ダックスフンドの首輪   作:転音

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ストライクウィッチーズ1期
第十一話 一人じゃないから


1944年 4月

 

 臨時補充員として501に来てから早3年目、こんなに長いことここに居続けるとは思ってなかった。美緒があっちこっち飛び回って人材を探しているものの、なかなか見つからない。

 

 この見つからないというのは“良い人材が”ではなく“そもそも人材が”である。世界中探しても居なくなった5人分を埋めるのがやっとな異常事態である。

 

 私が掛け合ったスオムスとオラーシャからは、それぞれエイラとサーニャが来てくれた。オラーシャは厳しいかと思っていたのだが・・・どういうわけか貴重なナイトウィッチを派遣してくれた。

 

 この2人がいなかったら本当にやばかった。特にサーニャが来るまではナイトウィッチが不在になり、私が夜間哨戒をする羽目になっていたのでめちゃくちゃきつかった。

 

 エイラと2人でなんとかこなしていたが・・・やっぱり本業ではないからかネウロイを見逃すこともあった。来たばかりの時のサーニャは経験も浅く未熟な所があったが、それでも私よりはよほどマシだったのでナイトウィッチってすごい。

 

 そしてそれより凄いのがエイラである。マージで最強。天才。とにかく凄い!可愛い!・・・そんな感じ。

 

 東部で一緒に戦っていた時も思ったけど、やっぱ未来予知ってとんでもない魔法だ。彼女のお陰でいくつ命が助かったか・・・通信魔法でエイラの見た予知をそのまま私も見れるので、奇襲を防いだり、敵の攻撃躱しまくって一方的にボコボコにしたり、とにかく最高だ。

 

 エイラに対する攻撃しか予知できないのは欠点と言えば欠点だけど、ネウロイの動きが分かるだけでも有難いので、帳消しどころか黒字も黒字である。さらっと流したが夜戦もできるのもすごいしね。

 

 

 他にも、シャーリーもルッキーニも優秀だし、リーネもまだ新人だが私よりは才能がある。流石のエリート部隊だが・・・やっぱり数が欲しい場面は多々ある。

 

 ナイトウィッチがサーニャしかいないと、サーニャが不調だったりしたときは私とエイラが哨戒に出ることになるし、そうでなくても普段から書類戦争しつつスクランブルの用意もしてるのである。当たり前だが理想的な環境とは言えない。

 

 

 そんな人材不足続く501、ついには美緒が本国に帰って新人を探すほどの事態になり・・・なんと本当に素質ある新人を見つけたと連絡が来た。それが・・・えーと、なんで名前だったか。ちょうどその子が到着してた時、哨戒してて居なかったんだよな。

 

 ブリーフィングルームで眠気に押し潰されそうな瞼をなんとか開け、動かない頭を必死に回す。この後の取材のために勲章をもらった時のようなカチカチの服を着ているおかげで、なんとか寝落ちしないで済む。

 

 この服に感謝するなんてあり得ないと思っていた。そんなことを考えていた時

 

 後ろに見慣れない女の子を連れたミーナが部屋に入ってきた。

 

「はい皆さん、注目。改めて今日から皆さんの仲間になる新人を紹介します」

 

 前に立ってパンパンと手をたたき注目を集めたミーナ中佐が言った。やっぱりあの子が新人らしい。なんというか、小柄で良い子そうである。

 

「坂本少佐が扶桑皇国から連れてきてくれた、宮藤芳佳さんです」

「宮藤芳佳です。皆さん、よろしくお願いします!」

「階級は軍曹になるので、同じ階級のリーネさんが面倒を見てあげてね」

「あっ・・・はい」

 

 リーネは相変わらず自信がなさそうな・・・フォローもなるべくしてるんだけど、どうにも上手くいかない。

 

 新人なんだから、気負いすぎるのも良くないと思って、私の失敗談・・・例えば初めて飛ぶのに半年かかったと言ってみても信じられていない気がする。

 

 英雄としてのイメージが強すぎるのだろうな。夜勤や広報活動で忙しくて交流するのも難しいし、なかなか困ったもんである。

 

 その後、宮藤軍曹は用意された拳銃を突き返し・・・突き返した?坂本少佐は笑っているが、あの子もしや

 

 考え事をしている間に解散になったようで、恒例のルッキーニによる胸囲測定も終わり(残念賞らしい)自己紹介タイムになる。

 

「私はシャーロット・イェーガー。リベリオン出身で階級は中尉だ。シャーリーって呼んで」

「はい」

 

 リベリアンらしくフレンドリーに手を伸ばし、握り返した宮藤軍曹が一瞬顔を歪める。シャーリーは笑ってるけど、あれちゃんと痛いんだよなぁ・・・無警戒でやられると特に。

 

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン、スオムス空軍少尉。こっちはサーニャ・リトヴャク、オラーシャ陸軍中尉」

