ダックスフンドの首輪   作:転音

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第十六話 英雄の素質②

 

「ふ、ふふふ、よゆー」ゼーハーゼーハ―

「・・・大丈夫か?」

「へ、へいkホッゴホッ」

「ほ、ほんとに大丈夫・・・?」

「あらあら・・・」

 

 3戦終わって3勝。意地で勝った、が代わりに被弾してないのに瀕死である。しんどい。自慢じゃないが、私は継戦能力には自信がある。肉体的にも精神的にも、ウィッチの中では相当にタフな方だと自負している。それこそエーリカよりも。

 

 それでもこのメンバー相手に3連戦は死ぬ。純粋に強いし、ネウロイ相手と違って読み続けないといけないせいで集中力の消耗がすさまじいのだ。特にバルクホルン、狙っても当たらないからとめちゃくちゃに撃ちやがって・・・

 

 私のボロボロっぷりを見たミーナの一声で一旦休憩となり、私たちは地上に戻るのだった。

 

 

「・・・」

「・・・・・いや「必要」?聞く前に答えないでよ・・・」

 

 現在私はバンカーで休憩しながら、エーリカから共有してもらっているところ、なのだがエーリカはまだ一戦しかしてないしこの後ももう一戦するわけだし、こう・・・何というかこまめすぎるというか。ここまでする必要あるか?と疑問に思う一方、エーリカが必要だというのならそうなのかもしれないとも思う。

 

 以前の夜間哨戒でピンチになってから、これまでよりも共有を頻繁にするようになったり、ミーナに「自分も夜勤にしてくれ」と頼んでみたり、私に対して過保護になっている節がある。気持ちはうれしいがあんまり神経質になりすぎるのも良くないし、私としてはもう少し安心してほしいところだ。

 

 まあ、エーリカが空に関して間違ったことをするなんて考えられないし、何かしら理由が・・・それこそエースの勘みたいなものが働いてたりするのだろう。普段の自堕落っぷりも相変わらずだし、ちょっと面倒ではあるけどしばらくは我慢することにする。

 

「じゃあさ、次の試合のこと考えよう」

「考えることある?」

「ん~・・・ん~?」

「ないのか・・・」

 

「ずいぶん舐められたものだな?クライン」

「ごめんごめん、舐めてるつもりはないよバルクホルン」

「正当な評価です」

「ハルトマン?」

「メラニーが言ってた」

「エーリカ?言ってないよね?」

「ほう・・・いつから私にそんな口を利けるようになったんだ」

「なんで私が?」

 

「あらあら、相変わらず仲がいいわね」

「そんなに寂しがらなくてもミーナも友達だよ♪」

「・・・ええ、ありがとう」

「恥ずかしがっちゃって」

 

 恥ずかしがるミーナは新鮮だな。もっとも、分かりやすく顔を赤らめたりはしてくれないが。普段ミーナは私たちを遠くから眺めていたり、保護者的な立ち位置というか一歩引いたところにいることが多い。別に仲が悪いなんてことはなく普通に友達だし仲もいいけど、年齢だったり立場の差もあって若干距離を詰めづらいように感じる。エーリカはそんなこと一切考えてなさそうだけど。

 

 そういえば年齢で行くとバルクホルンもミーナと同い年のはずだが・・・

 

「なんだ?私の顔に何かついているか?クライン」

「・・・バルクホルンって子供っぽい?」

「突然何を言うんだ!?」

 

*****

 

 一応さっきまでと同じルールであることを確認してから空に上がって、ハイタッチで固有魔法を発動。エーリカが相手だと通信魔法じゃなくて精神感応として本来のスペックをフルに発揮できる。

 

(さて、エーリカのおかげでバルクホルンがお怒りですが)

(メラニーの)

 

 もう一度ハイタッチ

 

(都合が悪いからって切らないでよ・・・)

(間違いなくバルクホルンは私につくと思う)

(ソーデスネ。ならミーナが私。そのままぶつかれば勝てるじゃん)

