ダックスフンドの首輪   作:転音

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第二話

 

 さて、そうと決めたら食事時の今以上に話しかけやすい時間はないだろう。ほかの子たちに比べやや遅れて食堂につくと・・・予想通り、あらかた席が埋まっていた。

 電車でほかの席が空いてるのに自分の隣に座ってきたらちょっとビビるでしょ?なんでって思うし警戒するでしょ?そう、コミュニケーションには理由付けが結構大事なのだ。警戒されない方がいいんだから・・・

 

 

 ・・・幼いころから本の虫だったメラニーは、コミュ障疑惑があった。

 

 

*****

エーリカ Side

 

「あの~」

 

 いつもと同じようにほどほどに訓練を頑張って、妹のウルスラと一緒に食べていた時、黒髪黒目の、小柄な子が話しかけてきた。

 

「・・・私?どうしたの?」

「席が埋まっちゃってさ・・・」

 

 困り顔で座らせてほしい、と頼んでくる彼女。周りを見れば、確かに空いている席が見当たらなかった。

 

「ああ、そーゆことならいいよ?ウルスラもいいよね」

「大丈夫、です」

「ありがとう!」

 

沈黙

 

「えっと、知ってるだろうけど、あらためて私はメラニー・G・クライン。あなたはエーリカ・ハルトマンだよね?」

「そ、こっちは妹のウルスラ」

「こんにちは」

「よろしく」

 

沈黙

 

 私は思った。何だ、この子。

 

 

 もともと割と無口なエーリカと人付き合いの苦手なウルスラ、そんな二人とメラニーの相性は最悪だった。先ほどから視線をきょろきょろと動かし、話しかけたそうにしているが、きっかけがつかめないらしい。

 エーリカとウルスラにとっては何も話さずに食事をとるのは慣れたもので、特に気まずさを感じることもないが、クラインにとってはそうじゃないらしい。一応断っておくと、ハルトマン姉妹の仲が悪いわけではない。単純に無口なだけである。

 

 

 うーん、話題を振ってあげるべきだろうか?しかしこっちにも特に話すことなんてない。

 結局何も話さないまま時間は過ぎていき、食事の終わりに近づいていく。気まずさからかいつもよりも食べるスピードが速い。そんな状態に焦ったのか、クラインがいきなり口を開いた。

 

「あの、その~飛び方を教えてくれませんか?」

「飛び方?」

 

 聞かれて思い出した。確かにこの子、飛行訓練の度毎回見事に顔から地面にダイブしていた気がする。

 だが・・・

 私が何か言うより先に、ウルスラが突っ込んだ。

 

「教官に教わったほうがいいのでは?あとは教本を読むとか」

「うん。私もそう思うなー・・・上手く言葉にできる気しないし」

 

「もちろん教官に教わったりもしてるんだけど・・・やっぱ感覚とかそういうのが知りたくて」

 

「感覚ですか?」

「そんなのどうやって・・・おんぶして飛ぶとか?」

 

「私の固有魔法です。どういう風にやるかは・・・やって見せた方が速いですね」

 

 クラインはそういうと手袋を外し、私たちのほうに手を伸ばしてきた。

 

「二人とも、私の手を握ってください」

 

 その通りにすると、彼女はちょっと待ってくださいといった。それからしばらくして手を離すと、彼女は食べかけのソーセージを食べた。すると

 

「うわぁ・・・ソーセージの味が」

「なんか変な感じ・・・」

 

 口の中にあるソーセージの感触や味など、食べている彼女の感覚がその通りに伝わってきた。何も食べてないのに食べている感覚だけがあるというのは、何とも言えない気持ちの悪さがあるが、確かにこれなら飛んでいるときの感覚も余すところなく伝わる事だろう。

 

 というか、精神に干渉するタイプの魔法には特に危険なものが多いって習った気がするが大丈夫なんだろうか?

