ダックスフンドの首輪   作:転音

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第二十四話 結成!『サイレントウィッチーズ』

 今回私たちがスオムスに来たのは新たに設置される507JFWが部隊名に私たちの異名である『サイレントウィッチーズ』を引き継ぐからというのは前回説明した通りだが、507JFWの前身である『スオムス義勇独立飛行中隊』は、むしろ私たちよりも先輩にあたる。

 

 義勇独立飛行中隊……通称『いらん子中隊』が結成されたのは1939年11月のことであり、いらん子なんてあだ名の割には人類初の大型ネウロイの撃墜に代表される多くの戦果を挙げている、『統合戦闘航空団構想』の元となった偉大な部隊なのだ。

 

 初期の頃からの古参隊員はもう一人しか残っていないらしいが、その補充にきた隊員たちも各国のエース。任務の内容としてはカウハバ基地所属のウィッチへの指導と交流となってはいるが、私たちの側にも学べることは多いだろうと思っていた。

 

「噂の人型ネウロイと交戦した部隊でもあるしね。是非ともその情報と経験をいただきたいところ」

「人型ネウロイ?実在したんですか」

 

 驚いた様子のアンネ。私はマロニー大将から教えられていたが基本的には各国の軍上層部や一部の閣僚クラスしか知らない超が付くレベルの機密である。

 普通ならこんな話をして大丈夫かと一人ぐらいは心配するものだが、そこは数々の激戦を乗り越えたエース。肝の座り方は尋常ではない。何事もなかったかのように話が続く。

 

「カウハバに出たって噂は本当だったと。わざわざ隠すということは何か事情があったのでしょうか?」

「今年の春、502JFWと義勇独立飛行中隊が両方大損害を被って活動制限状態に陥った事件。重大な事件のわりに情報が流れてこなくてきな臭いとは思っていたが……それ関連か?」

 

 冷静に推理するヨハナに、フリーデが感心したように言った。

 

「きみ、案外頭が回るんだねぇ」

「こんぐらい当然だろ。馬鹿にしてんのか?」

 

 プロレスを始めた二人をスルーして、私はヴィルマの問いに答える。

 

「人型は特殊な能力を持っていてね。ちょうど、私にそっくりな能力を」

「隊長にそっくりというと、精神感応ですか。記憶や感情、思考を読んだり……」

 

 感覚の共有、洗脳などなど、次々と例を挙げていくアンネ。それを聞いたヴィルマは言った。

 

「なるほど。勝てないですね、逃げましょう」

「いいね!私もそうすっか!」

「良いわけないだろアホ」

 

 あっさり勝利をあきらめたヴィルマに、喧嘩(じゃれあい)しつつも話は聞いていたらしいフリーデが同調する。普通のウィッチは逃げるという思考になりにくいところがあるので、こうもあっさり諦めるのは私たちの特徴の一つかもしれない。

 会話がひと段落したところで、運転席から言葉が降ってきた。

 

「少佐殿。もう間もなくカウハバ基地に到着いたします」

「了解」

 

「そういえば、運転手の方はどうしましょうか?」

「そこはまあ、魔法で何とか……」

「かわいそ~」

「美少女4人とドライブできたご褒美ってことで」

 

 私がそう言い訳すると、微妙に哀愁漂う声でヨハナが言った。

 

「少女かは微妙な歳だけどな」

「やめろ」

 

 現在19歳、部隊最年長のフリーデがらしくない強い口調で制止した。

 

 なお運転手には別れ際に握手をして、軽く記憶をいじった。

 

 車から降りれば、出迎えと思われる少女が一人立っていた。金髪で、身長は160㎝ほどだろうか。少しつり目で、冷たい印象を受ける。なんとなくオラーシャ人やスオムス人に雰囲気が似ているな、と思った。

 

「スオムス義勇独立飛行中隊のヴェスナ・ミコヴィッチ、階級は曹長です」

「出迎えありがとう。フリューゲル隊長のメラニー・クライン少佐だ、よろしく」

「あなたが……」

 

 ミコヴィッチ曹長はわずかに目を見開いたが、すぐに取り繕って言葉をつづけた。

 

「申し訳ございません。本来なら出迎えは上官がやるべきなのでしょうが、その……」

「いやいや、気にしないよ。何か事情が?」

 

 私が聞くと、ミコヴィッチ曹長はどうもはっきりしない態度で言った。

 

「いえ、その、特別何か問題があるというわけではないのですが……寒いですし、早く中に案内したほうが良いですよね。申し訳ございません。こちらへどうぞ」

「え?あ、あぁ……お願いするよ」

 

 どうも様子がおかしく見える曹長。私たちはこっそり魔法をつないでどういうことか相談する。

 

(一体なんであんなに歯切れが悪いんだ?)

