ダックスフンドの首輪   作:転音

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スイスって、ヘルウェティアなんですね。SW世界だと・・・教えてくださってありがとうございました。


第十九話 空へ

 

 あの後、魔力切れと精神的な疲労やストレスの影響で宮藤が意識を失ったものの、数時間後にはすぐに回復し、その日のうちに501のみんなは自国への帰路をたどることになった。私はマロニー大将の指示でみんなが帰るまでの案内と監視役を務めることとなった。

 

 一番準備が遅かった宮藤を部屋まで迎えに行き、その後みんなを連れて基地の外へ向かう。外にはそれぞれの目的地に向かう輸送車両が来ている。それに乗って飛行場なり、それぞれの原隊が配属されている基地まで向かうのだ。

 

 窓から明るい光が降り注ぐ廊下を、ただ足音だけが響いている。女三人寄れば姦しいという言葉があるが、少なくとも今は当てはまらない様子である。

 

 普段と違ってみんなの雰囲気はどこか固く、静かで、およそ501らしくない空気だった。特に宮藤はやや下を向いて普段の元気な様子が全くない。流石に責任を感じているらしい。何か言いたげに顔を上げてこちらを見るのだが、結局何も言わずにまた下を見てしまう。私は私でみんなを裏切ったというかだましたというか・・・気まずくて自分から話しかけるような気分ではないし、とくに話すこともないので黙って歩いていた。

 

 宮藤はいつまでも踏ん切りがつかない様子で、私は内心そのまま何も言わずにおとなしくしていてくれと思っていたのだが、門に着くと、最後のチャンスと心を決めたようで話を切り出してきた。

 

「あ、あの、その、クラインさん」

「・・・なに?」

「どうにもならないんでしょうか。その、ストライクウィッチーズの解散は」

「ならない。私を説得しても無駄だよ、マロニー大将の命令だからね。君にはわからないかもしれないけど、命令っていうのは基本的には守らなくちゃいけない」

 

 私の言葉にミーナが食いついた。

 

「あら、まるで守らなくていい時があるみたいないい方ね?クライン少佐」

 

 模範的軍人として答えるならば、そんなものはない。すべての命令には従うべきだ。だが私はこう思う。

 

「目的と手段だよ。ミーナ中佐」

「どういうことかしら」

「・・・軍人になりたくて、なったわけじゃない。それだけだよ」

 

 

「さあ、みんなそれぞれ車に乗って。そのあとのことは運転手か、もしくは目的地に着いてから説明があるはずだ」

「まった!!」

「・・・エーリカ」

 

「メラニーは、メラニーはどうなるの?SJBに行くの?」

「私はここに残る」

「私は嫌だ!またメラニーと離れ離れになるなんて・・・!」

「・・・仕方ないよ」

「命令でも嫌だ!何でもするから、お願い、一緒にいさせて。ね?」

 

 エーリカらしくない。余裕がない。涙目で、下手に出て、そこまでして一緒にいたいと思う気持ちは、正直私にもわかるわけで。エーリカの申し出は渡りに船と言える。マロニー大将もエーリカという優秀なウィッチをいいように使えるとなればもしかしたら彼女が基地に残ることを許してくれる可能性も万に一つくらいあるだろう。

 

 だが今私が渡っているのはうまくいかなければ軍法会議間違いなしの危険な橋。エーリカがいくら一緒にいたくてもそれを許すわけにはいかない。しかし素直に説得を試みても聞くはずはないだろう。エーリカが、私が一番さみしさや罪悪感で心が揺らぎ、説得に応じやすいこのタイミングを見計らって交渉してきたぐらい私のことをよくわかっているのと同じように、私も彼女のことをよく知っている。

 

 だから私は、いつものように腕を広げてエーリカに抱き着いた。

 

 そして・・・

 

「え!?・・・ぇ?」

「ごめん。フラウ」

 

 彼女の頬にキスを。なるべく冷静さを奪うために唇に近いところに。少しの違和感でも、彼女は私のやることを読んでしまうだろうから。

 

 私の唇がエーリカに触れたその瞬間、魔法を発動しエーリカの意識は落ちる。

 

「エーリカ!?」

「大丈夫!?エーリカ!」

「ちょっと眠ってもらっただけだよ。・・・バルクホルン。一緒にエーリカを運んで、車に乗せて」

「クライン。それでいいのか?」

「これでいいよ。とりあえず、今はね。あとで謝る時間はいくらでもあるし」

「・・・そう、か。分かった」

 

 バルクホルンはエーリカを一人で抱えて車に乗り込んだ。ミーナも一瞬チラとこちらを見るだけで、何も言わずに乗った。車が見えなくなった後、私はエーリカから伝わってきた想いをなるべく考えないように、足早に司令部まで急いだ。

