ダックスフンドの首輪   作:転音

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 大変長らくお待たせいたしました。楽しみにしてくださっていた方には申し訳ありません。

 ※主人公が無双します。その際オリジナル要素が出てきます。そこまでとんでもないチートとかではなく、あくまで強さの主体はこれまでも出てきた情報処理能力なので、お目こぼしいただけると幸いです。


第二十一話 ストライクウィッチーズ②

 

 さて、一息つきたいところだがそういうわけにいかない。彼女たちが思考停止しているであろう今のうちに、1人くらいは持っていかなくては。何せ相手は11人もいるのだ。対する私たちは1人と1機。数の上ではベルリンに比べるとはるかにマシだが、質の面では彼女たちの圧勝だろう。楽観も油断もできない。

 

 私がネウロイに接触する直前と彼女たちの位置が変わっていなければ、11人全員が私の後ろにいる。またネウロイのビームを避けるために散開しており、それぞれの距離が離れている。私の一連の行動に混乱状態にあるであろう今ならば確実に1人は殺すことが出来るはずだ。

 

 ならば真っ先に狙うべきは誰か?戦闘能力が高いのはエーリカだ。エイラの未来予知も脅威だ。ミーナの指揮能力も侮れない。だがミーナやエーリカは歴戦のウィッチであり、それゆえに復帰も早いだろう。エイラに関しては不意を突いたところで意味がない。となると今真っ先に狙うべきは。

 

 

 全方位広域探査の固有魔法を持ち、フリーガーハマー(ロケットランチャー)という501屈指の火力を備えることから、戦術的価値が高い。その上ウィッチとしての経験に比較的乏しく、副次効果として特にエイラ、エーリカへの精神的ダメージも期待できる・・・サーニャだ!

 

 銃弾に浮遊魔法をかけ、振り向きざまにサーニャに向かって飛ばす。こうすると音や光が出ない。この空の上で小さな小さな拳銃の弾一発が飛んできていることになんて気づけるはずもない。想定通りの位置にサーニャがいて、想定通りみんなは散開していて、私が確信を得たその時、サーニャの前にシールドが張られた。

 

 それを張ったのはサーニャではない。

 

「・・・はぁ、理解はとうに諦めたとはいえ」

 

 こうも軽々と普通を飛び越えられるともはや呆れるしかないだろう。なんで気づいたんだよ、とか。なんで出来んだよ、とか。そんな質問に意味はないだろう。彼女はエーリカ・ハルトマンなのだから。だから出来てしまうのだと、認めるしかない。

 

 自分から離れた位置にシールドを展開することなんて、エーリカはできなかったはずだ。できたなら私に教えていただろうから。つまり一発で成功させたわけだ。しかもこの状況で。

 

「敵に回すとこの上なく恐ろしいね・・・やっぱり」

 

 初撃を加えられなかったのは痛いが、悔やんでもいられない。次に私は敵戦力を分断することにした。

 

 最高戦力であるエーリカ。ウォーロック単騎ではどうやっても撃墜不可能であろうエイラ。また、ウォーロックがすでにコア部分の装甲を破壊されていることからそこを一撃で貫けるような高火力を持つ・・・サーニャとリネット。この四人は最低でも押さえておきたい。

 

 バルクホルンが美緒の・・・じゃなかった。宮藤のストライカーを持ってきた関係で重武装が出来てないのは幸運だったな。彼女まで一緒に相手取るのはさすがに厳しいものがある。

 

 サーニャに1発。ほかの三人に2発づつ。これで私の手元にある弾丸はのこり8発。使い方は考えるべきだろう。

 

 銃弾を操り、まるで追い込み漁のようにして四人をひとまとめにしていく。できるなら同時に殺したい。そのほうが精神的なショックが大きいだろうから。下手に一人殺してしまうと向こうが覚悟を決めて本気で私を殺そうとする危険がある。一対四でも何とかなっているのは向こうに私を殺す気がないからだ。そこが崩れると厳しくなる。

 

 同じ理由で時間もできるだけかけたくない。時間をかければかけるほど、彼女たちは全力を出すことが出来るようになってしまう。だから私たちの目標はより早く、同時に4人を殺す。さて、やってみようか。

 

*****

 

