ダックスフンドの首輪 作:転音
「・・・というわけで、しばらくはクラインさんが通常勤務になります」
「知っての通り、クライン少佐は強い。一緒に訓練することで学べることも多いだろう。特に宮藤とリーネ!」
「はい」
「お前たちはこれから毎日、クライン少佐と訓練だ!」
「分かりました!」
「・・・・・」
「聞いているか!宮藤!」
「は、はい!」
休みが明けた翌日朝、ブリーフィングでシフト変更についての説明がミーナからされた。美緒は私から新人たちが学びを得ることを期待しているようだが・・・私、そこまで教育熱心じゃないからなあ。期待されましても、って感じだ。
それに宮藤軍曹との蟠りはまだ解けていない。今も私に対してはあまりいい感情を持っていないように見える。できればこの期間中に何とか和解したいものだけど・・・彼女が軍人としての考え方に納得できるかと言われれば、すぐには難しいだろう。
「ふぁ~ぁ」
「昨日あんなに寝たのにまだ眠いの?」
「人間は一日24時間寝るべきだと思う・・・」
「もう植物にでもなれば?」
「寝れるならなる」
相変わらず眠そうなエーリカ。昨日はなんだかんだどこに行くでもなく1日だらだらしてたので睡眠不足とか疲れがたまって・・・なんてことにはなってないはずなので、単に朝に弱いんだろう。
毎朝毎朝エーリカの目覚まし係をやらされているバルクホルンには正直同情する。というかよく見捨てないなと感心すらする。毎日朝から雷を落として疲れないのだろうか・・・
「なんでもいいけど、演習までには起きといてよ」
「え~!また私が相手なの?」
「今回はバルクホルンとミーナもいるよ」
「ミーナ?珍しいね」
「私が書類手伝う代わりにね。できた時間でお願いしたの」
普段のミーナは書類戦争が忙しくてほかのメンバーに比べると訓練などをあまり行えていない。今回は私がミーナと一緒に書類を片付けることが出来るので、空いた時間で一緒に訓練をお願いした。ミーナも出撃機会が多いとは言えないし、ちょうどいいだろう。
ブリーフィングが終わった後、私はミーナと一緒に執務室へ行くのだった。
「ん~よし!何とか片付いたね」
「ええ」
机に向かって黙々と書類を片付けること数時間。2人で協力しただけあっていつもの3倍くらい早く仕事が終わった。
「ありがとうクライン、おかげでこんなに早く終わったわ」
「これくらい朝飯前だよ」
「ふふ、頼もしいわ。期限が先の書類まで終わったから、明日からはもう少し楽なはずよ」
「それはよかった。まあミーナじゃないといけない書類もたくさんあるしね。体には気を付けてよ?」
「ええ、ありがとう」
顔色はいい。疲れがたまっている感じもしない、それはいいとして気になるのは・・・
「で?美緒のことどうするの?」
「・・・やっぱり、飛ぶのをやめるつもりはないみたい」
「そうだろうね。命令する?」
「命令しても守るとは思えないわ」
「だからといって何もしないで放置するわけにいかないんだし、次の襲撃までにはどうするか決めておきなよ?」
「ええ、最近は予測も当てにならないし美緒とも相談してなるべく早く決めるつもりよ」
シールドが使い物にならないとはいえ、美緒はまだその辺のウィッチよりも余程強い。直接戦闘に加わらなくても魔眼でコアを探してくれるだけでも助かるし、私の通信魔法やミーナの三次元空間把握能力、エイラの未来予知などでサポートすればリスクもかなり排除できる。つまりまだまだ戦力として役に立つ。
とはいえミーナの心配ももっともだし、戦闘に出しづらい気持ちもよくわかる。結局はどっちが先に折れるかの根競べだ。
「そういえばクライン?見ててくれるといったのに、あのあと二日酔いで大変だったのよ」
「あっはは・・・2人の問題だし、お邪魔かなって」
「もう・・・」
余裕がない切羽詰まった感じはましになったし、放置して良かったかな。
*****
「イッル~!」
「うわぁ!なんだよー」
「いや~疲れた疲れた」
「私でくつろぐなよな・・・」
食堂に入ってとりあえず目に入ったエイラに抱き着く。
「抱き着くの好きだよなーメラニー」
「そう?」
「そうだろ。よくサーニャとかハルトマンにも抱き着いてるだろ?」
「んー確かにそうかも」
言われてみれば抱きしめてること多い気がする。なんだろう、なんか落ち着くんだよな。
「甘えん坊の子供みたいだぞ」
「な!失礼な!私イッルより年上なんだけど?」
「ずっとチビだし、胸もないし。全然そうは見えないな」
「ま、まだ伸びるかもしんないじゃん」
「どーだか」
「うるさい!いつか絶対抜かしてやる・・・」
身長の話はやめてほしい。胸の話も。私の今の身長は150㎝である。エーリカは154㎝、エイラは160㎝だ。おかしい。2人よりも年上のはずなのに・・・胸も心なしかエーリカより小さいような・・・
私はエイラから離れて、自分の胸を見る。無い。・・・涙が出てきた。
「ブラいらず」
「うるさいうるさい!まだ希望はあるし」
