ダックスフンドの首輪 作:転音
今回から、ブレイブウィッチーズに少し触れて、それから2期の方に向かっていくことになります。
「寂しくなるね」
「私も。まあ、ちょっと大変だったけど。楽しかったよ、ハッセ」
来る日も来る日も、変態からの襲撃を退け続ける。そんな本来予想していたのとは違う意味で“キツイ”6日間の交流会という名の訓練が昨日でようやく終わり、カウハバ基地から離れることとなった。
1週間という、長いような短いような期間共に共同生活を営み、訓練を乗り越えた507とフリューゲルとの間では、当初あったような遠慮はなくなり、お互いにお互いを尊敬しつつ、良き友人として打ち解けることが出来ていた。
そうなれば当然、別れを惜しむ思いも強くなる。今はみんなそれぞれに、基地を出発する前の最後の時間を惜しんでいるところだ。
「結局、迫水の不意打ちは全部防いだんでしょ?相変わらずで安心したよ」
「どうもどうも。あ、噂をすれば」
「……どうも、お世話になりました」
やや気まずそうな顔をして小さくなっている迫水中尉。はじめの頃の勢いはどこへやらだ。
部屋に入って扉を開けた瞬間とびかかってきたり。
ストライカーユニットの整備中、痴漢のようにさりげなく接触を試みたり。
サウナに入ろうとズボンを下ろしている瞬間、後ろから手を拘束しようとしたり。
眠ろうとベットに乗った瞬間、ベットの下から手が伸びてきたり。
すっかり寝入った丑三つ時、天井から降ってきたり。
はじめは襲撃のタイミングとして考えやすい、つまりこちらも警戒しているタイミングが多かったが、徐々に警戒していても対応が難しい時や割と無警戒だった時に襲い掛かられて肝を冷やすことも増えていった。
朝起きて着替えて、外に出ようとしたときに
しかしまあ、そういった巧みな……というか、変態的な技術もしっかり対処し、私はこの死線をくぐりぬけることに成功したのだ。なんか最後の方迫水中尉……というか、ハッセ以外の507のみんなから化け物を見る目で見られていた気がするが。
「そりゃ見るでしょ。ウィッチが対応できていいレベルの不意打ちじゃなかったよあれ」
「まあ、普通のウィッチは対人なんて考えないしね」
507との訓練という本来の名目も、私以外のみんながしっかり指導してくれていたようだし、こちらも逆にスオムスやオラーシャについての情報を得られた。実に実りのあるいい訓練だったと言えるだろう。
「もう襲ってこないのかな?」
「勘弁してください……それにもう約束の期間は終わってますから」
おとなしくなったのはいいが、こんな反応をされるとちょっと傷つくな。
話は変わって、この基地を出てからの行き先について。
「手伝ってもらってありがとね」
「いいよいいよ、気にしないで。
「そ、そっか」
お返しが出来るならこれくらい楽勝だよ!とらしくない冷たい笑顔を浮かべるハッセ。……温厚なハッセがこんなことを言うなんて、なにしたんだ
「でも、大丈夫?この任務のあとにも予定あるんだろう?」
「いいのいいの。その辺は何とかするから」
ハッセが心配しているのも当然。本来なら任務を達成した私たちは解散してそれぞれの原隊へ復帰することになるのを、かなり強引に命令を解釈することで別の場所へ行こうとしているのだから。
初日に確認した通り、この交流会に参加するはずだったウィッチ約1名が行方不明となっており、訓練を行えていない。それはつまり、私たちに与えられた任務であるカウハバ基地所属のウィッチとの交流・訓練という命令を熟しきれてないということだ。
そのウィッチは正真正銘どこで何をしているのか分からないなら諦めるが、今回に関してはどこにいるかは大体わかっている。これはもう、忠実な軍人としては上からの命令を実行するべく、行方不明のウィッチの元へ行かざるを得ない。
……本音を言えば、散々こき使ってくれた上にわざわざ船で何か月もかけて移動させた奴らへのちょっとした反抗である。
というわけで、私はハッセに協力を頼んで、とある基地へ物資を運ぶ輸送部隊と引っ付いて私たちの部隊も移動できるように手はずを整えた。
行き先はペテルブルグ。第502統合戦闘航空団『ブレイブウィッチーズ』が配属された、東部戦線の要。目的は、全ウィッチの中でもかなりの曲者である502隊長にお灸をすえることだ。
―――――
カウハバ基地を出発。
補給のトラック部隊の護衛もかねているため、彼らの予定に合わせ、カウハバから南東へ、タンペレを経由してバルト海に面するスオムス共和国首都、ヘルシンキに。そこからは沿岸の道を進んでペテルブルグへ……という予定だったのだが。
ヘルシンキからしばらく東に進んだところで、アンネが固有魔法で発見した。