(問題はない、らしいですが……)

(今来たばっかりで俺らに心当たりはねえし、問題ないっていうなら気にしないでいいんじゃねえか?)

(でも気になるよね~あんな態度されちゃあさ)

 

 気になるが、ヨハナの言う通り気にしなくていいことか。しかし4人と違ってアンネには心当たりがあった。

 

(もしかしたら……なんですけど)

(何か知ってるの?)

(義勇独立飛行中隊にまつわる噂を聞いたことがあるんです)

(はっ!噂なんて大概当てになんねーよ)

 

 ヨハナはそっけないが、フリーデは興味がありそうで。

 

(まあまあそう無下にしなくてもいいじゃないの。ね、どんな噂なの?)

(はい。なんでも『カウハバは魔窟』『背徳の地』とかなんとか)

(前線から離れているのに『魔窟』ですか?どういうことでしょう)

 

 単純に考えれば、隊員のキャラが濃いとかだろうか?いらん子中隊なんてあだ名もあることだし、問題児が多いのかもしれない。……そうだとして、背徳ってなんだ。

 

 はた目には無言で、実際にはがやがやと歩き始めて数分。目的の部屋に到着したようで、先頭を歩いていたミコヴィッチ曹長がこちらを振り向いた。

 

――――――

 

 長いテーブルをはさんで奥の方に義勇独立飛行中隊の面々が、手前側に私たちが座り、自己紹介をすることになった。

 

「ようこそいらっしゃいました。スオムス義勇独立飛行中隊隊長のハンナ・ヘルッタ・ウィンド、スオムス空軍少佐です」

 

 最初に立ち上がったのはあちらの隊長。金髪ショートの緑眼で、青色のセーターと白い重ね履きズボン(レギンス)、腰のところにエイラと同じポーチを巻いている。

 

「戦闘隊長をしています、迫水ハルカです。扶桑皇国海軍所属の中尉です」

 

 ボブカットの黒髪黒目。小柄故か幼げに見えるが、最初期から唯一残っている古参隊員というのがこの迫水中尉のことだ。

 

「同じく、リベリオン陸軍航空隊中尉、リー・アンドレア・アーチャーです」

 

 高身長でパーマのかかった黒い髪と黒い肌、精悍な顔立ち、美しいようなちょっと怖いようなそんな印象だ。おそらくはアフリカ系のリベリオン人だろう。この世界では初めて見たかもしれない。特にウィッチというのは珍しい。

 

「クラマース・ブレンガーム曹長。プロイと呼んで」

 

 最後に立ち上がったのは私と同じくらいの身長の小柄な少女、褐色の肌で黒髪。くりくりとした目も相まって可愛げがある少女だ。

 

「第一特別戦闘航空大隊隊長のメラニー・ギルベアタ・クライン少佐です」

「同じく、副隊長のアンネリース・ハックル大尉です」

「フリーデリンデ=カーリー・ミュラー大尉。よろしくね」

「ヨハナ・キルシュナー大尉だ」

「ヴィルマ=ウータ・エッテル中尉であります」

 

「今回の任務について確認します。この度、本中隊がスオムス空軍から北部方面統合軍総司令部に―――」

 

 自己紹介を終えた後は今後についての確認を行う。とはいえ今回はそこまで確認することもないためすぐに終わり。のはずだったのだが。

 

「それから、連絡事項が一つあります。今回の交流会に参加する予定だったウィッチが1人、まだ到着していません」

「到着していない、とはどういうことでしょうか?」

「扶桑から新たにこのカウハバ基地に配属されることになったウィッチが到着していないんです。本来はそのウィッチも参加する予定でしたが、不参加のまま実施することになります」

「了解」

 

 到着していないというのはおかしな話だ。大戦初期の頃は前線でも上層部でも混乱がひどく、どのウィッチがどの部隊所属でどこにいるのか。そもそも本当に軍属なのかすら確かめようがない時があったが、まさか今もそんな状態なはずはない。

 

 扶桑から、とのことだから船が遅れているのかもしれないが……曲がりなりにもこれも軍事作戦。今日に間に合わないなんてことにはならないように遅れも考慮して計画を立てているはず。

 そもそもウィッチ一人を運ぶためだけに扶桑からこちらまで船を出すなんてことにはならないだろう。私が乗ってきた艦隊にも、東部戦線への補給物資が積まれていた。同じように、そのウィッチが乗ってきた艦隊にも何かしら物資なり人員なりを載せているはず、ならばなおのこと遅れが出ても問題ないように配慮するはずだ。となるとこれは―――