 

 司令室に近づくにつれ、小走りで忙しそうにする技術者や研究員、オペレーターの姿が目立つ。初出撃の後だからかもしれないが、恐らく次の作戦に向けた準備が進んでいるのだろう。

 

「閣下」

「おお、クライン少佐。別れの挨拶はすんだかね」

「はい。お気遣いいただきありがとうございます」

「かまわんとも。ようやく邪魔なウィッチーズを排除することが出来たのだしな」

「しかし状況は良いとは言えないですよ。どうなさるおつもりですか」

「一度表に出てきてしまった以上、もう後戻りはできん。早急に他の連中を黙らせる実績が必要だ」

 

「一体何を?」

「ガリアを解放するのだよ」

「!!・・・少しリスクが大きすぎるのでは?」

「ウォーロックの性能なら十分に可能なはずだ」

「そうは言いますが、まだウォーロックは一機しか。それも実戦投入を想定していない試作機の零号機です」

「わかっている。だが今は多少の無理を通さざるをえん。元はと言えば君の責任なんだぞ、クライン少佐」

「・・・はっ申し訳ございません」

 

 諜報員や工作員としての教育なんて受けてない素人の小娘に任せる方が悪いだろうと、思っても外には出さない。マロニー大将はウィッチを嫌い、見下してさえいるような人だ。ボロを出せばあっさり切り捨てるだろう。

 

 わざわざ私にウィッチーズの案内兼監査役をさせたのも、私やみんなに少しでも不快な思いをさせるために違いない。陰湿でとても大将まで昇り詰めたとは思えない器の小ささを感じる。

 

 それでもまあ、私を今ここに置いてくれていることには感謝しているが。ウォーロックだけでは何が起こるか不安なので、万が一のためにお願いしたのだ。多少の嫌がらせぐらい甘んじて受け入れよう。

 

*****

バルクホルンSide

 

「・・・ようやく監視が外れたわね」

「ああ」

「・・・・・」

 

 私とミーナ、エーリカの三人は、海近くの石造りの待合所にいた。ミーナの魔法で監視役が外れるまで待ってから、車を降りたのだ。理由はもちろん宮藤、そしてクラインのことだった。

 

「クラインについて、どう思う?ミーナ」

「トゥルーデはどう思ったかしら」

「そうだな・・・私たちに銃を向けたことも、エーリカと話し合わずに無理やり眠らせて別れたのも、クラインらしくはないが・・・マロニー大将の命令を実行するためなら、納得できなくもないな」

「そう。彼女は最後までマロニー大将の命令に従っていた。けど、それっておかしいと思わないかしら」

「おかしい?」

 

「501が解散して、原隊復帰を命じられた以上、私たちはカールスラント軍の指揮下に戻ったはずなのよ」

「なるほど。クラインにはマロニー大将に従う理由がない・・・しかしそれならどうして従っているんだ?」

「目的と手段。おそらくそれがカギね。クラインさんはどうしてウィッチになったのかしら・・・」

 

 ミーナが口に出した疑問に、今までまるで亡霊のように下を向いてうなだれていたエーリカが口を開いた。

 

「・・・家族」

「エーリカ?」

「メラニーは家族を守るためにウィッチになった。・・・きっとマロニーはメラニーのことを脅してるんだ。家族を人質に取って。そうだ・・・そうなら・・・」

 

 ブツブツつぶやきながら何だかどす黒いオーラが見えてくるような様子で、のろのろと立ち上がり待合所から出るエーリカ。それを見た私とミーナも無言で、静かに待合所から出る。

 

「・・・久しぶりだな。この状態のエーリカは」

「そうね・・・」

「マロニー大将が死なないように気を付ける必要がありそうじゃないか?」

「ええ。・・・いざとなったら止めて頂戴」

「私一人で止められるものか」

 

 悪魔に聞こえないように小声で話す私たちの方を横目に。振り上げられた小さなこぶしが待合所を吹き飛ばした。

 

*****

司令部

 

「ウォーロック零号機、準備できました」

「これよりガリア地方制圧に向かわせます」

「うむ」

 

「ウォーロック零号機、発進せよ!」

 

「飛行形態に変形完了」

「ガリアへの進路変更確認」

「既に亜音速に到達しました」

 

「ふっ、どうだ。小生意気なあの魔女たちとは全く違う。ウォーロックこそ、我々のネウロイ研究の成果なのだ」

「技術主任は実戦投入にはもう少し出力レベルを整えたいとのことでしたが」

「そんなことは分かってある。だが、ウィッチを追放した今、我々が戦うしかないのだ。実績が必要なのだよ。ネウロイを殲滅し、そして世界のイニシアチブを、握るために」

 