ネウロイ、ではなく。
「……吹雪?」
「はい。ペテルブルグ方面は現在雪雲に覆われて猛吹雪になっています。このまま進めば、雪に埋もれることになるかと」
「もうそんな天気になる季節だった?」
「いえ、ただの吹雪ならともかく、あれほどは……少し早すぎる」
なるほど。オラーシャも含めて、長い間降雪地帯で戦っていたアンネが違和感を感じる。ということは、あれは異常気象の類。ネウロイが関係しているかはわからないが、あの調子だとペテルブルグの502はおそらく機能停止している。陸戦ウィッチもキツイだろう。湖が凍っている可能性まで考慮すると、非常にまずい状況といえる。
「この部隊はペテルブルグへの補給部隊、つまり、今のペテルブルグは物資の量が限られているはず」
「ますます運がないねぇ。でもまあ、天気だからなぁ」
「いえ、自然なものではないかもしれません」
諦念をにじませるフリーデの言葉に、引き続きペテルブルグ方面をにらんでいたアンネが言った。
「何かあったのか?」
「さすがにここからそんなに細かいところまでは見れません。でも、今の状況はネウロイにとって非常に都合がいい。良すぎるくらいです」
「なるほど。知性を持ったネウロイですね」
「どっちにしろ最悪なのには変わりないな」
「それにどうしようもねえ。私たちじゃ。502が根性見せるのを祈るしかねぇんじゃねぇの」
知性を持ったネウロイなんてものがいたら、状況はますますまずいといえる。それならまだただの異常気象であってくれた方がありがたいというものだ。
「どうしましょうか。隊長」
「補給隊の隊長ともすり合わせる必要はあるけど、私としてはぎりぎりまでペテルブルグに近づきたいな。いざというときのためにもね」
「了解しました。私は固有魔法で常に警戒しておくことにします」
「うん。お願い」
「はい!」
結局、私たちの部隊はペテルブルグまで約120km地点。スオムス―オラーシャ国境にほど近い町、ヴィープリで足止めを食らうことになった。
「吹雪はまだひどい?」
「はい。むしろ強まってるように感じます」
「ネウロイは?」
「見えません。ラドガ湖は凍っていますが、その先までは見えないので……」
アンネの遠視は非常に優秀で、条件次第でもあるが、軽く100km以上遠くを見ることぐらいはできる。それでもラドガ湖は大きすぎて、すべてを把握することはできないようだ。
これがただの吹雪なら、私たちにはどうもできない。502がなんとか乗り切ってくれることを祈るばかりだ。
だが、先ほどアンネが指摘した吹雪がネウロイによるものである可能性。それを考慮すると、ラドガ湖の様子は見ておきたい。放置して502が壊滅すれば、次はスオムスに、私たちに攻撃してくるはずだからだ。
それならたとえ機能停止した微々たる戦力であっても、各個撃破されるよりは協力したほうがましだ。だから敵がいるかどうかは確認しておきたい。
「明日の朝、ラドガ湖方面を偵察し、その結果次第で方針を決めることにしよう」
「わかりました。整備をしておきます」
「うん、お願い。私はこれから部隊長と話してくる」
部隊長からの了承も得て、明日飛行できるように町にも話を通した。この町には飛行場がないので、道路を臨時の滑走路として使えるようになど、町の協力が必要なのだ。
元々、人類の敵であるネウロイと戦うウィッチに対して、一般の民衆の感情はかなり好意的。さらにメラニー達は
「こういう時はプロパガンダにも感謝したくなるね」
「見知らぬ地でも瞬く間に人々の心をつかむ!流石隊長殿!」
「……ヴィルマってこんな感じだった?」
「まぁ~割と?」
前々から素直に言うことを聞く良い子の印象はあった。けど、こんな全肯定というか、心酔されてたっけな……?私には全然心当たりがなかった。
翌日。ストライカーを装着し、飛行前の最後のブリーフィングを行う。
「状況は昨日と変わらず?」
「はい。ペテルブルグもラドガ湖も大吹雪です。ネウロイも、今見える範囲には確認できません」
「それなら、昨日言った通り。ラドガ湖の対岸まで偵察してその結果次第で方針を決める」
「「「了解」」」
「それでは……フリューゲル、出撃!」
―――――
ヴィープリから東に向かって飛行すること約5分。アンネが固有魔法で発見した。
吹雪、ではなく。
(いました!東北東140km先、高度8800。発達した雲の中です)
(人型か!)
(違います。視界をどうぞ)
アンネの視界に映るのは、球をベースに歯車のような、輪のような機構。そして砲身のような長い突出部を備えたネウロイだった。
それだけじゃない。
(あれは……502のウィッチ?)
(どうやって出撃したんだ?)
