ダックスフンドの首輪   作:転音

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第二十話 ストライクウィッチーズ

 

 シンクロで身体能力を強化し、後ろからかけられる制止の声を振り切ってストライカーへ駆ける。

 

 なぜ暴走しているのか、一つ考えられるとすれば、ウォーロックに使われているネウロイのコアだろう。コンピューターがないのにあんなメカメカしいものをどうやってコントロールしているのか。マロニー大将は詳しいことはあまり教えてくれなかったが、恐らくネウロイの心臓であり頭脳でもあるコアをコンピュータ代わりにしてるのではなかろうか。

 

 私は別にコンピュータやらAIやらに詳しいわけではない。ないが、もし安っぽいSFであるようなAIの暴走が、現実でも実際にAIに自我が宿ることで起きうるなら、コアに自我が宿ることでウォーロックが暴走することもあり得るのではないか?むしろ人間が作り出したAIなんかより、何もかもが分からないことだらけのネウロイのコアのほうがよほどそういうことが起きそうだ。

 

 コンピュータがないのだから、ハッキングで外部から操られている・・・なんてこともないだろう。ならばウォーロック自体に自我がなければこちらのコントロールを受け付けないなんてことにはならないはずだ。単にコントロールシステムが故障しているだけかもしれないが・・・コアコントロールシステムを稼働させたときにはまだ制御できていた以上、その可能性も薄いだろう。

 

 自我が・・・人間と同じような思考があるなら、まだどうにかできる。私の魔法を使えれば、ウォーロックを操れる。

 

 ハンガーは鉄骨で封印されているため、外に用意してもらったストライカーに飛び乗り瞬時に支度を整えて、私は空へ上がった。

 

「っ!なんだ!うわぁ!?」

 

 飛び始めて少しして、遠くに大きな波が見えたかと思えば、そのすぐ数秒後には基地にレーザーが直撃した。

 

 振り返れば基地は半壊し、火の手が見える。気にはなるが、気にしている余裕はない。私はますます速度を上げて赤城へと向かう。ネウロイが殲滅された以上、このレーザー攻撃ができるのはウォーロックしかいない。嫌な予感が見事に的中してしまった。

 

 エンジンが爆発する限界まで速度を出して、赤城に辿り着くと今まさにウォーロックが攻撃しようとしているところだった。

 

「させるかぁー!」

 

 間一髪、ウォーロックの前に出てシールドを貼り、攻撃を防ぐ。ウォーロックが私と同じように赤城の艦首方向に向かって飛んでいたおかげで、そのまま距離を離されたりすることもなく、ひたすら間に入って防ぎ続ける。

 

 インカムはあるが赤城との通信は取れない。そのためさっさと離脱してくれることを願うしかない。私にできるのはそのための時間稼ぎぐらいだ。

 

「時間稼ぎなら得意だぞ、私は・・・それにしても、予想的中だな」

 

 ウォーロックはもともとの白を中心としたカラーリングから一転、黒と赤・・・つまりネウロイにそっくりな色に変貌していた。

 

 赤城を攻撃していたことから見て、中身までネウロイになっていることだろう。自我を得た最初の時はネウロイを攻撃していたのに、なぜ今は人を攻撃しているのか。・・・もしかして、さっき無いと考えたハッキングか?コアコントロールシステムでネウロイとつながった結果、ネウロイの持つ洗脳能力によってウォーロックのコアがネウロイ寄りの思考を取り戻した、とか?もしそうならちぐはぐな行動にも納得できなくもない。

 

 まあ、その辺の理由についてはあとでじっくり調べればいい。それよりもすぐにどうにかしなくてはならない問題がある。

 

 私は普段、シールドを使わない。固有魔法を生かせば戦闘の状況を事細かに把握し、敵の攻撃を回避することなど朝飯前だからだ。シールドの分の魔力は攻撃力、固有魔法、速度など、別の使い方に振っている。

 

 そしてウォーロックの攻撃はすさまじく強力だ。なにせ一撃で基地を半壊させるほどの威力があるのだから。遠目だから詳しくは分からないが、あれ島が割れてるんじゃなかろうか。

 

 ウォーロックの撃ってくるビームすべてがあんなに強力なわけではないが、あいつは一度に複数のビームを撃つこともできるので私一人では防ぎきれない。シールドを二枚三枚と展開することも、自分から離れたところに展開することも技術的には可能だが、そんなことをすれば一枚一枚の強度が大きく落ちることになる。ただでさえ貧弱な私のシールド、レーザーを受け止められなければ意味がないのだから、そんなことはできない。

 

「ビーム兵器を壊す、のは最終手段かな。弾切れなんて起きるはずないし。まいった、どうするかな」

 

