ダックスフンドの首輪 作:転音
秘め声風のお話に追記しました。501のみんなから見たメラニーがどんな人かを。まだ見てない方は是非。一度読んだことがある人もぜひ。
※一部設定はオリジナルです。ご了承ください。
1942年4月
私、メラニー・クラインは間違いなく、この501の中で有数のまじめに仕事に取り組むウィッチである自信がある。
と言ってもあまり自慢にならないのだが。何せ比較対象が、一日寝太郎二名、スピード狂い、当たらないタレット占い師、書類を(物理的に)ぶった切る少佐・・・ミーナとバルクホルンを除けばまともな奴がいない。
特に寝太郎たちと少佐には殺意すら抱く。あいつらのせいで私の仕事が数割増しになっているのはまず間違いないだろう。ルッキーニはともかく、エーリカと美緒はちゃんと仕事してくれ。頼むからさ。
あとタレット占い師。お前は仕事はできるんだから人間関係何とかしてくれ。だからといって占いで距離を縮めようとするんじゃない。当たる時と当たらない時で落差がとんでもないんだから。心臓に悪い。それよりはもっとこう・・・表情豊かにするとかさ。いちいちフォロー入れる私の身になってくれ。
私がこんなことを思っているのは当然理由があって、仕事量がやばいからだ。夜間哨戒、書類仕事、大将からの秘密命令・・・は?いつ休めと?殺す気なんだろうか。
いやまあ、みんなは私と大将の計画を知らないわけだから、私がこんな過労状態であることが分からなくてもしょうがないのだが。だから私も表立って文句は言わないが。が!それでも!やっぱり本職じゃない夜間哨戒を私がやってる現状はおかしいと思うんだよね。
そんな“猫の手も借りたい”私、仕事中は頭を埋め尽くす不満も、朝を迎えるころには眠気に塗り替えられ、結果、ブリーフィングでは毎日のように撃沈している。
一応、こうなる前にミーナとしっかり申し送りはしているし、ブリーフィングで伝えられるような内容も聞かされている。だから寝ても問題ないと言えばない。ないけど、仕事である以上は一応しっかり起きておきたい。たま~に新しい情報があったりもするし。あと不真面目組と同じように見えていやだ。
そう思いつつも、今日も眠気に負けて机に突っ伏していたところ、突然肩をゆすられた。
「お~い。メラニー?」
「(ビクッ)寝てない!ねてないよ~!」
「・・・うん。ほら早く起きなって。待望のナイトウィッチがきたよ?」
「ないと・・・?ついに私騎士になっちゃう?」
「そうじゃないってば。もう。仕方ないな~・・・憧れの英雄様がこんなのでごめんね?」
「い、いえ・・・」
聞きなれない女の子の声。だれかいるのか・・・ん?ないと?ないとうぃっち?
「ナイトウィッチ!!?」
「ひぃ!?」
「あ、起きた」
「どっ!だ!ど「落ち着きなって。ほら。前にいるでしょ。あの子」」
「ど、どこのだれ!服から察するにオラーシャ陸軍!?ダメもとでお願いしたのに来てくれたんだ!」
思わず飛び上がって万歳三唱。乱れた髪と服を軽く整えて帽子をかぶりなおし、駆け足で前に行く。
「緊張しただろうに、ちゃんと聞いてなくてごめんね。夜勤明けで眠くてしょうがなくてさ」
「大丈夫、です。気にしないでください。私もそういうことあるので、よくわかります」
「ありがと。私はメラニー・クライン少佐。ここでは基本的に夜間哨戒を担当してる」
「オラーシャ帝国陸軍中尉のアレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャクです。長いのでサーニャと呼んでください」
「よろしくねサーニャ」
「はい、よろしくおねがいします」
挨拶がいち段落したところで、ミーナが話を再開する。
「基本的にはクライン少佐に夜の指揮は任せてるから、困ったことがあったら、彼女に聞いてください」
「分かりました」
「ミーナ!サーニャの案内、私がしてもいいかな?」
「ええ、構わないけど・・・大丈夫なの?」
「興奮して寝れないよ。ね、サーニャ。いこう!」
「え、は、はい」
私はサーニャの手をつかんで、強引に走り出すのだった。
*****
一通り案内が終わったら、執務室で雑談タイム。にしたのだが。
どうやら彼女はあまり話すタイプではなさそうだ。まあ最初の印象もおとなしそうだったけど、私が案内先であれこれと説明をしても彼女は一言二言話すだけ。ただ不愛想とかそういうわけではなく、単に口数が少ないらしい。エーリカに“普通”を詰め込んだような感じか。おとなしくてかわいい女の子である
「ウィッチになってからどれくらい?」
「えっと、最初にネウロイが出てきてから志願しました」
「まってまって、今何歳?誕生日は?」
「11歳です。誕生日は8月18日です。」
「えぇ・・・」
それって9歳の時に志願したってことじゃん・・・よく入れたな。カールスラントではありえないことである。流石オラーシャというべきか。