くだらない喧嘩をしながら昼食を取りに行く。さて、今日の食事は・・・パン、ソーセージと野菜のスープ、そしてふかしたジャガイモ。きわめて普通の食事だが、何やらエーリカが文句を言っている。
「またジャガイモか・・・別に嫌いじゃないけどさ」
「こればっかりでちょっと飽きるよなー」
「まあ仕方ないね、昔に比べたら何倍もマシだよ」
「昔がひどすぎるよ」
「そ、そんなにひどかったんですか?」
私たちの会話が聞こえていたらしいリーネが恐る恐る聞いてくる。
「ひどかった。今以上にジャガイモばっかりだし、ソーセージなんてめったに食べれない」
「う~ん、飽きるよね」
「スオムスでもジャガイモが多かったな。たまに魚の燻製とかもあったけど」
JG52にいたころの食事はまあ酷かった。馬鹿の一つ覚えのように、毎日毎日朝昼晩とジャガイモ、ジャガイモ、ジャガイモ・・・パンやソーセージやスープがなかったわけではない。ウィッチは食事面でも優遇されているのでなんだかんだ最低限・・・に届かないくらいの本当に最低限のバランスはとれていた・・・と思われる。思いたい。
というか私の身長伸びないのあの頃の栄養状態の悪さが原因では?許せん。
それはそれとして毎日同じような食事でやっぱり飽きるし、ジャガイモもそれ以外もだんだん品質が落ちていくし・・・補給があったJG52でその有様なので、ベルリンの頃なんて言うまでもない。
ただ一番ひどかったのは・・・
「でもまあ、ジャガイモをふかして食べるだけならまだいいよね」
「あー・・・あれか。あれ人が食べるものじゃないでしょ」
「そこまでひどいのがあるのか?」
「ある。ブリタニア料理のほうがおいしいんじゃない?」
「そんなに・・・」
「いやそんなに・・・じゃなくて否定しなよ。自分の祖国なんだから」
苦笑いするリーネ。どうやらブリタニア人すらブリタニア料理はまずいと思ってるらしい。個人的にはリーネの作る料理をそこまでまずいと思ったことが無いが・・・噂に聞くうなぎパイやらフィッシュアンドチップスを食べたことはないので、まだ深淵を覗いていないだけかもしれない。
「Kパンって言って、小麦にジャガイモを混ぜて作るパンなんだけど・・・」
「まずいよ。ほんとにまずい。パサパサモソモソでさ・・・味も匂いも食感も、雑巾と大差ないよ」
「そ、そんなにか・・・」
「そんなに。その辺の雑草のほうがましだね」
「雑草?雑草なんて食べてたことあるんですか!?」
これまで無言で話を聞いていた宮藤が思わず、といった様子で声を上げた。リーネも一緒に驚いている。普通の前線すら知らない2人には想像もつかないんだろうな。
知識や経験が役に立つといっても、あんな地獄をわざわざ食事時に話すのも良くないだろう。
「まあ、昔はいろいろあってね。わざわざ話すほどのことでもないし、今は補給もしっかりしてるから大丈夫だよ」
「クライン少佐の昔って・・・」
「?何かあったの?リーネちゃん」
「はいはい。知らなくていいから別に・・・それより、イッルがニヤニヤしながらサーニャの寝顔見てた話でもしよう」
「な!?そ、そんなことしてないぞ!」
エイラをいけにえに強引に話を変え、楽しい食事に戻す。エイラって人をからかう割に自分も結構抜けてるところがあるし、反応が面白いしでからかい甲斐があるんだよな~便利・・・面白い友達だ。
「ごちそうさまでした。じゃあエーリカ、30分後に演習ね」
「やだな~」
「ハルトマンとメラニーの演習か。またたくさん観客が集まりそうダナ」
「ミーナが作った規則もなくなったしね、前より増えるんじゃない?」
「・・・う~ん、見てて楽しいもんかなあ」
「そんなにすごいんですか?クライン少佐とハルトマンさんって」
「クライン少佐もハルトマン中尉も、最強のウィッチって言われるぐらいすごいウィッチなんだよ。芳佳ちゃん」
「へ~」
「あんなこと言われてますよ?クライン少佐?」
「やめてよエーリカ・・・純粋な強さなんて、エーリカが上に決まってるでしょ」
「どちらにせよ」
「うわぁ!?・・・美緒」
いきなり話しかけるのはやめてくれ・・・普段だったらわかるが、こういうオフモードの時は普通に驚く。私の抗議の視線を無視し、美緒は普通に話を続ける。
「クライン少佐もハルトマン中尉も非常に優秀なウィッチだ。お前たちもしっかり見ておくように」
「「はい!」」
*****
多くの視線を受けながら空へと昇る。今回の演習は1VS1で私対エーリカ、バルクホルン、ミーナをそれぞれ1戦ずつ。その後は2VS2で私とエーリカ対バルクホルンとミーナの計4試合する。明日以降もペアを組む相手を変えたりしながら演習をするらしい。
うーんキツイ。期待されてるところ申し訳ないが、実は私はエーリカ相手に勝てる一方、バルクホルンやミーナとの相性はそれほどよくなかったりする。
バルクホルンは単純に弾幕が怖い。相手の考えてることが読めたところで躱しようがない状況になったらどうにもならない。
ミーナの場合は三次元空間把握能力が苦手。バルクホルンと同じく、躱しようがない状況に追い込まれる可能性が高い。とはいえ純粋な飛行技術なんかはエーリカやバルクホルンに劣るので、まだ何とかしようがあるのが救いだ。