「アタシはフランチェスカ・ルッキーニ。ロマーニャ空軍しょーい」

「よ、よろしくお願いします」

 

 サーニャも眠そうだな・・・エイラに支えられて立ちながら眠っている。さて、眠いしエーリカは取材があるからいなくなってるけど、気になることもあるし私も挨拶しとこうか。

 

 手袋を外し、帽子を直して私は席を立った。

 

「私はメラニー・クライン、カールスラント空軍少佐。よろしくね」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

私が差し出した手を恐る恐る握る宮藤軍曹。

 

「私はシャーリーみたいなイジワルはしないよ?」

「す、すみません」

「いや、良いよ。ところで、ウィッチの経験は?なんでウィッチに?」

「へ?え、えっと、経験は昨日初めて飛んだだけで、ウィッチになったのは守るためです」

「守る?」

「はい。世界中の人を守って、困っている人を助けたいんです!」

 

 ・・・それはそれは、とんでもない理由だ。しかも間違いなく本心から言っている。頭の中を覗いても理解できなかったのはこれで2人目だ。それに昨日飛んだだけってなんだ?

 

 呆気に取られた私を尻目に、坂本少佐が言った。

 

「よし。自己紹介はそこまで、各自任務につけ。リーネと宮藤は午後から訓練だ」

「はい!」

「返事だけは良いな。リーネ、宮藤に基地を案内してやれ」

「あっ、了解」

 

「私宮藤芳佳、よろしくね」

「リネット・ビジョップです」

 

 挨拶を交わした2人は、そのまま出て行った。

 

「・・・メラニー?どうしたんダ?」

 

 宮藤軍曹がいなくなった後も立ち尽くして動かない私に気づいたエイラが、心配そうに声をかけてくれた。

 

「い、イッル・・・た、助けて・・・」

「ええ!?ど、どうしたんだよ」

「ま、魔法を使ったら・・・し、しっぽが、変な風に」

「しっぽ?」

「腰が痛くて一歩も動けない・・・」

「何やってんだ」

 

 普段と違ってスラックスなせいでしっぽが変な風に押さえつけられて、とんでもなくいたい。帽子のおかげで耳を隠せたのはうれしいけど・・・やっぱやるんじゃなかったかも。

 

 エイラはあきれた様子で、私を助けようとせずにサーニャを連れて部屋に行こうとする。思わず追いかけようと一歩踏み出すと

 

「ちょ、ちょっとまっ!?いぎゃー!!」

「うるさいぞ!サーニャが起きるだろ」

「そ、そんなぁ」

「・・・あ、あとで運んでやるから」

「!!ありがとうぎゃ!?」

「静かにしろ!」

 

「うん・・・?エイラ・・・?」

「「あっ」」

 

 

 怒りながらも、ちゃんとサーニャを送ったあと私の元に戻ってきてくれたイッル。行き先を自分の部屋でなくてミーナのいる執務室にお願いして送ってもらった。

 

*****

エイラSide

 

「はいどう・・・どうしたの?」

 

 ノックして執務室に入ると、驚いた様子のミーナ中佐がいた。まあ、さっきまで普通にしてたメラニーが私に支えられて歩くのもつらそうにしているのはなかなか理解不能だろう。

 

「メラニーが話があるってさ」

「い、いえそれはいいのだけれど・・・どこか怪我したの?」

「あはは・・・この服装でシンクロしたらしっぽが変な風になって・・・腰が痛いんだよね」

「何をやってるのよ・・・」

 

 ミーナ中佐も半目になってあきれた様子。ま、新人でもしないような失敗だもんな~

 

「・・・それで話って何かしら。宮藤さんについて?」

「さすがミーナ中佐、話が早くて助かります。・・・私は、あの子を501に入れるのは反対です」

「!!・・・どうしてかしら」

 

 空気が変わる。普段の優しくどちらかといえば大人しいメラニーから、英雄クライン少佐に。

 

「まず第一に、軍人として何の教育も受けていない点。リネット軍曹も新人です、しかし彼女はちゃんと養成学校で訓練を受けている」

「坂本少佐が、素質はあると断言しているわ。実際、何の訓練もせずにストライカーユニットを使って飛行することに成功しているし」

「成功しているとしても、うちは子供のお守りをする場所じゃありません。ブリタニア防衛、そしてガリア奪還の重要な任務が課せられている最前線です。」

「勿論分かっているわ。彼女もその任務を成功させるための戦力になる」

「いいやならない。訓練をするなら学校へ行かせるべきです。いくら天才でも、強くなるには時間がいります。その時間を提供するのは、私たちの仕事じゃない」

 

 ミーナ中佐が押されている。・・・普段私やハルトマンと一緒になってペリーヌやバルクホルンをからかっているメラニー、いやクライン少佐だが、たまに一緒に出撃したりこういう場面に出くわすと伊達に英雄と呼ばれてないなと見直してしまう。

 