 とりあえず肩の上についている機関銃とかは壊しておく。ネウロイ由来のものじゃないし、これくらいはいいだろう。とはいえやはりビームをどうにかしないことには焼け石に水。防げなかったレーザーが赤城にあたり、その船体が傾いていく。

 

 隙を見て魔法を使いたいが、空母への攻撃を防ぎながらとなると厳しい。せめてもう一人は欲しいところ。そんな時、ありえない援軍が現れた。

 

「クラインさーん!!私も一緒に戦います!!」

「宮藤!?なぜストライカーを持っているんだ!?」

「坂本さんが車いすに隠してたんです」

「美緒が!?」

 

 私たちの動きを察知して事前に備えていたと・・・そんなわけが。いやしかしその話をゆっくり聞いている時間はない。言いたいことを飲み込んで、ひとまず指示を出すべきだ。

 

 周囲の状況を確認すればどうやら赤城の船員たちは船から脱出している様子。退艦命令が出たのだろうか。だとしても1,000人以上の人が乗る空母から人が逃げるには時間がかかるはず。まだしばらくは時間稼ぎが必要だろう。

 

「宮藤!言いたいことは山ほどあるけど、とにかく今は一緒に赤城を守る。避難が終わるまで時間を稼ぐんだ!」

「分かりました!」

 

 一人欲しいとは言ったものの、宮藤を一人とみなすのは厳しい。ここは一旦守りに徹するべきだろう。

 

「・・・?なんだあれ」

「どうかしたんですか」

「飛行機・・・飛行機!?しかも乗ってるのシャーリーとルッキーニだ」

「え?」

 

 何がなんだかわけが分からない。どういう状況だよ。さすがの私も理解の範疇を超えているが、とにかくあれも守らねばならんだろう。無駄に突っ込んできて何をっ!?

 

 そう思いながら飛行機が目指す先を見てみれば、美緒とペリーヌが空母から落ちかかっているのを発見した。あれを助けるために武装がついてないただの飛行機でこんなところに飛び込んできたのか・・・!?シャーリーの見事な飛行技術で2人は落ちる前に助けられた。文句言って悪かった。ありがとう2人とも。少なくとも私じゃ助けられなかっただろう。

 

 感謝と同時に気を引き締める。改めて周囲の状況をよく観察すると、空母から逃げ出した乗組員が手旗信号をしているのが見えた。

 

 手旗信号は分からないが、人の心は読めるし読唇術も出来る。

 

「た・い・か・ん・か・ん・りょ・う!」

 

 あんな目立つものまで見落としていたとは、私も結構動揺していたらしい。それはともかく、これで赤城を守る必要はなくなったわけだが、代わりに下にいる小さなボートの群れを守らなくてはいけない。

 

 その時、銃声が響いた。

 

「しまった。宮藤に撃つなと言ってなかった。宮藤!!」

「へ?」

「撃つのを、やめろーー!」

 

 私は強引に宮藤とウォーロックの間に入り、銃弾を防ぐ。

 

「クラインさん!?どうして・・・」

「コイツが壊れると困る。攻撃はしないで」

「攻撃しないって・・・」

「コイツを壊さなくても、どうにかする方法はある」

「それは敵ですよ・・・!」

「味方になるんだ。いう事をっ!?」

 

 話し合いの最中に飛んでくるビーム。当たり前だが、私と宮藤が言い争っている間大人しくウォーロックが待ってくれるわけじゃない。いちいち説得できない以上、ウォーロックのビームと宮藤の銃弾。両方防ぐ必要があるか。幸い、ただの銃ならビームと同時に攻撃されてもシールド2枚で防げる。それに宮藤の性格上、私にあたるかもしれないのに撃つなんてことはできないだろう。

 

「悪いね、宮藤。これも守るためだ」

「・・・私、クラインさんのことが分かりません」

「いいことだ」

 

*****

 

 私が宮藤の射線をさえぎるように動くということは、実質宮藤が戦力じゃなくなったことになる。そのためどちらかというとボートを守れない方が気がかりだったのだが、その問題は意外にもあっさり解決した。

 

 私がウォーロックと宮藤の両方をけん制していたそのさなか、突如ウォーロックが狙撃された。もちろん私はシールドでそれを防いだ。撃ってきた相手はリーネ。みればほかの501のみんなもいる。皆一様に私に対して驚いたような顔を向けている。まあそりゃそうか。

 

「なんでここにいるんだ!命令違反だぞ!」

「あら、人のことが言えるのかしら?それに、マロニー大将の命令は無効よ。大将がしてきた不正の数々・・・あなたも知ってるでしょう?」

「メラニー!もうあんなやつの命令になんか従う必要ない!一緒に戦おう!」

 