「エーリカとの試合もなんだかんだ結構してるんだけど、飽きないのかな」
「飽きないから見ようとしてるんだろう。実際、お前たちの試合は見ててなかなか面白いぞ」
「さようでございますか。まあお手柔らかに頼むよ、エーリカ」
「お手柔らかにしたらメラニーのためにならないじゃん」
「ええ・・・急にやる気出さないでよ・・・」
「ふふ、やる気があるのはいいことよ」
「ハルトマンは普段の訓練は手を抜いてるからな。お前が相手だとそうならないのは助かる」
「これ私の訓練なんだけどね。・・・お待たせしてるし、そろそろやろっか」
「よし、それでは2人とも開始位置につけ」
バルクホルンの指示に従って私とエーリカは逆方向に、お互い距離をとる。そして。
「開始!」
合図とともに、まずはある程度距離を詰める。エーリカは得意な戦法と呼べるものはない。何でもできる。ドッグファイトも一撃離脱もどっちもできる。だが今回の演習では超低空と決められているため、上から降りてきて下に抜けていく一撃離脱は使えない。そんなことしたら地面に突っ込む。
なので真正面から突っ込んでくるであろうエーリカを迎え撃つために、ある程度距離を詰めたら射撃の態勢を整え、またすぐに逆方向に逃げられるようにする。
「・・・来たっ!」
迫るエーリカにひたすら機関銃を撃つ。基本的に近づかれたら勝てない。だから今のうちに撃墜したい。私の弾幕を、シュトゥルムを使ったバグのような機動で当然のようにかわしながらどんどん近づいてくるエーリカ。
数十秒射撃を続けるが・・・だめだ。これ以上撃ち続けたら近くなりすぎてしまう。そう判断した私は距離をとるべく逆方向に全速力で飛ぶ。
エーリカも、昔に比べてとんでもなく強くなった。特にヤバいのがシュトゥルム、機動力もさることながら、その強い風はドッグファイトの時に私の体勢を崩させる。近距離になると風が強すぎてまともに飛べやしないのだ。
なので近づかれたら勝てない。だが最高速度はエーリカのほうが速いので、距離をとることもできない。捕まるまでの時間が延びるだけ。逆向きに飛んでる以上、私の攻撃はエーリカにあたらない。逆に後ろについているエーリカは私のこと狙い放題。つまり・・・
「近づいてくんな!!」
「近づくに決まってるでしょ!」
超絶不利な鬼ごっこが始まった。
「くっ!」
「ほらほらそんな無茶苦茶な撃ち方じゃ当たらないよ」
「しつこい!嫌い!」
「ぐはぁ!?」
「なんで効いてるんだ!バカ!」
いやふざけてない。真剣である。紙一重でエーリカの攻撃をかわしながら逃げ続けてきたが、だんだん距離が詰まって来て厳しくなってきた。・・・降参するわけにいかんし、しかたない。
「ふっ!と!」
「!?さすが!」
私は美緒の得意技である左ひねりこみで瞬時にエーリカの後ろに回る。後ろに回るとはいえ真後ろに行ってしまうとシュトゥルムの餌食のため、斜め後ろに、なるべく距離をとるように動く。こうしてシュトゥルムの範囲から逃れつつエーリカを狙える位置をとり、一転して有利な位置をとることが出来た。
試合はそのまま私が読みを駆使して有利を維持し、勝利することが出来た。・・・一戦目でこれはちょっとカロリーが高すぎる。
「よし、次は私とだな」
「・・・勘弁して」
アニメに入ってから窮屈というか、書くのが非常に大変です。どういう風に書くのがいいんでしょうかね・・・手探り状態でございます。
そんな状態なのでオリジナル回になったとたんに書きやすい。筆が進む。原作壊すの怖いからそこだけ注意してますが、これまでに比べて好き勝手出来てやりやすいです。
と言いつつも、実はテストが迫っておりまして小説書くのにそんなに時間が割けません。そのため更新頻度が上がったりはしません。まあ今回これまで通りの頻度で投稿できただけ良しとしてください。
それからアンケートについて
百合要素増やそうかな、と思っております。取り合えずエーリカはもちろん、エイラやサーニャとも絡ませるつもりです。そこまでガッツリ百合をやるつもりはないので、どちらかと言えば仲がいい女友達ぐらいになるかなと。ご了承ください。
2022/10/15 21:34 誤字修正
百合要素ほしい?
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ほしい!(何人かと)
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ほしい!(エーリカと)
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これまで通りで十分
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あってもなくても気にしない
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何でもいいから早く書けよ! オラぁ!