ダックスフンドの首輪   作:転音

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第十二話 はやい・おっきい・やわらかい

 

「さて、わざわざ集まってもらっちゃってごめんね」

「いいよ~」

「お、お邪魔します・・・」

「私やハルトマンはともかく、ペリーヌは珍しいな」

 

 ミーナを説得し、宮藤軍曹をウィッチ養成学校へ送る協力者として選んだのは、バルクホルン、エーリカ、ペリーヌの3人。理由としては、シャーリーとルッキーニはこういうことに興味がないし、リーネは宮藤と仲がいいから嫌がるだろうと思ったからだ。

 

 エイラとサーニャにはすでに話をしたがサーニャは賛成寄りの中立、エイラは賛成してくれた。サーニャは宮藤について知らな過ぎて判断材料が少ないのだろう。リーネが宮藤のおかげで良くなったり基地を守った話もあるし、判断に迷うのは仕方がない。

 

 人数的に、3人が私の意見に賛成してくれれば501の半数になる。数は力、そうなればミーナも無視できない。隊内で派閥が分かれるのも好ましい状況とは言えないし、新兵1人を一時的に手放すだけで問題を解消できるならそうするはずだ。

 

 

 そういうわけで、私はミーナに対してしたような説明を3人にもする。

 

「・・・なるほど。確かに、あの新人をおいておくのはデメリットが大きい気がするな」

「ならなんで坂本少佐やミーナ中佐はあの小娘を学校へ行かせないんですの?」

「引き抜きを警戒してのことだとおもう。宮藤軍曹ほどの才能と熱意があれば、訓練学校も首席で卒業できるだろうし、そうなれば上やよその部隊からの注目も集まるからね」

 

「ああ、昔『新人をグンドュラに取られた~』って騒いでたもんね」

「・・・クライン少佐は、宮藤軍曹のことをずいぶん高く評価してるんですのね?」

 

 ペリーヌがやや意外そうに聞いてくる。確かに、今私がした話では彼女がお荷物であることを強調したからな・・・だけど、私は決して彼女を評価していないわけじゃない。むしろ

 

「知識も訓練も一度もせずに一発で飛行を成功させ、命中精度が低いとはいえ射撃もできる。初出撃でも舞い上がったりすることなく普段通りの様子を保ち、仲間を助けさえした」

 

「強い意志があり厳しい訓練にもついていく。性格も、まじめで明るく素直。・・・ちょっと強情なところもあるけど、控えめに言ってもエーリカの完全上位互換。思いつく限り、人類史上最高の天才だよ」

 

 しかも家系を調べてみれば、20を過ぎても、妊娠・出産を経ても魔力が損なわれない家系だとか。神が作った最高傑作と言われても信じるレベル。天才という言葉すら、彼女を表すには足りないだろう。

 

 ここまでのべた褒めにはバルクホルンとエーリカも驚いたようd・・・エーリカ?なんで頬を膨らませてるの?ちょ、ちょっとまっ

 

 

・・・・・

 

 

 無事に3人からも賛成をもらい、上申書の作成を進めていたある日。バルクホルンがネウロイの攻撃により撃墜され、宮藤軍曹の治癒魔法により助かったとエーリカから聞いた。

 

 訳が分からない。私は彼女の才能も熱意も努力も認めているが、実力的には前線に立つには早すぎるからこそ学校へ行かせようとしている。にもかかわらず、実績だけは積みあがっていく。しかも助けられたのはバルクホルンでペリーヌもかかわっているというではないか。

 

 ・・・501から動かすのがどんどん難しくなっていく。恩が出来たバルクホルンは、彼女が望めば501に残したがるだろう。そうなればエーリカも怪しい。

 

 はぁ、ひとまず今書いていた上申書は何の役にも立たない紙切れとなった。別の説得材料を探すか・・・

 

 

*****

 

「ええー!海に行くんですか?」

 

 先ほどまで痛そうに頭を押さえていた宮藤軍曹が顔を上げて目を輝かせる。

 

「ああ、明日の午前からだ。場所は本島東側の海岸だ」

「ぃやったー!海だー!海水浴だー!!」

 

 坂本少佐の答えに思わず立ち上がり両手を上げて喜ぶ宮藤軍曹。・・・坂本少佐が言っている時点で九割方訓練であることに気づかないのだろうか。

 

 訓練であることが分かっている私たちはそこまでテンションが上がらない。彼女も温度差に気づいたようで

 

「あれ?皆さん海嫌いなんですか?」

「芳佳ちゃん、訓練よ、訓練」

「訓練?」

 