 突如として、ウォーロックのコアに接触し、自殺を図ったかと思えば今度は仲間であるはずの自分たちに向かって攻撃をしてくる。辛うじてエーリカによってその奇襲は防がれたものの、メンバーに広がった動揺は大きくそれを立て直すには少々の時間を要した。

 

 ミーナは状況から、メラニーの異変はウォーロックに原因があると考え、一刻も早くウォーロックを撃墜するべく指示を出した。

 

 また海を割り、空母をほぼ切断するほどの高火力のレーザーなどを備えている割には空母の撃沈に時間をかけすぎていることからウォーロックにはそこまで高い知能はなく・・・そうであればすでに半壊状態のウォーロックの撃墜にはそこまでの時間がかからず、万が一メラニーの異常が収まらなかったとしても501全員で対応することが出来ると考えた。

 

 つまり各個撃破により万全を期してメラニーに対処するのが最善と考えたのだ。が。

 

「のらりくらりと・・・全く捕まらないな」

「くそっ!まるでエイラを相手にしているみたいだ!」

 

 坂本とバルクホルンが思わず愚痴る。

 

「おかしいわ・・・これだけ攻撃して全く当たらないなんて」

 

 別方向から七人がかりで攻撃を加えてかすりもしない。それはおかしい。接触する直前のメラニーはいとも簡単に攻撃を成功させ、コアを守る装甲を破壊していたし、リーネの狙撃も、メラニーが防がなければ命中していただろう。つまりウォーロックにそこまでの回避性能はないはずなのだ。

 

「まさか・・・」

 

 思わず、ミーナはメラニーのことを見た。

 

「クラインさんがウォーロックを指揮している・・・!?」

「な!?そんなわけないだろう!あいつはすでに四人も相手にしてるんだぞ!浮遊魔法がどんなものかは分からないが、そこまでの余裕があるわけがない!」

「どんなものか分からないから、最悪を想定すべきよ!いつもやっていることでしょう?」

 

 メラニーは現在、計8発の弾丸を自在に操りエーリカたちを完封している。彼女の固有魔法は通信魔法・・・あるいはそれに近いことができる魔法であることが確定しているため、固有魔法とは考えられない。

 

 となればあれは共通魔法だろう。そして共通魔法の中であんなことが出来るのはおそらく、浮遊魔法を除いてほかにない。

 

 ウィッチの魔法には固有魔法のほかにも、共通魔法、基本魔法、あるいは単に魔法と呼ばれるウィッチであればだれでも使うことが出来る魔法がある。

 

 例えば身体能力の強化、シールドなど。目立たないところでは、ネウロイが放っている瘴気を無効化する“フィルター”と呼ばれる魔法や、自分自身の周辺の気温をある程度操作する“空調魔法”なども共通魔法である。

 

 浮遊魔法はそんな数ある共通魔法の一つであり・・・ほとんどのウィッチは使えない非常に珍しい魔法である。特に航空ウィッチにはこの魔法を使えるものはほとんどいない。

 

 なぜ共通魔法なのに使えないのか?理由は簡単、使い道がないから訓練しないのだ。

 

 空の上で物を浮かせる浮遊魔法をどうやって使うというのか。共通魔法というのは、どれだけ鍛えても固有魔法には及ばない。身体強化を磨き上げても、鉄骨すら投げ飛ばすバルクホルンほどの怪力は手に入らないし、浮遊魔法をどれだけ鍛えても、“念力”などの固有魔法のように何キロも物体を持ち上げたりはできない。そのうえ燃費も悪い。

 

 機関銃なんて到底持ち上げられないし、補給用の物資を運ぶにしても体に括り付けて飛んだ方が効率がいい。

 

 だから浮遊魔法を習得するぐらいならもっと他に・・・空戦機動や浮遊魔法以外の魔法を鍛えた方がはるかに役立つ。そう考えられており、ほとんどのウィッチはそういう魔法が存在すること以外何も知らない。

 

 そしてそれは歴戦のベテランウィッチであるミーナも同じだった。

 

 ミーナはメラニーのことを観察する。四人以外の方を見る様子は全くない。だがそれは彼女が指揮を執っていない証拠にはならない。

 

「もしクラインさんが指揮を執っているなら、私がいくら頭を回しても意味が無いわね・・・」

「あきらめるのか?」

「いいえ。頭を使うより体を動かした方がいいことに気づいただけよ」

 

*****

 

 エーリカは気づいている。

 メラニーは間違いなく全力で自分たちを殺そうとしていることに。

 