「初めての実戦は?」
「10歳になってからです。ウラルに行きたかったけど、ダメだったので、ブリタニアで戦ってました」
「じゃあ1年ちょっとか。中尉だし、うちに来てるってことは実力はあるんだろうけど、慣れるまでは一応私とイッル・・・エイラが一緒に哨戒するからね」
「分かりました」
「と言っても、ほんとにただ一緒に飛ぶだけだけど。私たちは本職のナイトウィッチじゃないからさ~結構危ない時があったりもしたし、頼りにしてるよ」
「が、頑張ります」
「緊張しなくていいよ。きつかったけど、それでも何とかなってきたし。君が加われば無敵だよ。あっそうだ」
「?」
思い出した。彼女とちょっと仲良くなれるかもしれない話題を。
「なんかほしいものある?」
「欲しいもの・・・ですか」
「そうそう。うちっていろんな国のエースが集まってるでしょ?やっぱ自分の国と違うからってストレスになったりすることもあるんだよ」
「でも私、ブリタニアには慣れてます」
「まあまあ、細かいこと考えないで。ようはウィッチのみんなに少しでもいい環境で過ごしてもらいたいからやってることだから。ほら、なんかない?美緒はお風呂作ってもらってたし、エイラはサウナを作ってもらってたよ?」
「そんなにすごいのも出来るんですか・・・?」
「出来る出来る。人はいないけど予算はあるんだ。何がいい?」
サーニャはちょっと下を向いて考え出した。わりかしすぐに考えがまとまったのか、彼女のお願いは・・・
「ピアノ・・・それでいいの?」
「はい。ピアノ、好きなんです。ウィーンに留学してて、お父さんも、ピアニストで」
「へ~~!!すごいねぇ!いいよいいよ!手配しとく。今度良かったら聞かせてよ。私も音楽好きなんだ」
「そうなんですか?」
「うん。まあ、楽器をやったことはないけど。歌は好きだよ」
狙い的中。趣味が音楽で良かった~。どうやって距離詰めたらいいかわかんないよ。
「私も、歌うの好きです」
「ほんと?じゃあ今一曲歌ってくれない?」
「え?今ですか?」
「あ・・・だめ?」
やばい。ミスった?と思ったが、意外にも歌ってくれることになった。ら、ラッキー。
*****
朝の暖かな陽ざしが窓から差し込む執務室で、サーニャによるコンサートが始まった。
透き通った、優しく、美しい歌声は光に照らされた立ち姿、窓の外の小鳥のさえずりも相まってデデニーのプリンセスのように素晴らしいもの・・・だったのだが、歌を求めた張本人は彼女が歌い始めて早々に夢の世界に旅立っていた。目の前の夢の国を見ろよ。
夢中で歌っていたサーニャはしばらく気が付かなかったが、そのうち歌い終わると完全に眠りこけている上官の姿を視界に収めた。
怒ってたたき起こしてもいいところだが、優しい彼女はメラニーのたまった疲労を感じ取り、近くのソファーにかけてあった毛布をそっと、メラニーにかけて、静かに部屋を後にしたのだった。
11歳に寝かしつけられる15歳児の誕生である。
朝のブリーフィングに加えて、わずか数時間で二度も醜態を晒したメラニーだったが、そのおかげかサーニャとの距離は縮まったので・・・良しとしよう。
*****
ここから予告
原作前
「人の心がないんですか・・・!」
「すごいよ。尊敬する。心の底から尊敬するよ」
***
第4話『かたい、はやい、ものすっご~い』
「バルクホルン、握手しない?」
「大丈夫だよ。感覚は分かった。魔力操作は私の方がうまい。何とかなるって」
***
第7話『もぞもぞするの』
「ずる・・・じゃない。何してるんだイッル!・・・私がやる」
***
第8話『翼をください』
「最悪、ストライカーがなくても空は飛べる。宮藤くらい魔法力があれば案外戦えるんじゃない」
「相手はウィッチ、しかも宮藤なんだよ? “普通”なんて物差し、使い物にならないさ」
***
第10話『500overs』
「クライン!あいつとハルトマンを組ませていいのか!?」
「気持ちはよくわかるけどね・・・私には何もできない」
***
第11話『私であるために』
「ウォーロックは間違いだったが、考え自体は間違っているとは思わない」
***
第12話『天空より永遠に』
「骨拾いは得意だからね!安心していけっ!」
「どうせなら無事を祈ったらどうだ!」
「言われなくても」
※予告内容は変更になる可能性があります。ご注意ください。
久しぶりだし、こんな感じで良かっただろうか・・・と不安になりながら書いておりました。いかがでしたでしょうか。
番外で書くものが全然思いつかないので、みなさまもし、アイデアありましたら活動報告の方で恵んでいただけると、投稿が速くなるかもしれません。あまりにも思いつかなかったら諦めて2期に入ります。
2023/2/23 18:49 誤字修正