(私が死んでもいいならね)

 

 正直バルクホルンともう一度サシでやりあって勝てるかどうかは分からない。少なくともエーリカの援護をするほどの余裕はないし、ミーナから横やりが入る可能性も考えると分が悪い。

 

(・・・はあ、どうすんのさ)

(どうも。一対一にさえならなければいい)

(了解)

 

 許される限り高度を上げて、インカムで審判をしてくれる美緒に準備完了の合図をする。さて、本領発揮と行こう。

 

 

 まずは距離を詰める。今回は低空だが、もっと高度が高いと雲の中に隠れられたりして非常にめんどくさい。ミーナは能力で私たちの位置を把握できる一方、私たちはミーナたちの位置を把握するのが難しいからだ。低空かつ海上のためそういうことを気にしなくていいのは、私たちにとって有利な条件と言える。

 

 そんなわけで素直に距離を詰め、予想通り視界に現れた二人とヘッドオン。ミーナの得意戦術が一撃離脱――――上空から射撃を浴びせそのまま急降下して逃げる戦法――――であるため、高度を下げたくないからだ。

 

 とはいえ、人間の体は飛行機と違って円筒形であり、地面に水平に飛んでいる状態では被弾面積が小さすぎて滅多に当たるものではない。お互い銃撃を外しそのまま通り過ぎる。エーリカには水平にターンさせ、私はあえて斜め下に宙返りをすることでミーナたちを追う。それによって高度は失うが速度を得られる。

 

 さっきと言っていることが違うと感じるかもしれないが、通りすがりにミーナを読んだ感じ、私が高度を下げるとは考えていなさそうだったので意表をつけると踏んだのだ。できればこのまま後ろをとりたい。

 

 しかしそううまくはいかず、ミーナの三次元空間把握によって奇襲は失敗。速さが仇となりミーナたちの急旋回を追い切れずにターンが大きくなったところで後ろをとられる。ミスった・・・わけじゃない。

 

 私はもう一度斜め下に向かって宙返りし、さらに速度を得ながら逃げる。私の使っているストライカーユニットも、ミーナやバルクホルンが使っているストライカーユニットも、ある程度の差異があれど同じbf109という機体。つまり最高速にはそこまで大きな差異はなく・・・したがって加速した私を追うなら向こうも高度を下げざるを得ない。

 

 想定通り、バルクホルンが私を追って高度を下げる。ミーナはさすがに慎重で高度は下げずにターンしているが、それも想定内。

 

 

 バルクホルンが下がりだしてから少し遅れて私は上にいるミーナを目指す。旋回に苦労しているバルクホルンは戦闘に参加できない。一時的に一対一となった隙を生かしてミーナに攻撃するが、こちらも攻撃を受ける。速度がある分上昇も早いが、上から撃たれっぱなしはよろしくない。

 

 途中で上昇をやめて水平に逃げる。変則的なインメルマンターン――――ループの頂点で水平飛行へ移行する技術――――といったところか。

 

 

 さて、状況を整理しよう。私の上斜め後ろにミーナ、下斜め前にバルクホルンがいて上下に挟まれてる状態。一見不利だが、バルクホルンは無理に私について来ようとした結果降下で得た速力を殺してしまって上に上がるに上がれないし、射線上にミーナがいるので下手に弾幕も張れない。

 

 とはいえこの状況だと頭の後ろに目がついてない限り、常にどちらかが視界から外れることになる。この状態が長く続くと危ない。可能ならミーナの高度を奪いたい、それが出来なくても視界に2人が収まるようにしたい。

 

 ミーナもそれは分かってる。が、その一方で二対一のうちに私を倒しておきたいとも考えている。私を倒す方に思考を傾けさせれば釣れる。

 

 ということで私は再び高度を下げ、敢えてバルクホルンに後ろをとらせて全速力で逃げる。速度に劣るバルクホルンとミーナがついてくるなら再び高度を下げざるを得ない。バルクホルンは少し下がって斜め後ろに、水面に映る影を見る限り・・・ミーナも下がった!