(私の記憶が正しければ、下原定子少尉、ジョーゼット・ルマール少尉は502JFWのウィッチであります。が、あと一人は……)
ヴィルマ曰く覚えがない。ということは、あの子が件のウィッチということか。
(そんなことより、アイツら弓持ってるように見えんだが?)
(あっはっはっは!私らだって弓で戦った覚えはないな!いい根性してるわ~)
(言ってる場合ですか!いくら何でも無茶無謀が過ぎますよ)
(早いとこ行かないとまずいね)
ストライカーと整備士の皆さんには悪いが、またエンジンには無茶をしてもらう必要がある。私たちはさらに速度を上げて道中を急いだ。
その間に、というか瞬く間にどんどんと、彼女たちの戦況は移り変わっていく。
(お~お~大炎上だ)
(熱ですか。なるほど、確かに弓の攻撃も通り得る……のでしょうか?)
(思いついてもやるかよ普通。つか、あれだけの燃焼材なんかどこで見っけたんだ)
初手でネウロイが爆発、ではなく炎上しだした。ネウロイを燃やす。なんて地上型ならともかく飛行型にやる事じゃないので、これは非常に珍しい。雪でネウロイの体が冷えているからこその戦術と言えるだろう。
冷えたガラスのコップに熱いお湯を注ぐと、ガラスは急激に熱されることで湯に接する部分は膨張する。しかしその一方、湯に触れていない部分は、カラスの熱伝導率の低さゆえに接する部分に少し遅れて熱されることになる。
その結果、膨張しようとする部分と、そのままの形を保っている部分とで歪が生じ、割れる事がある。
これは別にガラスに限った話ではなく、ネウロイの体にも通用する可能性がある理論だ。炎だけで割れるまで行かずとも、もろくなった部分を矢で射貫ける可能性はある。
まあ、金属のように熱伝導率が高いとあまり有効ではない戦術。だが、ネウロイの体にひびが入ったことを見るに、良い方に転がったようだ。
……飛行型ネウロイの体の熱伝導率に関する知識を手に入れてしまった。何の役に立つのか分からんが、一応報告しておくことにしよう。
(ストライカーが凍って……)
(あのネウロイが吹雪を生み出してやがったのか)
(あれほどの炎をあっという間に消して、むしろ凍らせるくらいまで冷やすなんて……数百キロ先まで大吹雪を起こせるはずです)
先ほどの円状によってネウロイの体が割れ、露出したコアに黒髪ボブの扶桑人。下原少尉が射かけようとしたその瞬間。彼女はストライカーが凍結したことでバランスを崩し、的を外した。
ヴィルマのいう通り、恐ろしい冷却能力。ラドガ湖という巨大な湖の対岸から、遥かペテルブルグに大雪を降らせるだけのことはある。
私たちはにわかに、彼女たちの作戦失敗を察し始めた。
大変お待たせいたしました。ようやくブレイブウィッチーズの該当話を見ることができて、筆を進められました。ここまで更新が遅れた理由は私が別に投稿している『アルセウスは邪神である』のあとがきに書いてありますので、もしよろしければご覧ください(初手ダイマ)。
さて、今回はアンネの能力設定に悩みました。遠視+透視でどこまで見えることにしていいのか問題。
一応アニメなどの描写をもとに考えると、まずアニメ1期のリーネが、自分の方へ向かって(追いかけるように飛んでたミーナと比較して)おそらく時速800kmくらい(元ネタの兵器を考えると軽く1100km超えてる可能性あり)(描写的にはそこまでは早くない)で飛んでくるネウロイを数分その場にとどまって何発も撃って倒してるんですよね。
そのネウロイはコアを撃ち抜かれた瞬間リーネのところを爆発しながら通り過ぎていたと思うので、それを基に、仮に5分かけて撃破したと計算すると、狙撃を開始した(=リーネの視界に入った)のがリーネから約67km地点。
つまりウィッチは、遠視の能力がなくとも70km遠くまで見えることになる。目、良すぎん?一般的な人間は大体5kmくらい先までだったと思うんだけど。
ということで、遠視+透視で150kmくらいは最大で見えてもおかしくなさそうかなと思いました。透視で空気中のちりとかも全部無視できるし、たぶん単純な遠視より見える距離伸びるだろうし。
あと、魔力が間違いなくかかわっているので、新兵のリーネより、歴戦のウィッチの方が遠くまで見える可能性は十分ある。
ということで、ひとまずそういう設定で行かせて貰います。後のことまで考えて決めてるわけじゃないので、未来の自分が苦しむ可能性は大いにあるが、まあ何とかなるやろ。
原作の人そこまで考えてないと思うよ(小声)
以上、能力設定に苦しむ作者でした。
設定資料、見たい?
-
見たい!
-
活動報告で見せてくれれば・・・
-
いらん!
-
はよ続き書け