 

「―――では、会議はここまで。パーティーの準備が出来てますから、食堂へ行きましょう」

 

 ウィンド少佐の掛け声で、会議は終了。私も一度思考を止めて少佐……ハッセの元へ向かった。

 

「久しぶりハッセ!元気そうでよかった」

「久しぶりだね。メラニーこそ、今は大丈夫なの?」

「見ればわかるでしょ、元気だよ……ん?」

 

 やたらとみんなが静かなので周りを見てみれば、独立飛行中隊の子たちが目を見開いて驚いた顔でこちらを見ていた。彼女たちの内心を代弁するように、プロイ曹長が言った。

 

「隊長はクライン少佐と友達なの!?」

「まあ、バルバロッサの時にはフリューゲルは東部戦線にいたからね」

 

 ハッセはさも当然のように答えた。それに目を輝かせたのは迫水中尉だ。

 

「私もバルバロッサに――ぐえっ」

「リー、その調子です。もっと絞めてください」

 

 目を見開いて驚くのは、今度は私たちの番だった。

 

 やや興奮気味になにやら話し出そうとした迫水中尉の首を、アーチャー中尉が突然締め上げた。それを見て口を開いたミコヴィッチ曹長も、止めるのではなくむしろもっと絞めろと応援している。

 階級こそ同じでも、戦闘隊長と平の隊員では戦闘隊長のほうが上。部下が上官を瀕死に追い込んでいる異常事態を、まるで日常と言わんばかりに見事にスルーして、ハッセは言った。

 

「食堂まで案内するから、ついてきてよ」

 

 そういってさっさと歩きだすハッセ。迫水中尉のことは全く気にするぞぶりがない。私はまたもあっけに取られて数秒立ちすくんだ後、慌てて彼女を追いかけた。

 

「あれはそのままにしといていいの?仲がいいのは結構だけど、さすがにちょっと不味いんじゃ……」

「いいのいいの。みんなは隠したがってたけど、多分そのうち納得するよ」

 

 観察してみても本心からそういっている。未知の事柄について読み取るなんてことはできないので、私は首をひねりながらも、「ハッセがそういうなら」と納得することにした。

 

 気を取り直して、会議の時に気になった扶桑のウィッチについて質問することにする。

 

「不参加のウィッチについてだけど、到着していないっていうのはどういうこと?船が遅れたりしてるの?」

「いや、私も調べてみたんだけど、そのウィッチが乗ってるはずの扶桑の艦隊は、予定通りにちゃんと出港してこっちにも到着してるんだ」

 

 もう2か月ぐらい前に。とハッセは言う。

 

「ちゃんとその艦隊に乗っていたの?何か事情があって遅らせたりとかは……」

 

 私の言葉にハッセは首を振る。

 

「それもなかった。ちゃんと乗ってたはずなんだ。ただ途中でネウロイに襲われたらしくて、戦闘でウィッチが一人、負傷したらしいよ」

「じゃあそれが?」

「違うと思う。訓練学校を卒業したばかりの新人らしいから、他に護衛のウィッチがいたんじゃないかな」

 

 なるほど、新人のウィッチか。比較的後方で危険が少なく経験を積むことが出来、さらに今回の交流会で質の高い訓練も出来るとなればうなずける。

 

「うーん」

「ほら、ついたよ」

「……え?うわぁ!?」

 

 下を見ながらうんうんと考え始めた私は、立ち止まったハッセの胸にぶつかって危うく転びかけた。そんな私を見て、にこにこと笑いながらハッセは言った。

 

「仕事のことばかりじゃなくて思い出話でもしようよ。イッルの話も聞きたいしさ」

「まぁ、そうだね!そっちこそ、二パやラプラのこと聞かせて」

 

 思い出話に花を咲かせ、久方ぶりの豪華な食事を楽しみながら、楽しい夜を過ごすのだった。

 





 1時間遅れてしまった……けど何とか投稿できた。この調子だと4月までに本章を終わらせるのは厳しそうです。本が見つからないのが悪い。自転車を数十キロ単位で漕いでBOOKOFFを巡った私は頑張った。

 ところでこの度めでたく、評価をつけてくださった方が100名に到達いたしました!ありがとうございます。高くても低くても、付けてくださっただけでめちゃくちゃうれしいです。UAも65,000を超えまして、歓喜の舞を踊っております。これからも応援よろしくお願いします。

 まだ評価をつけていない方は是非!つけていただけると嬉しいです。

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