているよ。」

 

 

 

 

中学に入学すると、僕は校長との約束通り囲碁部に入部した。

「ユン先生、遅れてすみません。クラスの用事がありまして。」

「担任の先生から聞いている。問題ないですよ。これで新入部員全員揃ったな。一年生立って。今年の新入部員は17名だ。だが、塔矢は今年プロ試験を受ける。なので大会には参加しない。皆も、塔矢に碁について色々教えてもらうといい。代わりに中学生活については教えてやってくれ。他の一年生については例年通り実力次第では大会参加もあり得る。6月の大会に向けて一緒に頑張っていこう。」

「塔矢、きみの実力が知りたい。腕の程を見せてもらおうか。」

僕はユン先生と雑談をしながら対局を始める。

「日本の子供たちの囲碁のレベルは韓国の子たちと比べて大したことがない。だが、去年葉瀬中の進藤を見た時正直鳥肌が立ったよ。上には上がいるものだと痛感した。進藤ヒカルの碁を見て韓国の研究生にも劣らないように感じた。」

「進藤は僕のライバルになる男ですから。ですが、まだまだ彼には成長してもらわなくては、僕には勝てないです。」

「きみの実力はわかった。噂以上の実力だ。大会にでないことも聞いている。好きな時に好きなように部活に参加すると良い。プロレベルが近くにいれば良い刺激にもなるだろう。」

 

海王囲碁部は塔矢が入部してから雰囲気が悪くなっていた。塔矢は来ても1人棋譜並べをしているからだ。たまに女子が指導碁を打ってもらって、楽しく会話をしているから、余計に男子から目の仇にされてしまっていた。アキラは話かけられれば誰とでも打つのだが、男子はプライドから声をかけれていないだけなのだが…

そして、一部の男子生徒はその鬱憤を晴らすために塔矢に声をかけるのだった…

「塔矢ちょっといいか。ユン先生からこの部屋を片付けるように言われてんだ。雑用は一年の仕事だし、塔矢ちょうど暇そうだったから、悪いけど頼むな」

「わかりました。とても良い資料がたくさんありますね。整理すればみんなの勉強にもっと使えそうです」

「ついでに一局打ってもらおうかな。おっと片付けの手は止めるなよ。途中で盤面も覗きにくるなよな。」

「僕に目隠し碁で打てと言っているのですか?」

「いやいや、そんなこと言ってないよ。ただ、雑用やるのも先輩の相手をするのも一年の役目だって言ってんだよ。将来の名人サマならそんくらいできるだろ」

「わかりました」『佐為、きみが打っていいよ。ちゃんと指導碁にしてあげてね』

『塔矢良いのですか?あなたくらいなら、手数が少ないうちに決めれば問題ないと思うのですが』

『これから3面打ちにまで発展しちゃうんだよ。忘れていたけれど、前回も同じことがあったのを今思い出したよ。面倒だし、整理に集中したいから、佐為が遊んであげてよ』

『わかりました。正しい道に進めるよう、性根を叩き直してあげましょう』

「これでお前に勝てたら、自慢だよなー。何せ互先だ。せいぜい打ち間違いは少なめに頼むぜ。」

「自慢されるのは構いませんが、僕に勝ってからにしてください」

対局は順調に進んでいく。僕はただ、佐為の伝言をするだけなので、楽なものだ。相手は目隠し碁をしているつもりかもしれないが、佐為がちゃんと碁盤の前にいるので、目隠し碁になっていない。

 

「おい、塔矢、俺と一局打ってよ」

モブ2がそう言いながら入室してきた。モブ1(伊藤)の苦しそうな顔を見て盤面を覗き、そこで絶句する。その間も僕は整理の手を止めていない。

「お二人目がいるとは思いませんでしたが、打たれるのならどうぞ。先輩」

佐為は若い棋士と打てて喜んでいる。

『さーさー座ってください。あなたの性根も叩き直して差し上げましょう!!』

「どうなってんだよ。伊藤、ちゃんとした対局内容になっているじゃないか。しかもこれは指導碁になっている。化け物かよ」

「奥村こい。お前も一緒に打ってもらうんだ。3面うちだ。いいよな、塔矢」

「僕は構いませんよ。どうぞ。なんなら、打つ場所も教えていただかなくても良いですよ。」

「は?!?三人相手はできないから対局にならないようにでもするつもりか?だが、言ったからにはやってもらうからな。ここからは、打ったかどうかだけいうからな。」

その後、目隠し碁の体すらとらなくなった対局であったが、無事佐為が若者3人を優しく導くのだった。

囲碁部の中では塔矢はエスパーではないかと噂が流れていたが、信じるものはいなかった。

そんな周りの喧騒など気にせず、塔矢は変わらず、囲碁部に顔を出し、時たま指導碁を打って平和に過ごしていくのだった。

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