 エーリカは知っている。

 彼女は仲間を殺すことに何の感情も抱かないような人間ではないことを。

 

 エーリカは知らない。

 彼女がこれまで味わってきた地獄を。彼女はエーリカがどれだけ言っても、決して話そうとはしなかったから。

 

 エーリカは知っている。

 彼女がこれまで多くの人間を殺す選択をしてきたことを。

 

 エーリカは知っている。

 そのすべては彼女が望んだものではないと。

 

 エーリカは確信している。

 

 今回もそうだろうと。

 

 

 だが、エーリカは今回の件について結局のところほとんど何もわかっていない。ので

 

「邪魔」

 

 聞いてみることにした。

 

「派手に吹っ飛ばしてくれたねエーリカ」

 

 苦笑するメラニー。何をやったかは簡単で、シュトゥルムで周りを飛んでいる弾を吹っ飛ばして距離を詰めただけ。

 

「ちょっと話さない?」

「話さない。呑気におしゃべりできるほど暇じゃないんだ」

「何のためにウィッチになったの?」

「・・・」

 

 メラニーは答えず、銃を向ける。

 

「前は家族を守るためって言ってたじゃん?」

「・・・」

 

 二発、銃声が響く。エーリカは頭を動かして躱した。

 

「今やってるこれが家族を守るためになるの?」

「なんでそんなことが気になるの?」

「だって、目的と手段が大事なんでしょ?メラニーの目的が分かればさ。もっといい方法をみんなで考えられるかもしれないじゃん」

 

 また二発銃声が響く。今度は一番当たりやすい体のど真ん中へ。エーリカは体をひねって躱した。

 

「それは不可能だよ」

「どうして」

「だって、人間だから」

 

 また二発・・・と、後ろから四発がエーリカに襲い掛かった。エーリカはシュトゥルムで吹き飛ばした。

 

「反則的に勘がいいね・・・あきれるよ」

「どーもどーも」

「でも、ダメなんだよ」

 

「エーリカがどれだけ才能があって頭がよくて強くって、人類史上最高のウィッチでもね・・・だめなんだよ」

 

 鉄仮面が外れた。戦闘中にこうも明らかに不安定になるのはベルリンの後では初めてのことだ。普段はどんなことがあったって冷静で感情的になったりしないのに。今のメラニーはすごく不安定に見える。

 

「エーリカ。覚えてる?JG52の頃にさ・・・私が撃墜し損ねたネウロイがミュンヘンを焼け野原にしたんだ・・・」

 

「私の家族はね・・・避難途中でね・・・ミュンヘンで死んだんだよ」

 

「私は強くなった。もっと強かったなら家族を守れたはずだと思って。でもさぁ・・・強くなってもね、無理なもんは無理なんだよ」

 

「一人でダメならみんなでってさ。SJBはすごかったよ・・・天才しかいなかった。けどダメだった。私もみんなもすごく強かったし、完璧に連携が取れていた。それでもダメなときはダメだった」

 

「私より強いウィッチなんてほとんどいなくなるくらい強くなっても、私以上に“みんなで”戦えるウィッチなんていないと断言できるくらい強くなっても、それでもダメ。無理なんだよ。死んでしまうんだ。人は」

「メラニー・・・」

 

「私は」

 

「自分の関係ないところで戦争があって、どれだけ人が死んでも、きっと心から悲しむことはできない。赤の他人を助けるために何かするようなことはない。そういう人間だ」

 

「でも」

 

「自分の家族や友達が苦しんでいたら助けたい。ウィッチになった時だって、自分と家族を守れればよかった」

 

「今の私には守りたいものが多すぎるんだ・・・」




 テストも終わり、ポケモン熱もひと段落したので投稿再開です。次で終わるかなあ・・・って感じです。

 久しぶりということもあって感覚がちょっとなくなっておりますが、誤字など見つけましたら温かく教えていただけると嬉しいです。


 作者は結構曇らせとか好きなんですけど、タグもつけてないし下手なことはしないでおこうと盛大に曇ってそうなエーリカの描写はカットです。かける自信ないし。みなさんのたくましい妄想力でお楽しみいただければと思います。

2022/12/14 21:33 誤字修正

完結したら

  • 番外で全てを終わらすべし
  • 続きを書け!
  • 何でもいい。とにかく百合をくれ
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