「その通りだ。我々は戦闘中何が起ころうとも対応できなければならん。たとえ海上で飛行不能になってもだ。そこで海に落下した時の訓練が必要なのだ」

 

「なるほど・・・」

 

 あからさまに肩を落とす宮藤軍曹。というか、これまで遊泳訓練もせずに出撃させてたのか?海に落ちた時、誤作動でユニットを脱げなかったりしたらどうするつもりだったんだ・・・

 

 訓練が嫌いなのか!と坂本少佐に詰められてあからさまに慌てる宮藤軍曹。

 

「うっふふ、集合場所はここ。時間はヒトマルマルマル時よ。いい?」

「「「了解」」」

「分かったわね?宮藤さん」

「はい」

 

「では以上の内容をシャーリーさんとルッキーニさんに伝達して下さい。シャーリーさんは朝からハンガーにいるわ。ルッキーニさんは・・・基地のどこかで寝てると思うから、探してみて」

 

「分かりました!」

「あ、そうそう宮藤さん。別に一日中ずっと訓練って訳じゃないのよ?」

「えっ?」

「つまり、訓練の合間には、たっぷり海で遊べるってこと」

「!ミーナ中佐・・・行ってきます!いこ、リーネちゃん」

「うん!」

 

 仲良く手を繋いで駆け出した宮藤とリーネ。仲良きことは美しきかな。良いことだ。

 

「元気ね〜」

「シャーリーはまたハンガーか?」

「ええ、朝からずっと。そろそろ出てくる頃かしら」

 

 坂本少佐は一瞬微笑んで言った。

 

「うるさくなりそうだ」

 

 

 数分後、ハンガーから爆音が響いた。

 

*****

翌日

 そんなこんなでやってきた遊泳訓練。天気は快晴、日差しが眩しい絶好の海水浴日和といえよう。

 

 崖から豪快に飛び込むシャーリーとルッキーニ。楽しんでるのか分からないがひたすら泳ぐバルクホルンと何故か犬かきでついていくエーリカ。泳げないわけでもなかろうに、何をやっているんだ・・・相変わらずよく分からんやつだ。

 

 それぞれが海を満喫する中、浜辺に座り込む白銀の美少女を発見。

 

「肌がヒリヒリする・・・」

「腹減ったなぁー」

「サーニャぁ〜」

「ぇ?」

 

 全力疾走でサーニャに抱きつく・・・と見せかけてエイラに!

 

 とう!っと後ろから飛びかかった私は、残念ながら柔肌にたどり着くことなく地面に落下した。

 

「危ないナ。何してんだ」

「避けないでよ」

「避けるだろ。全く、怪我するぞ」

「本当に怪我するときは守ってくれるくせに。・・・というか、服の中に砂が入って大変なんだけど」

 

 非常に残念ながら私はみんなと違って水着を着ていない。いつもの服、フリーガーブルーゼである。因みにサーニャは上下黒、エイラは上が白で下が水色のビキニを着ている。うーん、眼福だ。

 

「どうして水着じゃないんですか・・・?」

 

 サーニャが小首を傾げて聞いてくる。

 

「あー私は水着着ちゃいけないんだよね、上からの命令で」

「そうなのカ。なんだってそんな命令されてんだ?」

「軍機だから言えない」

「軍機・・・ですか?」

「そっ、だからもし2人が知っちゃったら・・・生きて国には帰せないかな」

 

「・・・」

「こ、怖いこと言うなよナ~」

「大真面目だからね。知ろうとしちゃダメだよ。もし知ったら・・・」

「も、もし知ったら・・・?」

「んー、イッルは私と結婚して、サーニャは私の養子かな。そんで2人ともカールスラント人になってもらう」

「え?」

「んな!?わ、私がお前とけ、結婚!?」

「・・・考えたら悪くないな。私が水着を着れないのは・・・」

「わー!!!やめろやめろ!!」

 

 むー、残念。一石二鳥どころじゃない天才的戦術だと思ったんだけどな~。

 

 時折岩場から聞こえてくる新兵の悲鳴と坂本少佐の怒号をBGMに2人とじゃれあい、休暇さながらののんびりした時間を楽しんでいた。

 

 その時、突然サーニャが魔道針を出した。私は瞬時に手袋を外しサーニャの肩に触れる。

 

「ネウロイ・・・?いつのまに」

「なっ、レーダーは何をやってるんだ!イッル行こう。サーニャは後からでいい」

「分かった」

「了解」

 

 私はエイラにも魔法をかけてから砂浜をハンガー目指して走り出した。途中で一緒になったバルクホルンとエーリカにも魔法をかける。

 

(私たちが先頭?)