 

(かかった!エーリカGO!)

(了解)

 

 上斜め前から現れたエーリカが攻撃を始める。それに合わせて、私は全力で捻りこみを行いミーナの後ろに。そうして私の下斜め後ろにいたバルクホルンが攻撃を食らって撃墜。続いてミーナも私の攻撃で撃墜。

 

 最後はあっけない終わりとなった。

 

 

 地上に降りてからバルクホルンに聞かれた。

 

「何が何だか分からないんだが、説明してくれないか?」

「いいよ」

「私たちも興味があるな」

「一緒にいいかしら?」

「美緒、ミーナ。もちろんいいよ」

「頼んだ。クライン先生」

 

 ということで何が起こっていたのか解説。

 

 まず疑問に思うのはエーリカどこから来た?

 答えは普通に正面から飛んできた。それならミーナは気づきそうなものだが、気づかせないように気を使っている。

 

 一つは私がミーナに対して攻撃を加えたこと。

 ミーナは長いこと指揮官やってるだけあって戦闘中でも広い視野、冷静な判断力を備えている。そのため攻撃を加えても思考力を奪ったりとかはできない。しかしミーナの考えを読むことが出来る。

 

 相手が何をしたがっているのか、それを読んで、つぶす。もしくは利用する。上下に挟まれまでしてバルクホルンを無力化したのも、ミーナ視点ではエーリカと一対一になった時点で負け確定であることを見越して、バルクホルンを失う危険を冒してまで私を倒そうとしないだろうという考えの上でやったことだ。

 

 

 二つ目は距離感覚をバグらせること。

 私は戦闘中速度をころころ変化させそれに合わせて向かう方向を変えていた。高度を下げ移動速度が速い時はエーリカから遠ざかるように。速度が遅いときは逆に近づくように。

 

 いくらミーナでも、どれくらいの速度でどの方向にどれだけ飛んだかなんて戦闘中に把握してられない。結果としてエーリカがどのあたりにいるのか全く分からなくなり、勝負のかけどころを見失ったのである。

 

 

 あとは判断に迷うミーナの背中を悪い方へ突き落してゲームセット。位置関係的にバルクホルンには私の上斜め前から射撃してくるエーリカが見えないので躱しようがない。ミーナからは見えるけど私が後ろにつくなどして連絡するほどの余裕は与えなかった。

 

「なるほどな。新人たちの参考にはならんな」

「あっはは・・・ごめん忘れてた。でも別にわざわざ私を参考にさせなくてもいいんじゃないの?美緒が教えるんだったら」

「そんなことはない。私は戦い方が特殊だしな」

「銃が使えないわけじゃないでしょ」

「そうだがな。クラインは経験も豊富だし、特に宮藤には学んでほしいんだが・・・」

 

 宮藤か・・・ふむ。私の経験ね。私の経験を話せば、彼女の考え方も変わるだろうか。しかし私としてはできれば恩人である彼女にはウィッチになってほしくないし、なるにしても学校へ行ってからにしてほしい。

 

 ベルリンについて話したりすれば考えを変えてくれるかもしれないが、ついこの間まで一般人だった彼女に話すには少々どころでなく内容がキツイし、気は進まない。

 

 ミーナに進言を受け入れられなかった以上は、本人を説得するしかないが今の宮藤が私に何を言われても考えを変えることはないだろう。明日からは朝から一緒に訓練になるし、先ずは最低限話を聞いてもらえる関係性を作るとしようか。

 





 テストが終わりました。最近投稿ペースが落ちているし、ペース上げたいですね。頑張ります。

 今回はちょっと短めです。戦闘描写って難しいですね~。いつもより短いのにいつもより時間がかかりました。コツとかあるんでしょうけど、全然つかめる気がしません。無理に戦闘要素入れないようにした方がいいですかね・・・でもやっぱある程度は入れたいなぁ。
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