 きいてみたところ、その危険性から固有魔法については教官から特別に指導を受けていたらしく、お墨付きをもらえるくらいには習得したとのこと。ホッとした・・・

 

 

 結局、教官からの許可が下りたら次から飛行訓練でやってみようということになった。

 

 クラインが、私たちと同じように飛べるようになったのは許可が出てから1週間後のことだった。

 

*****

クライン Side

 

 ハルトマン姉妹の協力のおかげで、何とか普通に空を飛ぶことが出来るようになり、また当初の狙い通りエーリカとも仲良くなることが出来た。はたから見ていた時はまじめでおとなしそうな印象だったが、実際のところそれはよそ行きの態度だったらしく、付き合ってみれば天真爛漫ないい子である。

 

 問題児、という意味では妹のウルスラ・ハルトマンのほうが教官への反抗心が強いように感じた。おそらく、彼女は「記憶」でエーリヒ・ハルトマンの妻だったウルスラ・ペーチュにあたるのだろう。ペーチュさんがどんな性格だったかは知らないが、ますますエーリカが将来のエースオブエースである可能性が高まった。

 

 ちなみにウルスラもまた、飛行訓練等では姉にかなわないものの、座学においては姉を凌駕する超優秀な天才である。というか、飛行も姉にかなわないといっても飛べるようになったのは私より早いわけで。とんだ天才姉妹だ。その才能を少しでもいいから分けてほしい。

 

 さて、現在は1938年9月、ウィッチになるための最初の1年が終わり、本格的に航空ウィッチとしての訓練が始まったころである。そして「記憶」で第二次世界大戦がはじまった1939年9月まで、ちょうどあと1年の節目でもある。

 

 扶桑海事変ではウィッチの活躍により事態は沈静化へと向かっているとのことだ。最初のうちは少女を戦わせるのは・・・とためらっていた大人の皆さんも、被害が出すぎてそうも言っていられなくなったらしい。

 残念ながらネウロイ大戦の時から変わらず、ネウロイに対する最大の対抗手段がウィッチであることが証明されてしまったため、第二次ネウロイ大戦が起きれば私も前線で戦うことになるだろう。自分で決めたとはいえ少し怖くなってきた。いや、今更引き返せないのだが・・・

 

 いい知らせとしては、新型のストライカーユニットが作られているらしいという噂だ。何せまだ生産開始間もないらしく、噂の出どころもあいまいなため信頼性はそれほどないが・・・事実なら喜ばしいことである。訓練では旧式を使っているし、私たちのところまでいきわたるのはまだ少しかかるだろう。ぜひ頑張って生産してほしい。

 

 

 訓練といえば、ハルトマン姉妹の動きを固有魔法で感覚共有することによって私はかなり上位の成績を収めることが出来るようになった。なんならウルスラのことを追い抜かしてしまったくらいだ。もっとも、座学含めた総合ではまるでかなわないが。

 

 エーリカのほうは相変わらずの天才っぷりで実技も座学もトップクラスである。

 理解できない天才に対して「頭の中を見てみたい」ということがあるが、実際に頭の中を見てもなお理解が及ばないので、結局凡人では天才を理解するなど不可能なんだなと思い知った。

 

 因みにエーリカは天才だが、トップクラスでありトップではない。何とびっくりエーリカに並ぶほどの天才がいるのである。それがハンナ・ユスティーナ・マルセイユ・・・エーリカをライバル視し、事あるごとに勝負を吹っかけている問題児である。

 

 

 それはある日のことだった。いつものように同じテーブルで食事をとっていると、突然食堂に駆け込んできて、開口一番「エーリカ・ハルトマンは何処だ!」っと叫んだのである。めちゃくちゃ驚いたし、エーリカも驚いていた。何せ面識も一切ない相手が大声で自分の名前を呼びながら探し始めたのである。見た目がいくら美少女でも怖い。

 

 驚いて食堂にいた全員が思わず固まり、普段は賑やかな食堂が一瞬異様な静けさに包まれた。ハンナはその間にぐるっとあたりを見回し、見事エーリカを見つけるとずかずかと近づいてきて言った。

 

「見つけたぞ・・・お前がハルトマンだな?」

「・・・人違い」

「嘘だな。私は目がいいんだ。見間違うことなんてありえない」

「はぁ・・・何の用ですか」

「教官が言っていたんだ・・・私よりも優秀でまじめな訓練兵がいると。確かめに来た。さあ、勝負しろ!」

 

 