 大将の個人的な野望などどうでもいい。それより私はウォーロックの出撃をやめさせたい。が、いまさらどうにもならないだろう。ならできる事をするだけだ。

 

「閣下、念の為私も出撃します」

「ならん。ウォーロックの実績作りだというのに君が出撃してはケチがつく」

「では出撃の準備だけでもさせていただきたいのですが」

「・・・いいだろう。ただし、私の許可なく飛ぶことは許さん」

「了解致しました」

 

 

「ウォーロック零号機、ネウロイを撃破しました」

 

 はやい。ガリアに着くのも、ネウロイを倒すのもとんでもなくはやい。さすがに戦力として十分かも考えずにウィッチーズを解散するようなことはしないと思ったが、それにしてもすごい。

 

「にゃはっはっはっは!見ろ、もはや我々はネウロイを超えたのだ!」

 

 閣下も大層得意げだ。だが、ネウロイの真の強さはまだ発揮されていない。

 

「閣下、ネウロイの巣を攻略するのがどうして難しいのか、ご存知ですか?」

「ん?今のを見ても不安があるのかね」

「はい」

 

 そしてそれはすぐに現れ始めた。

 

「どうした!何が起きている」

「ネウロイが2機出現しました」

「いえ、3機です!」

 

「なに!」

「構わん!殲滅しろ!」

 

 そう簡単に行くか。ネウロイの最大の強みは無尽蔵の数だ。ウォーロックがいかに強くても、一度に相手できるネウロイの数には限界があるはず。もしそのキャパシティを超えたら敗北一直線だ。

 

 だが予想に反して、暫くの間ウォーロックはネウロイを殲滅し続ける。・・・なんだ。何が起きている。いかにウォーロックが強くても複数の大型ネウロイを歯牙にもかけないなんてことはあるのか?

 

 想定をはるかに超える驚異的な殲滅能力を示したウォーロックだが、それでもネウロイは少しずつ数を増やした。

 

「ネウロイの数、8、9・・・」

「ウォーロックの処理能力は限界です」

 

「くっ、コアコントロールシステムを稼働させろ!」

「しかし、コントロールするには、共鳴するコアを持つウォーロックが5機以上必要です」

「ぬぅ・・・」

 

 さっきまで大得意だった大将の顔も歪む。やっぱりいくら強くても1機では・・・そう思ったその時だった。

 

 司令部に警報が鳴り響く。

 

「コアコントロールシステムが、勝手に動いています!」

「なに」

「ウォーロック自らが、コアコントロールシステムを稼働させたようです」

 

 ・・・それは、おかしくないか。今は1944年、AIなんて言葉すらなく、それどころか最初期のコンピュータもまだ開発されていない。当然、ウォーロックが自分で状況を判断して自身の機能を活用することなんて出来るはずがない。

 

 猛烈にイヤな予感がする。何が起きているかはさっぱりだが、間違いなく、まずいことがおきている。

 

「ウォーロックのコアコントロールシステム、正常に稼働しています」

「すべてのネウロイを支配下に置きました。予想以上の成果です」

 

「予想以上・・・?予想外の間違いじゃないですか!閣下、ウォーロックを帰投させて下さい。それから私に出撃許可を」

「ならん!このままいく」

「そんな・・・」

 

 その時、今度はモニターを見ていたオペレーターからどよめきが上がる。

 

「何があったんですか!?」

「ネウロイがネウロイを攻撃しています!」

「な・・・!」

 

 瞬く間に数を減らすネウロイ。程なくしてすべて殲滅された。その事実に一瞬歓声が上がる。だが、すぐに司令部は凍りついた。

 

「なっ!?」

「どうした!」

「いえそれが・・・」

 

「こちらからの制御が、遮断されました」

 

 私は最高速でストライカーへ走った。

 





 10月29、30と文化祭な事を忘れてました。下手に宣言とかするもんじゃないですね。完結を期待していた方がいらっしゃいましたら遅れてしまい申し訳ありません。

 今回は後半ほぼ原作通りでしたが、次回以降はむしろ原作から変わると思います。ご承知おきを。

 後書きでメラニーからみんな、みんなからメラニーへの印象とか、関係性みたいなのを紹介するか悩んで、完結した後番外編として書くことにしました。お楽しみに。

 それ以外にも番外で書きたいことが結構あったりするんですけど、一方でSW2やRtBも書くならネタとして取っときたいやつもあるので・・・どうしようか悩んでおります。

 SW2はともかくね、RtBは書きたい欲が凄いんですよね・・・主人公にとって非常に重要な場所ですから。またアンケート取りますかね。

2022/11/19 22:24 誤字修正

完結したら

  • 番外で全てを終わらすべし
  • 続きを書け!
  • 何でもいい。とにかく百合をくれ
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