(いや、シャーリーと宮藤とリーネが先に行ってるよ)

(不安になる組み合わせ・・・私たちも急ごう)

(ああ!)

 

 ハンガーにたどり着くと、すでにミーナと坂本がいた。・・・なんでルッキーニはたんこぶ作ってるんだ?

 

「クライン、既にシャーリーさんが先行。宮藤さんとリネットさんも追っているわ」

「分かった。私達も出るよ、そうしょっちゅうストライカーを海に捨てられても困るしね」

「シャーリーさんのストライカーにルッキーニさんがイタズラして危ない状態なの、頼んだわ。敵は超高速型、目標地点はロンドン。方角はここから西北西よ」

「はあ!?わ、分かった。いや分からないけど了解。とにかく急げば良いんだね?3人とも行くよ!」

 

 大急ぎで準備して出撃。勿論全速力で追いかけるが・・・相手はシャーリーである。到底追いつけるものではない。

 

(影も見えないな)

(諦めるn・・・なにあの爆発は!)

 

「敵、撃墜です!」

「シャーリーさんは!?」

「えーと、あ、大丈夫です!無事です、シャーリーさんは無事です!」

 

 突然入ったリーネと宮藤からの通信、速度を落とし思わずホッと胸を撫で下ろす。が、次に入った連絡に再び全速力で合流を目指す。

 

「あれ?」

「全然無事じゃなーい!!」

 

エンジン音・・・そして水しぶきの音。坂本少佐が状況報告を求める。

 

「どうした!何があった!」

「ふぇ!?しゃ、シャーリーさんを確保しました!でも・・・」

「でもなんだ!!」

「うわぁ・・・おっきぃ・・・」

「きゃぁぁ!芳佳ちゃん何やってるの〜!」

 

「おい!状況は正確に説明しろ!」

「説明できませーん!」

 

(どーする?私たち)

(付き合ってられんな・・・帰投しよう)

(いや、一応合流しよう。付き合ってられないのは同意するけど、万が一があっても困る)

(了解。それにしてもアイツもおっぱい好きなのか〜?)

(・・・はぁ。なんでも良いよ、なんか気が抜けるなぁ)

 

 それにしても、また間に合ったのか宮藤軍曹は。彼女がお楽しみしてるせいでギャグみたいだが、この高度から生身で海に落ちれば普通に命の危険もあった。彼女の実力というよりは運の問題だが、運だって続けば実力だ。

 

 これまでなんだかんだと彼女は守り続けている。まさか、本当に全て守れてしまうとでもいうのか?

 

 一瞬浮かんだ都合のいい考えを頭を振って振り払う。

 

 戦場はそんなに都合のいい場所じゃない。一歩間違えれば死に直結する。最前線という場所は、あの子のような新兵が居ていいところじゃない。・・・その、筈だ。

 

 早くあの子を訓練学校へ送る方法を考えなくては・・・それがあの子の為にも、私たち501の為にもなる。その筈だ。それがみんなを守るのに最善。普通は、そうだ。

 

 ・・・本当に?私が守れなかった、彼女が守ってくれた・・・彼女を外すのは本当に、良いことなのか?

 

 宮藤、芳佳。

 

 問いかけるだけで答えを見抜けるくらい、素直で分かりやすい女の子。

 

 だが、私は、お前が分からない。

 





 ちょっと間が空いての投稿になりました。次の投稿は多分明後日かな・・・

 原作第4話『ありがとう』はスキップ。主人公の出番ないし・・・許して。次の『いっしょだよ』ではこれまでと違ってがっつりアニメに登場してそうな感じの活躍をする予定でございます。


 これちょっと疑問なんですけど、ガールズラブ求めてらっしゃる読者さんってどれくらいいらっしゃるんでしょうか。一応タグは付けてますが、当初の予定ではそんなにがっつりした描写は入れない予定だったんです。

 ただどうやらPVやUAの伸びを見る限りエーリカと絡んでるところなんかは人気があるのかな?って気がしてきたので・・・そういう描写をちょっと増やそうかどうしようか、考え中なのです。

 ということでアンケートを取ります。これ以外に意見がある方は直接私の方へメッセージお願いします。

2022/10/1 6:20 誤字修正

百合要素ほしい?

  • ほしい!(何人かと)
  • ほしい!(エーリカと)
  • これまで通りで十分
  • あってもなくても気にしない
  • 何でもいいから早く書けよ! オラぁ!
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