 そこから先は、勝負する、しないの押し問答。ついには教官がやってきてハンナが連行されていきその日はひとまず落ち着いたのだが・・・それ以降、エーリカの姿を見るや勝負勝負とうるさく、仕方がなくエーリカが付き合ってやる(もちろん教官の許可を得た)とボコボコにされていた。

 

 ボコボコといっても私がやった時よりはるかに戦えていた。あの自信過剰に思える態度も十分納得できるものではあったのだが、教官曰く「才能があっても怠惰で問題ばかり起こす」とのことなので、一応訓練をちゃんと積んでいるエーリカに軍配が上がったのだろう。

 

 その後しばらくは勝負を仕掛けてくることもなくなり、最近来なくなったね~なんてのんきに話していたころ、再びハンナはやってきて勝負を仕掛けていた。

 2回目となる勝負はハンナが勝ったのだが、その後も幾度となく勝負を仕掛け続け、おかげでエーリカのスルースキルが大いに強化された。

 

 

 そんなハンナと私の関係はというと、意外にも結構普通の友達である。どうやら彼女、これまで自分に並ぶほどの才能を持った人に出会ったことが無いらしく、その結果エーリカをライバル認定して勝負を挑みまくっているのだが、逆に言えばエーリカレベルの才能を持っていない人に対しては多少まともに対応してくれる。

 

 多少まともといっても、自信過剰、傲慢不遜の自己中で協調性に欠けるなかなか難儀な性格をしている。軍紀違反はしょっちゅうの素行不良っぷりで、問題児といわれるのも納得のありさまだった。感覚共有させてくれたことだけは感謝しているが、正直積極的にかかわりたくないタイプである。

 

 

 そんなこんなで少しドタバタとした、しかし飽きない日常が過ぎてった。カレンダーが信じられない速さでめくられていく。あっという間に1939年がやってきて、すぐに2月、3月と進んでいく。

 

 訓練はきつい、座学は大変だ。だが平和だし、楽しい。ハロウィーンやクリスマス。年越しにカーニバル、イースター・・・楽しい思い出が積みあがる度、それらが壊される可能性が頭に浮かんだ。

 願わくば・・・お願いだから予想が外れてほしい。すべては子供の杞憂でしかなかったと、大人になったら黒歴史だと言って笑えるような。そんな未来が来てほしい。この世界には居もしない、どこかの神に祈った。

 

*****

 

1939年 8月

 

 私とハルトマン、そしてハンナは無事訓練学校を卒業し、第52戦闘航空団(JG52)に配属となった。ハンナとハルトマンの首席争いは、ハンナの普段の素行の悪さがたたりハルトマンに軍配が上がることとなった。

 

 私が予想した運命の9月まで、あと一か月を切っていた。焦りは募り、たびたびハルトマンに心配された。理由を言うわけにもいかないので、適当にごまかしたが納得はしていないようだった。

 

 

 願いがかなったのか私の予想は裏切られた。だが、それは悪い方にだった。

 

 部隊配属から約2週間後、ダキアにネウロイが上陸した。瞬く間に次々と国が飲み込まれていった。

 

 9月には人類統合戦線が結成され、私たちの所属するJG52も前線で戦うこととなった。

 

 

 そして地獄は始まった。




 現在必死にJG52に所属していた原作キャラをまとめております。どなたか有識者の方がおりましたら、出来れば階級や地位(中隊長など)も含めて個別にメッセージで教えてください。

 主人公の名前を変更しました。一度完成した後に名案がわくことってありますよね。なんでなんでしょうか。今回の変更は名案というほどでもないですが、まだ1話だし、変えちゃえ!って感じです。
 自分で付けておいてリージーという名前がどうにもなじまなくって・・・



 設定を調べたりするのに時間がかかって平日はめちゃくちゃ更新遅いと思われます。許してください。休日は頑張りますので。

世界地図とか何が正しいのやら・・・最も長い撤退戦も全然情報出てこないし、最悪オリジナル要素で埋め尽くすか・・・

2022/9/11 5:56 誤字修正
2022/9/14 11:08 誤字修正
2022/9/19 19:22 誤字修正
2022/9/21 5:54 加筆修正
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