「それに、理由はまだある。彼女は軍人に向いていない」

「まさかシンクロしたのって」

「お察しの通り、さっき魔法を使った」

 

 ミーナ中佐の顔が曇る。

 

「・・・相手の同意なく頭の中を覗くのはあまり褒められたことじゃないわよ」

「分かってる。私だってやりたくてやったんじゃない」

 

 嘘つけ。初めて会った時に私にもしようとしたくせに。まあ未来予知で防いだけど。

 

「なら何のために?」

「まさか無理やり連れてきたんじゃないかと思ったんだよ。銃への忌避感があるようだったし、進んでウィッチになるようなタイプじゃないと思ったから」

「ウィッチの徴兵は禁止されてるわ。そんなことするわけ」

「確かにしてないみたいだけど、そうだとしても彼女がウィッチになった理由には問題がある」

「どんな?」

 

「世界を守りたい。困っている人を助けたい・・・」

「ウィッチならありふれた理由じゃないかしら?」

「表面だけなら、ね。でも彼女は一を助けようとして万を犠牲にしかねない。普通なら諦めるような状況でも諦めない、強い意志があるから」

「・・・・・」

 

 なるほど、筋は通ってるんじゃないか?というか、後者の理由は少佐の魔法有ってのモノとしても、前者の方にはミーナ中佐も気づきそうなもんだけど・・・中佐には中佐で何か理由があるんだろうか。

 

「ミーナ中佐が学校に送らない理由も理解はできます。が、敢えて進言させていただきました」

「・・・ええ、他ならぬあなたからの忠告ですもの。坂本少佐とも、よく話し合うことにするわ」

「ありがとうございます・・・因みにもういっこ話したいことがあるんだけどさ」

 

 空気が戻る。切り替えが早い。温度差で風邪をひきそうだ。

 

「何かしら」

「いや~怒らないで聞いてほしいんだけど・・・無茶なことしたせいか、使い魔が怒っちゃいまして」

「・・・嫌な予感がするのだけど?」

「あっはは・・・シンクロできないから、しばらく魔法使えないかも」

 

 鬼がいた

 やっぱミーナ中佐は怒らせると怖いな・・・え?何があったって?言わないでおこ。めちゃくちゃ怖かったけど、サーニャと一緒に夜勤だし、許してやるかぁ~

 

*****

 

 宮藤軍曹が来てから数日。体力はないし飛ぶのも下手くそ。銃への忌避感も間違いない。やっぱり最前線にいていい人材じゃないな。

 

 ま、そもそも飛べている時点で化け物レベルの大天才なのだが、戦力にならないなら天才だろうと凡人だろうと変わらないことである。・・・今の私が言ってもブーメランだな。

 

 私はここ最近出張ばかり。基地に居るとミーナに書類を押し付けられるので、外で記者を相手にしてた方がマシだからだ。出張ついでに観光もできるし、ずっとこのままでもいいな。

 

 そんなわけで書類から逃げ回っていたら、私がいないうちにリーネが初撃墜していた。ついでに宮藤軍曹が初出撃していた。・・・は?

 

 彼女まだ訓練始めて1か月の新人だぞ!?ミーナは頭がおかしくなったのか?

 

 聞けば彼女のサポートのおかげでリーネがネウロイを撃墜でき、基地を守れたらしいが・・・そんなものは結果論。

 

 基地にいたらいたでネウロイの攻撃を受けていたかもしれないが・・・そもそも基地にいなければそんな危険もなかった。間違いなくたまたまうまく行っただけの綱渡りにも程がある判断である。

 

 やはり、彼女はここにいない方がいい。・・・バルクホルンとエーリカと話し合おう。ミーナを説得しなければ。

 

 





祝 原作突入!ここからはアニメを見直しながらになるので、これまでよりちょっと投稿頻度が落ちるかもしれません。早まるかもしれないけど。


 原作でいくら素質があるとはいえ何の訓練も受けてない素人の状態で501に入ったのは、よそからの引き抜きを防ぐためじゃないかと考えました。

 下原定子を502に横取りされたりもしてるみたいですし、そういうことを防ぐために仕方なく501で面倒見てるんじゃないか?って。流石に最前線に素人がいるのはいくら人材不足でもおかしいですからね。有能な敵より無能な味方のほうが怖いことぐらい、ミーナ中佐はよく分かってると思いますし。


 ということで、無能な敵を危惧した主人公は宮藤を追い出そうとします。・・・観想でも心配されたけど、視聴者からの好感度が地につきそうだ。わ、悪い子じゃないんですよ・・・?


 関係ないですが、第八話のUAとPVがやたら伸びててびっくりしております。PVに至っては第二話に届くんじゃないかと思うレベルです。
 六話と七話のUAが同じくらいなのも驚きです。何か理由があるんでしょうかね・・・?読者の皆様は地獄が好きなんでしょうか。

 何にせよ、見ていただけて感謝です。

2022/9/27 7:21 誤字修正
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