「何と戦うんだ」

「何って・・・ウォーロックだよ!そいつが空母や司令部を攻撃したんでしょ?・・・!」

「ウォーロックを壊されるわけにはいかない!こいつは必要なんだ!」

「メラニー!後ろ!!」

「後ろ・・・?」

 

 エーリカの声に後ろを見ると、赤い光を放つ玉のようなものをどんどん大きくしていくウォーロックの姿が。まずいまずいまずい!かんっぜんに全力でビームを放つ1秒前じゃないか!瞬時に、飛行に回していた魔力すら削って文字通りの全力でシールドを展開。

 

「くぅ・・・お、押される・・・」

 

 何とか防げはするものの、ビームに押されてどんどんウォーロックから離れていく。魔法を使うことができなくなってしまう・・・それ以前に防ぐのに手いっぱいでこのままだとまずい。シールドを抜かれるかもしれないし、体勢を崩してしまうかもしれない。そうなったら私は塵1つ残さず世界から消えることになるだろう。

 

 私は一旦ビームに押されることを許容して、ビームに対して頭を向けて平行に飛ぶように体勢を変更。そうして被弾面積を減らし展開するシールドの大きさを最適化。飛行に元通り魔力を回し、シールドの強度も上げた。

 

 そのおかげか何とかビームは防ぎきった。どうやらウォーロックはウォーロックであんなとんでもない威力のビームを長時間にわたって撃ち続けるほどの力はないようだ。501のみんなが攻撃を開始したのも大きいだろうが。

 

「もはや、こうなったら説得してる余裕はない、か・・・仕方ない」

「大丈夫ですか!クラインさん」

「宮藤・・・」

 

 どうやらウォーロックと宮藤の間に入っていた私は、ビームに押されて宮藤の近くまで流されたらしい。・・・というかコイツ新人なのに今のをしのぎ切ったのか。私と同じようなことが出来るほどの技術はないし、まさか素のシールドですべて防ぎ切ったのか・・・?やばいくらい天才だな。いやそんなことはどうでもいい。

 

「都合がいいところに、これを持っててほしいんだ」

「これって・・・ネックレス、ですか?」

「友人の形見だ。預かっててくれ」

「ど、どうしてですか」

「宮藤。私は言ったな。私が死ねば戦争が終わるなら、みんなが助かるならそうする・・・」

「なにを言ってるんですか・・・?」

「今がその時だ!」

 

 言うが早いか、私はウォーロックに向かって一直線に飛び出した。エンジンが爆発するまで全力で速度を出して。

 

「私は」

 

 死地で培ったエースの勘でウォーロックの攻撃はすべて躱し。

 

「たとえ私が死んでも!」

 

 コアのある位置の装甲を丁寧にそぎ落とし。

 

「誰も死なない世界にする!!」

 

 ビームに向かってシールドを張り、運動エネルギーの力で強引にその中を突き進み。

 

「もらったぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 手が冷たく、無機質なコアに触れた。

 

 精神感応魔法を全力で発動。

 

 

 そしてその瞬間、私は失敗を悟った。

 

 

 私の思考が黒く塗りつぶされていくのをスローになった時間の中で感じた。どうしてこうなったと、考えている余裕はない。今の私がするべきなのは失敗の後始末だ。

 

 0.1秒 機関銃を海に投げ捨てる。

 

 0.3秒 懐から使い慣れた拳銃を取り出す。

 

 0.5秒 私の頭に銃口を向け、引き金を引く。

 

 

 パン!、と。ウィッチーズが普段使っている機関銃や対戦車ライフルなどに比べればはるかに高く、軽く、弱弱しくさえ感じる音が、しかし確かに彼女たちの世界を揺るがした。

 

*****

 

 私が張ったシールドに食い込む形で目の前に浮かぶ拳銃の弾を見て、「ああ、間に合った」と安堵した。

 

 





 まずい。ポケモン出ちゃう・・・とりあえず1話ぐらいは更新しないと・・・ってことで珍しく朝に更新です。お久しぶりでございます。

 完結目前にして納得のいく内容にならずに時間がかかってしまいました。書きたいことはあるんですけどね・・・それを表現できないのがもどかしいです。


 主人公はフツーに失敗しました。人間相手ですらしたことが無い洗脳を、ぶっつけ本番でネウロイ相手にできるような天才ではないのです。非常に残念ながら。

2022/11/19 22:25 誤字修正

完結したら

  • 番外で全てを終わらすべし
  • 続きを書け!
  • 何でもいい。とにかく百合をくれ
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